最大値の定理
距離空間やユークリッド空間など位相が導入された集合を定義域とし、実数を値としてとる関数\begin{equation*}
f:A\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。定義域\(A\)の部分集合\(X\)がコンパクト集合であるとともに、\(f\)が\(X\)上で連続である場合、最大値・最小値の定理より\(f\)は\(X\)上において最大値や最小値をとることが保証されます。
関数が連続であることと、その関数が上半連続かつ下半連続であることが必要十分である以上、やはり最大値・最小値の定理より、\(f\)がコンパクト集合\(X\)上で上半連続かつ下半連続である場合、\(f\)は\(X\)上において最大値や最小値をとることが保証されます。ただ、この主張をもう少し分割することができます。
まず、関数\(f\)がコンパクト集合\(X\)上において最大値をとることを保証するためには\(f\)が\(X\)上において上半連続であれば十分です。
\begin{array}{cc}
x^{2} & if\ x\not=0 \\
1 & if\ x=0\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします(下図)。
定義域の部分集合である有界な閉区間\(\left[ -1,1\right] \)に注目した上で、関数\(f\)の定義域を縮小して\(f:\left[ -1,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)とします。有界な閉区間はコンパクト集合であるため、この新たな\(f\)はコンパクト集合上に定義された関数です。しかし、\(f\)は\(\left[ -1,1\right] \)上で連続ではないため、最大値・最小値の定理を利用できません。一方、\(f\)は\(\left[ -1,1\right] \)上で上半連続ではあるため、最大値の定理より、\(f\)は\(\left[-1,1\right] \)上において最大値をとることを保証することはできます。実際、\(x=-1,0,1\)などにおいて\(f\left( x\right) \)は最大値\(1\)をとります。
最小値の定理
最小値に関しても同様の命題が成り立ちます。証明は先の命題と同様です。
\begin{array}{cc}
x^{2} & if\ x\not=0 \\
-1 & if\ x=0\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします(下図)。
定義域の部分集合である有界な閉区間\(\left[ -1,1\right] \)に注目した上で、関数\(f\)の定義域を縮小して\(f:\left[ -1,1\right] \rightarrow \mathbb{R} \)とします。有界な閉区間はコンパクト集合であるため、この新たな\(f\)はコンパクト集合上に定義された関数です。しかし、\(f\)は\(\left[ -1,1\right] \)上で連続ではないため、最大値・最小値の定理を利用することはできません。一方、\(f\)は\(\left[ -1,1\right] \)上で下半連続ではあるため、最小値の定理より、\(f\)は\(\left[ -1,1\right] \)上において最小値をとることを保証することはできます。実際、\(x=0\)において\(f\left( x\right) \)は最小値\(-1\)をとります。
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