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準凸関数・準凹関数

1変数の狭義準凸関数・狭義準凹関数

目次

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1変数の狭義準凸関数

実数空間\(\mathbb{R} \)もしくは区間を定義域とする関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)について、\begin{equation*}\forall x_{1}\in I,\ \forall x_{2}\in I\backslash \left\{ x_{1}\right\} ,\
\forall \lambda \in \left( 0,1\right) :f\left( \lambda x_{1}+\left(
1-\lambda \right) x_{2}\right) <\max \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left(
x_{2}\right) \right\}
\end{equation*}が成り立つ場合、\(f\)を狭義準凸関数(strictlyquasi-convex function)と呼びます。

図:狭義準凸関数
図:狭義準凸関数

関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が狭義準凸関数であることの意味を視覚的に理解します(上図)。狭義準凸関数\(f\)のグラフ上の2つの点\begin{equation*}A:\left( x_{1},f\left( x_{1}\right) \right) ,\quad B:\left( x_{2},f\left(
x_{2}\right) \right)
\end{equation*}を任意に選びます。点\(B\)は点\(A\)よりも上方に位置するため、\begin{equation*}\max \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} =f\left(
x_{2}\right)
\end{equation*}です。\(f\)のグラフ上の点\(A,B\)を端点とする部分から端点を除いた部分に存在するそれぞれの点\(P\)の座標は、何らかのスカラー\(\lambda \in \left(0,1\right) \)を用いて、\begin{equation*}\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2},f\left( \lambda
x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) \right)
\end{equation*}と表すことができます。狭義準凸関数の定義より、この点\(P\)は点\(B\)より下方にあることが保証されます。\(f\)のグラフ上の点\(A,B\)を端点とする部分から端点を除いた部分に存在する任意の点について同様の議論が成立するため、結局、\(f\)が狭義準凸関数である場合、\(f\)のグラフ上の点\(A,B\)を端点とする部分から端点を除いた部分全体が点\(B\)より下方にあることが保証されます。ちなみに、この関数\(f\)のグラフは下に凸であるため、\(f\)は狭義凸関数でもあります。

図:狭義準凸関数
図:狭義準凸関数

上図のグラフを持つ関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)もまた狭義準凸関数です。実際、\(f\)のグラフ上の2つの点\begin{equation*}A:\left( x_{1},f\left( x_{1}\right) \right) ,\quad B:\left( x_{2},f\left(
x_{2}\right) \right)
\end{equation*}を任意に選んだとき、点\(B\)は点\(A\)よりも上方に位置するため、\begin{equation*}\max \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} =f\left(
x_{2}\right)
\end{equation*}となりますが、\(f\)のグラフ上の点\(A,B\)を端点とする部分から端点を除いた部分全体が点\(B\)より下方に位置するからです。ちなみに、この関数\(f\)のグラフは上に凸であるため、\(f\)は狭義凸関数ではありません。狭義準凸関数は狭義凸関数であるとは限りません。

狭義準凸関数は準凸関数と何が違うのでしょうか。区間を定義域とする関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が準凸関数であることとは、\begin{equation*}\forall x_{1},x_{2}\in I,\ \forall \lambda \in \left[ 0,1\right] :f\left(
\lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) \leq \max \left\{
f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\}
\end{equation*}が成り立つことを意味する一方、\(f\)が狭義準凸関数であることとは、\begin{equation*}\forall x_{1}\in I,\ \forall x_{2}\in I\backslash \left\{ x_{1}\right\} ,\
\forall \lambda \in \left( 0,1\right) :f\left( \lambda x_{1}+\left(
1-\lambda \right) x_{2}\right) <\max \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left(
x_{2}\right) \right\}
\end{equation*}が成り立つことを意味します。最も大きな違いは、準凸関数は大小関係\(\geq \)を用いて定義されているのに対し、狭義準凸関数は狭義大小関係\(>\)を用いて定義されているという点です。それにあわせて、狭義準凸関数の定義中の点\(x_{1},x_{2}\)は\(I\)の異なる点であるとともに、スカラー\(\lambda \)が動く範囲は閉区間\(\left[ 0,1\right] \)ではなく開区間\(\left( 0,1\right) \)と指定されています。なぜなら、仮に\(x_{1}\)と\(x_{2}\)が同じ点であるならば、狭義準凸関数を定義する不等式は、\begin{equation*}f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{1}\right) <\max \left\{
f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{1}\right) \right\}
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
f\left( x_{1}\right) <f\left( x_{1}\right)
\end{equation*}となり、定義そのものが意味をなさなくなってしまうからです。また、仮に\(\lambda \)が\(0\)や\(1\)を値としてとり得ることを認めてしまうと、狭義準凸関数を定義する不等式より、\begin{eqnarray*}f\left( 0x_{1}+\left( 1-0\right) x_{2}\right) &<&\max \left\{ f\left(
x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} \\
f\left( 1x_{1}+\left( 1-1\right) x_{2}\right) &<&\max \left\{ f\left(
x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{eqnarray*}
f\left( x_{2}\right) &<&\max \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left(
x_{2}\right) \right\} \\
f\left( x_{1}\right) &<&\max \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left(
x_{2}\right) \right\}
\end{eqnarray*}を得ますが、これは矛盾です。

準凸関数と同様、狭義準凸関数の定義域もまた区間である必要があります。つまり、関数\(f\)が狭義準凸関数であることとは、定義域の異なる点\(x_{1},x_{2}\in I\)とスカラー\(\lambda \in \left(0,1\right) \)をそれぞれ任意に選んだとき、不等式\begin{equation*}f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) <\max \left\{
f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\}
\end{equation*}が成り立つことを意味しますが、そもそも上の不等式が成立するか否かを検討するためには左辺の値\(f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) \)が存在すること、すなわち\(f\)が点\(\lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\)において定義されている必要があります。\(f\)の定義域\(I\)が区間であれば\(\lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right)x_{2}\in I\)であること、すなわち\(f\)が点\(\lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right)x_{2}\)において定義されていることが保証されます。逆に、\(f\)の定義域\(I\)が区間でない場合、ある\(x_{1},x_{2},\lambda \)に対して\(f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) \)が存在しない事態が起こり得るため、そもそも上の不等式が意味をなさなくなってしまいます。

例(1変数の狭義準凸関数)
関数\(f:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{++}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\ln \left( x\right)
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)のグラフは以下の通りです。

図:狭義準凸関数
図:狭義準凸関数

\(f\)の定義域\(\mathbb{R} \)は区間です。定義域上の異なる点\(x_{1},x_{2}\in \mathbb{R} \)とスカラー\(\lambda \in \left( 0,1\right) \)をそれぞれ任意に選びます。\(x_{1}<x_{2}\)としても一般性は失われません。対数関数は狭義単調増加関数であるため\(\ln \left( x_{1}\right) <\ln \left( x_{2}\right) \)となり、したがって、\begin{eqnarray*}\max \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} &=&\max
\left\{ \ln \left( x_{1}\right) ,\ln \left( x_{2}\right) \right\} \quad
\because f\text{の定義} \\
&=&\ln \left( x_{2}\right)
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation}
\max \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} =\ln \left(
x_{2}\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。以上を踏まえると、\begin{eqnarray*}
f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) &=&\ln \left(
\lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&<&\ln \left( \lambda x_{2}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) \quad
\because x_{1}<x_{2},\ \ln \left( x\right) \text{は狭義単調増加} \\
&=&\ln \left( x_{2}\right) \\
&=&\max \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} \quad
\because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}となるため、\(f\)が狭義準凸関数であることが示されました。

例(1変数の狭義準凸関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =2x
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)のグラフは以下の通りです。

図:狭義準凸関数
図:狭義準凸関数

\(f\)の定義域\(\mathbb{R} \)は区間です。定義域上の異なる点\(x_{1},x_{2}\in \mathbb{R} \)とスカラー\(\lambda \in \left( 0,1\right) \)をそれぞれ任意に選びます。\(x_{1}<x_{2}\)としても一般性は失われません。関数\(2x\)は狭義単調増加関数であるため\(2x_{1}<2x_{2}\)となり、したがって、\begin{eqnarray*}\max \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} &=&\max
\left\{ 2x_{1},2x_{2}\right\} \quad \because f\text{の定義}
\\
&=&2x_{2}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation}
\max \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} =2x_{2}
\quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。以上を踏まえると、\begin{eqnarray*}
f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) &=&2\left(
\lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&<&2\left( \lambda x_{2}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) \quad
\because x_{1}<x_{2},\ 2x\text{は狭義単調増加} \\
&=&2x_{2} \\
&=&\max \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} \quad
\because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}となるため、\(f\)が狭義準凸関数であることが示されました。

これまで提示した例から明らかであるように、定義にもとづいて関数が狭義準凸であることを示す作業は煩雑になりがちです。より扱いやすい狭義準凸関数の判定条件が存在するため、多くの場合、それらを利用することになります。詳細は場を改めて解説します。

狭義準凸関数は準凸関数であることが保証されます。

命題(狭義準凸関数は準凸関数)
区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が狭義準凸関数であるならば、\(f\)は準凸関数である。
証明

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上の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、準凸関数は狭義準凸関数であるとは限りません。以下の例より明らかです。

例(準凸だが狭義準凸ではない関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =1
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は準凸ですが狭義準凸ではありません(演習問題)。

 

狭義準凸関数と狭義凸関数の関係

狭義凸関数は狭義準凸関数であることが保証されます。

命題(狭義凸関数は狭義準凸関数)
区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が狭義凸関数であるならば、\(f\)は狭義準凸関数である。
証明

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上の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、狭義準凸関数は狭義凸関数であるとは限りません。以下の例より明らかです。

例(狭義準凸だが狭義凸ではない関数)
関数\(f:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{++}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\ln \left( x\right)
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)のグラフは以下の通りです。

図:狭義準凸だが狭義凸ではない関数
図:狭義準凸だが狭義凸ではない関数

先に示したように、この関数\(f\)は狭義準凸関数です。一方、この関数\(f\)のグラフは上に凸であるため、\(f\)は狭義凸関数ではありません。より正確には、\(f\)の2階偏導関数は、任意の\(x\in \mathbb{R} _{++}\)において、\begin{equation*}f^{\prime \prime }\left( x\right) =-\frac{1}{x^{2}}<0
\end{equation*}を満たしますが、これは\(f\)が凸関数でないことを意味します。したがって\(f\)は狭義凸でもありません。

 

1変数の狭義準凹関数

実数空間\(\mathbb{R} \)もしくは区間を定義域とする関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)について、\begin{equation*}\forall x_{1}\in I,\ \forall x_{2}\in I\backslash \left\{ x_{1}\right\} ,\
\forall \lambda \in \left( 0,1\right) :f\left( \lambda x_{1}+\left(
1-\lambda \right) x_{2}\right) >\min \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left(
x_{2}\right) \right\}
\end{equation*}が成り立つ場合、\(f\)を狭義準凹関数(strictlyquasi-concave function)と呼びます。

図:狭義準凹関数
図:狭義準凹関数

関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が狭義準凹関数であることの意味を視覚的に理解します(上図)。狭義準凹関数\(f\)のグラフ上の2つの点\begin{equation*}A:\left( x_{1},f\left( x_{1}\right) \right) ,\quad B:\left( x_{2},f\left(
x_{2}\right) \right)
\end{equation*}を任意に選びます。点\(A\)は点\(B\)よりも下方に位置するため、\begin{equation*}\min \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} =f\left(
x_{1}\right)
\end{equation*}です。\(f\)のグラフ上の点\(A,B\)を端点とする部分から端点を除いた部分に存在するそれぞれの点\(P\)の座標は、何らかのスカラー\(\lambda \in \left(0,1\right) \)を用いて、\begin{equation*}\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2},f\left( \lambda
x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) \right)
\end{equation*}と表すことができます。狭義準凹関数の定義より、この点\(P\)は点\(A\)より上方であることが保証されます。\(f\)のグラフ上の点\(A,B\)を端点とする部分から端点を除いた部分に存在する任意の点について同様の議論が成立するため、結局、\(f\)が狭義準凹関数である場合、\(f\)のグラフ上の点\(A,B\)を端点とする部分から端点を除いた部分全体が点\(A\)より上方にあることが保証されます。ちなみに、この関数\(f\)のグラフは上に凸であるため、\(f\)は狭義凹関数でもあります。

図:狭義準凹関数
図:狭義準凹関数

上図のグラフを持つ関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)もまた狭義準凹関数です。実際、\(f\)のグラフ上の2つの点\begin{equation*}A:\left( x_{1},f\left( x_{1}\right) \right) ,\quad B:\left( x_{2},f\left(
x_{2}\right) \right)
\end{equation*}を任意に選んだとき、点\(A\)は点\(B\)よりも下方に位置するため、\begin{equation*}\min \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} =f\left(
x_{1}\right)
\end{equation*}となりますが、\(f\)のグラフ上の点\(A,B\)を端点とする部分から端点を除いた部分全体が点\(A\)より上方に位置するからです。ちなみに、この関数\(f\)のグラフは下に凸であるため、\(f\)は狭義凹関数ではありません。狭義準凹関数は狭義凹関数であるとは限りません。

狭義準凹関数\(f\)の定義域\(I\)は区間である必要がありますが、その理由は狭義準凸関数の定義域が区間でなければならない理由と同様です。つまり、\(f\)の定義域\(I\)が区間であれば任意の\(x_{1},x_{2},\lambda \)に対して\(f\)が点\(\lambda x_{1}+\left(1-\lambda \right) x_{2}\)において定義されることが保証されるため、狭義準凹関数の定義を構成する不等式が成立するか検討できます。

例(1変数の狭義準凹関数)
関数\(f:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{++}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\ln \left( x\right)
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)のグラフは以下の通りです。

図:狭義準凹関数
図:狭義準凹関数

\(f\)の定義域\(\mathbb{R} \)は区間です。定義域上の異なる点\(x_{1},x_{2}\in \mathbb{R} \)とスカラー\(\lambda \in \left( 0,1\right) \)をそれぞれ任意に選びます。\(x_{1}<x_{2}\)としても一般性は失われません。対数関数は狭義単調増加関数であるため\(\ln \left( x_{1}\right) <\ln \left( x_{2}\right) \)となり、したがって、\begin{eqnarray*}\min \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} &=&\min
\left\{ \ln \left( x_{1}\right) ,\ln \left( x_{2}\right) \right\} \quad
\because f\text{の定義} \\
&=&\ln \left( x_{1}\right)
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation}
\min \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} =\ln \left(
x_{1}\right) \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。以上を踏まえると、\begin{eqnarray*}
f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) &=&\ln \left(
\lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&>&\ln \left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{1}\right) \quad
\because x_{1}<x_{2},\ \ln \left( x\right) \text{は狭義単調増加} \\
&=&\ln \left( x_{1}\right) \\
&=&\min \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} \quad
\because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}となるため、\(f\)が狭義準凹関数であることが示されました。ちなみに、先に確認したように、この関数\(f\)は狭義準凸関数でもあります。

例(1変数の狭義準凹関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、

図:狭義準凹関数
図:狭義準凹関数

\(f\)の定義域\(\mathbb{R} \)は区間です。定義域上の異なる点\(x_{1},x_{2}\in \mathbb{R} \)とスカラー\(\lambda \in \left( 0,1\right) \)をそれぞれ任意に選びます。\(x_{1}<x_{2}\)としても一般性は失われません。関数\(2x\)は狭義単調増加関数であるため\(2x_{1}<2x_{2}\)となり、したがって、\begin{eqnarray*}\min \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} &=&\min
\left\{ 2x_{1},2x_{2}\right\} \quad \because f\text{の定義}
\\
&=&2x_{1}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation}
\min \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} =2x_{1}
\quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。以上を踏まえると、\begin{eqnarray*}
f\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) &=&2\left(
\lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{2}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&>&2\left( \lambda x_{1}+\left( 1-\lambda \right) x_{1}\right) \quad
\because x_{1}<x_{2},\ 2x\text{は狭義単調増加} \\
&=&2x_{1} \\
&=&\min \left\{ f\left( x_{1}\right) ,f\left( x_{2}\right) \right\} \quad
\because \left( 1\right)
\end{eqnarray*}となるため、\(f\)が狭義準凹関数であることが示されました。ちなみに、先に確認したように、この関数\(f\)は狭義準凸関数でもあります。

これまで提示した例から明らかであるように、定義にもとづいて関数が狭義準凹であることを示す作業は煩雑になりがちです。より扱いやすい狭義準凹関数の判定条件が存在するため、多くの場合、それらを利用することになります。詳細は場を改めて解説します。

狭義準凹関数は準凹関数であることが保証されます。

命題(狭義準凹関数は準凹関数)
区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が狭義準凹関数であるならば、\(f\)は準凹関数である。
証明

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上の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、準凹関数は狭義準凹関数であるとは限りません。以下の例より明らかです。

例(準凹だが狭義準凹ではない関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =1
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は準凹ですが狭義準凹ではありません(演習問題)。

 

狭義準凹関数と狭義凹関数の関係

狭義凹関数は狭義準凹関数であることが保証されます。

命題(狭義凹関数は狭義準凹関数)
区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が狭義凹関数であるならば、\(f\)は狭義準凹関数である。
証明

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上の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、狭義準凹関数は狭義凹関数であるとは限りません。以下の例より明らかです。

例(狭義準凹だが狭義凹ではない関数)
関数\(f:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{++}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =-\ln \left( x\right)
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)のグラフは以下の通りです。

図:狭義準凹だが狭義凹ではない関数
図:狭義準凹だが狭義凹ではない関数

この関数\(f\)は狭義準凹関数である一方、この関数\(f\)のグラフは下に凸であるため、\(f\)は狭義凹関数ではありません。より正確には、\(f\)の2階偏導関数は、任意の\(x\in \mathbb{R} _{++}\)において、\begin{equation*}f^{\prime \prime }\left( x\right) =\frac{1}{x^{2}}<0
\end{equation*}を満たしますが、これは\(f\)が凹関数でないことを意味します。したがって\(f\)は狭義凹でもありません。

 

狭義準凸関数と狭義準凹関数の関係

区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、それぞれの\(x\in I\)に対して、\begin{equation*}\left( -f\right) \left( x\right) =-f\left( x\right)
\end{equation*}を定める関数\(-f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能です。\(f\)が狭義準凸関数であることは\(-f\)が狭義準凹関数であることと必要十分であり、また、\(f\)が狭義準凹関数であることは\(-f\)が狭義準凸関数であることと必要十分になります。

命題(狭義準凸関数と狭義準凹関数の関係)
区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)に関して、\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ f\text{が狭義準凸関数}\Leftrightarrow -f\text{が狭義準凹関数} \\
&&\left( b\right) \ f\text{が狭義準凹関数}\Leftrightarrow -f\text{が狭義準凸関数}
\end{eqnarray*}がともに成り立つ。

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例(狭義準凸関数と狭義準凹関数の関係)
関数\(f:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{++}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\ln \left( x\right)
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように\(f\)は狭義準凸かつ狭義準凹です。したがって上の命題より、それぞれの\(x\in \mathbb{R} _{++}\)に対して、\begin{equation*}-f\left( x\right) =-\ln \left( x\right)
\end{equation*}を定める関数\(-f:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} \)もまた狭義準凸かつ狭義準凹です。
例(狭義準凸関数と狭義準凹関数の関係)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =2x
\end{equation*}を定めるものとします。先に示したように\(f\)は狭義準凸かつ狭義準凹です。したがって上の命題より、それぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}-f\left( x\right) =-2x
\end{equation*}を定める関数\(-f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)もまた狭義準凸かつ狭義準凹です。

 

演習問題

問題(狭義準凸関数・狭義準凸関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =1
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は準凸かつ準凹である一方、狭義準凸と狭義準凹のどちらでもないことを示してください。
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生産者理論では生産集合が凸集合であることを仮定することがあります。これは変換関数が準凸関数であることを意味します。

選好の凸性

消費ベクトル x 以上に望ましい消費ベクトル y,z を任意に選んだとき、それらを任意の割合で混ぜることで得られる消費ベクトルもまた x 以上に望ましいことが保証されるのであれば、選好は凸性を満たすと言います。凸性を満たす選好は準凹な効用関数によって特徴づけられます。

1変数の準凸関数・準凹関数

1変数関数が準凸関数であること、準凹関数であることの意味を解説します。凸関数は準凸関数ですが、その逆は成り立つとは限りません。また、凹関数は準凹関数ですが、その逆は成り立つとは限りません。

多変数の準凸関数・準凹関数

多変数関数が準凸関数であること、準凹関数であることの意味を解説します。凸関数は準凸関数ですが、その逆は成り立つとは限りません。また、凹関数は準凹関数ですが、その逆は成り立つとは限りません。