無限小数としての実数

実数は有理数と無理数をあわせたもののことです。有理数は循環する無限小数であり無理数は循環しない無限小数ですから、実数とは循環するものとしないものを含めたすべての無限小数のことです。
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実数の分類

初等数学では実数(real number)を有理数(rational number)と無理数(irrational number)に分類します。すべての実数からなる集合を\(\mathbb{R} \)、すべての有理数からなる集合を\(\mathbb{Q}\)で表すため、すべての無理数からなる集合は差集合\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q}\)となります。

有理数とは 2 つの整数\(a,b\)(ただし\(b\not=0\))を用いて分数\(\frac{a}{b}\)の形で表される数のことです。それぞれの整数\(z\)は有理数\(\frac{z}{1}\)として表すこともできるため、整数は有理数です。つまり、すべての整数からなる集合\(\mathbb{Z}\)は\(\mathbb{Q}\)の部分集合です。逆に、有理数は整数であるとは限らないため、\(\mathbb{Q}\)は\(\mathbb{Z}\)の部分集合ではありません。

 

有理数は循環小数

有理数\(\frac{a}{b}\)が与えられたとき、分子\(a\)を分母\(b\)で割ることにより、この有理数を小数点以下の桁を持つ数として表すことができます。

有理数\(\frac{a}{b}\)の分子\(a\)を分母\(b\)で割り続けたときにいつまでたっても割り切れない場合には、その有理数\(\frac{a}{b}\)は小数点以下の桁数が無限であるような数として表すことができます。そのような数を無限小数(infinite decimal)と呼びます。

例(無限小数であるような有理数)
有理数\(\frac{10}{3}\)に関しては\(10\div 3=3.3333\cdots \)となるため、これは無限小数です。有理数\(\frac{19}{99}\)に関しては\(19\div 99=0.1919\cdots \)となるため、これも無限小数です。

有理数\(\frac{a}{b}\)の分子\(a\)を分母\(b\)で割り続けたときに最終的に割り切れる場合には、その有理数\(\frac{a}{b}\)は小数点以下の桁数が有限であるような数として表すことができます。そのような数を有限小数(finite decimal)と呼びます。

例(有限小数であるような有理数)
有理数\(\frac{9}{2}\)に関しては\(9\div 2=4.5\)となるため、これは有限小数です。有理数\(\frac{1}{4}\)に関してはは\(1\div 4=0.25\)となるため、これも有限小数です。整数\(3\)は有理数\(\frac{3}{1}\)に等しく、\(3\div 1=3\)となるため、これは小数点以下の数が存在しない特別な有限小数です。

有限小数の後ろに\(0\)を無限に並べれば、数としては同じでありながら、形式的には無限小数とみなすことができます。このとき、整数を含めた任意の有理数は無限小数であると言えます。

例(有限小数を無限小数とみなす)
有理数\(\frac{9}{2}\)は有限小数\(4.5\)ですが、これは無限小数\(4.500\cdots \)と同一視されます。有理数\(\frac{1}{4}\)は有限小数\(0.25\)ですが、これは無限小数\(0.250\cdots \)と同一視されます。有理数\(3\)は有限小数\(3\)ですが、これは無限小数\(3.0000\cdots \)と同一視されます。

繰り返しになりますが、有理数は無限小数です。これまで例として挙げた有理数としては、\begin{eqnarray*}
\frac{10}{3} &=&3.3333\cdots \\
\frac{19}{99} &=&0.1919\cdots \\
\frac{9}{2} &=&4.5000\cdots \\
\frac{1}{4} &=&0.2500\cdots \\
3 &=&3.0000\cdots
\end{eqnarray*}などがありますが、ここで注目したいのは、これらの無限小数はいずれも、小数点以下のある桁から先で同じ数字の列が無限に繰り返されているということです。\(3.333\cdots \)では\(3\)が繰り返され、\(0.1919\cdots \)では\(19\)が繰り返され、\(4.500\cdots \)では\(0\)が繰り返されています。他の無限小数についても同様です。このような無限小数を循環小数(recurring decimal)と呼びます。

循環小数ではない無限小数も存在します。例えば、\(1.372632\cdots \)や\(0.072632\cdots \)など、小数点以下の桁をランダムかつ無限に選んでいけば循環小数ではない無限小数が得られます。そのような無限小数を非循環小数(non-recurring decimal)と呼びます。無限小数には循環小数と非循環小数が存在します。

有理数は無限小数ですが、それは非循環小数ではなく、必ず循環小数になります。この事実は、有理数\(\frac{a}{b}\)に関する割り算\(a\div b\)を筆算で行う際のプロセスを観察することにより証明できます(演習問題にします)。

命題(有理数は循環小数)
実数が有理数であるならば、それは循環小数である。
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上の命題の主張とは逆に、循環小数は必ず有理数として表すことができます(演習問題にします)。

命題(循環小数は有理数)
実数が循環小数であるならば、それは有理数である。
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したがって、ある実数が有理数であることと、その実数が循環小数であることは必要十分条件です。実数と循環小数は概念として実質的に等しいということになります。

命題(有理数と循環小数)
ある実数が有理数であることは、その実数が循環小数であるための必要十分条件である。
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無理数は非循環小数

無理数とは有理数ではない実数として定義されます。すでに示したように、有理数と循環小数は概念として等しいため、実数が有理数ではないこと、すなわち無理数であることとは、その実数が循環小数ではないことを意味します。加えて、実数は循環小数と非循環小数のどちらか一方であるため、実数が循環小数でないことは非循環小数であることを意味します。以上を踏まえると、無理数と非循環小数は概念として等しいということになります。

命題(無理数と非循環小数)
ある実数が無理数であることは、その実数が非循環小数であるための必要十分条件である。
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先ほど例として挙げたように、\(1.372632\cdots \)や\(0.072632\cdots \)など、小数点以下の桁をランダムかつ無限に選んでいけば非循環小数が得られますが、上の命題より、これらは無理数です。

また、円周率\(\pi =3.1415\cdots \)や\(2\)の平方根\(\sqrt{2}=1.14142\cdots \)、ネイピア数\(e=2.71828\cdots \)などはいずれも無理数であることが知られています(演習問題とします)。つまり、これらの実数は循環小数ではなく、有理数\(\frac{a}{b}\)の形で表すこともできません。

 

実数は無限小数

これまでの議論を整理しましょう。まず、実数は有理数と無理数に分類されます。有理数は循環小数に等しく、無理数は非循環小数に等しいため、実数は循環小数と非循環小数に分類されます。無限小数は循環小数と非循環小数のどちらか一方であるため、結局、実数と無限小数は概念として等しいということになります。つまり、実数とは循環するものとしないものを含めたすべての無限小数のことです。

次回は公理主義の立場から実数について考えることの意味を解説します。

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4件のコメントがあります

  1. Sacchin

    ある数が有理数であることと循環小数であることは必要十分条件なのでしょうか?

    循環小数が有理数であることは私でも証明できそうです。例えば、本文中に登場する循環小数\(0.1919\cdots\)に関しては、これを、\[
    x=0.1919\cdots
    \]と置きます。両辺を\(100\)倍すると、\[
    100x=19.1919\cdots
    \]を得ます。下の式から上の式を辺々引くと、\[
    99x=19
    \]すなわち、\[
    x=\frac{19}{99}\]となるため、\(x\)が有理数であることが示されました。このような方法はどのような循環小数に対しても使えるため、これで証明になっている気がします。

    では、逆に、有理数が循環小数であることをきちんと証明できるのでしょうか?

  2. Murakami

    割り算を筆算で行ったときに何が起こるかを観察すれば、有理数が循環小数であることを証明する上でのヒントが得られます。

    具体例として、有理数\(\frac{19}{99}\)が循環小数であることを筆算で確かめてみると、そこでは以下のような計算を順番に行うことになります。
    \begin{array}
    [c]{ccc}\hline
    求める位 & 行う計算 & 途中の答え\\\hline
    1の位 & 19\div99=0\ \text{余り}\ 19 & 0\\\hline
    小数第1位 & 190\div99=1\ \text{余り}\ 91 & 0.1\\\hline
    小数第2位 & 910\div99=9\ \text{余り}\ 19 & 0.19\\\hline
    小数第3位 & 190\div99=1\ \text{余り}\ 91 & 0.191\\\hline
    \vdots & \vdots & \vdots\\\hline
    \end{array}つまり、直前の計算で得られた余りを\(10\)倍して、それを再び割る数\(99\)で割るという手順が繰り返されています。

    ここで注目したいのは、小数第\(2\)位を求める計算で得られる余り\(19\)は、\(1\)の位を求める計算で得られた余りと同じであるということです。ですから、小数第\(3\)位を求める計算は小数第\(1\)位を求める計算と同じになるため(このことは上の表からも確認できます)、得られる商と余りもまた同じになります。この結果を踏まえた上で以降についても同様に考えると、小数第\(4\)位を求める計算は小数第\(2\)位を求める計算と同じになり、小数第\(5\)位を求める計算は小数第\(3\)位を求める計算と同じになり、\(\cdots\)ということになるため、\(\frac{19}{99}\)は循環小数\(0.191919\cdots\)になります。

    上の例では早い段階で同じ余りが登場しましたが、一般の有理数\(\frac{p}{q}\)についても、上のように計算を繰り返すにつれて同じ余りが必ず登場することを保証できるのでしょうか。\(\frac{p}{q}\)が有限小数の場合にはそれは特別な循環小数とみなされるため、以降では\(\frac{p}{q}\)が無限小数の場合に話を限定します。

    割る数\(q\)は有限の整数であるため、何らかの整数を\(q\)で割ったときの余りとして起こり得るパターンは\(1\)から\(q-1\)までの有限\(q-1\)通りです。ですから、先に表で例示したような計算を少なくとも\(q\)回繰り返せば、どこかで必ず同じ余りが登場します。

    1. Sacchin

      ありがとうございます!理解できました。

      1. WIIS

        とても良い議論だと思いますので、本文中に関連する命題を追加しました。

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