合成関数の連続性
2つの関数\begin{eqnarray*}
f &:&\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \\
g &:&\mathbb{R} \supset Y\rightarrow \mathbb{R} \end{eqnarray*}が与えられた状況を想定します。ただし、\(f\)の値域が\(g\)の定義域の部分集合であるものとします。つまり、\begin{equation*}f\left( X\right) \subset Y
\end{equation*}が成り立つということです。この場合には合成関数\begin{equation*}
g\circ f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能であり、これはそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) =g\left( f\left( x\right) \right)
\end{equation*}を像として定めます。
関数\(f\)が定義域上の点\(a\in X\)において連続であるものとします。合成関数の定義より\(f\left(a\right) \in Y\)ですが、さらにもう一方の関数\(g\)がこの点\(f\left( a\right) \)において連続であるものとします。以上の条件が満たされる場合には、合成関数\(g\circ f\)もまた点\(a\)において連続になることが保証されます。
&&\left( b\right) \ g\text{は点}f\left( a\right) \text{において連続である}
\end{eqnarray*}が成り立つ場合には、\(g\circ f\)もまた点\(a\)において連続である。
&&\left( b\right) \ g\text{は}Y\text{上で連続である}
\end{eqnarray*}が成り立つものとします。点\(a\in X\)を任意に選んだとき、\(\left( a\right) \)より\(f\)は点\(a\)において連続であり、\(f\left( a\right) \in Y\)および\(\left( b\right) \)より\(g\)は点\(f\left( a\right) \)において連続です。したがって先の命題より\(g\circ f\)は点\(a\)で連続です。\(X\)上の任意の点\(a\)について同様であるため、以上の条件のもとでは\(g\circ f\)は\(X\)上で連続です。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は多項式関数である\(2x-1\)と\(x^{3}\)の合成関数であることに注意してください。点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、多項式関数の連続性より\(2x-1\)は点\(a\)において連続です。多項式関数の連続性より\(x^{3}\)は点\(2a-1\)において連続です。したがって先の命題より\(f\)は点\(a\)において連続です。\(\mathbb{R} \)上の任意の点において同様であるため、\(f\)は\(\mathbb{R} \)上で連続です。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は多項式関数\(x^{2}+1\)と有理関数\(\frac{1}{x}\)の合成関数であることに注意してください。点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、多項式関数の連続性より\(x^{2}+1\)は点\(a\)において連続です。\(a^{2}+1\not=0\)であるため、有理関数の連続性より\(\frac{1}{x}\)は点\(a^{2}+1\)において連続です。したがって先の命題より\(f\)は点\(a\)において連続です。\(\mathbb{R} \)上の任意の点において同様であるため、\(f\)は\(\mathbb{R} \)上で連続です。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は多項式関数\(2x-1\)と絶対値関数\(\left\vert x\right\vert \)の合成関数であることに注意してください。点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、多項式関数の連続性より\(2x-1\)は点\(a\)において連続です。絶対値関数の連続性より\(\left\vert x\right\vert \)は点\(2a-1\)において連続です。したがって先の命題より\(f\)は点\(a\)において連続です。\(\mathbb{R} \)上の任意の点において同様であるため、\(f\)は\(\mathbb{R} \)上で連続です。
先の命題が要求する条件の吟味
合成関数\(g\circ f\)の連続性に関する先の命題では2つの条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ f\text{は点}a\text{において連続である} \\
&&\left( b\right) \ g\text{は点}f\left( a\right) \text{において連続である}
\end{eqnarray*}を要求していますが、\(g\circ f\)が点\(a\)において連続であることを保証する上でこれらの条件は必須なのでしょうか。
関数\(f\)が点\(a\)において連続ではない場合、合成関数\(g\circ f\)が点\(a\)において連続であることを保証できません。以下の例より明らかです。
\begin{array}{ll}
0 & \left( if\ x\not=0\right) \\
1 & \left( if\ x=0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定め、関数\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =x
\end{equation*}を定める場合、合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能であり、これはそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right)
\quad \because \text{合成関数の定義} \\
&=&f\left( x\right) \quad \because g\text{の定義}
\end{eqnarray*}を定めます。つまり、合成関数\(g\circ f\)は関数\(f\)と一致します。点\(0\)に注目したとき、この合成関数\(g\circ f\)は先の命題が要求する条件を満たしません。実際、関数\(f\)に関しては、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow 0}f\left( x\right) &=&\lim_{x\rightarrow 0}0\quad
\because f\text{の定義} \\
&=&0 \\
&\not=&f\left( 0\right) \quad \because f\left( 0\right) =1
\end{eqnarray*}となるため、\(f\)は点\(0\)において連続ではありません。その一方で、点\(f\left( 0\right) =1\)において、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow 1}g\left( x\right) &=&\lim_{x\rightarrow 1}x\quad
\because g\text{の定義} \\
&=&1 \\
&=&g\left( 1\right) \quad \because g\text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\(g\)は点\(1\)において連続です。合成関数\(g\circ f\)は関数\(f\)と一致するため、\(g\circ f\)もまた点\(0\)において連続ではありません。
関数\(g\)が点\(f\left( a\right) \)において連続ではない場合、合成関数\(g\circ f\)が点\(a\)において連続であることを保証できません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定め、関数\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{ll}
0 & \left( if\ x\not=0\right) \\
1 & \left( if\ x=0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める場合、合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能であり、これはそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right)
\quad \because \text{合成関数の定義} \\
&=&g\left( x\right) \quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}を定めます。つまり、合成関数\(g\circ f\)は関数\(g\)と一致します。点\(0\)に注目したとき、この合成関数\(g\circ f\)は先の命題が要求する条件を満たしません。実際、関数\(f\)に関しては、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow 0}f\left( x\right) &=&\lim_{x\rightarrow 0}x\quad
\because f\text{の定義} \\
&=&0 \\
&=&f\left( 0\right) \quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\(f\)は点\(0\)において連続である一方で、点\(f\left( 0\right) =0\)において、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow 0}g\left( x\right) &=&\lim_{x\rightarrow 0}0\quad
\because g\text{の定義} \\
&=&0 \\
&\not=&g\left( 0\right) \quad \because g\left( 0\right) =1
\end{eqnarray*}となるため、\(g\)は点\(0\)において連続ではないからです。合成関数\(g\circ f\)は関数\(g\)と一致するため、\(g\circ f\)もまた点\(0\)において連続ではありません。
その一方で、関数\(f\)が点\(a\)において連続でない場合に合成関数\(g\circ f\)が点\(a\)において連続になる状況は起こり得ます。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるとともに、関数\(g:\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =\frac{1}{x^{2}}
\end{equation*}を定めるものとします。合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right)
\quad \because g\circ f\text{の定義} \\
&=&g\left( \frac{1}{x}\right) \quad \because f\text{の定義}
\\
&=&\frac{1}{\frac{1}{x^{2}}}\quad \because g\text{の定義}
\\
&=&x^{2}
\end{eqnarray*}を定めます。関数\(f\left(x\right) =\frac{1}{x}\)は点\(0\)において定義されていないため点\(0\)において連続ではありません。その一方で、合成関数\(\left(g\circ f\right) \left( x\right) =x^{2}\)は点\(0\)において連続です。
連続な合成関数を構成する関数は連続であるとは限らない
関数\(f,g\)が連続である場合には合成関数\(g\circ f\)もまた連続であることが明らかになりましたが、その逆は成立するとは限りません。つまり、合成関数\(g\circ f\)が連続である場合、関数\(f,g\)は連続であるとは限りません。以下の例より明らかです。
\begin{array}{cl}
1 & \left( if\ x\in \mathbb{Q} \right) \\
0 & \left( if\ x\in \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める一方で、関数\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
1 & \left( if\ x=0\right) \\
x & \left( if\ x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) &=&\left\{
\begin{array}{cl}
g\left( 1\right) & \left( if\ x\in \mathbb{Q} \right) \\
g\left( 0\right) & \left( if\ x\in \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \right)
\end{array}\right. \\
&=&\left\{
\begin{array}{cl}
1 & \left( if\ x\in \mathbb{Q} \right) \\
1 & \left( if\ x\in \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \right)
\end{array}\right. \\
&=&1
\end{eqnarray*}を定めます。\(f,g\)は連続関数ではありませんが\(g\circ f\)は連続関数です(演習問題)。
演習問題
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)が連続であるような点をすべて求めてください。
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)が連続であるような点をすべて求めてください。
\end{equation*}を定め、関数\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =x^{2}+5
\end{equation*}を定めます。合成関数\(f\circ g\)が連続な点をすべて求めてください。
\begin{array}{cl}
1 & \left( if\ x\in \mathbb{Q} \right) \\
0 & \left( if\ x\in \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定める一方で、関数\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
1 & \left( if\ x=0\right) \\
x & \left( if\ x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。これらの関数はいずれも連続ではない一方で、合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は連続であることを示してください。
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