角
座標平面上に原点\(O\)を中心とする円を描き、その円周と\(x\)軸の正の部分の交点を\(X\)と名付けます(下図)。原点\(O\)を始点とする半直線\(OX\)を始線(initial line)と呼びます。点\(X\)を円周に沿って反時計回り(counter clockwise)に点\(P\)まで移動させると(下図)、先の半直線は点\(O\)を中心に\(OX\)から\(OP\)まで回転します。この回転後の半直線\(OP\)を動径(radius)と呼びます。角(angle)とは、半直線が始線\(OX\)から動径\(OP\)まで回転することでできる図形のことです。
円周上の点を時計回り(clockwise)に移動させた場合の角について考えることもできます。具体的には、点\(X\)を円周に沿って時計回りに点\(P\)まで移動させると(下図)、半直線は点\(O\)を中心に始線\(OX\)から動径\(OP\)まで回転します(下図)。このように、動径を時計回りに回転することでできる角を負の角(negative angle)と呼びます。ちなみに、動径を反時計回りに動かすことで得られる角を正の角(positive angle)と呼びます。
度数法
角の大きさを角度(degree)と呼びます。これは、半直線を始線\(OX\)から動径\(OP\)まで回転させたときの回転量に相当します。角度を表現する方法はいくつか存在しますが、私たちに最もなじみ深いのは度数法(degree measure)です。
度数法では、半直線を始線\(OX\)から反時計回りに\(\frac{1}{360}\)回転させて得られる正の角度を\(1\)度と呼び、これを\(1^{\circ }\)と表記します。したがって、半直線を始線\(OX\)から反時計回りに1回転させて得られる角度は\(360^{\circ }\)です。
\(180^{\circ }\)を平角(flat angle)と呼びます。これは半直線を反時計回りに\(\frac{180}{360}=\frac{1}{2}\)回転させて得られる正の角度です(下図)。
\(270^{\circ }\)を三直角(trihedralangle)と呼びます。これは半直線を反時計回りに\(\frac{270}{360}=\frac{3}{4}\)回転させて得られる正の角度です(下図)。
\(360^{\circ }\)を周角(round angle)と呼びます。これは半直線を反時計回りに\(\frac{360}{360}=1\)回転させて得られる正の角度です(下図)。
負の平角\(-180^{\circ }\)は半直線を時計回りに\(\frac{180}{360}=\frac{1}{2}\)回転させて得られる負の角度です(下図)。
上で例として挙げた角度はいずれも半直線を正もしくは負の向き1回転以内回転させることで得られるものですが、一般には、回転を1回転以内にとどめる必要がありません。例えば、反時計回りに2回転した場合の角度は\(720^{\circ }\)、3回転した場合の角度は\(1080^{\circ }\)などとなります。時計回りについても同様です。したがって、角度は任意の実数を値としてとり得ます。
何らかの角度を選ぶと、それに対応する動径\(OP\)が1つだけ定まりますが、その逆は成り立つとは限りません。つまり、何らかの動径\(OP\)を選ぶと、それに対応する角度は一意的には定まりません。実際、動径\(OP\)に対応する角度を\(\theta \)としたとき、自然数\(n\)を任意に選び、動径を反時計回りに\(n\)回転すると動径の位置は\(OP\)のままですが、角度は\(\theta +360n\)に変化します。また、時計回りに\(n\)回転すると動径はやはり\(OP\)のままですが、角度は\(\theta -360n\)に変化します。したがって、\begin{equation*}\theta \pm 360n\quad \left( n\in \mathbb{N} \right)
\end{equation*}などの角度はいずれも同一の動径に対応します。一方、考察対象とする角度\(\theta \)の範囲を、例えば、\begin{equation*}0\leq \theta <360
\end{equation*}に制限すれば、それぞれの角度に動径が1つずつ定まるだけでなく、それぞれの動径に角度が1つずつ定まります。
弧度法
数学では多くの場合、度数法ではなく弧度法(circular measure)を利用します。先ほどと同様、座標平面上に原点\(O\)を中心とする円を描きます。ただし今回は、円の半径は\(1\)であるものとします。このような円を単位円(unit circle)と呼びます。単位円の円周の長さは\(2\pi \)です。
繰り返しになりますが、角とは、半直線が点\(O\)を中心に始線\(OX\)から動径\(OP\)まで回転することでできる図形のことであり、角度とは動径\(OP\)の回転量に相当します。半直線が\(OX\)から\(OP\)まで回転すると単位円上の点は弧\(XP\)の長さだけ移動しますが、動径\(OP\)の回転量(角度)と弧\(XP\)の長さは1対1で対応します。そこで、弧\(XP\)の長さによって動径\(OP\)の回転量(角度)を表現しようとするのが弧度法の考え方です。つまり、弧\(XP\)の長さが\(\theta \)であるとき、動径\(OP\)の回転量(角度)を\(\theta \)で表現するということです。このように、弧\(XP\)の長さ\(\theta \)を角度を表す単位として利用するとき、\(\theta \)をラジアン(radian)と呼びます。ラジアンを表す記号は\(\mathrm{rad}\)ですが、多くの場合、これは省略されます。
単位円の円周の長さは\(2\pi \)であるため、半直線を始線\(OX\)から反時計回りに\(1\)回転させて得られる正の角度は\(2\pi \)ラジアンです。逆に、\(1\)ラジアンとは、半直線を始線\(OX\)から反時計回りに\(\frac{1}{2\pi }\)回転させて得られる正の角度に相当します。
負の角度についても同様に考えます。すなわち、半直線を始線\(OX\)から時計回りに\(1\)回転させて得られる負の角度は\(-2\pi \)ラジアンです。逆に、\(-1\)ラジアンとは、半直線を始線\(OX\)から時計回りに\(\frac{1}{2\pi }\)回転させて得られる負の角度に相当します。
平角\(180^{\circ }\)は半直線を反時計回りに\(\frac{1}{2}\)回転させて得られる正の角度であるため、これは\(\frac{2\pi }{2}=\pi \)ラジアンに相当します(下図)。
三直角\(270^{\circ }\)は半直線を反時計回りに\(\frac{3}{4}\)回転させて得られる正の角度であるため、これは\(\frac{3}{4}\left( 2\pi \right) =\frac{3\pi }{2}\)ラジアンに相当します(下図)。
周角\(360^{\circ }\)は半直線を始線\(OX\)から反時計回りに\(\frac{360}{360}=1\)回転させて得られる正の角度であるため、これは\(2\pi \)ラジアンに相当します(下図)。
負の平角\(-180^{\circ }\)は半直線を時計回りに\(\frac{1}{2}\)回転させて得られる負の角度であるため、これは\(-\frac{2\pi }{2}=-\pi \)ラジアンに相当します(下図)。
上で例として挙げた角度はいずれも半直線を正もしくは負の向き1回転以内回転させることで得られるものですが、一般には、回転を1回転以内にとどめる必要がありません。例えば、反時計回りに2回転した場合の角度は\(4\pi \)ラジアン、3回転した場合の角度は\(6\pi \)ラジアンなどとなります。時計回りについても同様です。したがって、角度は任意の実数を値としてとり得ます。
ラジアンの値を1つ選ぶと、それに対応する動径\(OP\)が1つだけ定まりますが、その逆は成り立つとは限りません。つまり、何らかの動径\(OP\)を選ぶと、それに対応するラジアンは一意的には定まりません。実際、動径\(OP\)に対応するラジアンを\(\theta \)としたとき、自然数\(n\)を任意に選び、動径を反時計回りに\(n\)回転すると動径の位置は\(OP\)のままですが、ラジアンは\(\theta +2n\pi \)に変化します。また、時計回りに\(n\)回転すると動径はやはり\(OP\)のままですが、ラジアンは\(\theta -2n\pi \)に変化します。したがって、\begin{equation*}\theta \pm 2n\pi \quad \left( n\in \mathbb{N} \right)
\end{equation*}などのラジアンはいずれも同一の動径に対応します。一方、考察対象とするラジアン\(\theta \)の範囲を、例えば、\begin{equation*}0\leq \theta <2\pi
\end{equation*}に制限すれば、それぞれのラジアンに動径が1つずつ定まるだけでなく、それぞれの動径にラジアンが1つずつ定まります。
度数法と弧度法の関係
度数法と弧度法の関係を整理します。\(0^{\circ }\)は半直線を始線から動かさない場合の角度であるため、これは\(0\)ラジアンに相当します。つまり、\begin{equation*}0^{\circ }=0\mathrm{rad}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。直角\(90^{\circ }\)は半直線を反時計回りに\(\frac{1}{4}\)回転させて得られる角度ですが、単位円の円周は\(2\pi \)であるため、これは\(2\pi \cdot \frac{1}{4}=\frac{\pi }{2}\)ラジアンに相当します。つまり、\begin{equation*}90^{\circ }=\frac{\pi }{2}\mathrm{rad}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。平角\(180^{\circ }\)は半直線を反時計回りに\(\frac{1}{2}\)回転させて得られる角度ですが、単位円の円周は\(2\pi \)であるため、これは\(2\pi \cdot \frac{1}{2}=\pi \)ラジアンに相当します。つまり、\begin{equation*}180^{\circ }=\pi \mathrm{rad}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。
一般化しましょう。弧度法において\(\theta ^{\circ }\)と表現される角度は半直線を\(\frac{\theta }{360}\)回転させて得られる角度ですが、単位円の円周は\(2\pi \)であるため、これは\(2\pi \cdot \frac{\theta }{360}=\frac{\theta \pi }{180}\)ラジアンに相当します。つまり、\begin{equation*}\theta ^{\circ }=\frac{\theta \pi }{180}\mathrm{rad}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。比例関係より、\begin{eqnarray*}
1^{\circ } &=&\frac{\pi }{180}\mathrm{rad} \\
1\mathrm{rad} &=&\left( \frac{180}{\pi }\right) ^{\circ }
\end{eqnarray*}を得ます。
&&\left( a\right) \ 1^{\circ }=\frac{\pi }{180}\mathrm{rad} \\
&&\left( b\right) \ 1\mathrm{rad}=\left( \frac{180}{\pi }\right) ^{\circ }
\end{eqnarray*}などの関係が成立する。
$$\begin{array}{lcccccccc}
\hline
度数法(度) & 0 & 30 & 45 & 60 & 90 & 180 & 270 & 360 \\ \hline
弧度法(ラジアン) & 0 & \frac{\pi }{6} & \frac{\pi }{4} & \frac{\pi }{3} & \frac{\pi }{2} & \pi & \frac{3\pi }{2} & 2\pi \\ \hline
\end{array}$$
演習問題
&&\left( a\right) \ -250^{\circ } \\
&&\left( b\right) \ 6^{\circ } \\
&&\left( c\right) \ -145^{\circ } \\
&&\left( d\right) \ 870^{\circ } \\
&&\left( e\right) \ 18^{\circ } \\
&&\left( f\right) \ -820^{\circ }
\end{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ 4\pi \\
&&\left( b\right) \ \frac{13\pi }{30} \\
&&\left( c\right) \ -1 \\
&&\left( d\right) \ \frac{3\pi }{16} \\
&&\left( e\right) \ -2.56 \\
&&\left( f\right) \ -\frac{7\pi }{9}
\end{eqnarray*}
プレミアム会員専用コンテンツです
【ログイン】【会員登録】