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有理数ベキ関数の極限

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有理数ベキ関数の極限

有理数ベキ関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。つまり、\(f\)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、自然数\(n\in \mathbb{N} \)および整数\(z\in \mathbb{Z} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{\frac{z}{n}}
\end{equation*}と表されるということです。なお、\(f\)の定義域\(X\)は\(z\)の符号および\(n,z\)の偶奇に依存します。

定義域の内点\(a\in X^{i}\)を任意に選んだとき、\(x\rightarrow a\)の場合に\(f\)は有限な実数へ収束するとともに、その極限は、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) =a^{\frac{z}{n}}
\end{equation*}となります。

命題(有理数ベキ関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、自然数\(n\in \mathbb{N} \)および整数\(z\in \mathbb{Z} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{\frac{z}{n}}
\end{equation*}と表されるものとする。定義域の内点\(a\in X^{i}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) =a^{\frac{z}{n}}
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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例(有理数ベキ関数の極限)
有理数ベキ関数\begin{equation*}
x^{\frac{2}{3}}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、先の命題より、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}x^{\frac{2}{3}}=a^{\frac{2}{3}}
\end{equation*}が成り立ちます。

例(有理数ベキ関数の極限)
有理数ベキ関数\begin{equation*}
x^{\frac{5}{4}}:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。点\(a\in \mathbb{R} _{++}\)を任意に選んだとき、先の命題より、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}x^{\frac{5}{4}}=a^{\frac{5}{4}}
\end{equation*}が成り立ちます。

例(有理数ベキ関数の極限)
有理数ベキ関数\begin{equation*}
x^{-\frac{2}{3}}:\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。点\(a\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)を任意に選んだとき、先の命題より、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}x^{-\frac{2}{3}}=a^{-\frac{2}{3}}
\end{equation*}が成り立ちます。

例(有理数ベキ関数の極限)
有理数ベキ関数\begin{equation*}
x^{-\frac{5}{4}}:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。点\(a\in \mathbb{R} _{++}\)を任意に選んだとき、先の命題より、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}x^{-\frac{5}{4}}=a^{-\frac{5}{4}}
\end{equation*}が成り立ちます。

例(有理数ベキ関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( \sqrt{2}x^{4}+2x^{2}+1\right) ^{\frac{2}{5}}
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は多項式関数\(\sqrt{2}x^{4}+2x^{2}+1\)と有理数ベキ関数\(x^{\frac{2}{5}}\)の合成関数であることに注意してください。点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、多項式関数の極限より、\begin{equation}\lim_{x\rightarrow a}\left( \sqrt{2}x^{4}+2x^{2}+1\right) =\sqrt{2}a^{4}+2a^{2}+1 \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。点\(\sqrt{2}a^{4}+2a^{2}+1\)は関数\(x^{\frac{2}{5}}\)の定義域\(\mathbb{R} \)の内点であるため、有理数ベキ関数の極限より、\begin{equation}\lim_{x\rightarrow \sqrt{2}a^{4}+2a^{2}+1}x^{\frac{2}{5}}=\left( \sqrt{2}a^{4}+2a^{2}+1\right) ^{\frac{2}{5}} \quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立ちます(関数\(x^{\frac{2}{5}}\)は点\(\sqrt{2}a^{4}+2a^{2}+1\)において連続)。以上を踏まえると、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) &=&\lim_{x\rightarrow a}\left( \sqrt{2}x^{4}+2x^{2}+1\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left( \sqrt{2}a^{4}+2a^{2}+1\right) ^{\frac{2}{5}}\quad \because \left(
1\right) ,\left( 2\right) \text{および合成関数の極限}
\end{eqnarray*}となります。

例(有理数ベキ関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( \frac{x^{4}+1}{x^{2}+1}\right) ^{\frac{3}{5}}
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は有理関数\(\frac{x^{4}+1}{x^{2}+1}\)と有理数ベキ関数\(x^{\frac{3}{5}}\)の合成関数であることに注意してください。点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、有理関数の極限より、\begin{equation}\lim_{x\rightarrow a}\left( \frac{x^{4}+1}{x^{2}+1}\right) =\frac{a^{4}+1}{a^{2}+1} \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。点\(\frac{a^{4}+1}{a^{2}+1}\)は関数\(x^{\frac{3}{5}}\)の定義域\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)の内点であるため、有理数ベキ関数の極限より、\begin{equation}\lim_{x\rightarrow \frac{a^{4}+1}{a^{2}+1}}x^{\frac{3}{5}}=\left( \frac{a^{4}+1}{a^{2}+1}\right) ^{\frac{3}{5}} \quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立ちます(関数\(x^{\frac{3}{5}}\)は点\(\frac{a^{4}+1}{a^{2}+1}\)において連続)。以上を踏まえると、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) &=&\lim_{x\rightarrow a}\left( \sqrt{2}x^{4}+2x^{2}+1\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left( \frac{a^{4}+1}{a^{2}+1}\right) ^{\frac{3}{5}}\quad \because \left(
1\right) ,\left( 2\right) \text{および合成関数の極限}
\end{eqnarray*}となります。

例(有理数ベキ関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} _{+}\backslash \left\{ 1\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\frac{x^{\frac{3}{2}}-1}{x^{\frac{1}{2}}-1}
\end{equation*}を定めるものとします。\(x\rightarrow 1\)のときの\(f\)の極限を求めます。そのまま極限をとると、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow 1}f\left( x\right) &=&\lim_{x\rightarrow 1}\left( \frac{x^{\frac{3}{2}}-1}{x^{\frac{1}{2}}-1}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\frac{\lim\limits_{x\rightarrow 1}\left( x^{\frac{3}{2}}-1\right) }{\lim\limits_{x\rightarrow 1}\left( x^{\frac{1}{2}}-1\right) }\quad \because
\text{収束する関数の商} \\
&=&\frac{1-1}{1-1}\quad \because \text{無理関数・有理数ベキ関数の極限} \\
&=&\frac{0}{0}
\end{eqnarray*}と不定形になるため定義不可能です。一方、\begin{eqnarray*}
f\left( x\right) &=&\frac{x^{\frac{3}{2}}-1}{x^{\frac{1}{2}}-1} \\
&=&\frac{\left( \sqrt{x}\right) ^{3}-1}{\sqrt{x}-1} \\
&=&\frac{\left( \sqrt{x}-1\right) \left( x+\sqrt{x}+1\right) }{\sqrt{x}-1}
\end{eqnarray*}と変形できることに注目すると、\begin{eqnarray*}
\lim_{x\rightarrow 1}f\left( x\right) &=&\lim_{x\rightarrow 1}\frac{\left(
\sqrt{x}-1\right) \left( x+\sqrt{x}+1\right) }{\sqrt{x}-1} \\
&=&\lim_{x\rightarrow 1}\left( x+\sqrt{x}+1\right) \\
&=&1+\sqrt{1}+1 \\
&=&3
\end{eqnarray*}となります。

 

有理数ベキ関数の片側極限

片側極限に関しても同様の主張が成り立ちます。

命題(有理数ベキ関数の片側極限)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、自然数\(n\in \mathbb{N} \)および整数\(z\in \mathbb{Z} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{\frac{z}{n}}
\end{equation*}と表されるものとする。以下が成り立つ。

  1. 点\(a\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)が集合\(\left\{ x\in X\ |\ x > a\right\} \)の集積点であるならば、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a+}f\left( x\right) =a^{\frac{z}{n}}\end{equation*}が成り立つ。
  2. 点\(a\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)が集合\(\left\{ x\in X\ |\ x < a\right\} \)の集積点であるならば、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a-}f\left( x\right) =a^{\frac{z}{n}}\end{equation*}が成り立つ。
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有理数ベキ関数\(x^{\frac{z}{n}}\)の形状は\(z\)の符号および\(n,z\)の偶奇に依存するため、\(x\rightarrow 0+\)の場合の右側極限や\(x\rightarrow 0-\)の場合の左側極限もまた、\(z\)の符号および\(n,z\)の偶奇に依存します。

例(有理数ベキ関数の片側極限)
有理数ベキ関数\begin{equation*}
x^{\frac{2}{3}}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。この関数のグラフは以下の通りです。

図:有理数ベキ関数
図:有理数ベキ関数

グラフから明らかであるように、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 0+}f\left( x\right) =\lim_{x\rightarrow 0-}f\left(
x\right) =0
\end{equation*}が成り立ちます(演習問題)。

例(有理数ベキ関数の片側極限)
有理数ベキ関数\begin{equation*}
x^{\frac{5}{4}}:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。この関数のグラフは以下の通りです。

図:有理数ベキ関数
図:有理数ベキ関数

グラフから明らかであるように、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 0+}f\left( x\right) =0
\end{equation*}が成り立ちます(演習問題)。その一方で、\(f\)は\(x<0\)を満たす\(x\)において定義されないため、\(x\rightarrow 0-\)の場合の左側極限は定義不可能です。

例(有理数ベキ関数の片側極限)
有理数ベキ関数\begin{equation*}
x^{-\frac{2}{3}}:\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。この関数のグラフは以下の通りです。

図:有理数ベキ関数
図:有理数ベキ関数

グラフから明らかであるように、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 0+}f\left( x\right) =\lim_{x\rightarrow 0-}f\left(
x\right) =+\infty
\end{equation*}が成り立ちます(演習問題)。

例(有理数ベキ関数の片側極限)
有理数ベキ関数\begin{equation*}
x^{-\frac{5}{4}}:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。この関数のグラフは以下の通りです。

図:有理数ベキ関数
図:有理数ベキ関数

グラフから明らかであるように、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 0+}f\left( x\right) =+\infty
\end{equation*}が成り立ちます(演習問題)。その一方で、\(f\)は\(x\leq 0\)を満たす\(x\)において定義されないため、\(x\rightarrow 0-\)の場合の左側極限は定義不可能です。

 

有理数ベキ関数の無限大における極限

有理数ベキ関数\(x^{\frac{z}{n}}\)の形状は\(z\)の符号および\(n,z\)の偶奇に依存するため、\(x\rightarrow +\infty \)の場合の極限や\(x\rightarrow -\infty \)の場合の極限もまた、\(z\)の符号および\(n,z\)の偶奇に依存します。

例(有理数ベキ関数の無限大における極限)
有理数ベキ関数\begin{equation*}
x^{\frac{2}{3}}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。この関数のグラフは以下の通りです。

図:有理数ベキ関数
図:有理数ベキ関数

グラフから明らかであるように、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow +\infty }f\left( x\right) =\lim_{x\rightarrow -\infty
}f\left( x\right) =+\infty
\end{equation*}が成り立ちます(演習問題)。

例(有理数ベキ関数の無限大における極限)
有理数ベキ関数\begin{equation*}
x^{\frac{5}{4}}:\mathbb{R} _{+}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。この関数のグラフは以下の通りです。

図:有理数ベキ関数
図:有理数ベキ関数

グラフから明らかであるように、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow +\infty }f\left( x\right) =+\infty
\end{equation*}が成り立ちます(演習問題)。その一方で、\(f\)は\(x<0\)を満たす\(x\)において定義されないため、\(x\rightarrow -\infty \)の場合の極限は定義不可能です。

例(有理数ベキ関数の無限大における極限)
有理数ベキ関数\begin{equation*}
x^{-\frac{2}{3}}:\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。この関数のグラフは以下の通りです。

図:有理数ベキ関数
図:有理数ベキ関数

グラフから明らかであるように、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow +\infty }f\left( x\right) =\lim_{x\rightarrow -\infty
}f\left( x\right) =0
\end{equation*}が成り立ちます(演習問題)。

例(有理数ベキ関数の無限大における極限)
有理数ベキ関数\begin{equation*}
x^{-\frac{5}{4}}:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。この関数のグラフは以下の通りです。

図:有理数ベキ関数
図:有理数ベキ関数

グラフから明らかであるように、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow +\infty }f\left( x\right) =0
\end{equation*}が成り立ちます(演習問題)。その一方で、\(f\)は\(x\leq 0\)を満たす\(x\)において定義されないため、\(x\rightarrow -\infty \)の場合の極限は定義不可能です。

 

演習問題

問題(有理数ベキ関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} _{+}\backslash \left\{ 1\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\frac{x^{\frac{3}{2}}+1}{x-1}
\end{equation*}を定めるものとします。\(x\rightarrow 1\)の場合の\(f\)の極限を求めてください。
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問題(有理数ベキ関数の極限)
以下の極限を求めてください。\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 1}\left( \frac{x^{\frac{1}{3}}-1}{x-1}\right)
\end{equation*}
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