一様連続な関数は連続
実数空間\(\mathbb{R} \)もしくはその部分集合\(X\)を定義域とし、値として実数をとる1変数関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。関数\(f\)が定義域\(X\)上で連続であることとは、\begin{equation}\forall a\in X,\ \forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall x\in
X:\left( |x-a|<\delta \Rightarrow \left\vert f\left( x\right) -f\left(
a\right) \right\vert <\varepsilon \right) \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つこととして定義される一方で、関数\(f\)が定義域\(X\)上において一様連続であることは、\begin{equation}\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall a\in X,\ \forall x\in
X:\left( |x-a|<\delta \Rightarrow \left\vert f\left( x\right) -f\left(
a\right) \right\vert <\varepsilon \right) \quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立つこととして定義されますが、両者の違いは量化記号\begin{equation*}
\forall a\in X
\end{equation*}の相対的な位置だけです。
連続性の定義\(\left( 1\right) \)において\(\forall a\in X\)は\(\exists \delta >0\)よりも前に置かれているため、\(\left( 1\right) \)を満たす\(\delta \)の水準は点\(a\)の位置に依存します。したがって、点\(a\)の位置が変われば\(\left( 1\right) \)を満たす\(\delta \)の値もまた変化し得ます。一方、一様連続性の定義\(\left(2\right) \)において\(\forall a\in X\)は\(\exists\delta >0\)よりも後に置かれているため、\(\left( 2\right) \)を満たす\(\delta \)の水準は点\(a\)の位置に依存しません。つまり、点\(a\)の位置が変わっても\(\left( 2\right) \)を満たす\(\delta \)の値は変化しません。したがって、\(\left( 2\right) \)中の\(\delta \)に課される制約は\(\left( 1\right) \)中の\(\delta \)に課される制約よりも厳しく、\(\left(2\right) \)を満たす\(\delta \)は必然的に\(\left( 1\right) \)を満たします。つまり、\(\left( 2\right) \)が成り立つ場合には\(\left(1\right) \)もまた成り立つこと、すなわち、一様連続な関数は連続であることが保証されるということです。実際、これは正しい主張です。
\end{equation*}と表されるものとします。つまり、\(f\)は定数関数です。この関数\(f\)が\(\mathbb{R} \)上で一様連続であることを示します。定義より、\begin{equation*}\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall a\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in \mathbb{R} :\left( \left\vert x-a\right\vert <\delta \Rightarrow \left\vert f\left(
x\right) -f\left( a\right) \right\vert <\varepsilon \right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall a\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in \mathbb{R} :\left( \left\vert x-a\right\vert <\delta \Rightarrow \left\vert
c-c\right\vert <\varepsilon \right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall a\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in \mathbb{R} :\left( \left\vert x-a\right\vert <\delta \Rightarrow 0<\varepsilon \right)
\end{equation*}を示すことが目標ですが、\(\varepsilon >0\)を任意に選んだとき、上の命題の結論\(0<\varepsilon \)は真であるため上の命題そのものも真です。したがって、\(f\)が\(\mathbb{R} \)上で一様連続であることが明らかになりました。すると先の命題より\(f\)は\(\mathbb{R} \)上で連続です。実際、\(f\)は定数関数であるため\(\mathbb{R} \)上で連続です。
\end{equation*}を定めるものとします。つまり、\(f\)は恒等関数です。この関数が\(\mathbb{R} \)上で一様連続であることを示します。定義より、\begin{equation*}\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall a\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in \mathbb{R} :\left( |x-a|<\delta \Rightarrow \left\vert f\left( x\right) -f\left(
a\right) \right\vert <\varepsilon \right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall a\in \mathbb{R} ,\ \forall x\in \mathbb{R} :\left( |x-a|<\delta \Rightarrow \left\vert x-a\right\vert <\varepsilon
\right)
\end{equation*}を示すことが目標です。\(\varepsilon >0\)を任意に選びます。それに対して、\begin{equation}\delta =\varepsilon >0 \quad \cdots (1)
\end{equation}をとれば、\begin{equation}
\left\vert x-a\right\vert <\delta \quad \cdots (2)
\end{equation}を満たす任意の\(a\in \mathbb{R} \)および\(x\in \mathbb{R} \)について、\begin{eqnarray*}\left\vert x-a\right\vert &<&\delta \quad \because \left( 2\right) \\
&=&\varepsilon \quad \because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}となります。したがって、\(f\)が\(\mathbb{R} \)上で一様連続であることが明らかになりました。すると先の命題より\(f\)は\(\mathbb{R} \)上で連続です。実際、\(f\)は恒等関数であるため\(\mathbb{R} \)上で連続です。
連続関数は一様連続であるとは限らない
一様連続な関数は連続であることが明らかになりましたが、その逆は成立するとは限りません。つまり、連続な関数は一様連続であるとは限らないということです。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は多項式関数であるため\(\mathbb{R} \)上において連続です。その一方で、この関数\(f\)は\(\mathbb{R} \)上で一様連続ではないことを示します。具体的には、\begin{equation*}\exists \varepsilon >0,\ \forall \delta >0,\ \exists a\in \mathbb{R} ,\ \exists x\in \mathbb{R} :\left( \left\vert x-a\right\vert <\delta \wedge \left\vert f\left( x\right)
-f\left( a\right) \right\vert \geq \varepsilon \right)
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\exists \varepsilon >0,\ \forall \delta >0,\ \exists a\in \mathbb{R} ,\ \exists x\in \mathbb{R} :\left( \left\vert x-a\right\vert <\delta \wedge \left\vert
x^{2}-a^{2}\right\vert \geq \varepsilon \right)
\end{equation*}を示すことが目標です。そこで、\begin{equation}
\varepsilon =1 \quad \cdots (1)
\end{equation}に注目します。\(\delta >0\)を任意に選んだ上で、\begin{eqnarray}a &=&\frac{1}{\delta } \quad \cdots (2) \\
x &=&a+\frac{\delta }{2} \quad \cdots (3)
\end{eqnarray}をとると、\begin{eqnarray*}
\left\vert x-a\right\vert &=&\left\vert \left( a+\frac{\delta }{2}\right) -\frac{1}{\delta }\right\vert \quad \because \left( 2\right) ,\left( 3\right)
\\
&=&\left\vert \left( \frac{1}{\delta }+\frac{\delta }{2}\right) -\frac{1}{\delta }\right\vert \quad \because \left( 2\right) \\
&=&\left\vert \frac{\delta }{2}\right\vert \\
&<&\delta \quad \because \delta >0
\end{eqnarray*}が成り立つとともに、\begin{eqnarray*}
\left\vert x^{2}-a^{2}\right\vert &=&\left\vert \left( a+\frac{\delta }{2}\right) ^{2}-\left( \frac{1}{\delta }\right) ^{2}\right\vert \quad \because
\left( 2\right) ,\left( 3\right) \\
&=&\left\vert \left( \frac{1}{\delta }+\frac{\delta }{2}\right) ^{2}-\left(
\frac{1}{\delta }\right) ^{2}\right\vert \quad \because \left( 2\right) \\
&=&\left\vert 1+\frac{\delta ^{2}}{4}\right\vert \\
&=&1+\frac{\delta ^{2}}{4}\quad \because \delta >0 \\
&>&1 \\
&=&\varepsilon \quad \because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}となるため証明が完了しました。
コンパクト集合上に定義された連続関数は一様連続
連続関数は一様連続であるとは限らないことが明らかになりました。ただ、連続関数の定義域がコンパクト集合である場合には、その関数が一様連続になることが保証されます。
\end{equation*}を定義します。有界な閉区間は\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合であるため、有界な閉区間上に定義された関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が連続である場合、先の命題より\(f\)は\(\left[ a,b\right]\)上で一様連続です。
\end{equation*}を定めるものとします。定義域が、\begin{equation*}
X=\mathbb{R} \end{equation*}である場合、\(f\)は\(X\)上で連続である一方で一様連続ではないことは先に示した通りです。実際、\(\mathbb{R} \)は有界ではなく、したがってコンパクト集合ではないため、たとえ\(f\)が\(\mathbb{R} \)上で連続であっても先の命題を利用できず、したがって\(f\)が\(\mathbb{R} \)上で一様連続であると言えません。では、\(f\)の定義域を有界閉区間\begin{equation*}X=\left[ a,b\right] \end{equation*}に変更した場合にはどうでしょうか。ただし、\(a<b\)です。\(f\)は多項式関数であるため、新たな定義域\(X\)上においても連続です。加えて、新たな定義域である有界閉区間は\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合です。したがって、先の命題より、\(f\)は新たな定義域\(X\)上で一様連続です。
先の命題は、連続関数が一様連続であるための十分条件を与えており、必要条件ではありません。つまり、連続関数が定義域上で一様連続である場合、その定義域はコンパクト集合であるとは限りません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定義します。その上で、それぞれの\(x\in \left(a,b\right) \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{2}
\end{equation*}を定める関数\(f:\mathbb{R} \supset \left( a,b\right) \rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。\(\left( a,b\right) \)は\(\mathbb{R} \)上のコンパクト集合ではないものの、\(f\)は\(\left( a,b\right) \)上で一様連続です(演習問題)。
有界開区間上に定義された一様連続関数の特徴づけ
\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界開区間上に定義された関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset \left( a,b\right) \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられたとき、端点における値\(\hat{f}\left(a\right) ,\hat{f}\left( b\right) \)を指定すれば定義域が\(\left[ a,b\right] \)へと拡張された関数\begin{equation*}\hat{f}:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が得られます。ただし、\(\left( a,b\right) \)上の点に対して\(\hat{f}\)は\(f\)と同じ値を定めるものとします。つまり、\begin{equation*}\forall x\in \left( a,b\right) :\hat{f}\left( x\right) =f\left( x\right)
\end{equation*}です。このような関数\(\hat{f}\)をもとの関数\(f\)の拡張(extension)と呼びます。端点における値\(\hat{f}\left( a\right) ,\hat{f}\left( b\right) \)の指定の仕方は様々であるため、関数\(f\)の拡張\(\hat{f}\)は一意的には定まりません。
関数\(f\)が区間\(\left( a,b\right) \)上において一様連続である場合には、区間\(\left[ a,b\right] \)上で連続であるような拡張\(\hat{f}\)が存在することが保証されます。言い換えると、\(\left( a,b\right) \)上において一様連続な関数\(f\)が与えられたとき、端点における値\(\hat{f}\left( a\right) ,\hat{f}\left(b\right) \)を上手く指定すれば、\(\left[ a,b\right] \)上において連続な関数が必ず得られます。
先の命題の逆もまた成立します。つまり、区間\(\left[ a,b\right] \)上で連続であるような拡張\(\hat{f}\)が存在する場合には\(f\)は\(\left( a,b\right) \)上で一様連続です。
以上の2つの命題を総合すると以下を得ます。
\end{equation*}を定めるものとします。この関数の拡張\(\hat{f}:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}\hat{f}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\frac{\sin \left( x\right) }{x} & \left( if\ x\neq 0\right) \\
1 & \left( if\ x=0\right)\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(\frac{\sin \left( x\right) }{x}\)は連続関数どうしの積であるため\(\hat{f}\)は\(\left( 0,1\right] \)上で連続です。点\(0\)においては、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow 0+}\hat{f}\left( x\right) &=&\lim_{x\rightarrow 0+}\frac{\sin \left( x\right) }{x}\quad \because \hat{f}\text{の定義} \\
&=&1 \\
&=&\hat{f}\left( 0\right) \quad \because \hat{f}\text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため\(\hat{f}\)は点\(0\)においても連続です。したがって\(\hat{f}\)は\(\left[ 0,1\right] \)上において連続であるため、先の命題より\(f\)は\(\left( 0,1\right) \)上において一様連続です。
演習問題
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は\(\left(0,1\right) \)上で連続である一方で、\(\left( 0,1\right) \)上で一様連続ではないことを示してください。
\end{equation*}を定めるものとします。\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(f\)は\(\left( a,b\right) \)上で一様連続であることを示してください。
\end{equation*}を定めるものとします。つまり、\(f\)は自然指数関数です。\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(f\)は\(\left( a,b\right) \)上で一様連続であることを示してください。
\end{equation*}を定めるものとします。つまり、\(f\)は自然対数関数です。\(0<a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(f\)は\(\left( a,b\right) \)上で一様連続であることを示してください。
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