2つの異なる実数を任意に選んだとき、それらの間には必ず有理数が存在します。このような性質を有理数の稠密性と呼びます。
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有理数

\(\mathbb{R}\)は実数の公理を満たすものとします。\(\mathbb{R}\)の加法単位元\(0\)と乗法単位元\(1\)の間には\(0<1\)が成り立つため、狭義大小関係\(<\)に関する加法律より、\begin{equation*}
0+1<1+1
\end{equation*}を得ます。加法単位元の定義より左辺は\(1\)です。\(\mathbb{R}\)は加法について閉じているため、右辺の\(1+1\)も実数です。そこでこれを\(2\)と表記するのであれば、\begin{equation*}
1<2
\end{equation*}を得ます。これと\(0<1\)に対して再び\(<\)に関する加法律を適用することにより、\begin{equation*}
1+1<2+1
\end{equation*}を得ます。左辺は\(2\)です。\(\mathbb{R}\)は加法について閉じているため、右辺の\(2+1\)も実数です。そこでこれを\(3\)と表記するのであれば、\begin{equation*}
2<3
\end{equation*}を得ます。このようなプロセスを続けることにより、すべての自然数からなる集合\begin{equation*}
\mathbb{N} =\left\{ 1,2,3,\cdots \right\}
\end{equation*}を構成することができます。定義より、\begin{equation*}
1<2<3<\cdots
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

自然集合\(\mathbb{N} =\left\{ 1,2,3,\cdots \right\} \)が与えられたとき、それに加法単位元\(0\)と、\(\mathbb{N} \)のそれぞれの要素の加法逆元\(-1,-2,-3,\cdots \)を加えれば、すべての整数からなる集合\begin{equation*}\mathbb{Z}=\left\{ \cdots ,-3,-2,-1,0,1,2,3,\cdots \right\}
\end{equation*}が得られます。任意の自然数は整数であるため\(\mathbb{N} \subset \mathbb{Z}\)が成り立ちます。

自然数集合\(\mathbb{N} \)と整数集合\(\mathbb{Z}\)が上のように与えられれば、そこから有理数集合を、\begin{equation*}\mathbb{Q} =\left\{ \frac{z}{n}\ |\ z\in \mathbb{Z}\wedge n\in
\mathbb{N} \right\}
\end{equation*}と定義することができます。つまり、有理数とは整数\(z\)と自然数\(n\)を用いて分数\(\frac{z}{n}\)の形で定義される数のことです。2つの有理数\(\frac{z_{1}}{n_{1}},\frac{z_{2}}{n_{2}}\)が等しいこととは、\begin{equation*}
\frac{z_{1}}{n_{1}}=\frac{z_{2}}{n_{2}}\Leftrightarrow z_{1}\cdot
n_{2}=z_{2}\cdot n_{2}
\end{equation*}が成り立つこととして定義されます。例えば、\(\frac{1}{2}\)と\(\frac{2}{4}\)については\(1\cdot 4=2\cdot 2\)が成り立つため、上の定義のもと、これらは等しい有理数とみなされます。つまり、約分したときに同じ数になる有理数どうしを区別せず、それらを同一の有理数とみなすということです。

有理数は数直線を用いて視覚的に表現できます。下図のように1本の直線を引き、その直線上に1つの点を定め、その点の座標を\(0\)と定めます。この点を原点と呼びます。原点の右側に新たに1つの点を定め、その点の座標を\(1\)と定めます。\(n\)を自然数、\(z\)を正の整数とします。原点と座標\(1\)の点の間の距離を\(n\)等分すれば\(\frac{1}{n}\)という距離の単位が得られます。その上で、原点の右側にあり、なおかつ原点からの距離が\(\frac{1}{n}\)の\(z\)倍であるような点の座標を\(\frac{z}{n}\)と定めます。また、原点の左側にあり、なおかつ原点からの距離が\(\frac{1}{n}\)の\(z\)倍であるような点の座標と\(-\frac{z}{n}\)と定めます。

図:有理数と数直線
図:有理数と数直線

約分したときに同じ数になる有理数を同一の有理数とみなすとき、こうして得られる数直線上のそれぞれの点には有理数の座標が1つずつ対応しています。つまり、数直線上の異なる点には異なる有理数がそれぞれ対応し、逆に、異なる有理数には数直線上の異なる点がそれぞれ対応するということです。言い換えると、有理数\(x,y\)について、\(x=y\)が成り立つことと、座標\(x\)の点と座標\(y\)の点が同じ点であることは必要十分です。また、\(x<y\)が成り立つことは、座標\(x\)の点が座標\(y\)の点よりも左側にあることを意味します。\(x\leq y\)が成り立つことは\(x<y\)と\(x=y\)の少なくとも一方が成り立つことを意味します。有理数の座標が与えられた点を有理点と呼ぶこととします。また、座標が\(x\)であるような有理点を有理点\(x\)と呼ぶこととします。

 

有理数の稠密性

繰り返しになりますが、それぞれの有理数\(\frac{z}{n}\)を数直線上の点として表現する際には、\(1\)の長さを\(n\)等分して得られる\(\frac{1}{n}\)ごとの目盛りが基準になります。この\(\frac{1}{n}\)もまた有理数であり、数直線上の点として表すことができます。\(n\)として大きな自然数を採用するほど\(\frac{1}{n}\)の目盛りは小さくなります。自然数には上限がないため、\(\frac{1}{n}\)の目盛りをいくらでも小さくすることができます。したがって、数直線上には有理点が隙間なく並んでいるはずです。このことを指して、有理点は数直線上に稠密(dense)に分布していると言います。

以上のことを代数的に確認することもできます。\(x<y\)を満たす有理数\(x,y\)を任意に選びます。\(x\)と\(y\)が限りなく近い有理数であるならば、数直線上においても2つの有理点\(x,y\)は限りなく近い場所にあるはずです。しかしここで\(\frac{x+y}{2}\)という数について考えます。有理数は四則演算について閉じているため\(\frac{x+y}{2}\)もまた有理数です。しかも、\begin{equation*}
x<\frac{x+y}{2}<y
\end{equation*}という関係が成り立つため、有理点\(\frac{x+y}{2}\)は数直線上において2つの有理点\(x,y\)の間にあります。これは、どんなに近い2つの有理数の間にも別の有理数があることを示唆しています。実は、\(x,y\)が有理数であるとは限らない場合にも、同様の主張が成り立ちます。つまり、\(x<y\)を満たす実数\(x,y\)を任意に選んだとき、それに対して、\begin{equation*}
x<\frac{z}{n}<y
\end{equation*}を満たす有理数\(\frac{z}{n}\)が存在することが保証されます。このことを指して、\(\mathbb{Q}\)は\(\mathbb{R}\)上で稠密である(\(\mathbb{Q}\) is dense in \(\mathbb{R}\))と言います。ただ、これを厳密に証明するためには\(\mathbb{R}\)の連続性が必要です。

命題(有理数の稠密性)
\(\mathbb{Q}\)は\(\mathbb{R}\)上で稠密である。すなわち、\begin{equation*}
\forall x,y\in \mathbb{R}:\left[ x<y\Rightarrow \exists r\in \mathbb{Q} :x<r<y\right] \end{equation*}が成り立つ。
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証明のスケッチは以下の通りです。\(x<y\)を満たす実数\(x,y\)を任意に選びます。目標は、\begin{equation*}
x<\frac{z}{n}<y
\end{equation*}を満たす整数\(z\)と自然数\(n\)が存在することを示すことですが、これは、\begin{equation*}
n\cdot x<z<n\cdot y
\end{equation*}と必要十分です(確認してください)。このような関係を満たす整数\(z\)と自然数\(n\)が存在することを以下で示します。

\(x<y\)は\(y-x>0\)と必要十分です。また、\(1>0\)です。したがって、アルキメデスの性質より、\begin{equation*}
1<n\cdot \left( y-x\right)
\end{equation*}を満たす自然数\(n\)が存在しますが、これを変形すると、\begin{equation}
1<n\cdot y-n\cdot x \tag{1}
\end{equation}を得ます。また、アルキメデスの性質から導いた性質により、実数\(n\cdot x+1\)の整数部分に相当する整数が一意的に存在します。具体的には、それは、\begin{equation}
z\leq n\cdot x+1<z+1 \tag{2}
\end{equation}を満たす整数\(z\)です。以上の整数\(z\)と自然数\(n\)について、\begin{eqnarray*}
n\cdot x &<&z\quad \because \left( 2\right) \\
&\leq &n\cdot x+1\quad \because \left( 2\right) \\
&<&n\cdot x+n\cdot y-n\cdot x\quad \because \left( 1\right) \\
&=&n\cdot y
\end{eqnarray*}が成り立つため(確認してください)、目標が達成されました。

 

実数の間には無数の有理数が存在する

繰り返しになりますが、異なる2つの実数\(x,y\)を任意に選んだとき、有理数の稠密性より、\(x\)と\(y\)の間には有理数が必ず存在します。しかも、そのような有理数は無数に存在します。そのことを示すために、\(x\)と\(y\)の間にある有理数からなる集合\begin{equation*}
A=\left\{ r\in \mathbb{Q} \ |\ x<r<y\right\}
\end{equation*}が有限集合であるものと仮定して矛盾を導きます。

一般に、\(\mathbb{R}\)の非空な部分集合が有限集合であるとき、その部分集合は最大値を持ちます(演習問題にします)。したがって、上の集合\(A\)の最大値\(\max A\)もまた存在します。最大値の定義より\(\max A\in A\)であるため、このとき、\begin{equation*}
\forall z\in \mathbb{Q} :x<r\leq \max A<y
\end{equation*}が成り立ちます。ただ、\(\mathbb{Q}\)は\(\mathbb{R}\)上で稠密であるため、2つの異なる実数\(\max A,y\)の間には、\begin{equation*}
\max A<s<y
\end{equation*}を満たす有理数\(s\)が存在します。すると\(A\)の定義より\(s\in A\)となります。つまり、\(s\)は\(\max A\)より大きい\(A\)の要素となり、これは\(\max A\)が\(A\)の最大値であることと矛盾です。したがって、\(A\)は有限集合ではありません。

命題(実数の間には無限個の有理数が存在する)
\(x<y\)を満たす実数\(x,y\in \mathbb{R}\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{equation*}
x<r<y
\end{equation*}を満たす有理数\(r\in \mathbb{Q} \)は無限個存在する。
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有理数集合の上限と下限

実数\(x\)を任意に選んだ上で、\(x\)より小さいすべての有理数からなる集合\begin{equation*}
A=\left\{ r\in \mathbb{Q} \ |\ r<x\right\}
\end{equation*}をとります。アルキメデスの性質より、\(A\)は\(\mathbb{R}\)の非空な部分集合です(確認してください)。\(x\)は\(A\)の上界であるため、\(A\)は上に有界です。したがって、\(\mathbb{R}\)の連続性よりその上限\(\sup A\)が存在します。\(x\)は\(A\)の上界であることから、上限の定義より、\begin{equation*}
\sup A\leq x
\end{equation*}が成り立ちます。ここで、\begin{equation*}
\sup A<x
\end{equation*}が成り立つものと仮定します。\(\mathbb{Q}\)は\(\mathbb{R}\)上で稠密であるため、この不等号を満たす2つの異なる実数\(\sup A,x\)に対して、\begin{equation*}
\sup A<r<x
\end{equation*}を満たす有理数\(r\)が存在します。この不等式と\(A\)の定義より\(r\in A\)です。つまり、\(\sup A\)よりも大きい\(A\)の要素\(r\)が存在することになりますが、これは\(\sup A\)が\(A\)の上界の1つであることと矛盾です。したがって、\(\sup A<x\)は成り立たず、\(\sup A=x\)であることが保証されます。つまり、ある実数\(x\)より小さいすべての有理数からなる集合の上限は\(x\)と一致します。

ある実数\(x\)より大きい有理数からなる集合の下限は\(x\)と一致することも同様にして示されます。

命題(有理数集合の上限と下限)
実数\(x\in \mathbb{R}\)を任意に選んだとき、\(x\)より小さいすべての有理数からなる集合の上限や、\(x\)より大きいすべての有理数からなる集合の下限はいずれも\(x\)と一致する。すなわち、\begin{eqnarray*}
A &=&\left\{ r\in \mathbb{Q} \ |\ r<x\right\} \\
B &=&\left\{ r\in \mathbb{Q} \ |\ x<r\right\}
\end{eqnarray*}に対して、\begin{equation*}
\sup A=\inf B=x
\end{equation*}が成り立つ。
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次回は無理数の稠密性について学びます

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