上に有界な関数
実数空間\(\mathbb{R} \)の空ではない部分集合\(A\)が与えられたとき、ある実数\(U\)が\(A\)の任意の要素以上である場合には、つまり、\begin{equation*}\exists U\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in A:x\leq U
\end{equation*}が成り立つならば、\(U\)を\(A\)の上界と呼びます。また、\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合\(A\)が上界を持つとき、\(A\)は上に有界であると言います。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の値域、すなわち\(f\left(x\right) \)がとり得る値からなる集合\begin{equation*}f\left( X\right) =\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in X\right\}
\end{equation*}は\(\mathbb{R} \)の空ではない部分集合であるため、上に有界であるか検討できます。関数\(f\)の値域\(f\left( X\right) \)が上に有界である場合には、すなわち、\begin{equation*}\exists U\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in X:f\left( x\right) \leq U
\end{equation*}が成り立つ場合には、この関数\(f\)は上に有界である(bounded from above)であると言います。また、値域\(f\left( X\right) \)の上界を関数\(f\)の上界(upper bound)と呼びます。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の値域は、\begin{eqnarray*}f\left( \mathbb{R} \right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\left\{ -x^{2}\in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&(-\infty ,0] \end{eqnarray*}であるため、\begin{equation*}
\forall x\in \mathbb{R} :f\left( x\right) \leq 0
\end{equation*}が成り立ち、したがって\(f\)は上に有界です。\(0\)は\(f\)の上界の1つですが、\(0\)以上の任意の実数もまた\(f\)の上界です。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が上に有界であることとは、\begin{equation*}\exists U\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in X:f\left( x\right) \leq U
\end{equation*}が成り立つことを意味します。したがって、関数\(f\)が上に有界ではないこととは、上の命題の否定に相当する以下の命題\begin{equation*}\forall U\in \mathbb{R} ,\ \exists x\in X:f\left( x\right) >U
\end{equation*}が成り立つことを意味します。つまり、どのような実数を選んだ場合でも、それより大きい実数が\(f\)の値域の中に存在する場合、その関数は上に有界ではありません。
関数は上に有界であるとは限りません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の値域は、\begin{eqnarray*}f\left( (0,1]\right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in (0,1]\right\} \\
&=&\left\{ \frac{1}{x}\in \mathbb{R} \ |\ x\in (0,1]\right\} \\
&=&[1,+\infty )
\end{eqnarray*}であるため、\(f\)は上に有界ではありません。実際、\(U\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(0\)に十分近い\(x\in (0,1]\)を選べば、\begin{equation*}\frac{1}{x}>U
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
f\left( x\right) >U
\end{equation*}が成り立ちます。以上より、\(f\)が上に有界ではないことが明らかになりました。
同一の関数を対象としていても、定義域を変えればその関数は上に有界になったり、上に有界にならなかったりします。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように\(f\)は上に有界ではありません。一方、\(0<a<1\)を満たす実数\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、この関数の定義域を\(\left[ a,1\right] \)に縮小して、\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset \left[ a,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}とすると、\(f\)の値域は、\begin{eqnarray*}f\left( \left[ a,1\right] \right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in \left[ a,1\right] \right\} \\
&=&\left\{ \frac{1}{x}\in \mathbb{R} \ |\ x\in \left[ a,1\right] \right\} \\
&=&\left[ 1,\frac{1}{a}\right] \end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
\forall x\in \left[ a,1\right] :f\left( x\right) \leq \frac{1}{a}
\end{equation*}が成り立ち、したがって\(f\)は上に有界になります。
下に有界な関数
実数空間\(\mathbb{R} \)の空ではない部分集合\(A\)が与えられたとき、ある実数\(L\)が\(A\)の任意の要素以下である場合には、つまり、\begin{equation*}\exists L\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in A:L\leq x
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(L\)を\(A\)の下界と呼びます。また、\(\mathbb{R} \)の非空な部分集合\(A\)が下界を持つとき、\(A\)は下に有界であると言います。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)の値域、すなわち\(f\left(x\right) \)がとり得る値からなる集合\begin{equation*}f\left( X\right) =\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in X\right\}
\end{equation*}は\(\mathbb{R} \)の空ではない部分集合であるため、下に有界であるか検討できます。関数\(f\)の値域\(f\left( X\right) \)が下に有界である場合には、すなわち、\begin{equation*}\exists L\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in X:L\leq f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、この関数\(f\)は下に有界である(bounded from below)であると言います。また、値域\(f\left( X\right) \)の下界を関数\(f\)の下界(lower bound)と呼びます。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の値域は、\begin{eqnarray*}f\left( \mathbb{R} \right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\left\{ x^{2}\in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&[0,+\infty )
\end{eqnarray*}であるため、\begin{equation*}
\forall x\in \mathbb{R} :f\left( x\right) \geq 0
\end{equation*}が成り立ち、したがって\(f\)は下に有界です。\(0\)は\(f\)の下界の1つですが、\(0\)以下の任意の実数もまた\(f\)の下界です。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が下に有界であることとは、\begin{equation*}\exists L\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in X:L\leq f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つことを意味します。したがって、関数\(f\)が下に有界ではないこととは、上の命題の否定に相当する以下の命題\begin{equation*}\forall L\in \mathbb{R} ,\ \exists x\in X:L>f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つことを意味します。つまり、どのような実数を選んだ場合でも、それより小さい実数が\(f\)の値域の中に存在する場合、その関数は下に有界ではありません。
関数は下に有界であるとは限りません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の値域は、\begin{eqnarray*}f\left( [-1,0)\right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in \lbrack -1,0)\right\} \\
&=&\left\{ \frac{1}{x}\in \mathbb{R} \ |\ x\in \lbrack -1,0)\right\} \\
&=&(-\infty ,-1] \end{eqnarray*}であるため、\(f\)は下に有界ではありません。実際、\(L\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(0\)に十分近い\(x\in \lbrack -1,0)\)を選べば、\begin{equation*}L>\frac{1}{x}
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
L>f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立ちます。以上より、\(f\)が下に有界ではないことが明らかになりました。
同一の関数を対象としていても、定義域を変えればその関数は下に有界になったり、下に有界にならなかったりします。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように\(f\)は上に有界ではありません。一方、\(-1<a<0\)を満たす実数\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、この関数の定義域を\(\left[ -1,a\right] \)に縮小して、\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset \left[ -1,a\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}とすると、\(f\)の値域は、\begin{eqnarray*}f\left( \left[ -1,a\right] \right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in \left[ -1,a\right] \right\} \\
&=&\left\{ \frac{1}{x}\in \mathbb{R} \ |\ x\in \left[ -1,a\right] \right\} \\
&=&\left[ \frac{1}{a},-1\right] \end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
\forall x\in \left[ -1,a\right] :\frac{1}{a}\leq f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立ち、したがって\(f\)は下に有界になります。
有界な関数
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が上に有界かつ下に有界である場合には、すなわち、\begin{equation*}\exists U\in \mathbb{R} ,\ \exists L\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in X:L\leq f\left( x\right) \leq U
\end{equation*}が成り立つ場合には、この関数\(f\)は有界である(bounded)と言います。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の値域は、\begin{eqnarray*}f\left( \mathbb{R} \right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&\left\{ \frac{1}{x^{2}+1}\in \mathbb{R} \ |\ x\in \mathbb{R} \right\} \\
&=&(0,1] \end{eqnarray*}であるため、\begin{equation*}
\forall x\in \mathbb{R} :0\leq f\left( x\right) \leq 1
\end{equation*}が成り立ち、したがって\(f\)は有界です。
関数\(f\)が有界ではないこととは、この関数が上に有界でないか、下に有界でないか、その少なくとも一方であることを意味します。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したようにこの関数は上に有界ではないため有界ではありません。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したようにこの関数は下に有界ではないため有界ではありません。
上に局所有界な関数
関数が上に有界でない場合においても、その定義域を何らかの集合に制限することによりその関数が上に有界になることがあります。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられている状況において点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選びます。\(f\)はこの点\(a\)において定義されている必要はありませんが、点\(a\)の周辺の任意の点において定義されているものとします。その上で、点\(a\)を中心とする何らかの開近傍\begin{equation*}N_{\varepsilon }\left( a\right) =\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right)
\end{equation*}が存在して、この近傍と\(f\)の定義域\(X\)の共通部分\begin{equation*}N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X
\end{equation*}上において\(f\)が上に有界である場合には、すなわち、\begin{eqnarray*}f\left( N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X\right) &=&\left\{ f\left(
x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X\right\} \\
&=&\left\{ f\left( x\right) \in X\ |\ x\in \left( a-\varepsilon
,a+\varepsilon \right) \right\}
\end{eqnarray*}が上に有界になるような正の実数\(\varepsilon >0\)が存在する場合には、\(f\)は点\(a\)の周辺において上に局所有界である(locally bounded from above around \(a\))と言います。
改めて整理すると、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が点\(a\)の周辺において上に局所有界であることとは、\begin{equation*}\exists \varepsilon >0,\ \exists U\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X:f\left( x\right) \leq
U
\end{equation*}が成り立つこととして定義されます。
特に、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域\(X\)上の任意の点の周辺において上に局所有界である場合には、すなわち、\begin{equation*}\forall a\in X,\ \exists \varepsilon >0,\ \exists U\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X:f\left( x\right) \leq
U
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(f\)は\(X\)上において上に局所有界である(locally bounded from above on \(X\))と言います。
\end{equation*}を定めるものとします。この関数の値域は、\begin{equation*}
f\left( \mathbb{R} \right) =\mathbb{R} \end{equation*}であるため、\(f\)は上に有界ではありません。一方、点\(a\in \mathbb{R} \)と正の実数\(\varepsilon >0\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}f\left( N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap \mathbb{R} \right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap \mathbb{R} \right\} \\
&=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ x\in \left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right) \right\} \\
&=&\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right)
\end{eqnarray*}となります。したがって、\begin{equation*}
\exists \varepsilon >0,\ \forall x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap \mathbb{R} :f\left( x\right) \leq a+\varepsilon
\end{equation*}が成り立つため、\(f\)は点\(a\)の周辺において上に局所有界です。\(\mathbb{R} \)上の任意の点において同様であるため、\(f\)は\(\mathbb{R} \)上で上に局所有界です。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が点\(a\)の周辺において上に局所有界であることとは、\begin{equation*}\exists \varepsilon >0,\ \exists U\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X:f\left( x\right) \leq
U
\end{equation*}が成り立つこととして定義されます。したがって、\(f\)が点\(a\)の周辺において上に局所有界ではないこととは、上の命題の否定である、\begin{equation*}\forall \varepsilon >0,\ \forall U\in \mathbb{R} ,\ \exists x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X:f\left( x\right) >U
\end{equation*}が成り立つことを意味します。
関数は上に局所有界であるとは限りません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるものとします。この関数は点\(0\)の周辺において上に局所有界ではありません。実際、\(\varepsilon >0\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}f\left( N_{\varepsilon }\left( 0\right) \cap \left( \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \right) \right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in N_{\varepsilon }\left( 0\right) \cap \left( \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \right) \right\} \\
&=&\left\{ \frac{1}{x}\in \mathbb{R} \ |\ x\in \left( -\varepsilon ,0\right) \cup \left( 0,\varepsilon \right)
\right\} \\
&=&\left( -\infty ,0\right) \cup \left( 0,+\infty \right)
\end{eqnarray*}であるため、\(U\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\begin{equation*}\exists x\in N_{\varepsilon }\left( 0\right) \cap \left( \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \right) :f\left( x\right) >U
\end{equation*}が成り立つからです。
下に局所有界な関数
関数が下に有界でない場合においても、その定義域を何らかの集合に制限することによりその関数が下に有界になることがあります。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられている状況において点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選びます。\(f\)はこの点\(a\)において定義されている必要はありませんが、点\(a\)の周辺の任意の点において定義されているものとします。その上で、点\(a\)を中心とする何らかの開近傍\begin{equation*}N_{\varepsilon }\left( a\right) =\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right)
\end{equation*}が存在して、この近傍と\(f\)の定義域\(X\)の共通部分\begin{equation*}N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X
\end{equation*}上において\(f\)が下に有界である場合には、すなわち、\begin{eqnarray*}f\left( N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X\right) &=&\left\{ f\left(
x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X\right\} \\
&=&\left\{ f\left( x\right) \in X\ |\ x\in \left( a-\varepsilon
,a+\varepsilon \right) \right\}
\end{eqnarray*}が下に有界になるような正の実数\(\varepsilon >0\)が存在する場合には、\(f\)は点\(a\)の周辺において下に局所有界である(locally bounded from below around \(a\))と言います。
改めて整理すると、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が点\(a\)の周辺において下に局所有界であることとは、\begin{equation*}\exists \varepsilon >0,\ \exists L\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X:L\leq f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つこととして定義されます。
特に、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域\(X\)上の任意の点の周辺において下に局所有界である場合には、すなわち、\begin{equation*}\forall a\in X,\ \exists \varepsilon >0,\ \exists L\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X:L\leq f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(f\)は\(X\)上において下に局所有界である(locally bounded from below on \(X\))と言います。
\end{equation*}を定めるものとします。この関数の値域は、\begin{equation*}
f\left( \mathbb{R} \right) =\mathbb{R} \end{equation*}であるため、\(f\)は下に有界ではありません。一方、点\(a\in \mathbb{R} \)と正の実数\(\varepsilon >0\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}f\left( N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap \mathbb{R} \right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap \mathbb{R} \right\} \\
&=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ x\in \left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right) \right\} \\
&=&\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right)
\end{eqnarray*}となります。したがって、\begin{equation*}
\exists \varepsilon >0,\ \forall x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap \mathbb{R} :a-\varepsilon \leq f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つため、\(f\)は点\(a\)の周辺において下に局所有界です。\(\mathbb{R} \)上の任意の点において同様であるため、\(f\)は\(\mathbb{R} \)上で下に局所有界です。
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が点\(a\)の周辺において下に局所有界であることとは、\begin{equation*}\exists \varepsilon >0,\ \exists L\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X:L\leq f\left(
x\right)
\end{equation*}が成り立つこととして定義されます。したがって、\(f\)が点\(a\)の周辺において下に局所有界ではないこととは、上の命題の否定である、\begin{equation*}\forall \varepsilon >0,\ \forall L\in \mathbb{R} ,\ \exists x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X:L>f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つことを意味します。
関数は下に局所有界であるとは限りません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるものとします。この関数は点\(0\)の周辺において下に局所有界ではありません。実際、\(\varepsilon >0\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}f\left( N_{\varepsilon }\left( 0\right) \cap \left( \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \right) \right) &=&\left\{ f\left( x\right) \in \mathbb{R} \ |\ x\in N_{\varepsilon }\left( 0\right) \cap \left( \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \right) \right\} \\
&=&\left\{ \frac{1}{x}\in \mathbb{R} \ |\ x\in \left( -\varepsilon ,0\right) \cup \left( 0,\varepsilon \right)
\right\} \\
&=&\left( -\infty ,0\right) \cup \left( 0,+\infty \right)
\end{eqnarray*}であるため、\(L\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\begin{equation*}\exists x\in N_{\varepsilon }\left( 0\right) \cap \left( \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \right) :L>f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つからです。
局所有界な関数
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が点\(a\)の周辺において上に局所有界かつ下に局所有界である場合には、すなわち、\begin{equation*}\exists \varepsilon >0,\ \exists U\in \mathbb{R} ,\ \exists L\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X:L\leq f\left(
x\right) \leq U
\end{equation*}が成り立つ場合には、この関数は点\(a\)の周辺において局所有界である(locally bounded around \(a\))と言います。
特に、関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定義域\(X\)上の任意の点の周辺において上に局所有界かつ下に局所有界である場合には、すなわち、\begin{equation*}\forall a\in X,\ \exists \varepsilon >0,\ \exists U\in \mathbb{R} ,\ \exists L\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \cap X:L\leq f\left(
x\right) \leq U
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(f\)は\(X\)上において局所有界である(locally bounded on \(X\))と言います。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、この関数は上に有界ではなく下に有界でもないため有界ではありません。その一方で、この関数は\(\mathbb{R} \)上において上に局所有界かつ下に局所有界であるため\(\mathbb{R} \)上において局所有界です。
関数は局所有界であるとは限りません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、この関数は点\(0\)の周辺において上に局所有界ではなく、下に局所有界でもありません。したがって、この関数は点\(0\)の周辺において局所有界ではなく、したがって定義域\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)上において局所有界ではありません。
有界関数と局所有界関数の関係
上に有界な関数は定義域上において上に局所有界です。
先の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、定義域上で上に局所有界な関数は上に有界であるとは限りません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、この関数\(f\)は上に有界ではありませんが、\(\mathbb{R} \)上で上に局所有界です。
下に有界な関数は定義域上において下に局所有界です。
先の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、定義域上で下に局所有界な関数は下に有界であるとは限りません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、この関数\(f\)は下に有界ではありませんが、\(\mathbb{R} \)上で下に局所有界です。
有界な関数は定義域上において局所有界です。
先の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、定義域上で局所有界な関数は有界であるとは限りません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように、この関数\(f\)は有界ではありませんが、\(\mathbb{R} \)上で局所有界です。
局所有界関数は有界であるとは限らないことが明らかになりました。ただし、局所有界関数の定義域がコンパクト集合である場合には、その関数は有界であることが保証されます。証明ではカントールの縮小区間定理を利用します。
有限な関数
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が定める値がいずれも有限な実数である場合には、すなわち、\begin{equation*}\forall x\in X:f\left( x\right) \in \mathbb{R} \end{equation*}を満たす場合には、今関数\(f\)は有限である(finite)と言います。
関数が有限であることと有界であることの間に何らかの違いはあるのでしょうか。以下は有限である一方で有界ではない関数の例です。
\end{equation*}を定めるものとします。まず、\begin{equation*}
\forall x\in \mathbb{R} :x\in \mathbb{R} \end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\forall x\in \mathbb{R} :f\left( x\right) \in \mathbb{R} \end{equation*}が成り立つため\(f\)は有限です。その一方で、先に示したようにこの関数\(f\)は有界ではありません。
有限な関数は有界であるとは限らないことが明らかになりました。その一方で、有界な関数は有限であることが保証されます。
演習問題
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)が有界であることを示してください。
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