復習:実数の連続性
復習になりますが、実数の公理系は\(\mathbb{R} \)が全順序体であることを規定する公理と\(\mathbb{R} \)の連続性を規定する公理に分類されます。特に、実数の連続性を特徴づける公理としてデデキントの公理を採用しました。
&&\left( b\right) \ \max A\text{は存在しないが}\min B\text{は存在する}
\end{eqnarray*}のどちらか一方が成り立つことを公理として定める。
\(\mathbb{R} \)の全順序体としての公理を認めるとき、デデキントの公理は以下のような様々な形で言い換え可能であることを示しました。
&&\left( b\right) \ \text{上限性質} \\
&&\left( c\right) \ \text{下限性質} \\
&&\left( d\right) \ \text{上に有界な単調増加数列の収束定理} \\
&&\left( e\right) \ \text{下に有界な単調減少数列の収束定理} \\
&&\left( f\right) \ \text{カントールの縮小区間定理+アルキメデスの性質} \\
&&\left( g\right) \ \text{ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理+アルキメデスの性質} \\
&&\left( h\right) \ \text{コーシー列の収束定理+アルキメデスの性質}
\end{eqnarray*}
つまり、\(\mathbb{R} \)の連続性を規定する公理として以上の8個の命題の中のどれを採用しても問題ないということです。以下では、集積点を用いて実数の連続性を表現することもできることを示します。
集積点の存在定理と実数の連続性
実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合は集積点を持つとは限りません。以下の例より明らかです。
上の例に限らず、一般に、有限集合は集積点を持ちません。
以上の議論により、\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が集積点を持つためには、\(A\)は無限集合でなければならないことが明らかになりました。さらに、\(A\)が無限集合かつ有界である場合には、\(A\)の集積点が存在することを保証できます。以降ではこの命題を集積点の存在定理と呼ぶこととしますが、この命題もまたボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理(Bolzano-Weierstrass theorem)と呼ばれる場合があります。証明ではカントールの縮小区間定理を利用します。
カントールの縮小区間定理から集積点の存在定理を導くことができました。カントールの縮小区間定理はコーシー列の収束定理と必要十分ですが、先の命題とは逆に、集積点の存在定理からコーシー列の収束定理を導くことができます。
以上の2つの命題を踏まえると以下を得ます。
以上の命題より、実数の連続性は以下のような様々な形で表現可能であることが明らかになりました。
&&\left( b\right) \ \text{上限性質} \\
&&\left( c\right) \ \text{下限性質} \\
&&\left( d\right) \ \text{上に有界な単調増加数列の収束定理} \\
&&\left( e\right) \ \text{下に有界な単調減少数列の収束定理} \\
&&\left( f\right) \ \text{カントールの縮小区間定理+アルキメデスの性質} \\
&&\left( g\right) \ \text{ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理+アルキメデスの性質} \\
&&\left( h\right) \ \text{コーシー列の収束定理+アルキメデスの性質} \\
&&\left( i\right) \ \text{集積点の存在定理+アルキメデスの性質}
\end{eqnarray*}
つまり、\(\mathbb{R} \)の連続性を規定する公理として上の9個の命題の中のどれを採用しても問題ないということです。
プレミアム会員専用コンテンツです
【ログイン】【会員登録】