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正接関数(tan関数)の極限

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正接関数の極限

正接関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。つまり、\(f\)がそれぞれの\(x\in X\)に対して定める値が、\begin{equation*}f\left( x\right) =\tan \left( x\right)
\end{equation*}であるということです。ただし、\(f\)の定義域は、\begin{eqnarray*}X &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ \cos \left( x\right) \not=0\right\} \\
&=&\mathbb{R} \backslash \left\{ \frac{\left( \pm 1\right) \pi }{2},\frac{\left( \pm
3\right) \pi }{2},\frac{\left( \pm 5\right) \pi }{2},\cdots \right\}
\end{eqnarray*}です。

定義域上の点\(a\in X\)を任意に選んだとき、\(x\rightarrow a\)の場合に\(f\)は有限な実数へ収束するとともに、その極限は、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) =\tan \left( a\right)
\end{equation*}となります。

命題(正接関数の極限)

関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\tan \left( x\right)
\end{equation*}を定めるものとする。ただし、\begin{equation*}
X=\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ \cos \left( x\right) \not=0\right\}
\end{equation*}である。点\(a\in X\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) =\tan \left( a\right)
\end{equation*}が成り立つ。

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例(正接関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\tan \left( 3x^{2}+2x+1\right)
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\(X\)は\(f\)の定義域です。\(x\rightarrow 0\)の場合の\(f\)の極限を求めます。\(f\)は多項式関数\(3x^{2}+2x+1\)と正接関数\(\tan \left( x\right) \)の合成関数であることに注意してください。\(3x^{2}+2x+1\)は点\(0\)の周辺の任意の点において定義されているため、多項式関数の極限より、\begin{equation}\lim_{x\rightarrow 0}\left( 3x^{2}+2x+1\right) =1 \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。関数\(\tan \left( x\right) \)は点\(1\)において定義されているため、正接関数の極限より、\begin{equation}\lim_{x\rightarrow 1}\tan \left( x\right) =\tan \left( 1\right) \quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立ちます(関数\(\tan \left( x\right) \)は点\(1\)において連続)。以上を踏まえると、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow 0}f\left( x\right) &=&\lim_{x\rightarrow 0}\tan \left(
3x^{2}+2x+1\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\tan \left( 1\right) \quad \because \left( 1\right) ,\left( 2\right)
\text{および合成関数の極限}
\end{eqnarray*}となります。

例(余弦関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\tan \left( \frac{x^{2}-1}{x-1}\right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(X\)は\(f\)の定義域です。\(x\rightarrow 0\)の場合の\(f\)の極限を求めます。\(f\)は有理関数\(\frac{x^{2}-1}{x-1}\)と余弦関数\(\cos \left( x\right) \)の合成関数であることに注意してください。\(\frac{x^{2}-1}{x-1}\)は点\(0\)の周辺の任意の点において定義されているため、有理関数の極限より、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow 0}\left( \frac{x^{2}-1}{x-1}\right)
&=&\lim_{x\rightarrow 0}\frac{\left( x+1\right) \left( x-1\right) }{x-1} \\
&=&\lim_{x\rightarrow 0}\left( x+1\right) \\
&=&1
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation}
\lim_{x\rightarrow 0}\left( \frac{x^{2}-1}{x-1}\right) =1 \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。関数\(\tan \left( x\right) \)は点\(1\)において定義されているため、正接関数の極限より、\begin{equation}\lim_{x\rightarrow 1}\tan \left( x\right) =\tan \left( 1\right) \quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立ちます(関数\(\tan \left( x\right) \)は点\(1\)において連続)。以上を踏まえると、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow 0}f\left( x\right) &=&\lim_{x\rightarrow 0}\tan \left(
\frac{x^{2}-1}{x-1}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\tan \left( 1\right) \quad \because \left( 1\right) ,\left( 2\right)
\text{および合成関数の極限}
\end{eqnarray*}となります。

正接関数\(\tan \left( x\right) \)が定義されない点からなる集合は、\begin{eqnarray*}\mathbb{R} \backslash X &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ \cos \left( x\right) =0\right\} \\&=&\left\{ \frac{\left( \pm 1\right) \pi }{2},\frac{\left( \pm 3\right) \pi
}{2},\frac{\left( \pm 5\right) \pi }{2},\cdots \right\}
\end{eqnarray*}ですが、後ほど明らかになるように、点\(a\in \mathbb{R} \backslash X\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow a+}\tan \left( x\right) &=&-\infty \\
\lim_{x\rightarrow a-}\tan \left( x\right) &=&+\infty
\end{eqnarray*}が成り立ち、両者は一致しないため、\(x\rightarrow a\)の場合に正接関数は有限な実数へ収束せず、正の無限大\(+\infty \)や負の無限大\(-\infty \)へも発散しません。

例(正接関数の極限)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\tan \left( x^{2}+x-\frac{\pi }{6}\right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(X\)は\(f\)の定義域です。\(x\rightarrow 0\)の場合の\(f\)の極限を求めます。\(f\)は多項式関数\(x^{2}+x-\frac{\pi }{6}\)と正接関数\(\tan \left( x\right) \)の合成関数であることに注意してください。\(x^{2}+x-\frac{\pi }{6}\)は点\(0\)の周辺の任意の点において定義されているため、多項式関数の極限より、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow 0}\left( x^{2}+x-\frac{\pi }{6}\right) =-\frac{\pi }{6}
\end{equation*}が成り立ちます。ただ、\(\cos \left( -\frac{\pi }{6}\right) =0\)であり、したがって関数\(\tan \left( x\right) \)は点\(-\frac{\pi }{6}\)では定義されていないため、先の命題より、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow -\frac{\pi }{6}}\tan \left( x\right)
\end{equation*}は存在せず、したがって、\begin{equation*}
\lim_{x\rightarrow 0}f\left( x\right)
\end{equation*}もまた存在しません。

 

正接関数の片側極限

片側極限に関しても同様の主張が成り立ちます。

命題(正接関数の片側極限)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\tan \left( x\right)
\end{equation*}を定めるものとする。ただし、\begin{equation*}
X=\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ \cos \left( x\right) \not=0\right\}
\end{equation*}である。点\(a\in X\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \lim_{x\rightarrow a+}f\left( x\right) =\tan \left(
a\right) \\
&&\left( b\right) \ \lim_{x\rightarrow a-}f\left( x\right) =\tan \left(
a\right)
\end{eqnarray*}がともに成り立つ。

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正接関数が定義されない点に関する片側極限は以下の通りです。

命題(正接関数の片側極限)
関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\tan \left( x\right)
\end{equation*}を定めるものとする。ただし、\begin{equation*}
X=\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ \cos \left( x\right) \not=0\right\}
\end{equation*}である。点\(a\in \mathbb{R} \backslash X\)を任意に選んだとき、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \lim_{x\rightarrow a+}f\left( x\right) =-\infty \\
&&\left( b\right) \ \lim_{x\rightarrow a-}f\left( x\right) =+\infty
\end{eqnarray*}がともに成り立つ。

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正接関数の無限大における極限

正接関数\(\tan \left( x\right) \)は\(\cos \left(x\right) =0\)を満たす点\(x\in \mathbb{R} \)において定義されておらず、したがって\(\tan \left( x\right) \)は限りなく大きい任意の点や限りなく小さい任意の点において定義されていません。したがって、\(x\rightarrow +\infty \)の場合や\(x\rightarrow -\infty \)の場合の極限をとることはできません。

関連知識

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