狭義単調関数は単射
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が狭義単調増加であることは、\begin{equation*}\forall x,x^{\prime }\in X:\left[ x<x^{\prime }\Rightarrow f\left( x\right)
<f\left( x^{\prime }\right) \right]
\end{equation*}が成り立つことを意味します。つまり、変数\(x\)の値が大きくなるにつれて\(f\)が定める値\(f\left( x\right) \)が大きくなるということです。また、\(f\)が狭義単調減少であることは、\begin{equation*}\forall x,x^{\prime }\in X:\left[ x<x^{\prime }\Rightarrow f\left( x\right)
>f\left( x^{\prime }\right) \right]
\end{equation*}が成り立つことを意味します。つまり、変数\(x\)の値が大きくなるにつれて\(f\)が定める値\(f\left( x\right) \)が小さくなるということです。狭義単調増加関数と狭義単調減少関数を総称して狭義単調関数と呼びます。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が狭義単調である場合には、\begin{equation*}\forall x,x^{\prime }\in X:\left[ x\not=x^{\prime }\Rightarrow f\left(
x\right) \not=f\left( x^{\prime }\right) \right]
\end{equation*}が成り立つため、\(f\)は単射です。つまり、狭義単調関数は単射です。
先の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、単射は狭義単調関数であるとは限りません。以下の例より明らかです。
f\left( 2\right) &=&6 \\
f\left( 3\right) &=&5
\end{eqnarray*}を満たすものとします。この関数\(f\)は単射である一方で狭義単調関数ではありません(演習問題)。
先の命題において「狭義単調関数」という条件を「単調関数」に置き換えたとき、主張は成り立つとは限りません。単調関数は単射であるとは限らないということです。以下の例より明らかです。
\end{equation*}と表されるものとします。この\(f\)は単調関数である一方で単射ではありません(演習問題)。
狭義単調関数から生成される全単射
狭義単調増加関数は単射であることが明らかになりました。一般に、関数の終集合を値域に制限すれば全射になるため、狭義単調関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、その終集合を値域\begin{equation*}f\left( X\right) =\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in X\right\}
\end{equation*}に制限して、\begin{equation*}
f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right)
\end{equation*}とすれば、これは必ず全射になります。したがって\(f\)は単射かつ全射、すなわち全単射です。
\end{equation*}は全単射である。ただし、\(f\left( X\right) \)は\(f\)の値域である。
f\left( 2\right) &=&5 \\
f\left( 3\right) &=&6
\end{eqnarray*}を満たすものとします。\(f\)は狭義単調増加関数です。加えて、\(f\)の値域は、\begin{eqnarray*}f\left( \left\{ 1,2,3\right\} \right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in \left\{ 1,2,3\right\} \right\} \\
&=&\left\{ 4,5,6\right\}
\end{eqnarray*}であり、これは終集合\(\left\{ 4,5,6\right\} \)と一致するため、\(f\)は全単射でもあります。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、この関数は狭義単調増加であるため単射です。加えて、\(f\)の値域は、\begin{eqnarray*}f\left( \mathbb{R} \right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\left\{ 6x+2\in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\mathbb{R} \end{eqnarray*}であり、これは終集合\(\mathbb{R} \)と一致するため、\(f\)は全単射でもあります。
\end{equation*}を定めるものとします。ただし\(\mathbb{R} _{+}\)はすべての非負の実数からなる集合です。\(x_{1}<x_{2}\)を満たす\(x_{1},x_{2}\in \mathbb{R} _{+}\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}f\left( x_{2}\right) -f\left( x_{1}\right) &=&x_{2}^{2}-x_{1}^{2}\quad
\because f\text{の定義} \\
&=&\left( x_{2}+x_{1}\right) \left( x_{2}-x_{1}\right) \\
&>&0\quad \because x_{1},x_{2}\in \mathbb{R} _{+}\text{かつ}x_{1}<x_{2}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
f\left( x_{2}\right) >f\left( x_{1}\right)
\end{equation*}となるため\(f\)は狭義単調増加関数であり、したがって単射です。加えて、\(f\)の値域は、\begin{eqnarray*}f\left( \mathbb{R} _{+}\right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} _{+}\right\} \\
&=&\left\{ x^{2}\in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} _{+}\right\} \\
&=&\mathbb{R} _{+}
\end{eqnarray*}であるため、\(f\)の終集合を値域に制限して、\begin{equation*}f:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} _{+}
\end{equation*}とすれば全射になり、したがってこれは全単射でもあります。
先の命題の逆は成り立つとは限りません。つまり、全単射は狭義単調関数であるとは限りません。以下の例より明らかです。
f\left( 2\right) &=&6 \\
f\left( 3\right) &=&5
\end{eqnarray*}を満たすものとします。先に示したようにこの関数\(f\)は単射です。\(f\)の値域は\(\left\{ 4,5,6\right\} \)であるため、\(f\)は全単射でもあります。その一方で、先に示したように\(f\)は狭義単調関数ではありません。
先の命題において「狭義単調関数」という条件を「単調関数」に置き換えたとき、主張は成り立つとは限りません。単調関数の終集合を値域に制限しても全単射になるとは限らないということです。以下の例より明らかです。
\end{equation*}と表されるものとします。\(f\)の値域は\(\left\{c\right\} \)であるため、\(f\)の終集合を値域に制限して、\begin{equation*}f:\mathbb{R} \rightarrow \left\{ c\right\}
\end{equation*}とすれば、\(f\)は全射になります。ただし、\(f\)は単射ではないため、全単射でもありません。その一方で、\(f\)は単調関数です。
狭義単調関数の逆関数
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が狭義単調である場合、その終集合を値域に制限して、\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow f\left( X\right)
\end{equation*}とすれば、これは必ず全単射になることが明らかになりました。関数が全単射であることと、その逆関数が存在することは必要十分であるため、この場合には、逆関数\begin{equation*}
f^{-1}:f\left( X\right) \rightarrow X
\end{equation*}が存在することが保証されます。逆関数は必ず全単射であるため、\(f^{-1}\)もまた全単射です。さらに、もとの関数\(f\)が狭義単調増加である場合には逆関数\(f^{-1}\)もまた狭義単調増加になり、\(f\)が狭義単調減少関数である場合には\(f^{-1}\)もまた狭義単調減少になります。
\end{equation*}は全単射になるため、その逆関数\begin{equation*}
f^{-1}:f\left( X\right) \rightarrow X
\end{equation*}が存在する。ただし、\(f\left( X\right) \)は\(f\)の値域である。特に、\(f\)が狭義単調増加であるならば\(f^{-1}\)もまた狭義単調増加であり、\(f\)が狭義単調減少であるならば\(f^{-1}\)もまた狭義単調減少である。
f\left( 2\right) &=&5 \\
f\left( 3\right) &=&6
\end{eqnarray*}を満たすものとします。先に示したように\(f\)は全単射です。したがって逆関数\(f^{-1}:\left\{4,5,6\right\} \rightarrow \left\{ 1,2,3\right\} \)が存在し、これは、\begin{eqnarray*}f^{-1}\left( 4\right) &=&1 \\
f^{-1}\left( 5\right) &=&2 \\
f^{-1}\left( 6\right) &=&3
\end{eqnarray*}を満たします。\(f\)と\(f^{-1}\)はともに狭義単調増加関数であるため、先の命題の主張と整合的です。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように\(f\)は全単射です。したがって逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が存在します。そこで、\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \)であることを踏まえた上で、\begin{equation*}y=f\left( x\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
y=6x+2
\end{equation*}とおき、これを\(x\)について解くと、\begin{equation*}x=\frac{y-2}{6}
\end{equation*}となるため、\begin{equation*}
f^{-1}\left( y\right) =\frac{y-2}{6}
\end{equation*}を得ます。これが逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が\(y\in \mathbb{R} \)に対して定める値です。\(f\)と\(f^{-1}\)はともに狭義単調増加関数であるため、先の命題の主張と整合的です。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、\(f\)の終集合を値域に制限して、\begin{equation*}f:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} _{+}
\end{equation*}とすれば全単射になります。したがって、その逆関数\begin{equation*}
f^{-1}:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} _{+}
\end{equation*}が存在します。そこで、\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} _{+}\times \mathbb{R} _{+}\)であることを踏まえた上で、\begin{equation*}y=f\left( x\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
y=x^{2}
\end{equation*}とおき、これを\(x\)について解くと、\begin{equation*}x=\sqrt{y}
\end{equation*}となるため、\begin{equation*}
f^{-1}\left( y\right) =\sqrt{y}
\end{equation*}を得ます。これが逆関数\(f^{-1}:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} _{+}\)が\(y\in \mathbb{R} _{+}\)に対して定める値です。\(f\)と\(f^{-1}\)はともに狭義単調増加関数であるため、先の命題の主張と整合的です。
演習問題
f\left( 2\right) &=&9 \\
f\left( 3\right) &=&5
\end{eqnarray*}を満たすものとします。この関数\(f\)は単射である一方で狭義単調ではないことを示してください。
\end{equation*}と表されるものとします。この関数\(f\)は単調関数である一方で単射ではないことを示してください。
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