指数関数
正の実数\(a>0\)と実数\(x\in \mathbb{R} \)がそれぞれ任意に与えられたとき、底が\(a\)で指数が\(x\)であるような累乗\(a^{x}\)と呼ばれる概念を定義するとともに、これが常に1つの実数として定まることを明らかにしました。したがって、\(a>0\)が与えられたとき、全区間上に以下のような関数\begin{equation*}a^{x}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。これを底を\(a\)とする指数関数(exponential function)と呼びます。
&=&100\cdot 1.01^{x}
\end{eqnarray*}となります。この\(f\)は底が\(1.01\)であるような指数関数\(1.01^{x}\)の定数倍(\(100\)倍)として定義される関数です。
\end{equation*}となります。この\(f\)は底が\(3\)であるような指数関数です。
\end{equation*}となります。この\(f\)は底が\(\frac{1}{2}\)であるような指数関数\(\left( \frac{1}{2}\right) ^{x}\)の定数倍(\(32\)倍)として定義される関数です。
&=&500\cdot 0.85^{x}
\end{eqnarray*}となります。この\(f\)は底が\(0.85\)であるような指数関数\(0.85^{x}\)の定数倍(\(500\)倍)として定義される関数です。
\end{equation*}という関係が成り立つため、\(1^{x}\)は入力する値\(x\)によらず常に\(1\)を出力する定数関数です。このような事情もあり、多くの場合、\(1^{x}\)を指数関数から除外します。つまり、\(1\)とは異なる正の実数\(a\)に対してのみ、\(a^{x}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)を指数関数とみなすということです。
\end{equation*}を定めるものとします。このとき、例えば、\begin{equation*}
f\left( \frac{1}{2}\right) =\left( -2\right) ^{\frac{1}{2}}=\sqrt{-2}
\end{equation*}となりますが、これは平方が\(-2\)になるような正の実数です。ただ、任意の実数の平方は非負の実数であるため\(\sqrt{-2}\)は1つの実数として定まりません。したがって\(f\)は点\(\frac{1}{2}\)において定義不可能であり、上のように定義された\(f\)は関数ではないことになってしまいます。
指数関数は狭義の単調関数
指数関数は狭義の単調関数です。
指数関数の値域
正の実数\(a>0\)と実数\(x\in \mathbb{R} \)をそれぞれ任意に選んだとき、実数乗の定義より、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ a^{0}=1 \\
&&\left( b\right) \ a^{1}=a
\end{eqnarray*}がともに成り立ちますが、これは任意の指数関数\(a^{x}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)のグラフが点\(\left( 0,1\right) \)と点\(\left( 1,a\right) \)を通過することを意味します。
&&\left( b\right) \ a^{1}=a
\end{eqnarray*}をともに満たす。
正の実数\(a>0\)と実数\(x\in \mathbb{R} \)をそれぞれ任意に選んだとき、実数乗の性質より、\begin{equation*}a^{x}>0
\end{equation*}が成り立ちますが、これは任意の指数関数\(a^{x}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が正の実数のみを値としてとることを意味します。
\end{equation*}を満たす。
任意の指数関数は正の実数のみを値として取ることが明らかになりましたが、後に導入する関数の極限や連続性などの概念を利用することにより、指数関数は任意の正の実数を値として取り得ること、すなわち指数関数の値域が\(\mathbb{R} _{++}\)であることが導かれます。
正の実数\(a>0\)を任意に選んだとき、\(a\)を底とする指数関数\(a^{x}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)の値域は\(\mathbb{R} _{++}\)となる。
この関数\(e^{x}\)は指数関数であるため値域は\(\mathbb{R} _{++}\)です。また、ネイピア数は\(e>1\)を満たすため\(e^{x}\)は狭義の単調増加関数です。加えて、そのグラフは点\(\left(0,1\right) \)と点\(\left( 1,e\right) \)を通過します。上のグラフは以上の事実と整合的です。
この関数\(2^{x}\)は指数関数であるため値域は\(\mathbb{R} _{++}\)です。また、底が\(2>1\)を満たすため\(2^{x}\)は狭義の単調増加関数です。加えて、そのグラフは点\(\left( 0,1\right) \)と点\(\left(1,2\right) \)を通過します。上のグラフは以上の事実と整合的です。
この関数\(\left( \frac{1}{2}\right) ^{x}\)は指数関数であるため値域は\(\mathbb{R} _{++}\)です。また、底が\(0<\frac{1}{2}<1\)を満たすため\(\left( \frac{1}{2}\right) ^{x}\)は狭義の単調減少関数です。加えて、そのグラフは点\(\left(0,1\right) \)と点\(\left( 1,\frac{1}{2}\right) \)を通過します。上のグラフは以上の事実と整合的です。
指数関数との合成関数
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)を任意に選びます。また、全区間上に定義された指数関数を\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)で表記します。\(g\left( x\right)=a^{x}\)です。\(f\)の値域は明らかに\(g\)の定義域\(\mathbb{R} \)の部分集合であることから合成関数\(g\circ f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が常に定義可能であり、これはそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( g\circ f\right) \left( x\right) &=&g\left( f\left( x\right) \right)
\quad \because g\circ f\text{の定義} \\
&=&a^{f\left( x\right) }\quad \because g\text{の定義}
\end{eqnarray*}を定めます。
\end{equation*}で表されるということです。先の議論より、正の実数\(a>0\)を任意に選んだとき、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =a^{c_{0}+c_{1}x+c_{2}x^{2}+\cdots +c_{m}x^{m}}
\end{equation*}を値として定める関数\(g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能です。これは多項式関数\(f\left( x\right) \)と指数関数\(a^{x}\)の合成関数です。例えば、それぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =e^{3x^{3}-2x^{2}+x+1}
\end{equation*}を定める関数\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はこのような合成関数の例です。
\end{equation*}を定める関数\(h:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能です。これは有理関数\(\frac{f\left( x\right) }{g\left( x\right) }\)と指数関数\(a^{x}\)の合成関数です。例えば、それぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 1\right\} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =e^{\frac{2x+1}{\left( 1-x\right) ^{3}}}
\end{equation*}を定める関数\(f:\mathbb{R} \backslash \left\{ 1\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)はこのような合成関数の例です。
演習問題
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の定義域\(X\)となり得る最大の集合を特定してください。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の定義域\(X\)となり得る最大の集合を特定してください。
次回は対数関数について解説します。
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