実数空間における稠密部分集合
実数空間の部分集合\(X\subset \mathbb{R} \)が与えられた状況において、さらにその部分集合\(A\subset X\)を選びます。つまり、\begin{equation*}A\subset X\subset \mathbb{R} \end{equation*}です。\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)の閉包は\(A\)を部分集合として持つため、\begin{equation*}A\subset A^{a}
\end{equation*}が成り立つことは確定していますが、さらに、\begin{equation*}
A\subset X\subset A^{a}
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(A\)は\(X\)の中で稠密(\(A\) is dense in \(X\))であるとか、\(A\)は\(X\)の稠密部分集合(\(A\ \)is a dense subset of \(X\))であるなどと言います。ただし、\(A\subset X\)である状況を想定しているため、先の条件は、\begin{equation*}X\subset A^{a}
\end{equation*}と必要十分です。
\end{equation*}が明らかに成り立ちますが、以上の事実は\(A\)は自身の稠密部分集合であることを意味します。
\(\mathbb{R} \)は自身の部分集合であるため、集合\(A\subset \mathbb{R} \)が与えられたとき、これが\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合であるか検討できます。稠密部分集合の定義より、これは、\begin{equation*}A\subset \mathbb{R} \subset A^{a}
\end{equation*}が成り立つことを意味します。ただし、\(A\subset \mathbb{R} \)は明らかに成り立つため、以上の条件は、\begin{equation*}\mathbb{R} \subset A^{a}\end{equation*}と必要十分です。さらに、\(A^{a}\subset \mathbb{R} \)が明らかに成り立つため、以上の条件は、\begin{equation*}A^{a}=\mathbb{R} \end{equation*}と必要十分です。つまり、集合\(A\)が\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合であることは、\(A\)の閉包が\(\mathbb{R} \)と一致することと必要十分です。
以下は\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合の例です。
\(\mathbb{R} \)の部分集合は\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合であるとは限りません。以下の例より明らかです。
数列を用いた稠密部分集合の定義
実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)と点\(a\in \mathbb{R} \)が与えられたとき、\(A\)の点を項とするとともに点\(a\)へ収束する数列が存在することは、\(a\)が\(A\)の触点であるための必要条件です。以上の事実を踏まえると、稠密部分集合であることの意味を数列を用いて以下のように表現できます。
集合\(A\)が集合\(X\)の稠密部分集合であるものとします。点\(x\in X\)を任意に選んだとき、先の命題より、\(A\)の点を項とするとともに点\(x\)へ収束する数列\(\left\{a_{n}\right\} \)が存在します。数列の極限の定義より、極限\(x\)からいくらでも近い場所に数列\(\left\{ a_{n}\right\} \)の項が無数に存在します。つまり、\(A\)が\(X\)の稠密部分集合である場合には、\(X\)の点\(x\)を任意に選んだとき、その点\(x\)からいくらでも近い場所に\(A\)の点が無数に存在します。稠密部分集合と呼ばれる理由は以上の通りです。
先の命題を踏まえると、\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合であることの意味を数列を用いて以下のように表現できます。
集合\(A\)が\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合であるものとします。実数\(x\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、先の命題より、\(A\)の点を項とするとともに点\(x\)へ収束する数列\(\left\{ a_{n}\right\} \)が存在します。数列の極限の定義より、極限\(x\)からいくらでも近い場所に数列\(\left\{ a_{n}\right\} \)の項が無数に存在します。つまり、\(A\)が\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合である場合には、実数\(x\)を任意に選んだとき、\(x\)からいくらでも近い場所に\(A\)の点が無数に存在します。
近傍系を用いた稠密集合の定義
実数空間の点\(a\in \mathbb{R} \)と正の実数\(\varepsilon >0\)がそれぞれ与えられたとき、点\(a\)を中心とする半径\(\varepsilon \)の近傍は、\begin{eqnarray*}N_{\varepsilon }\left( a\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ \left\vert x-a\right\vert <\varepsilon \right\} \\
&=&\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right)
\end{eqnarray*}と定義される\(\mathbb{R} \)の部分集合です。点\(a\)の近傍をすべて集めてることにより得られる\(\mathbb{R} \)の部分集合族を点\(a\)の近傍系と呼び、これを、\begin{equation*}N\left( a\right) =\left\{ N_{\varepsilon }\left( a\right) \ |\ 0<\varepsilon
<+\infty \right\}
\end{equation*}で表記します。点\(a\in \mathbb{R} \)に応じて中心が異なる様々な近傍系\(N\left( a\right) \)が得られます。そこで、\(\mathbb{R} \)上のすべての点の近傍系からなる集合族を、\begin{equation*}\mathcal{N}=\left\{ N\left( a\right) \ |\ a\in \mathbb{R} \right\}
\end{equation*}で表記し、これを\(\mathbb{R} \)の近傍系と呼びます。
実数空間の部分集合\(X\subset \mathbb{R} \)に加えて、さらにその部分集合\(A\subset X\)が与えられているものとします。集合\(X\)と交わる近傍\(N\in \mathcal{N}\)を任意に選んだとき、この近傍\(N\)が\(A\)とも交わることは、\(A\)が\(X\)の稠密部分集合であるための必要十分条件です。
A\not=\phi \right)
\end{equation*}が成り立つことは、\(A\)が\(X\)の稠密部分集合であるための必要十分条件である。ただし、\(\mathcal{N}\)は\(\mathbb{R} \)の近傍系である。
先の命題を踏まえると、\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合であることの意味を近傍系を用いて以下のように表現できます。
\right)
\end{equation*}が成り立つことは、\(A\)が\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合であるための必要十分条件である。ただし、\(\mathcal{N}\)は\(\mathbb{R} \)の近傍系である。
\end{equation*}が成り立つことを意味します。近傍\(N\in \mathcal{N}\)は何らかの有界開区間\(\left( x,y\right) \)として表すことができるため、上の命題を、\begin{equation*}\forall x,y\in \mathbb{R} :\left[ x<y\Rightarrow \left( x,y\right) \cap \mathbb{Q} =\phi \right] \end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\forall x,y\in \mathbb{R} :\left[ x<y\Rightarrow \exists r\in \mathbb{Q} :x<r<y\right] \end{equation*}と表現できますが、これは有理数の稠密性に他なりません。以上により、有理数が稠密であることと\(\mathbb{Q} \)が\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合であることは概念として一致することが明らかになりました。
\end{equation*}が成り立つことを意味します。近傍\(N\in \mathcal{N}\)は何らかの有界開区間\(\left( x,y\right) \)として表すことができるため、上の命題を、\begin{equation*}\forall x,y\in \mathbb{R} :\left[ x<y\Rightarrow \left( x,y\right) \cap \left( \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \right) =\phi \right] \end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\forall x,y\in \mathbb{R} :\left[ x<y\Rightarrow \exists z\in \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} :x<r<y\right] \end{equation*}と表現できますが、これは無理数の稠密性に他なりません。以上により、無理数が稠密であることと\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)が\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合であることは概念として一致することが明らかになりました。
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