WIIS

教材一覧
教材一覧
教材検索
TOPOLOGY OF THE REAL LINE

実数空間におけるハイネ・ボレルの被覆定理

目次

Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有

コンパクト集合の部分閉集合はコンパクト集合

実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)がコンパクト集合であることを示すためには、\(A\)の任意の開被覆が有限部分被覆を持つことを示す必要があり、その手続きは面倒かつ困難であるように思われます。ハイネ・ボレルの被覆定理(Heine-Borel’s covering theorem)はコンパクト集合を特定する上で非常に有益な示唆を与えてくれます。

この定理について解説する前に、前提知識としていくつか命題を示します。まず、\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)がコンパクト集合である場合、\(A\)の部分集合であるような任意の閉集合もまたコンパクト集合になります。

命題(コンパクト集合の部分閉集合はコンパクト集合)
実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合であるならば、\(A\)の部分集合であるような\(\mathbb{R} \)上の任意の閉集合もまた\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

有界な閉区間はコンパクト集合

\(\mathbb{R} \)上の有界な閉区間はコンパクト集合です。

命題(有界な閉区間はコンパクト集合)
\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、これらを端点とする有界な閉区間\begin{equation*}\left[ a,b\right] =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a\leq x\leq b\right\}
\end{equation*}を定義する。これは\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(有界な閉区間はコンパクト集合)
\(a<b<c<d\)を満たす実数\(a,b,c,d\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、有界な閉区間\begin{equation*}\left[ a,b\right] ,\ \left[ c,d\right] \end{equation*}を構成します。上の命題より、これらは\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合です。コンパクト集合どうしの共通部分はコンパクト集合であるため、\begin{equation*}\left[ a,b\right] \cap \left[ c,d\right] =\phi
\end{equation*}はコンパクト集合です。空集合はコンパクト集合であるため、この結果は上の命題の主張と整合的です。コンパクト集合どうしの和集合もコンパクト集合であるため、\begin{equation*}
\left[ a,b\right] \cup \left[ c,d\right] \end{equation*}もまたコンパクト集合です。ただし、\(\left[ a,b\right] \)と\(\left[ c,d\right] \)は互いに素であるため、これは区間ではありません。コンパクト集合は有界閉区間であるとは限りません。

 

有界な閉集合はコンパクト集合

\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が有界閉集合であるものとします。\(A\)の有界性より、\begin{equation*}A\subset \left[ a,b\right] \end{equation*}を満たす有界な閉区間\(\left[ a,b\right] \)が存在しますが、直前の命題より\(\left[ a,b\right] \)はコンパクト集合です。仮定より\(A\)は閉集合であるため、\(A\)はコンパクト集合\(\left[ a,b\right] \)の部分閉集合です。したがって、先に示したもう一方の命題より\(A\)はコンパクト集合であることが明らかになりました。

命題(有界な閉集合はコンパクト集合)
\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が有界な閉集合であるならば、\(A\)は\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合である。
例(1点集合はコンパクト集合)
点\(a\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、それだけを要素として持つ1点集合\(\left\{ a\right\} \)を構成すると、これは\(\mathbb{R} \)上の有界な閉集合です。したがって、上の命題より、1点集合\(\left\{ a\right\} \)は\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合です。
例(点の閉近傍はコンパクト集合)
点\(a\in \mathbb{R} \)と正の実数\(\varepsilon >0\)が与えられたとき、\(a\)を中心とする\(\varepsilon \)-閉近傍は、\begin{align*}C_{\varepsilon }\left( a\right) & =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ \left\vert x-a\right\vert \leq \varepsilon \right\} \\
& =\left[ a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right] \end{align*}と定義されます。先に指摘したように有界な閉区間は\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合であるため、\(C_{\varepsilon }\left(a\right) \)もまた\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合です。
例(閉区間ではないコンパクト集合)
先に示したように、\(a<b<c<d\)を満たす実数\(a,b,c,d\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\begin{equation*}\left[ a,b\right] \cup \left[ c,d\right] \end{equation*}は\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合です。実際、これは有界な閉集合です。その一方で、有界な閉区間ではありません。

 

ハイネ・ボレルの被覆定理

\(\mathbb{R} \)上の有界な閉区間は\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合であることが示されましたが、実はその逆もまた成立します。つまり、\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合は有界な閉集合であることが保証されます。

命題(コンパクト集合は有界な閉集合)
\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合であるならば、\(A\)は\(\mathbb{R} \)上の有界な閉集合である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

以上の2つの命題より、\(\mathbb{R} \)の部分集合がコンパクト集合であることと、その集合が有界な閉集合であることが必要十分であることが明らかになりました。つまり、有界な閉集合としてコンパクト集合を定義できるということです。これをハイネ・ボレルの被覆定理(Heine-Borel’s covering theorem)と呼びます。

命題(ハイネ・ボレルの被覆定理)
\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)について、\(A\)が\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合であることと、\(A\)が\(\mathbb{R} \)上の有界な閉集合であることは必要十分である。

 

コンパクト集合ではないことの証明

ハイネ・ボレルの被覆定理より、\(\mathbb{R} \)の部分集合がコンパクト集合であることを示すためには、それが\(\mathbb{R} \)上の有界な閉集合であることを示せばよいことになります。逆に、\(\mathbb{R} \)の部分集合が有界ではない場合や閉集合ではない場合などには、その集合はコンパクト集合ではありません。

例(無限区間はコンパクト集合ではない)
\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、無限半開区間\begin{eqnarray*}\left( a,+\infty \right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a<x<+\infty \right\} \\
\left( -\infty ,b\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ -\infty <x<b\right\}
\end{eqnarray*}や無限半閉区間\begin{eqnarray*}
\lbrack a,+\infty ) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a\leq x<+\infty \right\} \\
(-\infty ,b] &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ -\infty <x\leq b\right\}
\end{eqnarray*}を定義します。これらは有界ではないため\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合ではありません。同様に、全区間\begin{equation*}\mathbb{R} =\left( -\infty ,+\infty \right) \end{equation*}もまた有界ではないため\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合ではありません。
例(開区間や半開区間はコンパクト集合ではない)
\(a<b\)を満たす\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、これらを端点とする有界な開区間\begin{equation*}\left( a,b\right) =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a<x<b\right\}
\end{equation*}や有界な半開区間\begin{eqnarray*}
\lbrack a,b) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a\leq x<b\right\} \\
(a,b] &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a<x\leq b\right\}
\end{eqnarray*}を定義します。これらは有界であるものの閉集合ではないため\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合ではありません。

 

演習問題

問題(コンパクト集合)
\(a<b<c<d\)を満たす実数\(a,b,c,d\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、\begin{equation*}\left( a,b\right) \cup \left( c,d\right)
\end{equation*}という\(\mathbb{R} \)の部分集合を定義します。これは\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合ですか。議論してください。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(コンパクト集合)
\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が有限集合である場合、\(A\)は\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合であることをハイネ・ボレルの被覆定理を用いて示してください。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

コンパクト集合は有界閉集合として特徴づけられることが明らかになりましたが、実はコンパクト集合は数列を用いて表現することもできます。次回は点列コンパクト集合と呼ばれる概念について解説します。

Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有
RELATED KNOWLEDGE

関連知識

閉集合
実数空間における閉集合・閉集合系

実数空間Rの部分集合 A に対して、その補集合がR上の開集合であるならば、AをR上の閉集合と呼びます。閉集合は収束する数列を使って定義することも可能です。

閉集合
ユークリッド空間における閉集合・閉集合系

ユークリッド空間の部分集合Aが与えられたとき、Aの補集合がユークリッド空間上の開集合である場合には、Aをユークリッド空間上の閉集合であるといいます。また、ユークリッド空間上のすべての閉集合からなる集合族を閉集合系と呼びます。

閉集合
数列を用いた開集合・閉集合の判定

実数空間 R の部分集合 A が閉集合であることの意味を数列を用いて表現することもでき、こちらの定義を採用した方が閉集合であることを容易に判定できる場合があります。

境界点・境界
境界を用いた閉集合の判定

実数空間 R の部分集合 A が与えられたとき、A の境界が A の部分集合であることは、A が閉集合であるための必要十分条件です。したがって、集合 A の境界が A の部分集合であれば A は閉集合であり、A の境界が A の部分集合でなければ A は閉集合ではありません。

触点
実数空間における閉包を用いた閉集合の判定

実数空間 R の部分集合 A が与えられたとき、A の閉包が A と一致することは、A が閉集合であるための必要十分条件です。したがって、集合 A の閉包 A と等しければ A は閉集合であり、A の閉包が A と等しくなければ A は閉集合ではありません。

閉集合
導集合を用いた閉集合の判定

実数空間の部分集合 A が与えられたとき、その任意の集積点が A の要素であることは、その集合 A が閉集合であるための必要十分条件です。

コンパクト集合
実数空間におけるコンパクト集合

実数空間の部分集合Aを覆う開集合族(開被覆)を任意に選んだとき、それに対して有限部分被覆が必ず存在する場合には、Aはコンパクト集合であると言います。

コンパクト集合
実数空間における点列コンパクト集合

実数空間の部分集合が与えられたとき、その集合の要素を項とする任意の点列がその集合の点に収束する部分列を持つとき、その集合を点列コンパクト集合と呼びます。ある集合が点列コンパクトであることと、その集合がコンパクトであることは必要十分です。

カントールの縮小区間定理
カントールの縮小区間定理の一般化

カントールの縮小区間定理は入れ子構造の閉区間列に関する命題ですが、同様の主張が入れ子構造のコンパクト集合列に関して成り立ちます。つまり、入れ子構造のコンパクト集合列の共通部分は非空になることが保証されます。

コンパクト集合
コンパクト集合

ユークリッド空間の部分集合Aを覆う開集合族(開被覆)を任意に選んだとき、それに対して有限部分被覆が必ず存在する場合には、Aはコンパクト集合であると言います。

コンパクト集合
コンパクト集合の演算

任意個のコンパクト集合の共通部分はコンパクト集合であり、有限個のコンパクト集合の和集合はコンパクト集合です。

コンパクト集合
ハイネ・ボレルの被覆定理

ユークリッド空間の部分集合 A が与えられたとき、A が有界な閉集合であることと、A がコンパクト集合であることは必要十分です。これをハイネ・ボレルの被覆定理と呼びます。

DISCUSSION

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

直線の位相