有理関数
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が多項式関数であることとは、\(f\)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して定める値が、非負の整数\(n\in \mathbb{Z} _{+}\)と実数\(c_{k}\ \left( k=0,1,\cdots ,n\right) \)を用いて、\begin{eqnarray*}f\left( x\right) &=&c_{0}+c_{1}x+c_{2}x^{2}+\cdots +c_{n}x^{n} \\
&=&\sum_{k=0}^{n}c_{k}x^{k}
\end{eqnarray*}という形で表されることを意味します。
定義域を共有する2つの多項式関数\begin{eqnarray*}
f &:&\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \\
g &:&\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\}
\end{eqnarray*}が与えられた状況を想定します。ただし、関数\(g\)は定義域\(X\)上において非ゼロを値としてとることに注意してください。この場合、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}h\left( x\right) =\frac{f\left( x\right) }{g\left( x\right) }
\end{equation*}を値として定める新たな関数\begin{equation*}
h:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。このような関数\(h\)を有理関数(rational function)や分数関数(rational function)などと呼びます。つまり、有理関数とは多項式関数どうしの商として定義される関数です。
\end{equation*}を定めるものとします。分子の関数\(x\)と分母の関数\(x^{2}+1\)はともに多項式関数であるため\(f\)は有理関数です。
\end{equation*}を定めるものとします。分子の関数\(3x^{2}+5x-9\)と分母の関数\(2x\)はともに多項式関数であるため\(f\)は有理関数です。点\(0\)において分母の関数\(2x\)の値は\(0\)になるため、\(f\)は点\(0\)において定義されないことに注意してください。
\end{equation*}を定めるものとします。分子の関数\(x^{2}+7x-\pi \)と分母の関数\(2\left( x^{2}-3\right) \)はともに多項式関数であるため\(f\)は有理関数です。点\(\pm \sqrt{3}\)において分母の関数\(2\left(x^{2}-3\right) \)の値は\(0\)になるため、\(f\)は点\(\pm \sqrt{3}\)において定義されないことに注意してください。
\end{equation*}となります。この関数\(f:\mathbb{Z} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \)は有理関数です。
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は定数関数と有理関数の差として定義されていますが、実際には、\begin{eqnarray*}f\left( x\right) &=&\frac{2\left( x+1\right) }{x+1}-\frac{3}{x+1} \\
&=&\frac{2\left( x+1\right) -3}{x+1} \\
&=&\frac{2x-1}{x+1}
\end{eqnarray*}という変形が可能であるため、\(f\)は有理関数であることが明らかになりました。
\end{equation*}を定めるものとします。分子を因数分解すると、\begin{equation*}
\frac{x^{2}-9}{x-3}=\frac{\left( x+3\right) \left( x-3\right) }{x-3}
\end{equation*}となりますが。\(f\)は点\(3\)において定義されておらず、したがって\(x-3\not=0\)であるため、\begin{equation*}\frac{\left( x+3\right) \left( x-3\right) }{x-3}=x+3
\end{equation*}と変形できます。したがって、与えられた関数\(f\)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 3\right\} \)に対して定める値を、\begin{equation*}f\left( x\right) =x+3
\end{equation*}と表現しても一般性は失われません。つまり、この関数\(f\)は多項式関数です。
\end{equation*}という関係が成り立ちます。右辺は多項式関数\(f\)と定数関数\(1\)の商ですが、定数関数は特別な多項式関数であるため右辺は有理関数です。したがって、それと一致する\(f\)もまた有理関数です。つまり、多項式関数は有理関数の特殊ケースです。
有理関数の定義域
有理関数\(h:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。つまり、\(h\)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定めるが、2つの多項式関数\(f,g\)を用いて、\begin{equation*}h\left( x\right) =\frac{f\left( x\right) }{g\left( x\right) }
\end{equation*}と表されるということです。実数を\(0\)で割ることはできないため\(h\)は\(g\left( x\right) =0\)であるような点\(x\)において定義されず、したがって\(h\)の定義域は、\begin{equation*}X=\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ g\left( x\right) \not=0\right\}
\end{equation*}となります。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の定義域は、\begin{eqnarray*}X &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ x+1\not=0\right\} \\
&=&\mathbb{R} \backslash \left\{ -1\right\} \\
&=&\left( -\infty ,-1\right) \cup \left( -1,+\infty \right)
\end{eqnarray*}となります。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の定義域は、\begin{eqnarray*}X &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ x^{2}-1\not=0\wedge x^{2}-2\not=0\right\} \\
&=&\mathbb{R} \backslash \left\{ 1,-1,2,-2\right\} \\
&=&\left( -\infty ,-2\right) \cup \left( -2,-1\right) \cup \left(
-1,1\right) \cup \left( 1,2\right) \cup \left( 2,+\infty \right)
\end{eqnarray*}となります。
有理関数のグラフ
有理関数のグラフを描くためには多少のコツが必要です。
有理関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、点\(a\in \mathbb{R} \)が以下の2つの条件
- \(x\)が\(a\)より大きい値をとりながら\(a\)に限りなく近づくにつれて\(f\left(x\right) \)の値が限りなく大きくなるか限りなく小さくなる。
- \(x\)が\(a\)より小さい値をとりながら\(a\)に限りなく近づくにつれて\(f\left(x\right) \)の値が限りなく大きくなるか限りなく小さくなる。
の少なくとも一方を満たす場合には、このような点\(a\)から定義される\(y\)軸に平行な直線\(x=a\)を\(f\)のグラフの垂直漸近線(vertical asymptote)と呼びます。また、点\(b\in \mathbb{R} \)が以下の条件
- \(x\)が限りなく大きくなるにつれて\(f\left( x\right) \)の値が\(b\)に限りなく近づく。
- \(x\)が限りなく小さくなるにつれて\(f\left( x\right) \)の値が\(b\)に限りなく近づく。
の少なくとも一方を満たす場合には、このような点\(b\)から定義される\(x\)軸に平行な直線\(y=b\)を\(f\)のグラフの水平漸近線(horizontal asymptote)と呼びます。
\end{equation*}を定めるものとします。この有理関数\(f\)のグラフが以下のように描かれています。
この関数\(f\)は点\(3\)において定義されていませんが、\(x\)が\(3\)より大きい値をとりながら\(3\)に限りなく近づくにつれて\(f\left( x\right) \)の値は限りなく大きくなります。また、\(x\)が\(3\)より小さい値をとりながら\(3\)に限りなく近づくにつれて\(f\left( x\right) \)の値は限りなく小さくなります。したがって、\begin{equation*}x=3
\end{equation*}は関数\(f\)のグラフの垂直漸近線です。また、\(f\left( x\right) \)は\(2\)を値としてとりませんが、\(x\)が限りなく大きくなるにつれて\(f\left( x\right) \)の値は\(2 \)に限りなく近づき、\(x \)が限りなく小さくなるにつれて\(f\left( x\right) \)の値は\(2\)に限りなく近づきます。したがって、\begin{equation*}y=2
\end{equation*}は関数\(f\)のグラフの水平漸近線です。
有理関数のグラフを描く際には、まず、\(x\)切片や\(y\)切片が存在する場合にはそれらを特定します。また、垂直漸近線や水平漸近線が存在する場合にはそれらを特定します。漸近線によって平面は複数の領域に分割されますが、有理関数のグラフは漸近線とは交わらないため、グラフが異なる領域を横断することはありません。したがって、それぞれの領域について、グラフが通過する点をいくつか特定すれば、それらを結ぶことにより有理関数のグラフを完成させることができます。
\end{equation*}を定めるものとします。まずは切片の座標を求めます。\(y=f\left( 0\right) \)を解くことにより\(x\)切片\begin{equation*}\left( 0,1\right)
\end{equation*}を得ます。また、\(0=f\left(x\right) \)を解くことにより\(x\)切片\begin{equation*}\left( -\frac{1}{4},0\right)
\end{equation*}を得ます。\(f\)の分母を構成する関数\(2x+1\)の値は点\(x=-\frac{1}{2}\)において\(0\)になるため、\(f\)は点\(-\frac{1}{2}\)において定義されていません。その一方で、\(f\)の分子を構成する関数\(4x+1\)の値は点\(x=-\frac{1}{2}\)において\(-1\)になるため、\(x\)が\(-\frac{1}{2}\)に近づくにつれて\(f\left( x\right) \)の値は限りなく大きくなるか、もしくは限りなく小さくなります。以上より、\(x=-\frac{1}{2}\)は\(f\)のグラフの水平漸近線です。あとは区切りの良い座標を求めてそれらを繋げば関数\(f\)のグラフが完成します(下図)。
演習問題
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の定義域\(X\)を特定してください。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の定義域\(X\)を特定してください。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の定義域\(X\)を特定してください。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の定義域\(X\)を特定してください。
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