近傍・近傍系

1次元ユークリッド空間 R における点 a∈R と正の実数 ε>0 が与えられたとき、a の ε-近傍とは a からの距離が ε よりも小さいような点からなる集合のことです。これは a を中心とする有界開区間と実質的に等しい概念です。

2019年5月9日:公開

1次元ユークリッド空間

1次元ユークリッド空間について簡単に復習します。まず、実数からなる順序対\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R}^{2}\)に対して、\(x\)から\(y\)への距離を、\begin{equation*}
d\left( x,y\right) =\left\vert x-y\right\vert
\end{equation*}と定義します。つまり、順序対\(\left( x,y\right) \)に含まれる 2 つの実数\(x,y\)の差の絶対値が距離です。また、それぞれの順序対\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)に対して距離\(d\left( x,y\right) \in \mathbb{R}\)を定める関数\(d:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R}\)を距離関数と呼びます。さらに、\(\mathbb{R}\)とユークリッド距離関数\(d\)の組\(\left( \mathbb{R} ,d\right) \)を1次元のユークリッド空間と呼びます。ただし、距離が定義されていることが文脈から明らかである場合にはユークリッド空間をシンプルに\(\mathbb{R}\)で表します。

\(\mathbb{R}\)をユークリッド空間とみなす場合には\(\mathbb{R}\)の要素である個々の実数を点と呼び、\(\mathbb{R}\)の部分集合を点集合と呼ぶことがあります。

\(\mathbb{R}\)上に定義されたユークリッド距離関数\(d:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R}\)は以下の性質を満たします。\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ \forall x,y\in \mathbb{R} :d\left( x,y\right) \geq 0 \\
&&\left( b\right) \ \forall x,y\in \mathbb{R} :[\left( x,y\right) =0\ \Leftrightarrow \ x=y] \\
&&\left( c\right) \ \forall x,y\in \mathbb{R} :d\left( x,y\right) =d\left( y,x\right) \\
&&\left( d\right) \ \forall x,y,z\in \mathbb{R} :d\left( x,z\right) \leq d\left( x,y\right) +d\left( y,z\right)
\end{eqnarray*}

距離の性質を復習する

 

点の近傍

引き続き復習になりますが、1次元ユークリッド空間\(\mathbb{R}\)における点\(a\in \mathbb{R}\)と正の実数\(\varepsilon >0\)が与えられたとき、\(a\)の\(\varepsilon \)-近傍とは\(a\)からの距離が\(\varepsilon \)よりも小さいような点からなる集合のことであり、これは、\begin{align*}
U_{\varepsilon }\left( a\right) & =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ d\left( x,a\right) <\varepsilon \right\} \\
& =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ \left\vert x-a\right\vert <\varepsilon \right\} \\
& =\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right)
\end{align*}など様々な形で表現できます。\(\varepsilon \)-近傍をシンプルに近傍と呼ぶこともあります。

上に示したように、\(\mathbb{R}\)における点\(a\)の近傍は\(a\)を中心とする有界開区間と実質的に等しい概念です。

 

点の近傍系

\(\mathbb{R}\)における点\(a\in \mathbb{R}\)を中心とするすべての近傍からなる集合を、\begin{equation*}
U\left( a\right) =\{U_{\varepsilon }\left( a\right) \ |\ 0<\varepsilon <+\infty \}
\end{equation*}で表し、これを点\(a\)の近傍系(neighbourhood system of \(a\))と呼びます。

\(\mathbb{R}\)における点の近傍系は以下の性質を満たします。

命題(点の近傍系の性質)
\(\mathbb{R}\)における点\(a\in \mathbb{R}\)の近傍系\(U\left( a\right) \)に関して以下が成り立つ。\begin{eqnarray*}
&&\left( N_{1}\right) \ \forall \varepsilon >0:a\in U_{\varepsilon }\left( a\right) \\
&&\left( N_{2}\right) \ \forall \varepsilon _{1}>0,\ \forall \varepsilon _{2}>0,\ \exists \varepsilon >0:U_{\varepsilon }\left( a\right) \subset U_{\varepsilon _{1}}\left( a\right) \cap U_{\varepsilon _{2}}\left( a\right)
\end{eqnarray*}
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性質\(\left( N_{1}\right) \)は近傍は中心を含むこと、性質\(\left( N_{2}\right) \)は中心を共有する任意の2つの近傍の共通部分に対し、やはり中心を共有する近傍が部分集合として含まれることを意味します。

 

\(\mathbb{R} \)の近傍系

\(\mathbb{R}\)における任意の点を中心とするすべての近傍からなる集合を、\begin{equation*}
U=\{U\left( x\right) \ |\ x\in \mathbb{R} \}
\end{equation*}で表し、これを\(\mathbb{R}\)の近傍系(neighbourhood system of \(\mathbb{R}\))と呼びます。

\(\mathbb{R}\)の近傍系は以下の性質を満たします。

命題(近傍系の性質)
\(\mathbb{R}\)の近傍系\(U\)に関して以下が成り立つ。すなわち、\begin{equation*}
y\in U_{\varepsilon }\left( x\right) \end{equation*}を満たす点\(x,y\in \mathbb{R}\)と\(\varepsilon >0\)をそれぞれ任意に選んだとき、それに対して、\begin{equation*}
U_{\delta }\left( y\right) \subset U_{\varepsilon }\left( x\right)
\end{equation*}を満たす\(\delta >0\)が存在する。
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つまり、近傍\(U_{\varepsilon }\left( x\right) \)に属する点\(y\)を任意に選んだとき、\(y\)が中心であり\(U_{\varepsilon }\left( x\right) \)の部分集合であるような近傍\(U_{\delta }\left( y\right) \)が必ず存在するということです。

次回は開集合という概念について解説します。
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