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ベクトル値関数の微分

ベクトル値関数のベクトル和の微分

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ベクトル値関数のベクトル和の微分

定義域を共有する2つのベクトル値関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が与えられたとき、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( f+g\right) \left( x\right) &=&f\left( x\right) +g\left( x\right) \\
&=&\left( f_{1}\left( x\right) ,\cdots ,f_{m}\left( x\right) \right) +\left(
g_{1}\left( x\right) ,\cdots ,g_{m}\left( x\right) \right) \\
&=&\left( f_{1}\left( x\right) +g_{1}\left( x\right) ,\cdots ,f_{m}\left(
x\right) +g_{m}\left( x\right) \right)
\end{eqnarray*}を定める新たなベクトル値関数\(f+g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が定義可能です。ただし、\(f_{i},g_{i}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \ \left( i=1,\cdots ,m\right) \)は\(f,g\)の成分関数です。

関数\(f,g\)がともに定義域上の点\(a\in X\)の周辺の任意の点において定義されているとともに点\(a\)において微分可能であるならば、そこでの微分係数に相当する点\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( a\right) &=&\left( f_{1}^{\prime }\left( a\right) ,\cdots
,f_{m}^{\prime }\left( a\right) \right) \in \mathbb{R} ^{m} \\
g^{\prime }\left( a\right) &=&\left( g_{1}^{\prime }\left( a\right) ,\cdots
,g_{m}^{\prime }\left( a\right) \right) \in \mathbb{R} ^{m}
\end{eqnarray*}がそれぞれ存在します。この場合、関数\(f+g\)もまた点\(a\)において微分可能であることが保証されるとともに、そこでの微分係数が、\begin{eqnarray*}\left( f+g\right) ^{\prime }\left( a\right) &=&f^{\prime }\left( a\right)
+g^{\prime }\left( a\right) \\
&=&\left( f_{1}^{\prime }\left( a\right) ,\cdots ,f_{m}^{\prime }\left(
a\right) \right) +\left( g_{1}^{\prime }\left( a\right) ,\cdots
,g_{m}^{\prime }\left( a\right) \right) \\
&=&\left( f_{1}^{\prime }\left( a\right) +g_{1}^{\prime }\left( a\right)
,\cdots ,f_{m}^{\prime }\left( a\right) +g_{m}^{\prime }\left( a\right)
\right)
\end{eqnarray*}として定まることが保証されます。

命題(微分可能なベクトル値関数のベクトル和)
ベクトル値関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)がそれぞれ任意に与えられたとき、そこからベクトル値関数\(f+g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)を定義する。\(f,g\)が定義域上の点\(a\in X\)において微分可能であるならば、\(f+g\)もまた点\(a\)において微分可能であり、そこでの微分係数は、\begin{equation*}\left( f+g\right) ^{\prime }\left( a\right) =f^{\prime }\left( a\right)
+g^{\prime }\left( a\right)
\end{equation*}を満たす。

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つまり、定義域上の点\(a\)において微分可能なベクトル値関数\(f,g\)のベクトル和の形をしているベクトル値関数\(f+g\)が与えられたとき、\(f+g\)もまた点\(a\)において微分可能であることを上の命題は保証しています。したがって、何らかの関数\(f,g\)のベクトル和の形をしている関数\(f+g\)の微分可能性を検討する際には、ベクトル値関数の微分可能性の定義にさかのぼって考える前に、まずは\(f\)と\(g\)を分けた上で、それぞれが微分可能であることを確認すればよいということになります。

例(微分可能なベクトル値関数のベクトル和)
ベクトル値関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)からベクトル値関数\(f+g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)を定義します。\(f,g\)がともに\(X\)上で微分可能である場合、先の命題より、関数\(f+g\)もまた\(X\)上で微分可能であり、導関数\(\left( f+g\right) ^{\prime }:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}\left( f+g\right) ^{\prime }\left( x\right) =f^{\prime }\left( x\right)
+g^{\prime }\left( x\right)
\end{equation*}を定めます。

例(微分可能なベクトル値関数のベクトル和)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( x^{2},5x\right) +\left( \cos \left( x\right) ,\sin
\left( x\right) \right)
\end{equation*}を定めるものとします。1変数関数である\(x^{2}\)および\(5x\)は微分可能であるためベクトル値関数\(\left( x^{2},5x\right) \)は微分可能です。また、1変数関数である\(\cos \left( x\right) \)および\(\sin \left( x\right) \)は微分可能であるためベクトル値関数\(\left( \cos \left( x\right) ,\sin\left( x\right) \right) \)は微分可能です。したがって先の命題より、微分可能なベクトル値関数どうしのベクトル和として定義される\(f\)もまた微分可能であり、導関数\(f^{\prime }:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( x\right) &=&\frac{d}{dx}\left( x^{2},5x\right) +\frac{d}{dx}\left( \cos \left( x\right) ,\sin \left( x\right) \right) \\
&=&\left( \frac{d}{dx}x^{2},\frac{d}{dx}5x\right) +\left( \frac{d}{dx}\cos
\left( x\right) ,\frac{d}{dx}\sin \left( x\right) \right) \\
&=&\left( 2x,5\right) +\left( -\sin \left( x\right) ,\cos \left( x\right)
\right) \\
&=&\left( 2x-\sin \left( x\right) ,5+\cos \left( x\right) \right)
\end{eqnarray*}を定めます。

 

ベクトル値関数のベクトル和の片側微分可能性

片側微分可能性についても同様の命題が成り立ちます。

命題(片側微分可能なベクトル値関数のベクトル和)
ベクトル値関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)がそれぞれ任意に与えられたとき、そこからベクトル値関数\(f+g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)を定義する。\(f,g\)が定義域上の点\(a\in X\)において右側微分可能であるならば、\(f+g\)もまた点\(a\)において右側微分可能であり、そこでの右側微分係数は、\begin{equation*}\left( f+g\right) ^{\prime }\left( a+0\right) =f^{\prime }\left( a+0\right)
+g^{\prime }\left( a+0\right)
\end{equation*}を満たす。また、\(f,g\)が定義域上の点\(a\in X\)において左側微分可能であるならば、\(f+g\)もまた点\(a\)において左側微分可能であり、そこでの左側微分係数は、\begin{equation*}\left( f+g\right) ^{\prime }\left( a-0\right) =f^{\prime }\left( a-0\right)
+g^{\prime }\left( a-0\right)
\end{equation*}を満たす。

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例(片側微分可能なベクトル値関数のベクトル和)
ベクトル値関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)からベクトル値関数\(f+g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)を定義します。\(f,g\)がともに\(X\)上で右側微分可能である場合、先の命題より、関数\(f+g\)もまた\(X\)上で右側微分可能であり、右側導関数\(\left( f+g\right) _{+}^{\prime }:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}\left( f+g\right) _{+}^{\prime }\left( x\right) =f_{+}^{\prime }\left(
x\right) +g_{+}^{\prime }\left( x\right)
\end{equation*}を定めます。同様に、\(f,g\)がともに\(X\)上で左側微分可能である場合、先の命題より、関数\(f+g\)もまた\(X\)上で左側微分可能であり、左側導関数\(\left( f+g\right) _{-}^{\prime }:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)はそれぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}\left( f+g\right) _{-}^{\prime }\left( x\right) =f_{-}^{\prime }\left(
x\right) +g_{-}^{\prime }\left( x\right)
\end{equation*}を定めます。

例(片側微分可能なベクトル値関数のベクトル和)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,\pi \right] \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,\pi \right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( \cos \left( x\right) ,\sin \left( x\right) \right)
+\left( x+1,x-1\right)
\end{equation*}を定めるものとします。余弦関数\(\cos \left( x\right) \)および正弦関数\(\sin \left(x\right) \)はともに\(f\)の定義域\(\left[ 0,\pi \right] \)上で微分可能です。つまり、端点\(0\)において右側微分可能であり、もう一方の端点\(\pi \)において左側微分可能であり、定義域の内部\(\left( 0,\pi \right) \)の任意の点において微分可能です。したがって、ベクトル値関数\(\left( \cos \left( x\right) ,\sin \left( x\right) \right) \)もまた\(\left[ 0,\pi \right] \)上で微分可能です。同様の理由により、ベクトル値関数\(\left( x+1,x-1\right) \)もまた\(\left[ 0,\pi \right] \)上で微分可能です。したがって、\(f\)は微分可能なベクトル値関数のベクトル和であるため\(\left[ 0,\pi \right]\)上で微分可能です。導関数\(f^{\prime }\)はそれぞれの内点\(x\in \left( 0,\pi \right) \)に対して、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( x\right) &=&\frac{d}{dx}\left( \cos \left( x\right) ,\sin
\left( x\right) \right) +\frac{d}{dx}\left( x+1,x-1\right) \\
&=&\left( \frac{d}{dx}\cos \left( x\right) ,\frac{d}{dx}\sin \left( x\right)
\right) +\left( \frac{d}{dx}\left( x+1\right) ,\frac{d}{dx}\left( x-1\right)
\right) \\
&=&\left( -\sin \left( x\right) ,\cos \left( x\right) \right) +\left(
1,1\right) \\
&=&\left( -\sin \left( x\right) +1,\cos \left( x\right) +1\right)
\end{eqnarray*}を定めます。点\(0\)における右側微分係数は、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( 0+0\right) &=&\left. \left( \cos \left( x\right) ,\sin
\left( x\right) \right) _{+}^{\prime }\right\vert _{x=0}+\left. \left(
x+1,x-1\right) _{+}^{\prime }\right\vert _{x=0} \\
&=&\left. \left( -\sin \left( x\right) ,\cos \left( x\right) \right)
\right\vert _{x=0}+\left. \left( 1,1\right) \right\vert _{x=0} \\
&=&\left( -\sin \left( 0\right) ,\cos \left( 0\right) \right) +\left(
1,1\right) \\
&=&\left( 1,2\right)
\end{eqnarray*}であり、点\(\pi \)における左側微分係数は、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( \pi -0\right) &=&\left. \left( \cos \left( x\right) ,\sin
\left( x\right) \right) _{-}^{\prime }\right\vert _{x=\pi }+\left. \left(
x+1,x-1\right) _{-}^{\prime }\right\vert _{x=\pi } \\
&=&\left. \left( -\sin \left( x\right) ,\cos \left( x\right) \right)
\right\vert _{x=\pi }+\left. \left( 1,1\right) \right\vert _{x=\pi } \\
&=&\left( -\sin \left( \pi \right) ,\cos \left( \pi \right) \right) +\left(
1,1\right) \\
&=&\left( 1,0\right)
\end{eqnarray*}となります。

 

演習問題

問題(ベクトル値関数のベクトル和の微分)
関数\(f:\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( -\frac{1}{x},\frac{2}{x^{3}}\right) +\left( 1,\frac{3}{x}\right)
\end{equation*}を定めるものとします。導関数を求めてください。

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問題(ベクトル値関数のベクトル差の微分)
定義域を共有する2つのベクトル値関数\(f,g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が与えられたとき、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}\left( f-g\right) \left( x\right) =f\left( x\right) -g\left( x\right)
\end{equation*}を定める新たなベクトル値関数\(f-g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が定義可能です。\(f\)と\(g\)が定義域上の点\(a\in X\)において微分可能ならば、関数\(f-g\)もまた点\(a\)において微分可能であり、微分係数は、\begin{equation*}\left( f-g\right) ^{\prime }\left( a\right) =f^{\prime }\left( a\right)
-g^{\prime }\left( a\right)
\end{equation*}となることを示してください。

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