被覆という概念を解説した上で、実数の部分集合がコンパクト集合であることの意味を定義します。
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被覆

\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)に対して\(\mathbb{R}\)の部分集合族\(\{A_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)が存在して、\begin{equation*}
A\subset \bigcup_{\lambda \in \Lambda }A_{\lambda }
\end{equation*}が成り立つ場合には、すなわち\(\{A_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)に属する集合によって\(A\)を完全に覆うことができる場合には\(\{A_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)を\(A\)の被覆(covering)と呼びます。またこのとき、\(\{A_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)は\(A\)を被覆する(cover)とも言います。

例(被覆)
\(\mathbb{R}\)の部分集合である区間\(A=\left( 0,3\right) \)が与えられたとき、以下の 3 つの\(\mathbb{R}\)の部分集合について考えます。\begin{equation*}
A_{1}=\left( 0,1\right) ,\quad A_{2}=\left( \frac{1}{2},2\right) ,\quad A_{3}=\left( \frac{3}{2},\frac{7}{2}\right)
\end{equation*}\(\mathbb{R}\)の部分集合族\(\{A_{1},A_{2},A_{3}\}\)については、\begin{equation*}
A_{1}\cup A_{2}\cup A_{3}=\left( 0,\frac{7}{2}\right)
\end{equation*}となるため、\(\{A_{1},A_{2},A_{3}\}\)は\(A\)を被覆します。一方、\(\mathbb{R}\)の部分集合族\(\{A_{1},A_{3}\}\)については、\begin{equation*}
A_{1}\cup A_{3}=\left( 0,1\right) \cup \left( \frac{3}{2},\frac{7}{2}\right)
\end{equation*}となりますが、例えば\(\frac{5}{4}\in A\)かつ\(\frac{5}{4}\not\in A_{1}\cup A_{3}\)が成り立つため、\(\{A_{1},A_{3}\}\)は\(A\)を被覆しません。

\(\mathbb{R}\)は\(\mathbb{R}\)自身の部分集合であるため、\(\mathbb{R}\)の被覆可能性を考えることもできます。具体的には、\(\mathbb{R}\)の部分集合族\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }\)が\(\mathbb{R}\)の被覆であることは、\begin{equation*}
\mathbb{R}\subset \bigcup_{\lambda \in \Lambda }A_{\lambda }
\end{equation*}が成り立つことを意味します。他方で\(\mathbb{R}\)の任意の部分集合族\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }\)に関しては、任意の\(\lambda \in \Lambda \)について\(A_{\lambda }\subset \mathbb{R}\)であるため、\begin{equation*}
\bigcup_{\lambda \in \Lambda }A_{\lambda }\subset \mathbb{R}
\end{equation*}は常に成り立ちます。以上を踏まえると、\(\mathbb{R}\)が何らかの部分集合族\(\{A_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)によって被覆されることとは、\begin{equation*}
\mathbb{R}=\bigcup_{\lambda \in \Lambda }A_{\lambda }
\end{equation*}が成り立つこととして表現されます。つまり、\(\{A_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)の和集合が\(\mathbb{R}\)と一致する場合に、そしてその場合にのみ、\(\mathbb{R}\)は\(\{A_{\lambda }\}_{\lambda \in \Lambda }\)によって被覆されます。

 

可算被覆と有限被覆

\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)が可算個の\(\mathbb{R}\)の部分集合からなる部分集合族\(\{A_{i}\}_{i\in \mathbb{N}}\)によって被覆されるとき、すなわち、\begin{equation*}
A\subset \bigcup_{i=1}^{\infty }A_{i}
\end{equation*}が成り立つ場合には、この被覆\(\{A_{i}\}_{i\in \mathbb{N}}\)を\(A\)の可算被覆(countable covering)と呼びます。またこのとき、\(\left\{ A_{i}\right\} _{i\in \mathbb{N}}\)は\(A\)を可算被覆する(countable cover)と言います。

例(可算被覆)
\(\mathbb{R}\)の部分集合である区間\(A=\left( 0,1\right) \)が与えられたとき、\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A_{i}\)が、\begin{equation*}
A_{i}=\left( \frac{1}{i+1},\frac{2}{i+1}\right)
\end{equation*}として与えられる加算部分集合族\(\{A_{i}\}_{i\in \mathbb{N}}\)については、\begin{equation*}
\bigcup_{i=1}^{\infty }A_{i}=\bigcup_{i=1}^{\infty }\left( \frac{1}{i+1},\frac{2}{i+1}\right) =\left( 0,1\right)
\end{equation*}となるため、\(\{A_{i}\}_{i\in \mathbb{N}}\)は\(A\)の可算被覆です。

\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)が有限個の\(\mathbb{R}\)の部分集合からなる部分集合族\(\{A_{i}\}_{i=1}^{n}\)によって被覆されるとき、すなわち、\begin{equation*}
A\subset \bigcup_{i=1}^{n}A_{i}
\end{equation*}が成り立つ場合には、この被覆\(\{A_{i}\}_{i=1}^{n}\)を\(A\)の有限被覆(finite covering)と呼びます。またこのとき、\(\left\{ A_{i}\right\} _{i=1}^{n}\)は\(A\)を有限被覆する(finite cover)と言います。

例(有限被覆)
\(\mathbb{R}\)の部分集合である区間\(A=\left( 0,3\right) \)が与えられたとき、以下の 3 つの\(\mathbb{R}\)の部分集合\begin{equation*}
A_{1}=\left( 0,1\right) ,\quad A_{2}=\left( \frac{1}{2},2\right) ,\quad A_{3}=\left( \frac{3}{2},\frac{7}{2}\right)
\end{equation*}からなる部分集合族\(\{A_{1},A_{2},A_{3}\}\)については、\begin{equation*}
A_{1}\cup A_{2}\cup A_{3}=\left( 0,\frac{7}{2}\right)
\end{equation*}となるため、\(\{A_{1},A_{2},A_{3}\}\)は\(A\)の有限被覆です。

 

部分被覆

\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)の被覆\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }\)に対して、やはり\(A\)の被覆である部分集合族が存在する場合には、すなわち、ある\(M\subset \Lambda \)が存在して、\begin{equation*}
A\subset \bigcup_{\lambda \in M}A_{\lambda }
\end{equation*}が成り立つ場合には、このような\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }\)の部分集合族\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in M}\)を\(A\)の部分被覆(subcovering)と呼びます。特に、部分被覆が有限個の集合からなる集合族である場合には、それを有限部分被覆(finite subcovering)と呼びます。

\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)の被覆\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }\)に部分被覆\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in M}\)が存在することとは、\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }\)に属する無限個の集合によって\(A\)を覆ったつもりでも、実は、それらのうちの有限個もしくは無限個の集合によって\(A\)を覆えているということを意味します。

例(部分被覆)
\(\mathbb{R}\)の部分集合である区間\(A=\left( 0,2\right) \)が与えられたとき、以下の 3 つの\(\mathbb{R}\)の部分集合について考えます。\begin{equation*}
A_{1}=\left( 0,1\right) ,\quad A_{2}=\left( \frac{1}{2},2\right) ,\quad A_{3}=\left( \frac{1}{2},\frac{3}{2}\right)
\end{equation*}\(\mathbb{R}\)の部分集合族\(\{A_{1},A_{2},A_{3}\}\)については、\begin{equation*}
A_{1}\cup A_{2}\cup A_{3}=\left( 0,\frac{3}{2}\right)
\end{equation*}となるため、\(\{A_{1},A_{2},A_{3}\}\)は\(A\)を被覆します。しかし実は、その部分集合族\(\{A_{1},A_{3}\}\)に関して、\begin{equation*}
A_{1}\cup A_{3}=\left( 0,\frac{3}{2}\right)
\end{equation*}となるため、\(\{A_{1},A_{3}\}\)もまた\(A\)を被覆します。つまり、\(\{A_{1},A_{3}\}\)は\(A\)を覆う\(\{A_{1},A_{2},A_{3}\}\)の部分被覆です。

 

コンパクト集合

\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)が与えられたとき、その被覆\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }\)を任意に選びます。ただし、任意の\(\lambda \in \Lambda \)について\(A_{\lambda }\)は\(\mathbb{R}\)における開集合でなければなりません。このような被覆\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }\)を\(A\)の開被覆(open covering)と呼びます。話を戻しますが、\(A\)の開被覆\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }\)を任意に選んだとき、それに対して必ず有限部分被覆が存在する場合には、\(A\)を\(\mathbb{R}\)のコンパクト集合(compact set)と呼びます。改めて定義すると、\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)がコンパクト集合であるとは、\begin{equation*}
A\subset \bigcup_{\lambda \in \Lambda }A_{\lambda }
\end{equation*}を満たす\(\mathbb{R}\)の開集合族\(\{A\}_{\lambda \in \Lambda }\)を任意に選んだときに、添字集合\(\lambda \)の中から有限個の添字\(\lambda _{1},\cdots ,\lambda _{n}\in \Lambda \)を選んできて、\begin{equation*}
A\subset \bigcup_{i=1}^{n}A_{\lambda _{i}}
\end{equation*}とすることができることを意味します。

つまり、\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)がコンパクト集合であるとは、無限個の\(\mathbb{R}\)の開集合によって\(A\)を覆ったつもりでも、実はそれらの中の有限個の開集合によって\(A\)が覆えていることを意味します。ただし、\(A\)がコンパクト集合であるためには\(A\)の「任意の」開被覆に対してこのような操作が可能でなければならないことに留意する必要があります。実際、\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)を任意に選んだとき、これに対して\(A\subset \mathbb{R}\)が成り立ちますが、\(\mathbb{R}\)自身は\(\mathbb{R}\)における開集合であるため、\(\{\mathbb{R}\}\)は\(A\)の開被覆です。さらに\(\{\mathbb{R}\}\)は\(\{\mathbb{R}\}\)自身の有限部分被覆であることから、\(\{\mathbb{R}\}\)は常に先述の条件を満たす開被覆となります。\(A\)がコンパクト集合であることを示すためには、\(A\)の開被覆の中に有限部分被覆を持つものが存在することを言うのではなく、\(A\)の任意の開被覆が有限部分被覆を持つことを言う必要があります。逆に、\(A\)がコンパクト集合でないことを示すためには、\(A\)の開被覆の中に有限部分被覆を持たないものが存在することを言えればよいということになります。

ちなみに、\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)が開被覆によって覆われる場合でも、この開被覆は有限部分被覆を持つとは限らないことを以下の例を通じて示しておきます。したがってコンパクト集合の定義は有効です。

例(有限部分被覆を持たない開被覆)
\(\mathbb{R}\)の部分集合である区間\(\left( 0,1\right) \)について考えます。可算集合族\(\{A_{i}\}_{i\in \mathbb{N}}\)が、\begin{equation*}
A_{i}=\left( \frac{1}{i+1},\frac{1}{i}\right) \quad \left( i\in \mathbb{N}\right)
\end{equation*}と定義されるとき、その和集合は、\begin{equation*}
\bigcup\limits_{i\in \mathbb{N}}A_{i}=\bigcup\limits_{i\in \mathbb{N}}\left( \frac{1}{i+1},\frac{1}{i}\right) =\left( 0,1\right)
\end{equation*}となるため、この\(\{A_{i}\}_{i\in \mathbb{N}}\)は\(\left( 0,1\right) \)の被覆です。さらに\(\mathbb{R}\)において開区間は開集合となるため、この\(\{A_{i}\}_{i\in \mathbb{N}}\)は\(A\)の開被覆です。しかし、\(\left( 0,1\right) \)は有限個の開区間\(\left( \frac{1}{i+1},\frac{1}{i}\right) \ \left( i\in \mathbb{N}\right) \)によって覆うことはできないため、\(\{A_{i}\}_{i\in \mathbb{N}}\)は有限被覆を持ちません。したがって\(\left( 0,1\right) \)は\(\mathbb{R}\)のコンパクト集合ではありません。以上の事実の細かい証明は演習問題とします。

実数の部分集合がコンパクト集合であることを示すためには、その集合の任意の開被覆が有限部分被覆を持つことを示す必要があり、その手続きは面倒かつ困難であるように思われます。そこで次回は、このような問題を解決するハイネ・ボレルの被覆定理について学びます。

次回はハイネ・ボレルの被覆定理について解説します。
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