教材一覧
TOPOLOGY OF THE REAL LINE

近傍・近傍系

< 前のページ
次のページ >
Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有

点の近傍

復習になりますが実数空間に属する2つの点\(x,y\in \mathbb{R}\)をそれぞれ任意に選んだとき、\(x\)から\(y\)への距離は、\begin{equation*}
d\left( x,y\right) =\left\vert x-y\right\vert
\end{equation*}と定義されます。つまり、\(x\)から\(y\)への距離は\(x\)と\(y\)の差の絶対値と等しい概念です。

実数空間の点\(a\in \mathbb{R}\)と正の実数\(\varepsilon >0\)をそれぞれ任意に選びます。このとき、\(a\)からの距離が\(\varepsilon \)よりも小さい場所にある\(\mathbb{R}\)の点からなる集合を、\begin{equation*}
N_{\varepsilon }\left( a\right) =\left\{ x\in
\mathbb{R}\ |\ d\left( x,a\right) <\varepsilon \right\}
\end{equation*}と表記し、これを点\(a\)の\(\varepsilon \)-近傍(\(\varepsilon \)-neighborhood of \(a\))や、半径\(\varepsilon \)の点\(a\)の近傍(neighborhood of \(a\) with radius \(\varepsilon \))などと呼びます。\(\varepsilon \)-近傍をシンプルに近傍(neighborhood)と呼ぶこともあります。定義よりこれは、\begin{eqnarray*}
N_{\varepsilon }\left( a\right) &=&\left\{ x\in
\mathbb{R}\ |\ d\left( x,a\right) <\varepsilon \right\} \quad \because \text{近傍の定義} \\
&=&\left\{ x\in
\mathbb{R}\ |\ \left\vert x-a\right\vert <\varepsilon \right\} \quad \because \text{距離の定義} \\
&=&\left\{ x\in
\mathbb{R}\ |\ a-\varepsilon <x<a+\varepsilon \right\} \quad \because \text{絶対値の定義} \\
&=&\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right) \quad \because \text{区間の定義}
\end{eqnarray*}などと様々な形で表現できます。つまり、点\(a\)の近傍は\(a\)を中心とする有界開区間と実質的に等しい概念です(下図)。

図:点の近傍
図:点の近傍
例(点の近傍)
半径を\(2\)とする点\(1\)の近傍は、\begin{eqnarray*}
N_{2}\left( 1\right) &=&\left\{ x\in
\mathbb{R}\ |\ d\left( x,1\right) <2\right\} \\
&=&\left\{ x\in
\mathbb{R}\ |\ \left\vert x-1\right\vert <2\right\} \\
&=&\left( -1,3\right)
\end{eqnarray*}です。また、半径を\(\frac{1}{2}\)とする点\(1\)の近傍は、\begin{eqnarray*}
N_{\frac{1}{2}}\left( 1\right) &=&\left\{ x\in
\mathbb{R}\ |\ d\left( x,1\right) <\frac{1}{2}\right\} \\
&=&\left\{ x\in
\mathbb{R}\ |\ \left\vert x-1\right\vert <\frac{1}{2}\right\} \\
&=&\left( \frac{1}{2},\frac{3}{2}\right)
\end{eqnarray*}です。

 

点の近傍系

実数空間の点\(a\in \mathbb{R}\)が与えられたとき、半径\(\varepsilon >0\)の大きさに応じて様々な半径を持つ点\(a\)の近傍\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)が得られます。そこで、点\(a\)の近傍をすべて集めてできる集合を、\begin{equation*}
N\left( a\right) =\left\{ N_{\varepsilon }\left( a\right) \ |\ 0<\varepsilon
<+\infty \right\}
\end{equation*}で表記し、これを点\(a\)の近傍系(neighborhood system of \(a\))と呼びます。

点\(a\in \mathbb{R}\)と半径\(\varepsilon >0\)をそれぞれ任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}
d\left( a,a\right) &=&0\quad \because \text{距離の不可識別同一性} \\
&<&\varepsilon \quad \because \varepsilon >0
\end{eqnarray*}が成り立ちますが、近傍の定義より、これは\(a\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \)が成り立つことを意味します。任意の\(\varepsilon \)について同様の議論が成立するため、\(a\)は自身を中心とする任意の近傍の要素です。これは\(a\)が自身の近傍系\(N\left( a\right) \)の共通部分の要素であること、すなわち、\begin{equation*}
a\in \bigcap N\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つことを意味します。さらに、点\(a\)の任意の近傍に属する点は\(a\)自身ですが(証明は演習問題にします)、これは\(N\left( a\right) \)の共通部分の要素が\(a\)だけであることを意味します。

命題(点の近傍系の性質)
実数空間の点\(a\in \mathbb{R}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}
\bigcap N\left( a\right) =\left\{ a\right\}
\end{equation*}が成り立つ。ただし、\(N\left( a\right) \)は点\(a\)の近傍系である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

点\(a\in \mathbb{R}\)の近傍系\(N\left( a\right) \)の要素、すなわち点\(a\)の近傍を2つ任意に選び、それらを\(N_{\varepsilon _{1}}\left( a\right) \)と\(N_{\varepsilon _{2}}\left( a\right) \)でそれぞれ表記します。\(\varepsilon _{1}>0\)かつ\(\varepsilon _{2}>0\)です。このとき、これら2つの近傍の双方に含まれる点\(a\)の近傍が必ず存在します。つまり、\begin{equation*}
\exists \varepsilon >0:N_{\varepsilon }\left( a\right) \subset
N_{\varepsilon _{1}}\left( a\right) \cap N_{\varepsilon _{2}}\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つということです(証明は演習問題にします)。

命題(点の近傍系の性質)
実数空間の点\(a\in \mathbb{R}\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}
\forall \varepsilon _{1}>0,\ \forall \varepsilon _{2}>0,\ \exists
\varepsilon >0:N_{\varepsilon }\left( a\right) \subset N_{\varepsilon
_{1}}\left( a\right) \cap N_{\varepsilon _{2}}\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つ。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

つまり、点\(a\)の近傍系\(N\left( a\right) \)の2つの要素を任意に選んだとき、それらの共通部分の部分集合であるような\(N\left( a\right) \)の要素が必ず存在するということです。つまり、上の命題を一般的な形で表現すると、それぞれの点\(a\in \mathbb{R}\)に対して、\begin{equation*}
\forall A\in N\left( a\right) ,\ \forall B\in N\left( a\right) ,\ \exists
C\in N\left( a\right) :C\subset A\cap B
\end{equation*}が成り立つという主張になります。このような意味において、上の命題は点の近傍系の性質を記述したものになっています。

 

実数空間の近傍系

実数空間の点\(a\in \mathbb{R}\)に応じて中心が異なる様々な近傍系\(N\left( a\right) \)が得られます。そこで、実数空間のすべての点の近傍系からなる集合を、\begin{equation*}
N=\left\{ N\left( a\right) \ |\ a\in
\mathbb{R}\right\}
\end{equation*}で表記し、これを\(\mathbb{R}\)の近傍系(neighbourhood system of \(\mathbb{R}\))と呼びます。

実数空間の点\(a\in \mathbb{R}\)と半径\(\varepsilon >0\)をそれぞれ任意に選んだ上で近傍\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)をとります。さらに、この近傍に属する点\(b\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \)を任意に選んだとき、この点\(b\)の近傍の中に、先の近傍\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)の部分集合であるようなものが必ず存在します。つまり、近傍\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)を任意に選んだとき、それに対して、\begin{equation*}
\forall b\in N_{\varepsilon }\left( a\right) ,\ \exists \delta >0:N_{\delta
}\left( b\right) \subset N_{\varepsilon }\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つということです(証明は演習問題にします)。

命題(近傍系の性質)
実数空間の点\(a\in \mathbb{R}\)と半径\(\varepsilon >0\)を任意に選んだ上で近傍\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)を作ったとき、それに対して、\begin{equation*}
\forall b\in N_{\varepsilon }\left( a\right) ,\ \exists \delta >0:N_{\delta
}\left( b\right) \subset N_{\varepsilon }\left( a\right)
\end{equation*}が成り立つ。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(近傍系の性質)
上の命題の主張を以下に図解しました。点\(a\)の近傍\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)が与えられたとき、その要素\(b\in N_{\varepsilon }\left( a\right) \)を任意に選ぶと、下図のように\(N_{\delta }\left( b\right) \subset N_{\varepsilon }\left( a\right) \)を満たす点\(b\)の近傍\(N_{\delta }\left( b\right) \)を常に得ることができます。
図:近傍系の性質
図:近傍系の性質

 

演習問題

問題(点の近傍)
点\(a\in \mathbb{R}\)が与えられたとき、\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)について、\begin{equation*}
\exists \varepsilon >0:N_{\varepsilon }\left( a\right) \subset A
\end{equation*}が成り立つ場合、\(A\)を\(a\)の近傍と呼びます。ただし、\(N_{\varepsilon }\left( a\right) \)は半径が\(\varepsilon \)であるような点\(a\)の近傍です。以上を踏まえた上で以下を証明してください。
  1. 点\(a\in \mathbb{R}\)の任意の近傍は\(a\)を要素として持つ。
  2. 点\(a\in \mathbb{R}\)を中心に持つ閉区間\(\left[ a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right] \ \left( \varepsilon >0\right) \)は\(a\)の近傍である。
  3. \(\mathbb{R}\)の部分集合である\(A\)と\(B\)がともに点\(a\in \mathbb{R}\)の近傍であるならば\(A\cap B\)もまた\(a\)の近傍である。
解答

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

次回は開集合という概念について解説します。

< 前のページ
次のページ >
Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有
RELATED KNOWLEDGE

関連知識

近傍

近傍・近傍系

ユークリッド空間における点の近傍、近傍系、およびユークリッド空間の近傍系という概念を定義します。これは実数の開区間を一般化した概念です。

区間

区間

実数の特別な部分集合である区間という概念を定義します。

ユークリッド距離

絶対値

実数の絶対値と呼ばれる概念を定義した上で、その代表的な性質について解説します。

DISCUSSION

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

直線の位相