無理数の稠密性

2つの異なる実数を任意に選んだとき、それらの間には必ず無理数が存在します。このような性質を無理数の稠密性と呼びます。また、すべての無理数からなる集合は非可算集合です。
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無理数の存在

\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A,B\)を、\begin{eqnarray*}
A &=&\left\{ x\in
\mathbb{R}\ |\ x^{2}<2\vee x\leq 0\right\} \\
B &=&\left\{ x\in
\mathbb{R}\ |\ x^{2}\geq 2\wedge x>0\right\}
\end{eqnarray*}とそれぞれ定義します。このとき、\(\left\langle A,B\right\rangle \)は\(\mathbb{R}\)の切断であるため(確認してください)、\(\mathbb{R}\)の連続性より\(\max A\)か\(\min B\)のどちらか一方が存在します。実際、\(\max A\)は存在しない一方で\(\min B\)は存在し、それは、\begin{equation}
x^{2}=2\wedge x>0 \tag{1}
\end{equation}を満たす実数\(x\)です(確認してください)。一般に、\(\mathbb{R}\)の非空な部分集合が最小値を持つとき、それは一意的です。したがって、\(\left( 1\right) \)を満たす実数\(x\)は一意的に定まります。また、アルキメデスが示したように、\(\left( 1\right) \)を満たす実数\(x\)は有理数ではありません(確認してください)。無理数は有理数ではない実数として定義されるため、この実数\(x\)は無理数です。そこで、\(\left( 1\right) \)を満たす無理数\(x\)を\(\sqrt{2}\)で表します。

命題(無理数の存在)
\(x^{2}=2\)を満たす正の実数\(x\)が1つだけ存在するとともに、それは無理数である。これを\(\sqrt{2}\)で表す。
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有理数の生成

有理数は実数であり、無理数は有理数ではない実数として定義されているため、有理数と無理数はともに実数です。\(\mathbb{R}\)は四則演算について閉じているため、以上を踏まえると、無理数\(x\)と\(0\)とは異なる有理数\(r\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ x+r \\
&&\left( b\right) \ r+x \\
&&\left( c\right) \ x-r \\
&&\left( d\right) \ r-x \\
&&\left( e\right) \ x\cdot r \\
&&\left( f\right) \ r\cdot x \\
&&\left( g\right) \ x/r \\
&&\left( h\right) \ r/x
\end{eqnarray*}はいずれも実数であることが保証されます。ただし、加法に関する交換律より\(\left( a\right) \)と\(\left( b\right) \)は等しく、乗法に関する交換律より\(\left( e\right) \)と\(\left( f\right) \)は等しくなります。\(r\)は\(0\)ではないため\(\left( g\right) \)は定義可能です。\(0\)は有理数であるため、任意の無理数は\(0\)ではありません。したがって\(\left( h\right) \)も定義可能です。

実はそれだけではなく、\(\left( a\right) \)から\(\left( h\right) \)はいずれも無理数になることが保証されます。実際、\(x+r\)が有理数であるものと仮定すると、\(\mathbb{Q}\)もまた四則演算について閉じていることから\(x+r=s\)を満たす有理数\(s\)が存在します。すると\(x=r-s\)を得ますが、\(r\)と\(s\)はともに有理数であるため、\(\mathbb{Q}\)が四則演算について閉じていることから\(x\)もまた有理数となり矛盾です。したがって、\(x+r\)は無理数です。\(\left( b\right) \)から\(\left( h\right) \)が無理数であることの証明も同様です(演習問題とします)。

命題(有理数と無理数の演算)
無理数\(x\in \mathbb{R}\backslash \mathbb{Q}\)と有理数\(r\in \mathbb{R}\backslash \left\{ 0\right\} \)をそれぞれ任意に選んだとき、それらの和・差・積・商はいずれも無理数である。
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無理数\(\sqrt{2}\)が存在することを先に示しましたが、この事実と上の命題を踏まえると、\(0\)ではない有理数\(r\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}
\sqrt{2}+r,\quad \sqrt{2}-r,\quad r-\sqrt{2},\quad \sqrt{2}\cdot r,\quad
\frac{\sqrt{2}}{r},\quad \frac{r}{\sqrt{2}}
\end{equation*}などはいずれも無理数になることが保証されます。

 

無理数の稠密性

\(x<y\)を満たす実数\(x,y\)を任意に選びます。\(\sqrt{2}\)は無理数ですが、無理数は実数であるため\(\sqrt{2}\)は実数です。\(\mathbb{R}\)は乗法について閉じているため、\(\sqrt{2}\cdot x\)と\(\sqrt{2}\cdot y\)はともに実数です。また、\(x<y\)と\(\sqrt{2}>0\)より\(\sqrt{2}\cdot x<\sqrt{2}\cdot y\)を得ます。\(\mathbb{Q}\)は\(\mathbb{R}\)上で稠密であるため、このとき、\begin{equation}
\sqrt{2}\cdot x<r<\sqrt{2}\cdot y \tag{1}
\end{equation}を満たす有理数\(r\)が存在します。まずは\(r\not=0\)の場合について考えます。\(\sqrt{2}>0\)を踏まえると\(\left( 1\right) \)より、\begin{equation*}
x<\frac{r}{\sqrt{2}}<y
\end{equation*}を得ます。\(r\not=0\)と先の命題より\(\frac{r}{\sqrt{2}}\)は無理数です。続いて\(r=0\)の場合ですが、\(\left( 1\right) \)より\(0<\sqrt{2}\cdot y\)を得ますが、\(\mathbb{Q}\)は\(\mathbb{R}\)上で稠密であるため、このとき、\begin{equation*}
\sqrt{2}\cdot x<0<s<\sqrt{2}\cdot y
\end{equation*}を満たす有理数\(s\)が存在します。\(\sqrt{2}>0\)を踏まえると、\begin{equation*}
x<\frac{s}{\sqrt{2}}<y
\end{equation*}を得ます。\(s\not=0\)と先の命題より\(\frac{s}{\sqrt{2}}\)は無理数です。したがって、異なる2つの実数の間には無理数が必ず存在することが明らかになりました。このことを指して、\(\mathbb{R}\backslash \mathbb{Q}\)\(\mathbb{R}\)上で稠密である(\(\mathbb{R}\backslash \mathbb{Q}\) is dense in \(\mathbb{R}\))と言います。

命題(無理数の稠密性)
\(\mathbb{R}\backslash \mathbb{Q}\)は\(\mathbb{R}\)上で稠密である。すなわち、\begin{equation*}
\forall x,y\in
\mathbb{R}:\left[ x<y\Rightarrow \exists z\in
\mathbb{R}\backslash \mathbb{Q}:x<z<y\right] \end{equation*}が成り立つ。
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無理数集合の濃度

濃度について学んだ際に明らかになったように、実数集合\(\mathbb{R}\)は非可算集合(連続体)である一方で、有理数集合\(\mathbb{Q}\)は可算集合です。では、無理数集合\(\mathbb{R}\backslash \mathbb{Q}\)はどのような濃度を持っているのでしょうか。

濃度について復習する

仮に\(\mathbb{R}\backslash \mathbb{Q}\)が可算集合であるならば、それぞれの無理数を\(a_{1},a_{2},a_{3},\cdots \)と数えることができるはずです。\(\mathbb{Q}\)は可算集合であるため、それぞれの有理数を\(r_{1},r_{2},r_{3},\cdots \)と数えることもできます。実数は有理数と無理数をあわせたものとして定義するため、\(\mathbb{R}\)の要素であるそれぞれの実数は、\begin{equation*}
r_{1},a_{1},r_{2},a_{2},r_{3},a_{3},\cdots
\end{equation*}となり、それらを順番に数えることができます。これは\(\mathbb{R}\)が非可算集合であることと矛盾です。したがって、\(\mathbb{R}\backslash \mathbb{Q}\)は非可算集合です。

命題(無理数集合の濃度)
\(\mathbb{R}\backslash \mathbb{Q}\)は非可算集合である。
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次回は区間について学びます

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