ハイネ・ボレルの被覆定理

実数空間の部分集合が有界な閉集合であることと、その集合がコンパクト集合であることは必要十分条件です。これをハイネ・ボレルの被覆定理と呼びます。
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コンパクト集合の部分閉集合はコンパクト集合

実数空間\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)がコンパクト集合であることを示すためには、\(A\)の任意の開被覆有限部分被覆を持つことを示す必要があり、その手続きは面倒かつ困難であるように思われます。ハイネ・ボレルの被覆定理(Heine-Borel’s covering theorem)はコンパクト集合を特定する上で非常に有益な示唆を与えてくれます。

この定理について解説する前に、前提知識としていくつか命題を示します。まず、\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)がコンパクト集合である場合、\(A\)の部分集合であるような任意の閉集合もまたコンパクト集合になります。証明は以下の通りです。

\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合\(A\)が与えられたとき、\(B\subset A\)を満たす\(\mathbb{R}\)上の閉集合\(B\)を任意に選びます。その上で、\(B\)の開被覆に相当する\(\mathbb{R}\)の部分集合族を任意に選び、それを\(\mathfrak{C}\)で表記します。つまり、\(\mathfrak{C}\)の要素はいずれも\(\mathbb{R}\)上の開集合であるとともに、\begin{equation}
B\subset \bigcup \mathfrak{C} \quad\cdots (1)
\end{equation}が成り立つということです。この\(\mathfrak{C}\)が有限部分被覆を持つことを示すことが目標です。このとき、\begin{eqnarray*}
A &\subset &\mathbb{R}\\
&=&B\cup B^{c} \\
&\subset &\left( \bigcup \mathfrak{C}\right) \cup B^{c}\quad \because
\left( 1\right)
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation*}
A\subset \left( \bigcup \mathfrak{C}\right) \cup B^{c}
\end{equation*}が成り立ちますが、\(\mathfrak{C}\)は\(B\)の開被覆であり、閉集合\(B\)の補集合\(B^{c}\)は開集合であることから、上の関係は\(\mathfrak{C}\cup \left\{ B^{c}\right\} \)が\(A\)の開被覆であることを意味します。仮定より\(A\)はコンパクト集合であるため、この開被覆\(\mathfrak{C}\cup \left\{ B^{c}\right\} \)は有限部分被覆を持ちます。そこでそれを\(\mathfrak{C}^{\ast }\)で表記します。つまり、\(\mathfrak{C}^{\ast }\)の要素はいずれも\(\mathbb{R}\)上の開集合であるとともに、\begin{equation}
A\subset \bigcup \mathfrak{C}^{\ast }\subset \left( \bigcup \mathfrak{C}\right) \cup B^{c} \quad\cdots (2)
\end{equation}が成り立つということです。\(\left( 2\right) \)と\(B\subset A\)を踏まえると、\begin{equation*}
B\subset \bigcup \mathfrak{C}^{\ast }
\end{equation*}が成り立ちますが、\(B\cap B^{c}=\phi \)であることを踏まえると、このとき、\begin{equation*}
B\subset \left( \bigcup \mathfrak{C}^{\ast }\right) \backslash \left\{
B^{c}\right\}
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、\(\mathfrak{C}^{\ast }\backslash \left\{ B_{c}\right\} \)は\(B\)の有限被覆です。さらに\(\left( 2\right) \)より、\begin{equation*}
\left( \bigcup \mathfrak{C}^{\ast }\right) \backslash \left\{ B^{c}\right\}
\subset \bigcup \mathfrak{C}
\end{equation*}が成り立つため、\(\mathfrak{C}^{\ast }\backslash \left\{ B_{c}\right\} \)は\(\mathfrak{C}\)の部分集合族です。以上で\(B\)の開被覆である\(\mathfrak{C}\)が有限部分被覆\(\mathfrak{C}^{\ast }\backslash \left\{ B_{c}\right\} \)を持つことが明らかになったため目標は達成されました。

命題(コンパクト集合の部分閉集合はコンパクト集合)
実数空間\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)が\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合であるならば、\(A\)の部分集合であるような\(\mathbb{R}\)上の任意の閉集合もまた\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合である。
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有界な閉区間はコンパクト集合

実数空間\(\mathbb{R}\)の部分集合である有界な閉区間\(\left[ a,b\right] \)を任意に選んだとき、これは\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合になります。証明は以下の通りです。

閉区間\(\left[ a,b\right] \)がコンパクト集合でないものと仮定して矛盾を導きます。つまり、\(\left[ a,b\right] \)の開被覆の中に有限部分被覆を持たないものが存在するものと仮定して矛盾を導きます。そのような開被覆を\(\mathfrak{C}\)で表記します。

\(\left[ a,b\right] \)を\(\left[ a,\frac{a+b}{2}\right] \)と\(\left[ \frac{a+b}{2},b\right] \)という2つの閉区間に分割します。先の\(\mathfrak{C}\)は明らかにこの2つの閉区間の開被覆でもあります。一般に、コンパクト集合どうしの和集合はコンパクト集合です。したがって、\(\left[ a,\frac{a+b}{2}\right] \)と\(\left[ \frac{a+b}{2},b\right] \)がコンパクト集合であるならば、それらの和集合である\(\left[ a,b\right] \)もまたコンパクト集合です。対偶より、\(\left[ a,b\right] \)がコンパクト集合でない場合、\(\left[ a,\frac{a+b}{2}\right] \)と\(\left[ \frac{a+b}{2},b\right] \)の少なくとも一方はコンパクト集合ではありません。言い換えると、\(\left[ a,\frac{a+b}{2}\right] \)と\(\left[ \frac{a+b}{2},b\right] \)の少なくとも一方に関して、それを覆う\(\mathfrak{C}\)の有限部分被覆が存在しません。そこで、有限部分被覆を持たない方の閉区間を1つ選び、それを\(\left[ a_{1},b_{1}\right] \)で表記します。

\(\left[ a_{1},b_{1}\right] \)を\(\left[ a_{1},\frac{a_{1}+b_{1}}{2}\right] \)と\(\left[ \frac{a_{1}+b_{1}}{2},b_{1}\right] \)という2つの閉区間に分割します。先の\(\mathfrak{C}\)は明らかにこの2つの閉区間の開被覆でもありますが、先と同様の理由により、\(\left[ a_{1},\frac{a_{1}+b_{1}}{2}\right] \)と\(\left[ \frac{a_{1}+b_{1}}{2},b_{1}\right] \)の少なくとも一方に関して、それを覆う\(\mathfrak{C}\)の有限部分被覆が存在しません。そこで、有限部分被覆を持たない方の閉区間を1つ選び、それを\(\left[ a_{2},b_{2}\right] \)で表記します。

同様の操作を繰り返すと、\(\mathfrak{C}\)のいかなる有限部分集合族によっても覆われない閉区間からなる減少列\begin{equation}
\left[ a_{1},b_{1}\right] \supset \left[ a_{2},b_{2}\right] \supset \cdots
\supset \left[ a_{n},b_{n}\right] \supset \cdots \quad\cdots (1)
\end{equation}が得られますが、この区間列の作り方より、\begin{equation*}
b_{n}-a_{n}=\frac{b_{n-1}-a_{n-1}}{2}=\frac{b_{n-2}-a_{n-2}}{2^{2}}=\cdots =\frac{b-a}{2^{n}}
\end{equation*}が成り立つため、\begin{equation}
\lim_{n\rightarrow \infty }\left( b_{n}-a_{n}\right) =0 \quad\cdots (2)
\end{equation}を得ます。\(\left( 1\right) ,\left( 2\right) \)とカントールの区間縮小定理より、ある実数\(a\in \mathbb{R}\)が存在して、\begin{equation*}
\left\{ a\right\} =\bigcap\limits_{n\in \mathbb{N} }\left[ a_{n},b_{n}\right] \end{equation*}となります。先の区間列の作り方より、さらに、\begin{equation}
\left\{ a\right\} =\bigcap\limits_{n\in \mathbb{N} }\left[ a_{n},b_{n}\right] \subset \left[ a,b\right] \subset \bigcup
\mathfrak{C} \quad\cdots (3)
\end{equation}が成り立ちます。つまり、\(\mathfrak{C}\)の要素である\(\mathbb{R}\)上の開集合\(A\)の中に\(a\in A\)を満たすものが存在しますが、開集合の定義より、\begin{equation}
\exists \varepsilon >0:\left( a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right) \subset A
\quad\cdots (4)
\end{equation}が成り立ちます。\(\left( 2\right) ,\left( 3\right) \)より、\begin{equation*}
\lim_{n\rightarrow \infty }a_{n}=\lim_{n\rightarrow \infty }b_{n}=a
\end{equation*}が成り立つため、上の\(\varepsilon >0\)に対して、\begin{equation*}
\exists N\in \mathbb{N} ,\ \forall k\in \mathbb{N} :\left[ k\geq N\Rightarrow \left[ a_{k},b_{k}\right] \subset \left(
a-\varepsilon ,a+\varepsilon \right) \right] \end{equation*}が成り立ちますが、\(\left( 4\right) \)を踏まえると、\(\left[ a_{k},b_{k}\right] \)を覆う\(\mathfrak{C}\)の有限部分被覆\(\left\{ A\right\} \)が存在することになり、これは\(\left[ a_{k},b_{k}\right] \)の作り方と矛盾します。したがって、\(\left[ a,b\right] \)がコンパクト集合であることが明らかになりました。

命題(有界な閉区間はコンパクト集合)
実数空間\(\mathbb{R}\)上の任意の有界な閉区間\(\left[ a,b\right] \)は\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合である。
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ハイネ・ボレルの被覆定理

実数空間\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)が有界な閉集合であるものとします。\(A\)の有界性より、\begin{equation*}
A\subset \left[ a,b\right] \end{equation*}を満たす有界な閉区間\(\left[ a,b\right] \)が存在しますが、直前の命題より\(\left[ a,b\right] \)はコンパクト集合です。仮定より\(A\)は閉集合であるため、\(A\)はコンパクト集合\(\left[ a,b\right] \)の部分閉集合です。したがって、先に示したもう一方の命題より\(A\)はコンパクト集合であることが明らかになりました。

命題(有界な閉集合はコンパクト集合)
実数空間\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)が有界な閉集合であるならば、\(A\)は\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合である。
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例(有界な閉集合はコンパクト集合)
点\(a\in \mathbb{R}\)を任意に選んだ上で、それだけを要素として持つ1点集合\(\left\{ a\right\} \)を構成すると、これは\(\mathbb{R}\)上の有界な閉集合です。したがって、上の命題より、1点集合\(\left\{ a\right\} \)は\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合です。
例(有界な閉集合はコンパクト集合)
\(\mathbb{R}\)の部分集合である有界な閉区間\(\left[ a,b\right] \)と\(\left[ c,d\right] \)をそれぞれ任意に選びます。有界な閉区間は\(\mathbb{R}\)上の閉集合です。一般に、2つの閉集合の共通部分や和集合はいずれも閉集合であるため、\(\left[ a,b\right] \cap \left[ c,d\right] \)や\(\left[ a,b\right] \cup \left[ c,d\right] \)もまた\(\mathbb{R}\)上の閉集合です。しかもこれらは明らかに有界であるため、上の命題より、\(\left[ a,b\right] \cap \left[ c,d\right] \)や\(\left[ a,b\right] \cup \left[ c,d\right] \)もまた\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合です。

\(\mathbb{R}\)上の有界な閉区間は\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合であることが示されましたが、実はその逆もまた成立します。つまり、\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合は必ず\(\mathbb{R}\)の有界な閉集合です(証明は長くなるため「命題の証明」ページへ掲載します)。

命題(コンパクト集合は有界な閉集合)
実数空間\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)が\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合であるならば、\(A\)は\(\mathbb{R}\)上の有界な閉集合である。
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以上の2つの命題より、\(\mathbb{R}\)の部分集合がコンパクト集合であることと、その集合が有界な閉集合であることが必要十分であることが明らかになりました。これをハイネ・ボレルの被覆定理と呼びます。つまり、有界な閉集合としてコンパクト集合を定義することもできるということになります。

命題(ハイネ・ボレルの被覆定理)
実数空間\(\mathbb{R}\)の部分集合\(A\)について、\(A\)が\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合であることと、\(A\)が\(\mathbb{R}\)上の有界な閉集合であることは必要十分である。
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上の命題より、有界な閉集合ではない\(\mathbb{R}\)の部分集合はいずれもコンパクト集合ではありません。

例(ハイネ・ボレルの被覆定理)
\(\mathbb{R}\)上の半開区間である\([a,+\infty )\)や\((-\infty ,b]\)はいずれも\(\mathbb{R}\)上の閉集合ですが有界ではありません。したがって、上の命題より、\([a,+\infty )\)や\((-\infty ,b]\)はいずれも\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合ではありません。全区間\(\mathbb{R}=\left( -\infty ,+\infty \right) \)もまた有界ではないため、\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合ではありません。
例(ハイネ・ボレルの被覆定理)
\(\mathbb{R}\)上の半開区間\(\left( a,b\right) \)は有界である一方、これは\(\mathbb{R}\)上の開集合であり、閉集合ではありません。したがって、上の命題より、\(\left( a,b\right) \)は\(\mathbb{R}\)上のコンパクト集合ではありません。

コンパクト集合は有界閉集合として特徴づけられることが明らかになりましたが、実はコンパクト集合は数列を用いて表現することもできます。次回は点列コンパクト集合と呼ばれる概念について解説します。

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