関数の定義
始集合が実数空間\(\mathbb{R} \)もしくはその部分集合\(X\)であり、終集合が実数空間\(\mathbb{R} \)であるような写像\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を実変数の実数値関数(real-valued function of a real variable)や1変数の実数値関数(real-valued function of single real variable)などと呼びますが、以降ではシンプルに関数(function)と呼ぶこととします。また、\(X\)を\(f\)の始集合(initial set)と呼び、\(\mathbb{R} \)を\(f\)の終集合(final set)と呼びます。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、始集合の要素である実数\(x\in X\)を任意に選ぶと、関数\(f\)はそれに対して終集合\(\mathbb{R} \)の要素である実数を1つずつ定めます。これを関数\(f\)による要素\(x\)の値(value)や像(image)などと呼び、\begin{equation*}f\left( x\right)
\end{equation*}で表記します。\(f\left( x\right)\in \mathbb{R} \)です。
\end{equation*}を定める\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は関数です。このとき、\begin{eqnarray*}f\left( 0\right) &=&0^{2}=0 \\
f\left( 1\right) &=&1^{2}=1 \\
f\left( -\frac{1}{2}\right) &=&\left( -\frac{1}{2}\right) ^{2}=\frac{1}{4}
\\
f\left( \pi \right) &=&\pi ^{2}
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。
\end{equation*}を定めるものとします。このとき、\begin{eqnarray*}
f\left( 0\right) &=&\frac{1}{0+1}=1 \\
f\left( \frac{1}{2}\right) &=&\frac{1}{\frac{1}{2}+1}=\frac{2}{3} \\
f\left( 1\right) &=&\frac{1}{1+1}=\frac{1}{2}
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。ちなみに、\begin{equation*}
f\left( -1\right) =\frac{1}{\left( -1\right) +1}=\frac{1}{0}
\end{equation*}となりますが、実数をゼロで割ることはできないためこれは定義不可能であり、したがって、この関数\(f\)は点\(-1\)において定義されません。
\end{equation*}となります。例えば、\(2\)時間後の走行距離(km)は、\begin{equation*}d\left( 2\right) =60\cdot 2=120
\end{equation*}です。以上のように定義される\(d:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \)は関数です。逆に、走行距離が\(d\)kmである場合、それに必要な走行時間(時間)は、\begin{equation*}t\left( d\right) =\frac{d}{60}
\end{equation*}となります。例えば、\(180\)kmだけ移動するために必要な走行時間(時間)は、\begin{equation*}t\left( 180\right) =\frac{180}{60}=3
\end{equation*}となります。以上のように定義される\(t:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \)は関数です。
\end{equation*}になります。例えば、\(5\)年後の元利合計(万円)は、\begin{equation*}f\left( 5\right) =100\left( 1+\frac{0.02}{2}\right) ^{10}=110.46
\end{equation*}になります。以上のように定義される\(f:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \)は関数です。
\end{equation*}であることが実験から明らかになっているものとします。この場合、\(2\)時間後の血中残存量(mg)は、\begin{eqnarray*}f\left( 2\right) &=&0.5\cdot 2^{4}+3.45\cdot 2^{3}-96.65\cdot
2^{2}+347.7\cdot 2 \\
&=&344.4
\end{eqnarray*}であることが推定されます。以上のように定義される\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,6\right] \rightarrow \mathbb{R} \)は関数です。
関数ではない規則
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)は始集合のそれぞれの要素に対して終集合の要素を1つずつ定める規則でなければなりません。つまり、\begin{equation*}\forall x\in X,\ \exists !y\in \mathbb{R} :y=f\left( x\right)
\end{equation*}を満たす\(f\)だけが\(X\)から\(\mathbb{R} \)への関数として認められます。ただし、\(\exists !\)は「一意的に存在する」ことを表す記号です。
始集合\(X\)の少なくとも1つの要素\(x\)に対してその像\(f\left( x\right) \)が存在しない場合や、始集合\(X\)の少なくとも1つの要素\(x\)に対してその像\(f\left( x\right) \)が一意的に定まらない場合などには、\(f\)は\(X\)から\(\mathbb{R} \)への関数ではありません。
\end{equation*}を値として定める規則\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は関数ではありません。なぜなら、実数\(x\)が与えられたとき、\(x\)以下の実数は無数に存在し、したがって\(f\left( x\right) \)が1つの実数として定まらないからです。
\end{equation*}を値として定める規則\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は関数ではありません。なぜなら、実数をゼロで割ることは許されず、始集合の要素である\(0\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( 0\right) =\frac{1}{0}
\end{equation*}は定義不可能だからです。一方、\(f\)の始集合を制限して\(f:\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)とすれば、それぞれの非ゼロ実数\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\frac{1}{x}
\end{equation*}が1つの実数として必ず定まるため、この場合の\(f\)は関数です。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、始集合に属する「異なる」要素\(x,x^{\prime }\in X\)を任意に選びそれらの像\(f\left( x\right) ,f\left( x^{\prime }\right) \in \mathbb{R} \)をとると、それらは一致するとは限りませんし、逆に、一致しても構いません。どちらの場合でも関数の定義には抵触しないため、問題はありません。
繰り返しになりますが、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)は始集合のそれぞれの要素\(x\in X\)に対して終集合の要素である像\(f\left( x\right) \in \mathbb{R} \)を1つずつ定めるものでなければなりません。一方、終集合の要素\(y\in \mathbb{R} \)を任意に選ぶと、それに対して\(y=f\left( x\right) \)を満たす始集合の要素\(x\in X\)は存在するとは限りませんが、その場合にも関数の定義には抵触しないため、問題ありません。
\end{equation*}を定めるものとします。始集合の要素である実数\(1,2\in \mathbb{R} \)に対して、それらの像は、\begin{equation*}f\left( 1\right) =1\not=4=f\left( 2\right)
\end{equation*}となります。一方、始集合の要素である実数\(1,-1\in \mathbb{R} \)に注目すると、それらの像は、\begin{equation*}f\left( 1\right) =1=f\left( -1\right)
\end{equation*}となります。いずれにせよ、このような事態が起きていても関数として何も問題なく、この\(f\)は\(\mathbb{R} \)から\(\mathbb{R} \)への関数です。
等しい関数
2つの関数\begin{eqnarray*}
f &:&\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \\
g &:&\mathbb{R} \supset Y\rightarrow \mathbb{R} \end{eqnarray*}が与えられたとき、これらが以下の条件\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ X=Y \\
&&\left( b\right) \ \forall x\in X:f\left( x\right) =g\left( x\right)
\end{eqnarray*}をともに満たす場合には、\(f\)と\(g\)は等しい(equal)といい、そのことを、\begin{equation*}f=g
\end{equation*}と表記します。つまり、2つの関数\(f,g\)が等しいこととは、\(\left( a\right) \)それらの始集合どうしが一致するとともに、\(\left( b\right) \)始集合のそれぞれの要素に対して\(f\)が定める値と\(g\)が定める値が常に一致することを意味します。
逆に、上の2つの条件\(\left( a\right) ,\left( b\right) \)の少なくとも一方が成り立たない場合、すなわち、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ X\not=Y \\
&&\left( b\right) \ \exists x\in X:f\left( x\right) \not=g\left( x\right)
\end{eqnarray*}の少なくとも一方が成り立つ場合、\(f\)と\(g\)は異なる(not equal)といい、そのことを、\begin{equation*}f\not=g
\end{equation*}と表記します。
g\left( x\right) &=&\left\vert x\right\vert
\end{eqnarray*}を定めるものとします。ただし、\(\mathbb{R} _{+}\)はすべての非負の実数からなる集合です。\(f\)と\(g\)は始集合\(\mathbb{R} _{+}\)を共有します。加えて、任意の非負の実数\(x\in \mathbb{R} _{+}\)に対して、\begin{equation*}x=\left\vert x\right\vert
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
f\left( x\right) =g\left( x\right)
\end{equation*}が成り立ちます。以上より、\begin{equation*}
f=g
\end{equation*}であることが示されました。
g\left( x\right) &=&\left\vert x\right\vert
\end{eqnarray*}を定めるものとします。\(f\)と\(g\)は始集合を共有しますが、先の例とは異なり始集合は\(\mathbb{R} _{+}\)ではなく\(\mathbb{R} \)であることに注意してください。始集合の要素である\(-1\in \mathbb{R} \)に注目すると、\begin{eqnarray*}f\left( -1\right) &=&-1 \\
g\left( -1\right) &=&1
\end{eqnarray*}であるため、\begin{equation*}
f\left( -1\right) \not=g\left( -1\right)
\end{equation*}であり、したがって、\begin{equation*}
f\not=g
\end{equation*}であることが示されました。
演習問題
\end{equation*}を定めるものとします。以下の問いに答えてください。
- \(f\left( -5\right) \)を求めてください。
- \(f\left( -4.7\right) \)を求めてください。
- \(f\left( 11\right) \)を求めてください。
- \(f\left( \frac{2}{3}\right) \)を求めてください。
\end{equation*}を定めるものとします。以下の問いに答えてください。
- \(f\left( 2\right) \)を求めてください。
- \(f\left( a\right) \)を求めてください。ただし、\(a\)は何らかの実数を表す記号です。
- \(f\left( a+h\right) \)を求めてください。ただし、\(a\)何らかの実数を表す記号、\(h\)はゼロではない何らかの実数を表す記号です。
- \(\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}\)を求めてください。ただし、\(a\)何らかの実数を表す記号、\(h\)はゼロではない何らかの実数を表す記号です。
ちなみに、最後に導出した値\(\frac{f\left( a+h\right) -f\left( a\right) }{h}\)を関数\(f\)の点\(a\)における平均変化率と呼びます。平均変化率の知識は関数の微分について学ぶ際に再び登場します。
\end{equation*}を値として定める規則\(f:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \)は関数ですか。議論してください。
\end{equation*}を定める規則\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は関数ですか。議論してください。
\end{equation*}を満たす\(y\in \mathbb{R} \)を定める\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は関数ですか。議論してください。
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