自然数
初等教育では自然数や整数、有理数、実数、複素数など様々な数(numbers)の概念について学びました。また、数を被演算子とする演算(加法・減法・乗法・除法)や、数どうしを比較する順序(大小関係・狭義大小関係)についても学びました。まずはこれらについて簡単に振り返ります。
\(1\)から始まり、\(1\)ずつ大きくなり、永遠に大きくなり続けていく数\begin{equation*}
1,2,3,\cdots
\end{equation*}を自然数(natural numbers)と呼びます。すべての自然数からなる集合を\(\mathbb{N}\)で表記します。つまり、\begin{equation*}\mathbb{N} =\left\{ 1,2,3,\cdots \right\}
\end{equation*}です。自然数はヒトが最初に作りだした数の概念であり、モノの個数を数えたり、順番をつけるために使われてきました。
自然数を被演算子とする演算子として加法\(+\)と乗法\(\cdot \)があります。具体的には、自然数からなる順序対\(\left( x,y\right) \)に対して\(+\)が定める自然数を\(x+y\)で表し、これを\(x\)と\(y\)の和と呼びます。また、自然数からなる順序対\(\left( x,y\right) \)に対して\(\cdot \)が定める自然数を\(x\cdot y\)で表し、これを\(x\)と\(y\)の積と呼びます。
自然数どうしを比較する順序としては大小関係\(\leq\)と狭義大小関係\(<\)があります。具体的には、自然数からなる順序対\(\left( x,y\right) \)に対して\(\left( x,y\right) \in \leq \)が成り立つことを\(x\leq y\)で表し、このとき、\(x\)は\(y\)以下であるとか、\(y\)は\(x\)以上であるなどと言います。また、自然数からなる順序対\(\left( x,y\right) \)に対して\(\left( x,y\right) \in <\)が成り立つことを\(x<y\)で表し、このとき、\(x\)は\(y\)より大きいとか、\(y\)は\(x\)より小さいなどと言います。
小学校の算数で最初に学ぶことの一つは自然数どうしの足し算や掛け算であり、また、自然数どうしの大きさを比べる方法です。加えて、これらの概念が満たす一般的な性質についても学びます(結合律や交換律など)。
初等数学でお馴染みの数直線を利用すれば、自然数を視覚的に表現することができます。具体的には、下図のように1本の直線を引き、その直線上に1つの点を定め、その点に\(1\)という自然数を対応させます。この点の右側に新たに1つの点を定め、その点に\(2\)という自然数を対応させます。この2つの点の間の線分の長さを距離を測る単位と定めた上で、\(1\)に対応する点の右側にあり、なおかつ\(1\)に対応する点からの距離が\(n\)であるような点に自然数\(n\)を対応させます。直線上のそれぞれの点に与えられた自然数をその点の座標と呼び、座標の導入された直線を数直線と呼びます。
こうして得られる数直線上のそれぞれの点には自然数が1つずつ対応しています。つまり、数直線上の異なる点には異なる自然数がそれぞれ対応し、逆に、異なる自然数には数直線上の異なる点がそれぞれ対応するということです。言い換えると、自然数\(x,y\)について、\(x=y\)が成り立つことと、座標\(x\)の点と座標\(y\)の点が同じ点であることは必要十分です。また、\(x<y\)が成り立つことは、座標\(x\)の点が座標\(y\)の点よりも左側にあることを意味します。\(x\leq y\)が成り立つことは\(x<y\)と\(x=y\)の少なくとも一方が成り立つことを意味します。
自然数\(x,y\)をそれぞれ任意に選んだとき、それらの和\(x+y\)や積\(x\cdot y\)もまた自然数であることが保証されます。つまり、\begin{eqnarray*}
\forall x,y &\in &\mathbb{N}:x+y\in \mathbb{N} \\
\forall x,y &\in &\mathbb{N}:x\cdot y\in \mathbb{N} \end{eqnarray*}などがともに成り立つということです。このことを指して、\(\mathbb{N}\)は加法や乗法について閉じていると言います。
自然数を被演算子とする演算子としては減法\(-\)や除法\(/\)を考えることもできます。具体的には、自然数からなる順序対\(\left( x,y\right) \)に対して\(-\)が定める自然数を\(x-y\)で表し、これを\(x\)と\(y\)の差と呼びます。また、自然数からなる順序対\(\left( x,y\right) \)に対して\(/\)が定める自然数を\(x/y\)で表し、これを\(x\)と\(y\)の商と呼びます。ただし、\(\mathbb{N}\)は減法や除法については閉じていません。例えば、\(1\)と\(2\)はともに自然数ですが、それらの差である\(1-2=-1\)は自然数ではありません。同じく、それらの商である\(1/2=0.5\)もまた自然数ではありません。
整数
繰り返しになりますが、自然数の集合\(\mathbb{N}\)は減法\(-\)について閉じていません。つまり、自然数どうしの差は自然数になるとは限りません。したがって、任意の数に対して引き算を自由に行うためには、自然数を拡張した数の概念が必要です。こうして生み出されたのが整数(integers)です。
すべての自然数\(1,2,3,\cdots \)に加えて、新しい数であるゼロ\(0\)、さらに、自然数にマイナスの符号\(-\)をつけた負の数\(-1,-2,-3,\cdots \)からなる数\begin{equation*}
\cdots ,-3,-2,-1,0,1,2,3,\cdots
\end{equation*}を整数と呼びます。すべての整数からなる集合を\(\mathbb{Z}\)で表記します。つまり、\begin{equation*}
\mathbb{Z}=\left\{ \cdots ,-3,-2,-1,0,1,2,3,\cdots \right\}
\end{equation*}です。それぞれの自然数\(n\)は正の整数であるため、\(\mathbb{N}\)は\(\mathbb{Z}\)の部分集合です。一方、ゼロや負の整数などは自然数ではないため、\(\mathbb{Z}\)は\(\mathbb{N}\)の部分集合ではありません。整数は自然数を拡張した数の概念です。
整数もまた数直線を用いて視覚的に表現できます。具体的には、下図のように1本の直線を引き、その直線上に1つの点を定め、その点に\(0\)という整数を対応させます。この点を原点と呼びます。原点の右側に新たに1つの点を定め、その点に\(1\)という整数を対応させます。この2つの点の間の線分の長さを距離を測る単位と定めた上で、原点の右側にあり、なおかつ原点からの距離が\(z\)であるような点に整数\(z\)を対応させます。また、原点の左側にあり、なおかつ原点からの距離が\(z\)であるような点に整数\(-z\)を対応させます。直線上のそれぞれの点に与えられた整数をその点の座標と呼び、座標の導入された直線を数直線と呼びます。
こうして得られる数直線上のそれぞれの点には整数が1つずつ対応しています。つまり、数直線上の異なる点には異なる整数がそれぞれ対応し、逆に、異なる整数には数直線上の異なる点がそれぞれ対応するということです。言い換えると、整数\(x,y\)について、\(x=y\)が成り立つことと、座標\(x\)の点と座標\(y\)の点が同じ点であることは必要十分です。また、\(x<y\)が成り立つことは、座標\(x\)の点が座標\(y\)の点よりも左側にあることを意味します。\(x\leq y\)が成り立つことは\(x<y\)と\(x=y\)の少なくとも一方が成り立つことを意味します。
加法\(+\)や乗法\(\cdot \)などの演算や、大小関係\(\leq \)や狭義大小関係\(<\)などの順序は整数集合\(\mathbb{Z}\)上にも定義されるだけでなく、これらの概念が\(\mathbb{N}\)上で満たす性質(結合律や交換律など)はそのまま\(\mathbb{Z}\)上においても引き継がれます。加えて、\(\mathbb{N}\)は減法について閉じていない一方で、\(\mathbb{Z}\)は減法について閉じています。つまり、\begin{equation*}
\forall x,y\in
\mathbb{Z}:x-y\in
\mathbb{Z}\end{equation*}が成り立つということです。整数どうしの差は整数になることが保証されるため、数の概念を自然数から整数へ拡張することにより、任意の数に対して引き算を自由に行うことができるようになります。ただ、\(\mathbb{Z}\)は除法については閉じていません。例えば、\(1\)と\(-2\)はともに整数ですが、それらの商である\(1/\left( -2\right) =-0.5\)は整数ではありません。
有理数
繰り返しになりますが、整数の集合\(\mathbb{Z}\)は除法\(/\)について閉じていません。つまり、整数どうしの商は整数になるとは限りません。したがって、任意の数に対して割り算を自由に行うためには、整数を拡張した数の概念が必要です。こうして生み出されたのが有理数(rational numbers)です。
有理数とは整数\(z\)と自然数\(n\)を用いて分数\(\frac{z}{n}\)の形で定義される数のことです。すべての有理数からなる集合を\(\mathbb{Q}\)で表記します。つまり、\begin{equation*}
\mathbb{Q}=\left\{ \frac{z}{n}\ |\ z\in
\mathbb{Z}\wedge n\in \mathbb{N} \right\}
\end{equation*}です。それぞれの整数\(z\)は有理数\(\frac{z}{1}\)として表すこともできるため、整数は有理数です。したがって、\(\mathbb{Z}\)は\(\mathbb{Q}\)の部分集合です。逆に、有理数は整数であるとは限らないため(例えば\(\frac{1}{2}\)は有理数だが整数ではない)、\(\mathbb{Q}\)は\(\mathbb{Z}\)の部分集合ではありません。有理数は整数を拡張した数の概念です。
自然数集合\(\mathbb{N}\)や整数集合\(\mathbb{Z}\)などを議論の場としている場合、2つの数\(x,y\)が\(x=y\)を満たすこと、すなわち\(x\)と\(y\)が等しいこととは、単純にそれらが同じ数であることを意味します。一方、有理数集合\(\mathbb{Q}\)を議論の場としている場合、2つの有理数\(\frac{z_{1}}{n_{1}},\frac{z_{2}}{n_{2}}\)が等しいこととは、\begin{equation*}
\frac{z_{1}}{n_{1}}=\frac{z_{2}}{n_{1}}\Leftrightarrow z_{1}\cdot
n_{2}=z_{2}\cdot n_{2}
\end{equation*}が成り立つこととして定義されます。例えば、\(\frac{1}{2}\)と\(\frac{2}{4}\)については\(1\cdot 4=2\cdot 2\)が成り立つため、上の定義のもと、これらは等しい有理数とみなされます。つまり、約分したときに同じ数になる有理数どうしを区別せず、それらを同一の有理数とみなすということです。
有理数もまた数直線を用いて視覚的に表現できます。まず、すべての整数が数直線上の点として表現されているものとします。\(n\)を自然数、\(z\)を正の整数とします。原点と座標\(1\)の点の間の距離を\(n\)等分すれば\(\frac{1}{n}\)という距離の単位が得られます。その上で、原点の右側にあり、なおかつ原点からの距離が\(\frac{1}{n}\)の\(z\)倍であるような点に有理数\(\frac{z}{n}\)を対応させます。また、原点の左側にあり、なおかつ原点からの距離が\(\frac{1}{n}\)の\(z\)倍であるような点に有理数\(-\frac{z}{n}\)を対応させます。
約分したときに同じ数になる有理数を同一の有理数とみなすとき、こうして得られる数直線上のそれぞれの点には有理数が1つずつ対応しています。つまり、数直線上の異なる点には異なる有理数がそれぞれ対応し、逆に、異なる有理数には数直線上の異なる点がそれぞれ対応するということです。言い換えると、有理数\(x,y\)について、\(x=y\)が成り立つことと、座標\(x\)の点と座標\(y\)の点が同じ点であることは必要十分です。また、\(x<y\)が成り立つことは、座標\(x\)の点が座標\(y\)の点よりも左側にあることを意味します。\(x\leq y\)が成り立つことは\(x<y\)と\(x=y\)の少なくとも一方が成り立つことを意味します。
有理数どうしの加法\(+\)や乗法\(\cdot \)は、\begin{eqnarray*}
\frac{z_{1}}{n_{1}}+\frac{z_{2}}{n_{2}} &=&\frac{z_{1}\cdot n_{2}+z_{2}\cdot
n_{1}}{n_{1}\cdot n_{2}} \\
\frac{z_{1}}{n_{1}}\cdot \frac{z_{2}}{n_{2}} &=&\frac{z_{1}\cdot z_{2}}{n_{1}\cdot n_{2}}
\end{eqnarray*}などという形で定義され、有理数どうしの大小関係\(\leq \)や狭義大小関係\(<\)は、\begin{eqnarray*}
\frac{z_{1}}{n_{1}} &\leq &\frac{z_{2}}{n_{2}}\Leftrightarrow z_{1}\cdot
n_{2}\leq z_{2}\cdot n_{2} \\
\frac{z_{1}}{n_{1}} &<&\frac{z_{2}}{n_{2}}\Leftrightarrow z_{1}\cdot
n_{2}<z_{2}\cdot n_{2}
\end{eqnarray*}を満たすものとして定義されます。加法や乗法、大小関係、狭義大小関係などの概念が\(\mathbb{Z}\)上で満たした性質(結合律や交換律など)は\(\mathbb{Q}\)上においても引き継がれます。加えて、\(\mathbb{Z}\)は除法について閉じていない一方で、\(\mathbb{Q}\)は除法について閉じています。ただし、\(0\)で割る場合を除きます。つまり、\begin{equation*}
\forall x\in
\mathbb{Q},\ \forall y\in
\mathbb{Q}\backslash \left\{ 0\right\} :x/y\in
\mathbb{Q}\end{equation*}が成り立つということです。有理数どうしの商は有理数になることが保証されるため、数の概念を整数から有理数へ拡張することにより、任意の数に対して割り算を自由に行うことができるようになります(\(0\)で割る場合を除く)。
以上の議論から明らかであるように、当初は自然数だけであった数の概念が整数や有理数へと拡張されてきた背景には、もとの数の範囲では不可能であった演算を可能にするという動機があります。繰り返しになりますが、自然数は加法と乗法について閉じていますが、減法について閉じていません。そこで、自然数を整数へと拡張することにより、減法を自由に行えるようになります。ただ、整数は除法については閉じていません。そこで、整数を有理数へと拡張することにより、四則演算すべてを自由に行えるようになります。
実数
有理数を整数\(z\)と自然数\(n\)の比\(\frac{z}{n}\)として定義した以上、整数と自然数の比として表すことができないような数について思い巡らすのは自然のなりゆきです。実際、紀元前500年頃の古代ギリシア世界において、ピタゴラスはそのような数をすでに発見しています。具体的には、一辺の長さが\(1\)の正方形の斜辺の長さを\(x\)で表すとき、ピタゴラスの定理より、\(x^{2}=1^{2}+1^{2}\)すなわち、\begin{equation}
x^{2}=2 \quad\cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。\(\left( 1\right) \)を満たす正の数\(x\)を\(\sqrt{2}\)で表します。ピタゴラスはこの\(\sqrt{2}\)が有理数でないことを証明しました。
有理数ではない数、すなわち整数\(z\)と自然数の比\(\frac{z}{n}\)として表現できない数を無理数(irrational number)と呼びます。上の命題は、無理数が実際に存在することを明らかにしています。では、無理数もまた数直線上の点として表現できるでしょうか。順番に考えていきましょう。
有理数を表現する数直線を上に再掲しました。繰り返しになりますが、それぞれの有理数\(\frac{z}{n}\)を数直線上の点として表現する際には、\(1\)の長さを\(n\)等分して得られる\(\frac{1}{n}\)ごとの目盛りが基準になります。この\(\frac{1}{n}\)もまた有理数であり、数直線上の点として表すことができます。\(n\)として大きな自然数を採用するほど\(\frac{1}{n}\)の目盛りは小さくなります。自然数には上限がないため、\(\frac{1}{n}\)の目盛りをいくらでも小さくすることができます。したがって、数直線上には有理数を示す点がびっしりと詰まっているはずです。座標が有理数であるような数直線上の点を有理点と呼ぶことにしましょう。
以上のことを代数的に確認することもできます。\(x<y\)を満たす有理数\(x,y\)を任意に選びます。\(x\)と\(y\)が限りなく近い有理数であるならば、数直線上においても座標\(x\)の有理点と座標\(y\)の有理点は限りなく近い場所にあるはずです。しかしここで、\(\frac{x+y}{2}\)という数について考えます。有理数は四則演算について閉じているため、\(\frac{x+y}{2}\)もまた有理数です。しかも、\begin{equation*}
x<\frac{x+y}{2}<y
\end{equation*}という関係が成り立つため、座標\(\frac{x+y}{2}\)の有理点は座標\(x\)の有理点と座標\(y\)の有理点の間にあります。これは、どんなに近い2つの有理点の間にも別の有理点があることを示唆しています。数直線上には有理点がびっしりと詰まっているということです。言い換えると、どんなに近い2つの有理数の間にも別の有理数が存在します。このことを指して、有理数は稠密(ちゅうみつ)であると言います。
では、先に例として挙げた無理数\(\sqrt{2}\)は数直線上のどこにあるのでしょうか。\(\sqrt{2}\)は有理数ではないため、\(\frac{1}{n}\)の目盛りを基準に数直線上での位置を確定することができません。つまり、仮に座標\(\sqrt{2}\)の点が数直線上にあるならば、それは有理点ではありません。その一方で、\(\sqrt{2}\)は一辺の長さが\(1\)の正方形の斜辺の長さに相当する数であるため、数直線上において座標\(1\)の点よりも右側にある何らかの点として表現できるはずです。つまり、座標が無理数\(\sqrt{2}\)であるような点(これを無理点と呼ぶことにします)が数直線上には存在します。数直線上には有理点が稠密に分布しているとともに、数直線上には有理点とは異なる座標\(\sqrt{2}\)の無理点が存在するということは、限りなく近い有理点の間に座標\(\sqrt{2}\)の無理点が存在することを意味します。
以上の議論は\(\sqrt{2}\)という無理数に注目したものですが、実は、無理数は無数に存在することが知られています。さらに、数直線上においてどんなに近い有理点の間にも無理点が存在するとともに、無理点の全体は有理点の全体よりもはるかに多いことも知られています。数直線上には有理点がびっしりと詰まっていることを先に指摘しましたが、任意の2つの有理点の間には有理点とは異なる無理点が必ず存在するということは、有理点だけでは数直線は隙間だらけだということになります。その隙間を埋めているのが無理点です。つまり、数直線を隙間なく埋めるためには有理点と無理点の両方が必要です。実数とは有理数と無理数をあわせた数の概念です。数の概念を有理数から無理数へと拡張することにより、数を隙間なく並べることができるようになります。このような性質を実数の連続性と呼びます。
演習問題
実数は有理数か無理数かのどちらか一方です。そこで、\(\sqrt{6}\)が有理数であることを仮定して矛盾を導けば、\(\sqrt{6}\)が無理数であることを証明したことになります。
\(\sqrt{6}\)が有理数であると仮定します。このとき、正の整数\(p,q\)を用いて、\begin{equation*}
\sqrt{6}=\frac{p}{q}
\end{equation*}と書くことができます。ただし、\(q\not=0\)です。このとき、\(p,q\)がともに偶数ならば分子と分母を\(2\)で約分することで簡約化できるため、\(p\)と\(q\)は互いに素としても一般性は失われません。上の式の両辺に\(q\)を掛けた上で両辺を2乗すると、\begin{equation}
6q^{2}=p^{2} \quad\cdots (1)
\end{equation}すなわち、\begin{equation*}
3\left( 2q^{2}\right) =p^{2}
\end{equation*}を得ます。したがって\(p^{2}\)は\(3\)の倍数です。
整数を\(3\)で割ったときの余りは\(0,1,2\)のいずれかであるため、\(p\)を\(3\)で割ったときの余りが\(1,2\)のいずれでもないことを示せば、\(p\)が\(3\)の倍数であることを示したことになります。\(p\)を\(3\)で割ったときの余りが\(1\)であるとします。このとき、整数\(k\)を用いて、\begin{equation*}
p=3k+1
\end{equation*}と表すことができます。したがって、\begin{eqnarray*}
p^{2} &=&\left( 3k+1\right) ^{2} \\
&=&9k^{2}+6k+1 \\
&=&3\left( 3k^{2}+2k\right) +1
\end{eqnarray*}となるため、\(p^{2}\)は\(3\)の倍数ではありません。これは\(p^{2}\)が\(3\)の倍数であることと矛盾するため、\(p\)を\(3\)で割った時の余りが\(1\)でないことが示されました。続いて、\(p\)を\(3\)で割ったときの余りが\(2\)であるとします。このとき、整数\(k\)を用いて、\begin{equation*}
p=3k+2
\end{equation*}と表すことができます。したがって、\begin{eqnarray*}
p^{2} &=&\left( 3k+2\right) ^{2} \\
&=&9k^{2}+12k+4 \\
&=&3\left( 3k^{2}+4k+1\right) +1
\end{eqnarray*}となるため、\(p^{2}\)は\(3\)の倍数ではありません。これは\(p^{2}\)が\(3\)の倍数であることと矛盾するため、\(p\)を\(3\)で割った時の余りが\(2\)でないことが示されました。以上より、\(p\)は\(3\)の倍数であることが示されました。
\(p\)は\(3\)の倍数であるため、整数\(l\)を用いて、\begin{equation*}
p=3l
\end{equation*}と表すことができます。これを\(\left( 1\right) \)に代入すると、\begin{equation*}
6q^{2}=9l^{2}
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
2q^{2}=3l^{2}
\end{equation*}を得るため、\(2q^{2}\)は\(3\)の倍数です。したがって\(q^{2}\)は\(3\)の倍数でなければならず、すると先と同様の議論より\(q\)もまた\(3\)の倍数となります。
以上で\(p,q\)がともに\(3\)の倍数であることが示されましたが、これは\(p\)と\(q\)が互いに素であることと矛盾します。したがって\(\sqrt{6}\)が無理数であることが示されました。
\(x=\sqrt{2}+\sqrt{3}\)とおき、これが有理数であると仮定して矛盾を導きます。両辺を2乗すると、\begin{eqnarray*}
x^{2} &=&\left( \sqrt{2}+\sqrt{3}\right) ^{2} \\
&=&2+2\sqrt{6}+3
\end{eqnarray*}を得ますが、これを変形すると、\begin{equation}
\sqrt{6}=\frac{x^{2}-5}{2} \quad\cdots (1)
\end{equation}となります。
\(x\)は有理数であるため、整数\(p,q\ \left( q\not=0\right) \)を用いて\(x=\frac{p}{q}\)と表すことができます。これを用いて\(\left( 1\right) \)の右辺を変形すると、\begin{equation*}
\frac{\frac{p^{2}}{q^{2}}-5}{2}=\frac{p^{2}-5q^{2}}{2q^{2}}
\end{equation*}となりますが、整数は四則演算について閉じているため、これは有理数です。この事実と\(\left( 1\right) \)より\(\sqrt{6}\)は有理数となりますが、これは\(\sqrt{6}\)が無理数であることと矛盾します。したがって\(\sqrt{2}+\sqrt{3}\)が無理数であることが証明されました。
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