WIIS

数直線の位相

集積点の存在条件と実数の連続性

目次

関連知識

Mailで保存
Xで共有

集積点の存在条件

実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合は集積点を持つとは限りません。以下の例より明らかです。

例(集積点を持たない集合)
実数\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、それを唯一の要素とする\(\mathbb{R} \)の部分集合\(\left\{ a\right\} \)について考えます。任意の点\(x\in \mathbb{R} \)は\(\left\{ a\right\} \)の集積点ではありません。なぜなら\(\left\{ a\right\} \)の点を項とするとともに任意の項が\(a\)とは異なる数列が存在しないからです。

上の例に限らず、一般に、有限集合は集積点を持ちません。

命題(有限集合は集積点を持たない)
\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が有限集合であるならば、\(A\)の集積点は存在しない。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

以上の議論により、\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が集積点を持つためには、\(A\)は無限集合でなければなりません。加えて、\(A\)が有界である場合、\(A\)の集積点が存在することを保証できます。証明には実数の連続性が必要です。

命題(集積点の存在条件)
\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が無限個の要素を持つとともに有界であるならば、\(A\)の集積点が存在する。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

集積点の存在条件と実数の連続性

復習になりますが、実数の公理系は\(\mathbb{R} \)が全順序体であることを規定する公理と\(\mathbb{R} \)の連続性を規定する公理に分類されます。特に、実数の連続性を特徴づける公理としてデデキントの公理を採用しました。

公理(連続性の公理)
\(\mathbb{R} \)の切断\(\left\langle A,B\right\rangle \)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \max A\text{は存在するが}\min B\text{は存在しない} \\
&&\left( b\right) \ \max A\text{は存在しないが}\min B\text{は存在する}
\end{eqnarray*}のどちらか一方が成り立つことを公理として定める。

\(\mathbb{R} \)の全順序体としての公理を認めるとき、デデキントの公理は以下のような様々な形で言い換え可能であることを示しました。

命題(連続性の公理)
\(\mathbb{R} \)が全順序体としての公理を満たすものとする。このとき、以下の8つの命題はお互いに必要十分である。\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \text{デデキントの公理} \\
&&\left( b\right) \ \text{上限性質} \\
&&\left( c\right) \ \text{下限性質} \\
&&\left( d\right) \ \text{上に有界な単調増加数列の収束定理} \\
&&\left( e\right) \ \text{下に有界な単調減少数列の収束定理} \\
&&\left( f\right) \ \text{カントールの縮小区間定理+アルキメデスの性質} \\
&&\left( g\right) \ \text{ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理+アルキメデスの性質} \\
&&\left( h\right) \ \text{コーシー列の収束定理+アルキメデスの性質}
\end{eqnarray*}

以上の諸命題に加え、集積点の存在条件を用いて実数の連続性を表現することもできます。先ほど、ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理を公理として認めたとき、そこから集積点の存在条件が導かれることを示しました。実は、反対に、集積点の存在条件を公理として認めたとき、そこからボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理を導くことができます。したがって、集積点の存在条件とアルキメデスの性質がともに成り立つことは実数の連続性と必要十分であるということになります。

命題(実数の連続性)
\(\mathbb{R} \)が全順序体としての公理を満たすものとする。このとき、集積点の存在条件とボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理は必要十分である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

以上の命題より、実数の連続性は以下のような様々な形で表現可能であることが明らかになりました。

命題(連続性の公理)
\(\mathbb{R} \)が全順序体としての公理を満たすものとする。このとき、以下の9個の命題はお互いに必要十分である。\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \text{デデキントの公理} \\
&&\left( b\right) \ \text{上限性質} \\
&&\left( c\right) \ \text{下限性質} \\
&&\left( d\right) \ \text{上に有界な単調増加数列の収束定理} \\
&&\left( e\right) \ \text{下に有界な単調減少数列の収束定理} \\
&&\left( f\right) \ \text{カントールの縮小区間定理+アルキメデスの性質} \\
&&\left( g\right) \ \text{ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理+アルキメデスの性質} \\
&&\left( h\right) \ \text{コーシー列の収束定理+アルキメデスの性質} \\
&&\left( i\right) \ \text{集積点の存在条件+アルキメデスの性質}
\end{eqnarray*}

つまり、\(\mathbb{R} \)の連続性を規定する公理として上の9個の命題の中のどれを採用しても問題ないということです。

 

有理数の非連続性

集積点の存在条件とアルキメデスの性質によって\(\mathbb{R} \)の連続性が表現できるのであれば、連続性を満たさない\(\mathbb{Q} \)は集積点の存在条件とアルキメデスの性質の少なくとも一方を満たさないはずです。\(\mathbb{Q} \)が集積点の存在条件を満たさないとは、無限個の要素を持つとともに有界であるような\(\mathbb{Q} \)の部分集合の中に、有理数の集積点を持たないものが存在することを意味します。以下で確認しましょう。

例(有理数の非連続性)
無理数\(\sqrt{2}\)は以下の非循環小数\begin{equation*}\sqrt{2}=1.41421356\cdots
\end{equation*}として表現されます。そこで、\(\mathbb{Q} \)の部分集合であるような可算集合\begin{equation*}A=\left\{ a_{1},a_{2},a_{3},a_{4},\cdots \right\}
\end{equation*}の要素が、\begin{eqnarray*}
a_{1} &=&1 \\
a_{2} &=&1.4 \\
a_{3} &=&1.41 \\
a_{4} &=&1.414 \\
&&\vdots
\end{eqnarray*}で与えられいるものとします。この集合\(A\)が有界な無限集合である一方で、\(A\)は有理数であるような集積点を持ちません(演習問題にします)。したがって、\(\mathbb{Q} \)上において集積点の存在条件が成り立たないことが明らかになりました。

次回は孤立点について解説します。

関連知識

Mailで保存
Xで共有

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです

会員登録

有料のプレミアム会員であれば、質問やコメントの投稿と閲覧、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題とその解答)へのアクセスなどが可能になります。

ワイズのユーザーは年齢・性別・学歴・社会的立場などとは関係なく「学ぶ人」として対等であり、お互いを人格として尊重することが求められます。ユーザーが快適かつ安心して「学ぶ」ことに集中できる環境を整備するため、広告やスパム投稿、他のユーザーを貶めたり威圧する発言、学んでいる内容とは関係のない不毛な議論などはブロックすることになっています。詳細はガイドラインをご覧ください。

誤字脱字、リンク切れ、内容の誤りを発見した場合にはコメントに投稿するのではなく、以下のフォームからご連絡をお願い致します。

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録