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リプシッツ関数

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リプシッツ関数

実数空間\(\mathbb{R} \)もしくはその部分集合\(X\)を定義域とし、値として実数をとる1変数関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。このような関数\(f\)が以下の条件\begin{equation*}\exists k\in \mathbb{R} ,\ \forall x,y\in X:\left\vert f\left( y\right) -f\left( x\right)
\right\vert \leq k\left\vert y-x\right\vert
\end{equation*}を満たす場合には、\(f\)は定義域\(X\)上でリプシッツ関数(Lipschitz function on \(X\))であるとかリプシッツ連続である(Lipschitz continuous)などと言います。また、上の命題中の不等式\begin{equation*}\left\vert f\left( y\right) -f\left( x\right) \right\vert \leq k\left\vert
y-x\right\vert
\end{equation*}をリプシッツ不等式(Lipschitz inequality)と呼び、リプシッツ不等式中の定数\(k\)をリプシッツ定数(Lipschitz constant)と呼びます。

改めて整理すると、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が\(X\)上でリプシッツ関数であることは、\begin{equation*}\exists k\in \mathbb{R} ,\ \forall x,y\in X:\left\vert f\left( y\right) -f\left( x\right)
\right\vert \leq k\left\vert y-x\right\vert
\end{equation*}が成り立つこととして定義されます。以上の条件を満たす定数\(k\)は非負であることが確定します。さらに、\(x=y\)を満たす任意の\(x,y\in X\)は条件を満たすため、上の命題は、\begin{equation*}\exists k\in \mathbb{R} _{+},\ \forall x,y\in X:\left( x\not=y\Rightarrow \left\vert f\left(
y\right) -f\left( x\right) \right\vert \leq k\left\vert y-x\right\vert
\right)
\end{equation*}と必要十分です。さらにこれは、\begin{equation*}
\exists k\in \mathbb{R} _{+},\ \forall x,y\in X:\left( x\not=y\Rightarrow \frac{\left\vert f\left(
y\right) -f\left( x\right) \right\vert }{\left\vert y-x\right\vert }\leq
k\right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\exists k\in \mathbb{R} _{+},\ \forall x,y\in X:\left( x\not=y\Rightarrow \left\vert \frac{f\left(
y\right) -f\left( x\right) }{y-x}\right\vert \leq k\right)
\end{equation*}と必要十分です。

命題(リプシッツ関数の特徴づけ)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が以下の条件\begin{equation*}\exists k\in \mathbb{R} _{+},\ \forall x,y\in X:\left( x\not=y\Rightarrow \left\vert \frac{f\left(
y\right) -f\left( x\right) }{y-x}\right\vert \leq k\right)
\end{equation*}を満たすことと、\(f\)が\(X\)上でリプシッツ関数であることは必要十分である。
例(定数関数はリプシッツ関数)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、定数\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}と表されるものとします。つまり、\(f\)は定数関数です。この関数が\(X\)上でリプシッツ関数であることを示します。リプシッツ定数の候補として、\begin{equation*}k=1
\end{equation*}に注目すると、点\(x,y\in X\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}\left\vert f\left( y\right) -f\left( x\right) \right\vert &=&\left\vert
c-c\right\vert \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left\vert 0\right\vert \\
&=&0 \\
&\leq &\left\vert y-x\right\vert \\
&\leq &1\left\vert y-x\right\vert
\end{eqnarray*}が成り立ちます。以上より、\begin{equation*}
\forall x,y\in X:\left\vert f\left( y\right) -f\left( x\right) \right\vert
\leq 1\left\vert y-x\right\vert
\end{equation*}が示されました。したがって\(f\)は\(X\)上でリプシッツ関数です。
例(恒等関数はリプシッツ関数)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x
\end{equation*}を定めるものとします。つまり、\(f\)は恒等関数です。この関数が\(X\)上でリプシッツ関数であることを示します。リプシッツ定数の候補として、\begin{equation*}k=1
\end{equation*}に注目すると、点\(x,y\in X\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}\left\vert f\left( y\right) -f\left( x\right) \right\vert &=&\left\vert
y-x\right\vert \quad \because f\text{の定義} \\
&\leq &1\left\vert y-x\right\vert
\end{eqnarray*}が成り立ちます。以上より、\begin{equation*}
\forall x,y\in X:\left\vert f\left( y\right) -f\left( x\right) \right\vert
\leq 1\left\vert y-x\right\vert
\end{equation*}が示されました。したがって\(f\)は\(X\)上でリプシッツ関数です。
例(リプシッツ関数)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left( 0,4\right) \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left( 0,4\right) \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{2}
\end{equation*}を定めるものとします。この関数が\(\left( 0,4\right) \)上でリプシッツ関数であることを示します。リプシッツ定数の候補として、\begin{equation*}k=8
\end{equation*}に注目すると、点\(x,y\in\left( 0,4\right) \)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}\left\vert f\left( y\right) -f\left( x\right) \right\vert &=&\left\vert
y^{2}-x^{2}\right\vert \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left\vert \left( y+x\right) \left( y-x\right) \right\vert \\
&=&\left\vert y+x\right\vert \left\vert y-x\right\vert \\
&<&\left\vert 4+4\right\vert \left\vert y-x\right\vert \quad \because x,y\in
\left( 0,4\right) \\
&=&8\left\vert y-x\right\vert
\end{eqnarray*}が成り立ちます。以上より、\begin{equation*}
\forall x,y\in X:\left\vert f\left( y\right) -f\left( x\right) \right\vert
\leq 8\left\vert y-x\right\vert
\end{equation*}が示されました。したがって\(f\)は\(\left( 0,4\right) \)上でリプシッツ関数です。

 

関数はリプシッツ関数であるとは限らない

関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がリプシッツ関数であることは、\begin{equation*}\exists k\in \mathbb{R} ,\ \forall x,y\in X:\left\vert f\left( y\right) -f\left( x\right)
\right\vert \leq k\left\vert y-x\right\vert
\end{equation*}が成り立つこととして定義されます。したがって、関数\(f\)がリプシッツ関数ではないこととは、上の命題の否定に相当する以下の命題\begin{equation*}\forall k\in \mathbb{R} ,\ \exists x,y\in X:\left\vert f\left( y\right) -f\left( x\right)
\right\vert >k\left\vert y-x\right\vert
\end{equation*}が成り立つことを意味します。

関数はリプシッツ関数であるとは限りません。以下の例より明らかです。

例(リプシッツ関数ではない関数)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{2}
\end{equation*}を定めるものとします。定義域が、\begin{equation*}
X=\left( 0,4\right)
\end{equation*}である場合、\(f\)がリプシッツ関数であることは先に示した通りです。一方、定義域が、\begin{equation*}X=\mathbb{R} _{++}
\end{equation*}である場合、\(f\)はリプシッツ関数ではありません。つまり、\begin{equation}\forall k\in \mathbb{R} ,\ \exists x,y\in \mathbb{R} _{++}:\left\vert f\left( y\right) -f\left( x\right) \right\vert >k\left\vert
y-x\right\vert \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。実際、\(k\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(k\leq 0\)の場合には\(\left( 1\right) \)が明らかに成り立ちます。一方、\(k>0\)である場合には、それに対して、\begin{eqnarray*}x &=&k\in \mathbb{R} _{++} \\
y &=&k+1\in \mathbb{R} _{++}
\end{eqnarray*}とおくことにより、この\(x,y\in \mathbb{R} _{++}\)に対して、\begin{eqnarray*}\left\vert f\left( y\right) -f\left( x\right) \right\vert &=&\left\vert
f\left( k+1\right) -f\left( k\right) \right\vert \\
&=&\left\vert \left( k+1\right) ^{2}-k^{2}\right\vert \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left\vert k^{2}+2k+1-k^{2}\right\vert \\
&=&\left\vert 2k+1\right\vert \\
&=&2k+1\quad \because k>0
\end{eqnarray*}である一方で、\begin{eqnarray*}
k\left\vert y-x\right\vert &=&k\left\vert \left( k+1\right) -k\right\vert \\
&=&k\left\vert 1\right\vert \\
&=&k
\end{eqnarray*}となりますが、\(k>0\)ゆえに、\begin{equation*}2k+1>k
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\left\vert f\left( y\right) -f\left( x\right) \right\vert >k\left\vert
y-x\right\vert
\end{equation*}となるため、\(\left( 1\right) \)が成り立つことが明らかになりました。

 

リプシッツ関数であることの解釈

関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が\(X\)上でリプシッツ関数であるものとします。先に示したように、これは、\begin{equation*}\exists k\in \mathbb{R} _{+},\ \forall x,y\in X:\left( x\not=y\Rightarrow \left\vert \frac{f\left(
y\right) -f\left( x\right) }{y-x}\right\vert \leq k\right)
\end{equation*}が成り立つことと必要十分です。これは何を意味するのでしょうか。

関数\(f\)のグラフ上に存在する異なる2つの点\(\left( x,f\left( x\right) \right) ,\left( y,f\left( y\right) \right) \)を結ぶことにより得られる線分の傾きの大きさは、\begin{equation*}\frac{f\left( y\right) -f\left( x\right) }{y-x}
\end{equation*}です。したがって、関数\(f\)がリプシッツ関数であることとは、\(f\)のグラフ上の2つの点を結ぶことにより得られる線分の傾きの大きさの絶対値をすべて集めることにより得られる集合\begin{equation*}\left\{ \left\vert \frac{f\left( y\right) -f\left( x\right) }{y-x}\right\vert \in \mathbb{R} \ |\ x,y\in X\wedge x\neq y\right\}
\end{equation*}が上に有界であることを意味します。言い換えると、\(f\)のグラフ上の2点を任意に選んだ上でそれらを結んだ場合、その線分が垂直になるような事態は起こり得ないということです。

例(リプシッツ関数であることの解釈)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、定数\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =c
\end{equation*}と表されるものとします。先に示したように、この関数\(f\)は\(X\)上でリプシッツ関数です。実際、定数関数\(c\)のグラフは水平な直線であるため、グラフ上の2点を結ぶことにより得られる線分の傾きは\(0\)です。この事実は先の考察と整合的です。
例(リプシッツ関数であることの解釈)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、この関数\(f\)は\(X\)上でリプシッツ関数です。実際、恒等関数\(x\)のグラフは傾きの大きさが\(1\)の直線であるため、グラフ上の2点を結ぶことにより得られる線分の傾きは\(1\)です。この事実は先の考察と整合的です。
例(リプシッツ関数であることの解釈)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left( 0,4\right) \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left( 0,4\right) \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{2}
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、この関数\(f\)は\(\left(0,4\right) \)上でリプシッツ関数です。実際、関数\(x^{2}\)のグラフは放物線であり、\(x\in \left( 0,4\right) \)を満たすほど十分小さい\(x\)において放物線は垂直ではなく、右上に開いた形状をしており、その傾きの大きさは高々\(8\)です。この事実は先の考察と整合的です。

逆に、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が\(X\)上でリプシッツ関数ではない場合には、\begin{equation*}\forall k\in \mathbb{R} _{+},\ \exists x,y\in X:\left( x\not=y\wedge \left\vert \frac{f\left(
y\right) -f\left( x\right) }{y-x}\right\vert >k\right)
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、どれほど大きい値\(k\in \mathbb{R} _{+}\)を選んだ場合でも、それに対して\(x\not=y\)を満たす何らかの点\(x,y\in X\)のもとで、\begin{equation*}\left\vert \frac{f\left( y\right) -f\left( x\right) }{y-x}\right\vert >k
\end{equation*}が成立してしまいます。以上の事実は、\(f\)のグラフ上の2つの点を結ぶことにより得られる線分の傾きの大きさをすべて集めることにより得られる集合\begin{equation*}\left\{ \left\vert \frac{f\left( y\right) -f\left( x\right) }{y-x}\right\vert \in \mathbb{R} \ |\ x,y\in X\wedge x\neq y\right\}
\end{equation*}が上に有界ではないことを意味します。つまり、関数\(f\)がリプシッツ関数ではない場合、\(f\)のグラフ上の2点を結ぶと、その線分が垂直もしくは垂直に限りなく近い事態が起こります。

例(リプシッツ関数ではないことの解釈)
関数\(f:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{++}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{2}
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、この関数\(f\)は\(\mathbb{R} _{++}\)上でリプシッツ関数ではありません。実際、関数\(x^{2}\)のグラフは放物線であり、\(x\)を限りなく大きくすると放物線は垂直に限りなく近づいていきます。この事実は先の考察と整合的です。

 

演習問題

問題(リプシッツ関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =2x+1
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)が\(\mathbb{R} \)上でリプシッツ関数であることを示してください。
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問題(リプシッツ関数ではない関数)
関数\(f:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{+}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\sqrt{x}
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は\(\mathbb{R} _{+}\)上でリプシッツ関数ではないことを示してください。
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