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DEFINITION OF REAL NUMBER

無理数の稠密性

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無理数の存在

有理数とは整数\(z\in \mathbb{Z} \)と自然数\(n\in \mathbb{N} \)を用いて\(\frac{z}{n}\)という形で表される実数です。有理数を整数と自然数の比として定義した以上、整数と自然数の比として表すことができないような数について思い巡らすのは自然のなりゆきです。整数と自然数の比として表現できない実数を無理数と呼びます。古代ギリシアにおいて、ピタゴラスは無理数が存在することを証明しました。具体的には、一辺の長さが\(1\)の正方形の斜辺の長さを\(x\)で表すとき、ピタゴラスの定理より\(x^{2}=1^{2}+1^{2}\)すなわち\(x^{2}=2\)が成り立ちますが、ピタゴラスは上の条件を満たす正の数\(x\)が有理数でないこと、すなわち無理数であることを示しました。ただ、ピタゴラスの議論は\(x^{2}=2\)を満たす正の実数\(x\)が存在することを前提としています。\(x\)を斜辺の長さとみなすのであれば、\(x^{2}=2\)を満たす正の実数\(x\)が存在することは自明なようですが、公理主義的実数論のもとではそのことを実数の公理から導く必要があります。以降では、無理数が存在することを実数の公理系から導きます。

まずは\(x^{2}=2\)を満たす正の実数\(x\)が存在することを示します。証明のスケッチは以下の通りです。実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)を、\begin{equation*}A=\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ 0<x\wedge x^{2}<2\right\}
\end{equation*}と定義したとき、これは上に有界かつ非空な\(\mathbb{R} \)の部分集合であることが示されるため、実数の連続性(上限性質)より\(\sup A\)が存在することが保証されます。この上限こそが目的の実数であること、すなわち、\(\left( \sup A\right) ^{2}=2\)かつ\(\sup A>0\)を満たすことが示されるため証明が完了します。

命題(正の平方根の存在)
\(x^{2}=2\)かつ\(x>0\)を満たす実数\(x\in \mathbb{R} \)が1つだけ存在する。
証明

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\(x^{2}=2\)かつ\(x>0\)を満たす実数\(x\in \mathbb{R} \)が1つだけ存在することが明らかになりました。ピタゴラスが示したように、このような条件を満たす\(x\)は有理数ではありません。したがって無理数が存在することが示されました。これを\(\sqrt{2}\)で表記します。

命題(無理数の存在)
\(x^{2}=2\)かつ\(x>0\)を満たす実数\(x\in \mathbb{R} \)が1つだけ存在するとともに、これは無理数である。
証明

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無理数の生成

有理数は実数であり、無理数は有理数ではない実数として定義されているため、有理数と無理数はともに実数です。\(\mathbb{R} \)は四則演算について閉じているため、以上を踏まえると、無理数\(x\in \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)とゼロではない有理数\(r\in \mathbb{Q} \backslash \left\{ 0\right\} \)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}x+r,\quad r+x,\quad x-r,\quad r-x,\quad x\cdot r,\quad r\cdot x,\quad \frac{x}{r},\quad \frac{r}{x}
\end{equation*}がいずれも実数であることが保証されます。ちなみに、加法に関する交換律より\(x+r\)と\(r+x\)は等しく、乗法に関する交換律より\(x\cdot r\)と\(r\cdot x\)は等しいことが保証されます。また、\(r\)はゼロではない有理数であるため\(\frac{x}{r}\)は定義可能です。\(0\)は有理数であり、無理数は有理数ではない実数であるため、\(0\)は無理数ではありません。したがって\(\frac{r}{x}\)も定義可能です。さらに、以上の実数はいずれも無理数になることが保証されます。つまり、有理数と無理数に対して四則演算を行った結果は無理数になることが保証されるということです。

命題(有理数と無理数の演算)
無理数\(x\in \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)と有理数\(r\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)をそれぞれ任意に選んだとき、それらの和・差・積・商はいずれも無理数である。
証明

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例(無理数)
無理数\(\sqrt{2}\)が存在することを先に示しましたが、この事実と上の命題を踏まえると、ゼロではない有理数\(r\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}\sqrt{2}+r,\quad \sqrt{2}-r,\quad r-\sqrt{2},\quad \sqrt{2}\cdot r,\quad
\frac{\sqrt{2}}{r},\quad \frac{r}{\sqrt{2}}
\end{equation*}などはいずれも無理数であることが保証されます。

 

無理数の稠密性

有理数の稠密性とは、\(x<y\)を満たす実数\(x,y\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\begin{equation*}x<r<y
\end{equation*}を満たす有理数\(r\in \mathbb{R} \)が必ず存在することを意味します。これまで示した諸命題を利用すると、無理数もまた稠密であること、すなわち、\(x<y\)を満たす実数\(x,y\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\begin{equation*}x<z<y
\end{equation*}を満たす無理数\(z\in \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)が必ず存在することが示されます。このことを指して、\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)は\(\mathbb{R} \)上で稠密である(\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \) is dense in \(\mathbb{R} \))と言います。

命題(無理数の稠密性)

\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)は\(\mathbb{R} \)上で稠密である。すなわち、\begin{equation*}\forall x,y\in \mathbb{R} :\left[ x<y\Rightarrow \exists z\in \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} :x<z<y\right] \end{equation*}が成り立つ。

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無理数集合の濃度

濃度について学んだ際に明らかになったように、実数集合\(\mathbb{R} \)は非可算集合(連続体)である一方で、有理数集合\(\mathbb{Q} \)は可算集合です。では、無理数集合\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)はどのような濃度を持っているのでしょうか。

仮に\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)が可算集合であるならば、それぞれの無理数を\(a_{1},a_{2},a_{3},\cdots \)と数えることができるはずです。\(\mathbb{Q} \)は可算集合であるため、それぞれの有理数を\(r_{1},r_{2},r_{3},\cdots \)と数えることもできます。実数は有理数と無理数をあわせたものとして定義するため、\(\mathbb{R} \)の要素であるそれぞれの実数は、\begin{equation*}r_{1},a_{1},r_{2},a_{2},r_{3},a_{3},\cdots
\end{equation*}となり、それらを順番に数えることができます。これは\(\mathbb{R} \)が非可算集合であることと矛盾です。したがって、\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)は非可算集合です。

命題(無理数集合の濃度)
\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)は非可算集合である。

 

演習問題

問題(正の実数の正の平方根)
本文中では、\(x^{2}=2\)かつ\(x>0\)を満たす実数\(x\in \mathbb{R} \)が1つだけ存在することを示しましたが、より一般的に、\(a>0\)を満たす実数\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだときに、それに対して、\(x^{2}=a\)かつ\(x>0\)を満たす実数\(x\in \mathbb{R} \)が1つだけ存在することを示してください。
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次回は区間について学びます

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