余弦関数
単位円上の点\(P\)を任意に選んだ上で、半直線が点\(O\)を中心に始線\(OX\)から動径\(OP\)まで回転する際にできる角の大きさを\(\theta \)で表記します(下図)。ただし、\(\theta \)の単位はラジアンであり、これは弧\(XP\)の長さと一致します。この場合、ラジアン\(\theta \)の余弦は、\begin{equation*}\cos \left( \theta \right) =\text{点}P\text{の}x\text{座標}
\end{equation*}と定義されます。
ラジアンは任意の実数を値としてとり得ますが、それぞれの値\(\theta \in \mathbb{R} \)に対して余弦\(\cos \left( \theta \right) \)は1つの実数として定まります。そこで、ラジアンを変数\(x\in \mathbb{R} \)とみなせば、全区間上に以下のような関数\begin{equation*}\cos \left( x\right) :\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。これを余弦関数(cosine function)やコサイン関数などと呼びます。
&=&1
\end{eqnarray*}となります。\(\frac{\pi }{6}\)ラジアン(\(30\)度)に対応する単位円上の点\(P\)の座標は\(\left( \frac{\sqrt{3}}{2},\frac{1}{2}\right) \)であるため、余弦関数の定義より、\begin{eqnarray*}\cos \left( \frac{\pi }{6}\right) &=&\text{点}\left( \frac{\sqrt{3}}{2},\frac{1}{2}\right) \text{の}x\text{座標} \\
&=&\frac{\sqrt{3}}{2}
\end{eqnarray*}となります。\(\frac{\pi }{4}\)ラジアン(\(45\)度)に対応する単位円上の点の座標は\(\left( \frac{\sqrt{2}}{2},\frac{\sqrt{2}}{2}\right) \)であるため、余弦関数の定義より、\begin{eqnarray*}\cos \left( \frac{\pi }{4}\right) &=&\text{点}\left( \frac{\sqrt{2}}{2},\frac{\sqrt{2}}{2}\right) \text{の}x\text{座標} \\
&=&\frac{\sqrt{2}}{2}
\end{eqnarray*}となります。他についても同様に考えることにより以下の表を得ます。
$$\begin{array}{ccccccccc}
\hline
x(ラジアン) & 0 & \frac{\pi }{6}
& \frac{\pi }{4} & \frac{\pi }{3} & \frac{\pi }{2} & \pi & \frac{3\pi }{2} & 2\pi \\ \hline
x(度) & 0^{\circ } & 30^{\circ } & 45^{\circ } &
60^{\circ } & 90^{\circ } & 180^{\circ } & 270^{\circ } & 360^{\circ } \\ \hline
\cos \left( x\right) & 1 & \frac{\sqrt{3}}{2} & \frac{\sqrt{2}}{2}
& \frac{1}{2} & 0 & -1 & 0 & 1 \\ \hline
\end{array}$$
&=&1
\end{eqnarray*}となります。\(-\frac{\pi }{6}\)ラジアン(\(-30\)度)に対応する単位円上の点\(P\)の座標は\(\left( \frac{\sqrt{3}}{2},-\frac{1}{2}\right) \)であるため、余弦関数の定義より、\begin{eqnarray*}\cos \left( -\frac{\pi }{6}\right) &=&\text{点}\left( \frac{\sqrt{3}}{2},-\frac{1}{2}\right) \text{の}x\text{座標} \\
&=&\frac{\sqrt{3}}{2}
\end{eqnarray*}となります。\(-\frac{\pi }{4}\)ラジアン(\(-45\)度)に対応する単位円上の点の座標は\(\left( \frac{\sqrt{2}}{2},-\frac{\sqrt{2}}{2}\right) \)であるため、余弦関数の定義より、\begin{eqnarray*}\cos \left( -\frac{\pi }{4}\right) &=&\text{点}\left( \frac{\sqrt{2}}{2},-\frac{\sqrt{2}}{2}\right) \text{の}x\text{座標} \\
&=&\frac{\sqrt{2}}{2}
\end{eqnarray*}となります。他についても同様に考えることにより以下の表を得ます。
$$\begin{array}{ccccccccc}
\hline
x(ラジアン) & 0 & -\frac{\pi }{6}
& -\frac{\pi }{4} & -\frac{\pi }{3} & -\frac{\pi }{2} & -\pi & -\frac{3\pi }{2} & -2\pi \\ \hline
x(度) & 0^{\circ } & -30^{\circ } & -45^{\circ }
& -60^{\circ } & -90^{\circ } & -180^{\circ } & -270^{\circ } & -360^{\circ } \\ \hline
\sin \left( x\right) & 1 & \frac{\sqrt{3}}{2} & \frac{\sqrt{2}}{2}
& \frac{1}{2} & 0 & -1 & 0 & 1 \\ \hline
\end{array}$$
斜辺の長さを\(a>0\)で、底辺の長さを\(b>0\)で、斜辺と底辺がつくる角の大きさ(ラジアン)を\(x\in \left( 0,\frac{\pi }{2}\right) \)でそれぞれ表記する場合、余弦の定義より以下の関係\begin{equation*}\cos \left( x\right) =\frac{b}{a}
\end{equation*}が成り立ちます。したがって、斜辺の長さ\(a\)を固定した上で角の大きさ\(x\)を変化させた場合の底辺の長さ\(b\)を特定する関数は、\begin{equation*}f\left( x\right) =a\cdot \cos \left( x\right)
\end{equation*}となります。これは余弦関数の定数倍として定義される関数です。また、底辺の長さ\(b\)を固定した上で角の大きさ\(x\)を変化させた場合の斜辺の長さ\(a\)を特定する関数は、\begin{equation*}g\left( x\right) =\frac{b}{\cos \left( x\right) }
\end{equation*}となります。これは定数関数と余弦関数の商として定義される関数です。
平面上の点\(\left( 0,0\right) \)を出発点として、角度\(x\)(ラジアン)の方向に\(1\)(メートル)だけ進むと(上図矢印)、移動後の点の\(x\)座標は、\begin{equation*}\cos \left( x\right)
\end{equation*}となります。したがって、速さ\(a\)(秒速)と移動時間\(b\)(秒)を固定したとき、移動方向を表す角度が\(x\)である場合の移動後の点の\(x\)座標は、\begin{equation*}f\left( x\right) =ab\cdot \cos \left( x\right)
\end{equation*}となります。これは余弦関数の定数倍として定義される関数です。
$$\begin{array}{cccccccccc}
\hline
時点t & 0 & \cdots & \frac{1}{4} & \cdots & \frac{1}{2} & \cdots & \frac{3}{4} & \cdots & 1 \\ \hline
単位円上の位置\left( x,y\right) & \left( 1,0\right) & \cdots & \left( 0,1\right) & \cdots & \left( -1,0\right) & \cdots & \left( 0,-1\right) & \cdots & \left( 1,0\right) \\ \hline
観察されるx座標 & 1 & \searrow & 0 & \searrow & -1 & \nearrow & 0 & \nearrow & 1
\\ \hline
\end{array}$$
点は\(1\)秒間で\(2\pi \)ラジアン移動するため、時点\(t\in \left[ 0,1\right] \)までの移動距離は\(2\pi t\)です。したがって、時点\(t\)における点の\(x\)座標は、\begin{equation*}f\left( t\right) =\cos \left( 2\pi t\right)
\end{equation*}となります。この関数は単項式関数\(2\pi t\)と余弦関数\(\cos \left( x\right) \)の合成関数です。
余弦関数のグラフ(余弦曲線)
余弦関数\(\cos \left( x\right) \)のグラフは、\begin{equation*}G\left( \cos \right) =\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ y=\cos \left( x\right) \right\}
\end{equation*}ですが、これを余弦曲線(cosine curve)やコサイン・カーブなどと呼びます。余弦曲線を図示すると以下のようになります。
上図から明らかであるように、余弦曲線は同一形状の繰り返しですが、これは余弦関数が周期関数であることを意味しています。実際、以下が成り立ちます。
\end{equation*}が成り立つ。
\cos \left( 0\right) &=&\cos \left( \pm 2\pi \right) =\cos \left( \pm 4\pi
\right) =\cdots =1 \\
\cos \left( \frac{\pi }{2}\right) &=&\cos \left( \frac{\pi }{2}\pm 2\pi
\right) =\cos \left( \frac{\pi }{2}\pm 4\pi \right) =\cdots =0 \\
\cos \left( \pi \right) &=&\cos \left( \pi \pm 2\pi \right) =\cos \left(
\pi \pm 4\pi \right) =\cdots =-1 \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。
先の命題は、余弦関数が周期\(2\pi \)の周期関数であることを意味します。では、余弦関数はどのようなパターンのもとで変動しているのでしょうか。ラジアン\(x\)を\(0\)から\(2\pi \)まで1周期分だけ動かした場合、余弦関数の値は以下のように変化します。
$$\begin{array}{cccccccccc}
\hline
xラジアン & 0 & \cdots & \frac{\pi }{2} & \cdots & \pi & \cdots & \frac{3\pi }{2} & \cdots & 2\pi \\ \hline
x度 & 0^{\circ } & \cdots & 90^{\circ } & \cdots & 180^{\circ } & \cdots & 270^{\circ } & \cdots & 360^{\circ } \\ \hline
\cos \left( x\right) & 1 & \searrow & 0 & \searrow & -1 & \nearrow & 0 & \nearrow & 1 \\ \hline
\end{array}$$
つまり、余弦関数の値は\(\left[ 0,\pi \right] \)の範囲内において\(1\)から\(-1\)まで狭義単調減少し、\(\left[ \pi,2\pi \right] \)の範囲内において\(-1\)から\(1\)まで狭義単調増加します。以上が1つの周期です。これを図示すると以下のようになります。
余弦関数の値域
余弦は\(-1\)以上\(1\)以下の値をとり得るため、\(x\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\begin{equation*}-1\leq \cos \left( x\right) \leq 1
\end{equation*}が成り立ちますが、これは余弦関数が\(-1\)以上\(1\)以下の実数だけを値としてとることを意味します。加えて、後に導入する関数の連続性の概念を利用することにより、余弦関数が\(-1\)以上\(1\)以下の任意の実数を値としてとり得ること、すなわち余弦関数の値域が\(\left[ -1,1\right] \)であることが導かれます。
余弦関数\(\cos \left( x\right) :\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)の値域は\(\left[ -1,1\right] \)である。
余弦関数の規則性
ラジアン\(x\)の動径と単位円が交わる点を\(P\)で表し、ラジアン\(\pi -x\)の動径と単位円が交わる点を\(P^{\prime }\)で表すとき、これらの点は\(y\)軸に対して対称な位置にあるため、\begin{equation*}P\text{の}x\text{座標}=-\left( P^{\prime }\text{の}x\text{座標}\right)
\end{equation*}という関係が成立します。したがって以下を得ます。
\end{equation*}が成り立つ。
ラジアン\(x\)の動径と単位円が交わる点を\(P\)で表し、ラジアン\(-x\)の動径と単位円が交わる点を\(P^{\prime }\)で表すとき、これらの点は\(x\)軸に対して対称な位置にあるため、以下の関係\begin{equation*}P\text{の}x\text{座標}=P^{\prime }\text{の}x\text{座標}
\end{equation*}が成立します。したがって以下を得ます。
\end{equation*}が成り立つ。
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)が任意の\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( -x\right) =f\left( x\right)
\end{equation*}を満たす場合、これを偶関数(even function)と呼びます。先の命題は余弦関数が偶関数であることを主張しています。
ラジアン\(x\)の動径と単位円が交わる点を\(P\)で表し、ラジアン\(x+\pi \)の動径と単位円が交わる点を\(P^{\prime }\)で表すとき、これらの点は原点に対して対称な位置にあるため、以下の関係\begin{equation*}P\text{の}x\text{座標}=-\left( P^{\prime }\text{の}x\text{座標}\right)
\end{equation*}が成立します。したがって以下を得ます。
\end{equation*}という関係が成り立つ。
余弦関数との合成関数
実数空間\(\mathbb{R} \)もしくはその部分集合\(X\)上に定義された関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を任意に選びます。また、余弦関数\begin{equation*}
\cos \left( x\right) :\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。\(f\)の値域は\(\cos \left( x\right) \)の定義域\(\mathbb{R} \)の部分集合であるため合成関数\begin{equation*}\cos \left( f\left( x\right) \right) :\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。
余弦関数\begin{equation*}
\cos \left( x\right) :\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。実数空間\(\mathbb{R} \)もしくはその部分集合\(X\)上に定義された関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を任意に選びます。\(\cos \left( x\right) \)の値域\(\left[ -1,1\right] \)が\(f\)の定義域の部分集合である場合には、すなわち、\begin{equation*}\left[ -1,1\right] \subset X
\end{equation*}が成り立つ場合には合成関数\begin{equation*}
f\left( \cos \left( x\right) \right) :\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。
級数を用いた余弦関数の定義
以下の議論では微分(テイラー展開)に関する知識を利用するため、必要な知識を学んだ後に読み返してください。
余弦関数\(\cos \left( x\right) \)の点\(0\)における\(n\)次のテイラー多項式、すなわち\(n\)次のマクローリン多項式は、\begin{eqnarray*}P_{n,0}\left( x\right) &=&1-\frac{x^{2}}{2!}+\frac{x^{4}}{4!}-\frac{x^{6}}{6!}+\cdots +\frac{\sin \left( \frac{n\pi }{2}\right) }{n!}x^{n} \\
&=&\sum_{k=0}^{n}\left[ \frac{\cos \left( \frac{k\pi }{2}\right) }{k!}\cdot
x^{k}\right]
\end{eqnarray*}であるとともに、マクローリンの定理より、点\(0\)の周辺の任意の点\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)において、\begin{equation*}\cos \left( x\right) \approx P_{n,0}\left( x\right)
\end{equation*}という近似式が成り立ちます。\(n\)が大きくなるほど近似の精度が高くなりますが、\(\cos \left( x\right) \)はマクローリン展開可能であるため、究極的には、ゼロとは異なる点\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)を任意に選んだときに、\begin{eqnarray*}\cos \left( x\right) &=&1-\frac{x^{2}}{2!}+\frac{x^{4}}{4!}-\frac{x^{6}}{6!}+\cdots \\
&=&\sum_{k=0}^{\infty }\left[ \left( -1\right) ^{k}\frac{x^{2k}}{\left(
2k\right) !}\right]
\end{eqnarray*}という関係が成り立ちます。ただし、\(x\)はラジアン表記の角度です。
&=&1-\frac{1}{2!}+\frac{1}{4!}-\frac{1}{6!}+\cdots +\frac{\sin \left( \frac{n\pi }{2}\right) }{n!}
\end{eqnarray*}という近似関係が成り立つとともに、\(n\)が大きくなるほど近似の精度が高くなります。具体的には、\begin{eqnarray*}P_{1,0}\left( 1\right) &=&\frac{\cos \left( 0\right) }{0!}+\frac{\cos
\left( \frac{\pi }{2}\right) }{1!}=1 \\
P_{2,0}\left( 1\right) &=&\frac{\cos \left( 0\right) }{0!}+\frac{\cos
\left( \frac{\pi }{2}\right) }{1!}+\frac{\cos \left( \pi \right) }{2!}=0.5 \\
P_{3,0}\left( 1\right) &=&\frac{\cos \left( 0\right) }{0!}+\frac{\cos
\left( \frac{\pi }{2}\right) }{1!}+\frac{\cos \left( \pi \right) }{2!}+\frac{\cos \left( \frac{3\pi }{2}\right) }{3!}=0.5 \\
P_{4,0}\left( 1\right) &=&\frac{\cos \left( 0\right) }{0!}+\frac{\cos
\left( \frac{\pi }{2}\right) }{1!}+\frac{\cos \left( \pi \right) }{2!}+\frac{\cos \left( \frac{3\pi }{2}\right) }{3!}+\frac{\cos \left( 2\pi \right) }{4!}=0.55417 \\
P_{5,0}\left( 1\right) &=&\frac{\cos \left( 0\right) }{0!}+\frac{\cos
\left( \frac{\pi }{2}\right) }{1!}+\frac{\cos \left( \pi \right) }{2!}+\frac{\cos \left( \frac{3\pi }{2}\right) }{3!}+\frac{\cos \left( 2\pi \right) }{4!}+\frac{\cos \left( \frac{5\pi }{2}\right) }{5!}=0.55417 \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}などとなります。\(\cos \left(x\right) \)はマクローリン展開可能であるため、究極的には、点\(0\)とは異なる点である点\(1\)において、\begin{eqnarray*}\cos \left( 1\right) &=&1-\frac{x^{2}}{2}+\frac{x^{4}}{4!}-\frac{x^{6}}{6!}+\cdots \\
&=&0.5403
\end{eqnarray*}が成り立ちます。ただし、\(1\)の単位はラジアンです。
演習問題
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の定義域\(X\)と値域\(f\left( X\right) \)を特定してください。
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