可分空間としての実数空間
実数空間\(\mathbb{R} \)の部分集合\(A\subset \mathbb{R} \)が以下の条件\begin{equation*}A^{a}=\mathbb{R} \end{equation*}を満たす場合には、つまり、\(A\)の閉包が\(\mathbb{R} \)と一致する場合には、\(A\)を\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合と呼びます。
集合\(A\subset \mathbb{R} \)が与えられた状況を想定します。点\(x\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、それに対して、\(A\)の点を項とするとともに点\(x\)へ収束する数列が存在することは、\(A\)が\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合であるための必要十分条件です。したがって、\(A\)が\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合であることとは、実数\(x\)を任意に選んだとき、\(x\)からいくらでも近い場所に\(A\)の点が無数に存在することを意味します。
以上の例が示唆するように、\(\mathbb{R} \)は様々な稠密部分集合を持ちます。特に、\(\mathbb{R} \)の稠密部分集合である有理数集合\(\mathbb{Q} \)は可算集合です。つまり、\(\mathbb{R} \)は可算集合であるような稠密部分集合を持ちます。以上の事実を指して、\(\mathbb{R} \)は可分空間(separable space)であると言います。
\(\mathbb{R} \)が可分空間であることが明らかになりましたが、以上の事実にはどのような利点があるのでしょうか。\(\mathbb{R} \)は可分空間であり、可算な稠密部分集合\(A\)を持ちます。\(\mathbb{Q} \)はそのような集合\(A\)の具体例です。稠密部分集合の定義より、実数\(x\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、点\(x\)へ収束する\(A\)上の数列\(\left\{ a_{n}\right\} \)が存在することが保証されます。数列の極限の定義より、以上の事実は、\(x\)からいくらでも近い場所に\(\left\{ a_{n}\right\} \)の点、すなわち\(A\)の要素が無数に存在することを意味します。しかも\(A\)は可算集合であるため、\(x\)からいくらでも近い場所にある\(A\)の要素の個数は可算です。つまり、実数\(x\)を任意に選んだとき、そこからいくらでも近い場所に可算個の\(A\)の要素が存在することが保証されるため、この事実を上手く利用することにより、非可算個の実数を対象とした複雑な議論を、可算個の\(A\)の要素を対象としたシンプルな議論へ帰着させることができます。
可分空間と第2可算公理の関係
実数空間\(\mathbb{R} \)における開集合系\(\mathcal{O}\left( \mathbb{R} \right) \)の基本開集合系\(\mathfrak{B}\)を任意に選びます。つまり、以下の条件\begin{equation*}\forall A\in \mathcal{O}\left( \mathbb{R} \right) \ ,\exists \mathfrak{B}^{\prime }\subset \mathfrak{B}:A=\bigcup
\mathfrak{B}^{\prime }
\end{equation*}を満たす開集合族\(\mathfrak{B}\subset \mathcal{O}\left( \mathbb{R} \right) \)を任意に選ぶということです。以上の事実は、\(\mathbb{R} \)における任意の開集合\(A\)が\(\mathfrak{B}\)の要素の和集合として表現可能であることを意味します。
開集合族\(\mathfrak{B}\subset \mathcal{O}\left( \mathbb{R} \right) \)が\(\mathbb{R} \)の開集合系\(\mathcal{O}\left( \mathbb{R} \right) \)の基本開集合系であることは、以下の条件\begin{equation*}\forall A\in \mathcal{O}\left( \mathbb{R} \right) \ ,\forall a\in A,\ \exists B\in \mathfrak{B}:a\in B\subset A
\end{equation*}が成り立つことと必要十分です。以上の事実は、\(\mathbb{R} \)における開集合\(A\)とその要素\(a\)を任意に選んだとき、\(a\)を要素として持つとともに\(A\)の部分集合であるような開集合を\(\mathfrak{B}\)の中から必ず選ぶことができることを意味します。
いずれにせよ、\(\mathbb{R} \)は第2可算公理を満たすため、可算集合であるような基本開集合系\(\mathfrak{B}\)が存在します。加えて、第2可算公理を踏まえると、\(\mathbb{R} \)が可分であることを導くことができます。先ほど、\(\mathbb{R} \)が可分空間であることを示す際に、可算な稠密部分集合の具体例として有理数集合\(\mathbb{Q} \)を提示しましたが、そのような具体例を挙げるまでもなく、\(\mathbb{R} \)が第2可算公理を満たすという事実から、\(\mathbb{R} \)が可分空間であることを導くことができるということです。
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