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対応による逆像・上逆像・下逆像

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対応による要素の逆像

対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)が与えられたとき、終集合\(B\)の要素\(b\)を任意に選ぶと、これに対して\(b\in f\left( a\right) \)を満たす始集合\(A\)の要素は存在するとは限りませんし、存在する場合にも一意的であるとは限りません。そこで、\(b\in B\)に対して\(a\in f\left( b\right) \)を満たすような\(a\in A\)からなる集合を、\begin{equation*}
f^{-1}\left( b\right) =\left\{ a\in A\ |\ b\in f\left( a\right) \right\}
\end{equation*}と表記し、これを\(f\)による\(b\)の逆像(inverse image)や原像(preimage)などと呼びます。\(f^{-1}\left( b\right) \)は\(A\)の部分集合です。

例(対応による要素の逆像)
集合\(A=\left\{ 1,2,3\right\} \)と集合\(B=\left\{ a,b,c\right\} \)に対して、対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)を以下の図で定義します。つまり、\(f\left( 1\right) =\left\{ c\right\} \)かつ\(f\left( 2\right) =\left\{ a,c\right\} \)かつ\(f\left( 3\right) =\left\{ b\right\} \)です。図では\(a\)に対して\(2\)からのみ矢印が伸びていますが、これは\(f\)による\(a\)の逆像が\(\left\{ 2\right\} \)であること、すなわち\(f^{-1}\left( a\right) =\left\{ 2\right\} \)であることを意味します。また、\(b\)に対して\(1\)と\(3\)から矢印が伸びていますが、これは\(f\)による\(b\)の逆像が\(\left\{ 1,3\right\} \)であること、すなわち\(f^{-1}\left( b\right) =\left\{ 1,3\right\} \)であることを意味します。また、\(f^{-1}\left( c\right) =\left\{ b\right\} \)であることも図から読み取れます。
図:対応による要素の逆像
図:対応による要素の逆像

対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)が与えられたとき、\(b\in B\)に対して\(b\in f\left( a\right) \)を満たす\(a\in A\)は存在するとは限らず、そのような場合には\(f^{-1}\left( b\right) =\phi \)となります。ただ、空集合は任意の集合の部分集合であるため、このような場合にも\(f^{-1}\left( b\right) \)は\(A\)の部分集合であるため、定義上、問題はありません。

例(対応による要素の逆像)
集合\(A=\left\{ 1,2,3\right\} \)と集合\(B=\left\{ a,b,c\right\} \)に対して、対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)を以下の図で定義します。つまり、\(f\left( 1\right) =\left\{ b\right\} \)かつ\(f\left( 2\right) =\left\{ a\right\} \)かつ\(f\left( 3\right) =\left\{ b\right\} \)です。図では\(a\)に対して\(2\)からのみ矢印が伸びていますが、これは\(f\)による\(a\)の逆像が\(\left\{ b\right\} \)であること、すなわち\(f^{-1}\left( a\right) =\left\{ b\right\} \)であることを意味します。また、\(b\)に対して\(1\)と\(3\)から矢印が伸びていますが、これは\(f\)による\(b\)の逆像が\(\left\{ 1,3\right\} \)であること、すなわち\(f^{-1}\left( b\right) =\left\{ 1,3\right\} \)であることを意味します。また、\(c\)に対して伸びる矢印は存在しないため\(f^{-1}\left( c\right) =\phi\)です。
図:対応による要素の逆像
図:対応による要素の逆像
例(対応による要素の逆像)
\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \twoheadrightarrow \left[ 0,1\right] \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}
f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\left\{ 0\right\} & if\ x<1 \\
\left[ 0,1\right] & if\ x=1\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。このとき例えば、\begin{eqnarray*}
f^{-1}\left( 0\right) &=&\left[ 0,1\right] \\
f^{-1}\left( \frac{1}{2}\right) &=&\left\{ 1\right\} \\
f^{-1}\left( 1\right) &=&\left\{ 1\right\}
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。
例(対応による要素の逆像)
\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \twoheadrightarrow \left[ 0,1\right] \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}
f\left( x\right) =\left[ 0,x\right] \end{equation*}を定めるものとします。このとき例えば、\begin{eqnarray*}
f^{-1}\left( 0\right) &=&\left[ 0,1\right] \\
f^{-1}\left( \frac{1}{2}\right) &=&\left[ \frac{1}{2},1\right] \\
f^{-1}\left( 1\right) &=&\left\{ 1\right\}
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。

逆像の定義より、任意の\(\left( a,b\right) \in A\times B\)に対して、\begin{equation*}
a\in f^{-1}\left( b\right) \Leftrightarrow b\in f\left( a\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、\(a\)が\(f \)による\(b\)の逆像の要素であることは、\(b\)が\(f\)による\(a\)の像の要素であるための必要十分条件です。さらに、\(f\)のグラフは、\begin{equation*}
G\left( f\right) =\left\{ \left( a,b\right) \in A\times B\ |\ b\in f\left(
a\right) \right\}
\end{equation*}という\(A\times B\)の部分集合として定義されるため、順序対\(\left( a,b\right) \in A\times B\)を任意に選ぶと、\begin{equation*}
a\in f^{-1}\left( b\right) \Leftrightarrow \left( a,b\right) \in G\left(
f\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、\(a\)が\(f \)による\(b\)の逆像の要素であることと\(\left( a,b\right) \)が\(f\)のグラフの要素であることは必要十分です。以上を踏まえると、それぞれの\(b\in B\)の逆像を、\begin{equation*}
f\left( b\right) =\left\{ a\in A\ |\ \left( a,b\right) \in G\left( f\right)
\right\}
\end{equation*}と定義することもできるため、これは下図のように視覚化できます。

図:対応による要素の逆像
図:対応による要素の逆像

 

対応による集合の上逆像

対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)が与えられたとき、終集合の部分集合\(Y\subset B\)を任意に選びます。\(f\)は始集合\(A \)のそれぞれの要素\(a\)に対してその像\(f\left( a\right) \subset B\)を定めますが、これは\(Y\)の部分集合であるか否かのどちらか一方です。そこで、\(f\left( a\right) \)が\(Y\)の部分集合になるような\(a\)からなる集合を、\begin{equation*}
f^{+}\left( Y\right) =\left\{ a\in A\ |\ f\left( a\right) \subset Y\right\}
\end{equation*}で表し、これを対応\(f\)による集合\(Y\)の上逆像(upper inverse image)や強逆像(strong inverse image)などと呼びます。\(f^{+}\left( Y\right) \)は\(A\)の部分集合です。

対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)の終集合\(B\)は\(B\)自身の部分集合であるため、\(f\)による\(B\)の上逆像\(f^{+}\left( B\right) \)を考えることもできます。これを\(f\)の定義域(domain)と呼び、\(D\left( f\right) \)と表記します。つまり、\begin{eqnarray*}
D\left( f\right) &=&f^{+}\left( B\right) \\
&=&\left\{ a\in A\ |\ f\left( a\right) \subset B\right\} \\
&=&A\quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}です。対応の定義域は始集合と一致するということです。

命題(対応の定義域と始集合は一致する)
対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)が与えられたとき、\begin{equation*}
D\left( f\right) =A
\end{equation*}という関係が成り立つ。
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例(対応による集合の上逆像)
集合\(A=\left\{ 1,2,3\right\} \)と集合\(B=\left\{ a,b,c\right\} \)に対して、対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)を以下の図で定義します。つまり、\(f\left( 1\right) =\left\{ b\right\} \)かつ\(f\left( 2\right) =\left\{ a,c\right\} \)かつ\(f\left( 3\right) =\left\{ b\right\} \)です。このとき、例えば、\begin{eqnarray*}
f^{+}\left( \left\{ a,b\right\} \right) &=&\left\{ 1,3\right\} \\
f^{+}\left( \left\{ b,c\right\} \right) &=&\left\{ 1,3\right\} \\
f^{+}\left( \left\{ a,c\right\} \right) &=&\left\{ 2\right\}
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。また、\(f\)の定義域は、\begin{equation*}
D\left( f\right) =f^{+}\left( B\right) =\left\{ 1,2,3\right\}
\end{equation*}となります。
図:対応による集合の上逆像
図:対応による集合の上逆像
例(対応による集合の上逆像)
下図中の実線および灰色の領域(境界を含む)あわせた領域をグラフとする対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)について考えます。終集合\(B\)の部分集合\(Y\)が下図のように与えられているとき、その上逆像\(f^{+}\left( Y\right) \)を特定します。始集合\(A\)の部分集合\(X\)が下図のように与えられているとき、その要素\(x\)を任意に選ぶと、その像\(f\left( x\right) \)はいずれも\(Y\)からはみ出ているため\(x\)は\(f^{+}\left( Y\right) \)の要素ではありません。また、\(X\)に属さない要素\(x\)を任意に選ぶと、その像\(f\left( x\right) \)は\(Y\)の部分集合ではないため\(x\)は\(f^{+}\left( Y\right) \)の要素ではありません。したがって、\(f^{+}\left( Y\right) =\phi \)であることが明らかになりました。
図:対応による集合の上逆像
図:対応による集合の上逆像
例(対応による集合の上逆像)
下図中の実線および灰色の領域(境界を含む)あわせた領域をグラフとする対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)について考えます。終集合\(B\)の部分集合\(Y\)が下図のように与えられているとき、その上逆像\(f^{+}\left( Y\right) \)を特定します。始集合\(A\)の部分集合\(X\)が下図のように与えられているとき、その要素\(x\)を任意に選ぶと、その像\(f\left( x\right) \)はいずれも\(Y\)の部分集合であるため\(x\in f^{+}\left( B\right) \)です。また、\(X\)に属さない要素\(x \)を任意に選ぶと、その要素\(f\left( x\right) \)は\(Y\)の部分集合ではないため\(x\)は\(f^{+}\left( B\right) \)の要素ではありません。したがって、\(f^{+}\left( Y\right) =X\)であることが明らかになりました。
図:対応による集合の上逆像
図:対応による集合の上逆像
例(対応による集合の上逆像)
対応\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \twoheadrightarrow \left[ 0,1\right] \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}
f\left( x\right) =\left[ 0,x\right] \end{equation*}を定めるものとします。このとき、例えば、\begin{eqnarray*}
f^{+}\left( \left[ 0,\frac{1}{2}\right] \right) &=&\left[ 0,\frac{1}{2}\right] \\
f^{+}\left( \left( 0,\frac{1}{2}\right) \right) &=&\phi
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。また、\(f\)の値域は、\begin{equation*}
R\left( f\right) =f^{+}\left( \left[ 0,1\right] \right) =\left[ 0,1\right] \end{equation*}となります。
例(対応による集合の上逆像)
写像\(f:A\rightarrow B\)が与えられたとき、これは、それぞれの\(a\in A\)に対して、\begin{equation*}
g\left( a\right) =\left\{ f\left( a\right) \right\}
\end{equation*}を像として定める対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)と同一視できます。始集合の部分集合\(X\subset A\)を任意に選ぶと、このとき、\begin{equation*}
g^{+}\left( A\right) =f^{-1}\left( A\right)
\end{equation*}という関係が成り立つため(演習問題にします)、対応による集合の上逆像は、写像による集合の逆像を拡張した概念です。
例(対応による集合の上逆像)
空集合は任意の集合の部分集合であるため、対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)による空集合\(\phi \subset B\)の上逆像を考えることもできます。対応による集合の上逆像の定義より、これは、\begin{equation*}
f^{+}(\phi )=\left\{ a\in A\ |\ f\left( a\right) \subset \phi \right\}
\end{equation*}となりますが、\(f\left( a\right) \subset \phi \)は恒偽式であるため\(f^{+}\left( \phi \right) =\phi \)となります。つまり、対応による空集合の上逆像は空集合です。

 

対応による集合の下逆像

対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)が与えられたとき、終集合の部分集合\(Y\subset B\)を任意に選びます。\(f\)は始集合\(A\)のそれぞれの要素\(a\)に対してその像\(f\left( a\right) \subset B\)を定めますが、これは\(Y\)と交わるか否かのどちらか一方です。そこで、\(f\left( a\right) \)が\(Y\)と交わるような\(a\)からなる集合を、\begin{equation*}
f^{-}\left( Y\right) =\left\{ a\in A\ |\ f\left( a\right) \cap Y\not=\phi
\right\}
\end{equation*}で表し、これを対応\(f\)による集合\(Y\)の下逆像(lower inverse image)や弱逆像(weak inverse image)などと呼びます。\(f^{-}\left( Y\right) \)は\(A\)の部分集合です。

対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)の終集合\(B\)は\(B\)自身の部分集合であるため、\(f\)による\(B\)の下逆像\(f^{-}\left( B\right) \)を考えることもできます。具体的には、\begin{eqnarray*}
f^{-}\left( B\right) &=&\left\{ a\in A\ |\ f\left( a\right) \cap B\not=\phi
\right\} \\
&=&A\quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}となります。加えて、先に示したように、\begin{equation*}
D\left( f\right) =f^{+}\left( B\right) =A
\end{equation*}という関係が成り立つため、結局、対応\(f\)の始集合\(A\)、定義域\(D\left( f\right) \)、終集合の上逆像\(f^{+}\left( B\right) \)、終集合の下逆像\(f^{-}\left( B\right) \)はいずれも一致することが明らかになりました。

例(対応による集合の下逆像)
集合\(A=\left\{ 1,2,3\right\} \)と集合\(B=\left\{ a,b,c\right\} \)に対して、対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)を以下の図で定義します。つまり、\(f\left( 1\right) =\left\{ b\right\} \)かつ\(f\left( 2\right) =\left\{ a,c\right\} \)かつ\(f\left( 3\right) =\left\{ b\right\} \)です。このとき、例えば、\begin{eqnarray*}
f^{-}\left( \left\{ a,b\right\} \right) &=&\left\{ 1,2,3\right\} \\
f^{-}\left( \left\{ b,c\right\} \right) &=&\left\{ 1,2,3\right\} \\
f^{-}\left( \left\{ a,c\right\} \right) &=&\left\{ 2\right\} \\
f^{-}\left( \left\{ a,b,c\right\} \right) &=&\left\{ 1,2,3\right\}
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。
図:対応による集合の下逆像
図:対応による集合の下逆像
例(対応による集合の下逆像)
下図中の実線および灰色の領域(境界を含む)あわせた領域をグラフとする対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)について考えます。終集合\(B\)の部分集合\(Y\)が下図のように与えられているとき、その下逆像\(f^{-}\left( Y\right) \)を特定します。始集合\(A\)の部分集合\(X\)が下図のように与えられているとき、その要素\(x\)を任意に選ぶと、その像\(f\left( x\right) \)はいずれも\(Y\)と交わるため\(x\in f^{-}\left( Y\right) \)が成り立ちます。一方、\(X\)に属さない要素\(x\)を任意に選ぶと、その像\(f\left( x\right) \)は\(Y\)と交わらないため\(x\)は\(f^{-}\left( Y\right) \)の要素ではありません。したがって、\(f^{-}\left( Y\right) =X\)であることが明らかになりました。
図:対応による集合の下逆像
図:対応による集合の下逆像
例(対応による集合の下逆像)
下図中の実線および灰色の領域(境界を含む)あわせた領域をグラフとする対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)について考えます。終集合\(B\)の部分集合\(Y\)が下図のように与えられているとき、その下逆像\(f^{-}\left( Y\right) \)を特定します。始集合\(A\)の部分集合\(X\)が下図のように与えられているとき、その要素\(x\)を任意に選ぶと、その像\(f\left( x\right) \)はいずれも\(Y\)と交わるため\(x\in f^{+}\left( B\right) \)です。また、\(X\)に属さない要素\(x\)を任意に選ぶと、その要素\(f\left( x\right) \)は\(Y\)と交わるため\(x\in f^{+}\left( B\right) \)です。\(f^{-}\left( Y\right) =A\)であることが明らかになりました。
図:対応による集合の下逆像
図:対応による集合の下逆像
例(対応による集合の下逆像)
対応\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,1\right] \twoheadrightarrow \left[ 0,1\right] \)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,1\right] \)に対して、\begin{equation*}
f\left( x\right) =\left[ 0,x\right] \end{equation*}を定めるものとします。このとき、例えば、\begin{eqnarray*}
f^{-}\left( \left[ 0,\frac{1}{2}\right] \right) &=&\left[ 0,1\right] \\
f^{-}\left( \left( 0,\frac{1}{2}\right) \right) &=&(0,1] \\
f^{-}\left( \left[ 0,1\right] \right) &=&\left[ 0,1\right] \end{eqnarray*}などが成り立ちます。
例(対応による集合の下逆像)
写像\(f:A\rightarrow B\)が与えられたとき、これは、それぞれの\(a\in A\)に対して、\begin{equation*}
g\left( a\right) =\left\{ f\left( a\right) \right\}
\end{equation*}を像として定める対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)と同一視できます。始集合の部分集合\(X\subset A\)を任意に選ぶと、このとき、\begin{equation*}
g^{-}\left( A\right) =f^{-1}\left( A\right)
\end{equation*}という関係が成り立つため(演習問題にします)、対応による集合の下逆像は、写像による集合の逆像を拡張した概念です。
例(対応による集合の下逆像)
空集合は任意の集合の部分集合であるため、対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)による空集合\(\phi \subset B\)の下逆像を考えることもできます。対応による集合の下逆像の定義より、これは、\begin{equation*}
f^{-}(\phi )=\left\{ a\in A\ |\ f\left( a\right) \cap \phi \not=\phi
\right\}
\end{equation*}となりますが、\(f\left( a\right) \cap \phi \not=\phi \)は恒偽式であるため\(f^{-}\left( \phi \right) =\phi \)となります。つまり、対応による空集合の下逆像は空集合です。

 

上逆像と下逆像の関係

繰り返しになりますが、対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)による集合\(Y\subset B\)の上逆像は、\begin{equation*}
f^{+}\left( Y\right) =\left\{ a\in A\ |\ f\left( a\right) \subset Y\right\}
\end{equation*}と定義される一方で、\(f\)による\(Y\)の下逆像は、\begin{equation*}
f^{-}\left( Y\right) =\left\{ a\in A\ |\ f\left( a\right) \cap Y\not=\phi
\right\}
\end{equation*}と定義されます。\(f\left( a\right) \)が\(Y\)の部分集合であることは\(f\left( a\right) \)と\(Y\)が交わることを含意する一方で、その逆は成立するとは限りません。したがって、\begin{equation*}
f^{+}\left( Y\right) \subset f^{-}\left( Y\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちそうです。ただ、例外も存在します。具体的には、対応\(f\)が非空値をとらない場合、すなわち、\(f\left( a\right) =\phi \)を満たす\(a\in A\)が存在する場合、空集合は任意の集合の部分集合であることから\(f\left( a\right) \subset Y\)すなわち\(a\in f^{+}\left( Y\right) \)である一方で、空集合はいかなる集合とも交わらないことから\(f\left( a\right) \cap Y=\phi \)すなわち\(a\not\in f^{-}\left( Y\right) \)であるため、このような\(f\)に対しては\(f^{+}\left( Y\right) \subset f^{-}\left( Y\right) \)という関係は成り立ちません。以下の例からも明らかです。

例(上逆像と下逆像の関係)
集合\(A=\left\{ 1,2,3\right\} \)と集合\(B=\left\{ a,b,c\right\} \)に対して、対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)を以下の図で定義します。図より\(f\left( 3\right) =\phi \)であるため、この対応\(f\)は非空値をとりません。このとき、\begin{eqnarray*}
f^{+}\left( B\right) &=&\left\{ a\in A\ |\ f\left( a\right) \subset
B\right\} =\left\{ 1,2,3\right\} \\
f^{-}\left( B\right) &=&\left\{ a\in A\ |\ f\left( a\right) \cap B\not=\phi
\right\} =\left\{ 1,2\right\}
\end{eqnarray*}となるため\(f^{+}\left( B\right) \subset f^{-}\left( B\right) \)という関係は成り立ちません。
図:上逆像と下逆像の関係
図:上逆像と下逆像の関係

上の例を踏まえると、任意の集合\(Y\subset B\)に対して\(f^{+}\left( B\right) \subset f^{-}\left( B\right) \)という関係が成り立つことを保証するためには対応\(f\)が非空値をとるという条件が必要になります。

命題(上逆像は下逆像の部分集合)
対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)が非空値をとるならば、任意の集合\(Y\subset B\)に対して、\begin{equation*}
f^{+}\left( Y\right) \subset f^{-}\left( Y\right)
\end{equation*}という関係が成り立つ。
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例(上逆像と下逆像の関係)
集合\(A=\left\{ 1,2,3\right\} \)と集合\(B=\left\{ a,b,c\right\} \)に対して、対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)を以下の図で定義します。つまり、\(f\left( 1\right) =\left\{ b\right\} \)かつ\(f\left( 2\right) =\left\{ a,c\right\} \)かつ\(f\left( 3\right) =\left\{ b\right\} \)です。このとき、例えば、\begin{eqnarray*}
f^{+}\left( \left\{ a,b\right\} \right) &=&\left\{ 1,3\right\} \subset
\left\{ 1,2,3\right\} =f^{-}\left( \left\{ a,b\right\} \right) \\
f^{+}\left( \left\{ b,c\right\} \right) &=&\left\{ 1,3\right\} \subset
\left\{ 1,2,3\right\} =f^{-}\left( \left\{ b,c\right\} \right) \\
f^{+}\left( \left\{ a,c\right\} \right) &=&\left\{ 2\right\} =f^{-}\left(
\left\{ a,c\right\} \right) \\
f^{+}\left( \left\{ a,b,c\right\} \right) &=&\left\{ 1,2,3\right\}
=f^{-}\left( \left\{ a,b,c\right\} \right)
\end{eqnarray*}などが成り立ちます。
図:上逆像と下逆像の関係
図:上逆像と下逆像の関係
例(上逆像と下逆像の関係)
下図中の実線および灰色の領域(境界を含む)あわせた領域をグラフとする対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)について考えます。終集合\(B\)の部分集合\(Y\)が下図のように与えられているとき、\begin{equation*}
f^{+}\left( Y\right) =\phi \subset X=f^{-}\left( Y\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。
図:上逆像と下逆像の関係
図:上逆像と下逆像の関係
例(上逆像と下逆像の関係)
下図中の実線および灰色の領域(境界を含む)あわせた領域をグラフとする対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)について考えます。終集合\(B\)の部分集合\(Y\)が下図のように与えられているとき、\begin{equation*}
f^{+}\left( Y\right) =X\subset A=f^{-}\left( Y\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。
図:上逆像と下逆像の関係
図:上逆像と下逆像の関係

対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)と終集合の部分集合\(Y\subset B\)が与えられたとき、任意の\(a\in A\)に対して、\begin{eqnarray*}
a\in \left( f^{-}\left( Y^{c}\right) \right) ^{c} &\Leftrightarrow &a\not\in
f^{-}\left( Y^{c}\right) \quad \because ^{c}\text{の定義}
\\
&\Leftrightarrow &\lnot \left( f\left( a\right) \cap Y^{c}\not=\phi \right)
\quad \because f^{-}\text{の定義} \\
&\Leftrightarrow &f\left( a\right) \cap Y^{c}=\phi \\
&\Leftrightarrow &f\left( a\right) \subset Y \\
&\Leftrightarrow &a\in f^{+}\left( Y\right)
\end{eqnarray*}となるため、\begin{equation*}
f^{+}\left( Y\right) =\left( f^{-}\left( Y^{c}\right) \right) ^{c}
\end{equation*}という関係が成り立つことが明らかになりました。つまり、対応\(f\)の終集合の部分集合\(Y\)が与えられたとき、その補集合の下逆像の補集合をとれば、それは上逆像と一致します。逆に、\begin{equation*}
f^{-}\left( Y\right) =\left( f^{+}\left( Y^{c}\right) \right) ^{c}
\end{equation*}という関係が成り立つこともまた示されます。

命題(上逆像と下逆像の関係)
対応\(f:A\twoheadrightarrow B\)が与えられたとき、任意の集合\(Y\subset B\)に対して、\begin{eqnarray*}
\left( a\right) \ f^{+}\left( Y\right) &=&\left( f^{-}\left( Y^{c}\right)
\right) ^{c} \\
\left( b\right) \ f^{-}\left( Y\right) &=&\left( f^{+}\left( Y^{c}\right)
\right) ^{c}
\end{eqnarray*}という関係が成り立つ。
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次回は逆写像について学びます。

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