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数直線の位相

実数空間において分離している2つの集合

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分離している2つの集合

実数空間\(\mathbb{R} \)の2つの部分集合\(A,B\)が以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ A\cap B=\phi \\
&&\left( b\right) \ A\cap B^{d}=\phi \\
&&\left( c\right) \ A^{d}\cap B=\phi
\end{eqnarray*}をすべて満たす場合には、\(A\)と\(B\)は分離している(separated)と言います。ただし、\(A^{d}\)は\(A\)のすべての集積点からなる集合、すなわち\(A\)の導集合です。同様に、\(B^{d}\)は\(B\)の導集合です。したがって、\(A\)と\(B\)が分離していることとは、それらが互いに素であるとともに、どちらも相手の集積点を要素として持たないことを意味します。

例(分離している集合)
以下の\(\mathbb{R} \)の部分集合\begin{eqnarray*}A &=&\left( 0,1\right) \\
B &=&\left( 2,3\right)
\end{eqnarray*}に注目します。まず、\begin{equation*}
A\cap B=\phi
\end{equation*}は明らかに成り立ちます。また、\begin{eqnarray*}
A\cap B^{d} &=&\left( 0,1\right) \cap \left( 2,3\right) ^{d}\quad \because
A,B\text{の定義} \\
&=&\left( 0,1\right) \cap \left[ 2,3\right] \quad \because \text{導集合の定義} \\
&=&\phi
\end{eqnarray*}であるとともに、\begin{eqnarray*}
A^{d}\cap B &=&\left( 0,1\right) ^{d}\cap \left( 2,3\right) \quad \because
A,B\text{の定義} \\
&=&\left[ 0,1\right] \cap \left( 2,3\right) \quad \because \text{導集合の定義} \\
&=&\phi
\end{eqnarray*}であるため、\(A\)と\(B\)は分離していることが明らかになりました。
例(分離している集合)
以下の\(\mathbb{R} \)の部分集合\begin{eqnarray*}A &=&\left( 0,1\right) \\
B &=&\left( 1,2\right)
\end{eqnarray*}に注目します。まず、\begin{equation*}
A\cap B=\phi
\end{equation*}は明らかに成り立ちます。また、\begin{eqnarray*}
A\cap B^{d} &=&\left( 0,1\right) \cap \left( 1,2\right) ^{d}\quad \because
A,B\text{の定義} \\
&=&\left( 0,1\right) \cap \left[ 1,2\right] \quad \because \text{導集合の定義} \\
&=&\phi
\end{eqnarray*}であるとともに、\begin{eqnarray*}
A^{d}\cap B &=&\left( 0,1\right) ^{d}\cap \left( 1,2\right) \quad \because
A,B\text{の定義} \\
&=&\left[ 0,1\right] \cap \left( 1,2\right) \quad \because \text{導集合の定義} \\
&=&\phi
\end{eqnarray*}であるため、\(A\)と\(B\)は分離していることが明らかになりました。

逆に、実数空間\(\mathbb{R} \)の2つの部分集合\(A,B\)が分離していないこととは、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ A\cap B\not=\phi \\
&&\left( b\right) \ A\cap B^{d}\not=\phi \\
&&\left( c\right) \ A^{d}\cap B\not=\phi
\end{eqnarray*}の中の少なくとも1つが成り立つことを意味します。つまり、\(A\)と\(B\)が互いに素でないか、または、少なくとも一方が相手の集積点を要素をして持つということです。

例(分離していない集合)
以下の\(\mathbb{R} \)の部分集合\begin{eqnarray*}A &=&\left[ 0,1\right] \\
B &=&\left[ 1,2\right] \end{eqnarray*}に注目します。\(A\)と\(B\)は分離していません。実際、\begin{eqnarray*}A\cap B &=&\left\{ 1\right\} \\
&\not=&\phi
\end{eqnarray*}が成り立つからです。

例(分離していない集合)
以下の\(\mathbb{R} \)の部分集合\begin{eqnarray*}A &=&\left( 0,1\right) \\
B &=&\left[ 1,2\right] \end{eqnarray*}に注目します。\(A\)と\(B\)は分離していません。実際、\(A\)と\(B\)は互いに素ではあるものの、\begin{eqnarray*}A^{d}\cap B &=&\left( 0,1\right) ^{d}\cap \left[ 1,2\right] \quad \because
A,B\text{の定義} \\
&=&\left[ 0,1\right] \cap \left[ 1,2\right] \quad \because \text{導集合の定義} \\
&=&\left\{ 1\right\} \\
&\not=&\phi
\end{eqnarray*}が成り立つからです。この例が示唆するように、互いに素な集合どうしは分離しているとは限りません。一方、分離している集合どうしは常に互いに素です。

 

閉包を用いた分離している集合の特徴づけ

\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)が任意に与えられたとき、\begin{equation*}A^{a}=A\cup A^{d}
\end{equation*}という関係が成り立ちます。ただし、\(A^{a}\)は\(A\)のすべての触点からなる集合、すなわち\(A\)の閉包です。以上の事実を踏まえると、\(\mathbb{R} \)の部分集合どうしが分離していることを以下のように表現することもできます。

命題(閉包を用いた分離している集合の特徴づけ)
\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A,B\)について、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ A\cap B^{a}=\phi \\
&&\left( b\right) \ A^{a}\cap B=\phi
\end{eqnarray*}がともに成り立つことは、\(A\)と\(B\)が分離しているための必要十分条件である。
証明

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以上の命題より、\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A,B\)が分離していることとは、どちらも相手の触点を要素をして持たないことを意味します。触点は内点または境界点であることを踏まえると、\(A,B\)が分離していることとは、どちらも相手の内点や境界点を要素を要素として持たないことを意味します。言い換えると、\(A\)と\(B\)はお互いに重なっておらず、また、お互いに相手の境界にも接していないということです。

例(分離している集合)
以下の\(\mathbb{R} \)の部分集合\begin{eqnarray*}A &=&[0,1) \\
B &=&(1,2] \end{eqnarray*}に注目します。まず、\begin{eqnarray*}
A\cap B^{a} &=&[0,1)\cap (1,2]^{a} \\
&=&[0,1)\cap \left[ 1,2\right] \\
&=&\phi
\end{eqnarray*}が成り立ちます。また、\begin{eqnarray*}
A^{a}\cap B &=&[0,1)^{a}\cap (1,2] \\
&=&\left[ 0,1\right] \cap (1,2] \\
&=&\phi
\end{eqnarray*}も成り立ちます。したがって\(A\)と\(B\)は分離しています。

逆に、実数空間\(\mathbb{R} \)の2つの部分集合\(A,B\)が分離していないこととは、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ A\cap B^{a}\not=\phi \\
&&\left( b\right) \ A^{a}\cap B\not=\phi
\end{eqnarray*}の少なくとも一方が成り立つことを意味します。つまり、\(A\)と\(B\)の少なくとも一方が相手の触点(内点または境界点)を要素をして持つということです。

例(分離していない集合)
以下の\(\mathbb{R} \)の部分集合\begin{eqnarray*}A &=&\left[ 0,1\right] \\
B &=&\left[ 1,2\right] \end{eqnarray*}に注目します。\(A\)と\(B\)は分離していません。実際、\begin{eqnarray*}A\cap B^{a} &=&\left[ 0,1\right] \cap \left[ 1,2\right] ^{a} \\
&=&\left[ 0,1\right] \cap \left[ 1,2\right] \\
&=&\left\{ 1\right\} \\
&\not=&\phi
\end{eqnarray*}が成り立つからです。

 

開集合を用いた分離している集合の特徴づけ

\(\mathbb{R} \)の部分集合どうしが分離していることを開集合を用いて以下のように表現することもできます。

命題(開集合を用いた分離している集合の特徴づけ)
\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A,B\)について、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ A\subset U\wedge U\cap B=\phi \\
&&\left( b\right) \ B\subset V\wedge V\cap A=\phi
\end{eqnarray*}をともに満たす\(\mathbb{R} \)上の開集合\(U,V\in \mathcal{O}\)が存在することは、\(A\)と\(B\)が分離しているための必要十分条件である。
証明

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以上の命題より、\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A,B\)が分離していることとは、\(A\)を部分集合として含むとともに\(B\)と交わらない開集合と、\(B\)を部分集合として含むとともに\(A\)と交わらない開集合がともに存在することを意味します。

例(分離している集合)
以下の\(\mathbb{R} \)の部分集合\begin{eqnarray*}A &=&[0,1) \\
B &=&(1,2] \end{eqnarray*}は分離しています。実際、以下の2つの開集合\begin{eqnarray*}
U &=&\left( -\infty ,1\right) \\
V &=&\left( 1,+\infty \right)
\end{eqnarray*}が、\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ A\subset U\wedge U\cap B=\phi \\
&&\left( b\right) \ B\subset V\wedge V\cap A=\phi
\end{eqnarray*}をともに満たすからです。

 

演習問題

問題(分離している集合)
以下の\(\mathbb{R} \)の部分集合\begin{eqnarray*}A &=&\left( 0,1\right) \cup \left( 2,3\right) \\
B &=&\left( 1,2\right)
\end{eqnarray*}は分離しているでしょうか。議論してください。

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問題(分離している集合)
以下の\(\mathbb{R} \)の部分集合\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ 0\right\} \\
B &=&\left( 0,1\right)
\end{eqnarray*}は分離しているでしょうか。議論してください。

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問題(分離している集合)
すべての有理数からなる集合\(\mathbb{Q} \)とすべての無理数からなる集合\(\mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \)はともに\(\mathbb{R} \)の部分集合ですが、これらは分離しているでしょうか。議論してください。
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問題(分離している集合)
\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\)を任意に選んだとき、\(A\)とその補集合\(A^{c}\)は常に分離していると言えるでしょうか。議論してください。
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