微分可能なベクトル値関数は連続
ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が定義域上の点\(a\in X\)において微分可能である場合、\(f\)は点\(a\)において連続であることが保証されます。
上の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、ベクトル値関数\(f\)が定義域上の点\(a\)において連続であるとき、\(f\)は点\(a\)において微分可能であるとは限りません。以下の例より明らかです。
\end{equation*}を定めるものとします。成分関数\begin{equation*}
f_{1}\left( x\right) =\left\vert x\right\vert
\end{equation*}は絶対値関数であるため点\(0\)において連続です。もう一方の成分関数\begin{equation*}f_{2}\left( x\right) =x
\end{equation*}は恒等関数であるため点\(0\)において連続です。したがって、ベクトル値関数\(f\)は点\(0\)において連続です。その一方で、成分関数\(f_{1}\)は絶対値関数であるため点\(0\)において微分可能ではなく、したがってベクトル値関数\(f\)もまた点\(0\)において微分可能ではありません。
ベクトル値関数が微分可能ではないことの証明
ベクトル値関数\(f\)が定義域上の点\(a\)において微分可能であるならば、\(f\)は点\(a\)において連続であることが明らかになりました。対偶より、\(f\)が点\(a\)において連続ではない場合、\(f\)は点\(a\)において微分可能ではありません。つまり、\(f\)が点\(a\)において微分可能でないことを示すために、\(f\)が点\(a\)において連続ではないことを示す手法が有効であるということです。
\begin{array}{cc}
\left( 0,0\right) & \left( if\ x<0\right) \\
\left( 1,1\right) & \left( if\ x\geq 0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。この関数\(f\)は点\(0\)において微分可能でしょうか。\(f\)は点\(0\)を含め周辺の任意の点において定義されているとともに、そこでの片側極限は、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow 0+}f\left( x\right) &=&\left( 1,1\right) \\
\lim_{x\rightarrow 0-}f\left( x\right) &=&\left( 0,0\right)
\end{eqnarray*}となり、両者は一致しません。つまり、\(x\rightarrow 0\)のときに\(f\)は\(\mathbb{R} ^{2}\)上の点に収束しないため、\(f\)は点\(0\)において連続ではありません。したがって、\(f\)は点\(0\)において微分可能ではないことが示されました。
片側微分可能なベクトル値関数は片側連続
片側微分可能性と片側連続性の間にも同様の関係が成り立ちます。つまり、ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が定義域上の点\(a\in X\)において右側微分可能である場合、\(f\)は点\(a\)において右側連続であることが保証されます。同様に、\(f\)が点\(a\)において左側微分可能である場合、\(f\)は点\(a\)において左側連続であることが保証されます。
上の命題の逆は成立するとは限りません。つまり、ベクトル値関数\(f\)が定義域上の点\(a\)において右側連続であるとき、\(f\)は点\(a\)において右側微分可能であるとは限りません。同様に、\(f\)が点\(a\)において左側連続であるとき、\(f\)は点\(a\)において左側微分可能であるとは限りません。以下の例より明らかです。
\begin{array}{cc}
\left( 0,0\right) & \left( if\ x<0\right) \\
\left( 1,1\right) & \left( if\ x\geq 0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。点\(0\)における右側微分係数は、\begin{eqnarray*}f^{\prime }\left( 0+0\right) &=&\lim_{h\rightarrow 0+}\left( \frac{f_{1}\left( 0+h\right) -f_{1}\left( 0\right) }{h},\frac{f_{2}\left(
0+h\right) -f_{2}\left( 0\right) }{h}\right) \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\left( \frac{1-0}{h},\frac{1-0}{h}\right) \\
&=&\lim_{h\rightarrow 0+}\left( \frac{1}{h},\frac{1}{h}\right) \\
&=&\left( +\infty ,+\infty \right)
\end{eqnarray*}となるため、\(f\)は点\(0\)において右側微分可能ではありません。他方で、\begin{eqnarray*}\lim_{x\rightarrow 0+}f\left( x\right) &=&\lim_{x\rightarrow 0+}\left(
1,1\right) \quad \because x\rightarrow 0+ \\
&=&\left( 1,1\right) \\
&=&f\left( 0\right) \quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}であるため、\(f\)は点\(0\)において右側連続です。
ベクトル値関数が片側微分可能でないことの証明
ベクトル値関数\(f\)が定義域上の点\(a\)において右側微分可能であるならば、\(f\)は点\(a\)において右側連続であることが明らかになりました。対偶より、\(f\)が点\(a\)において右側連続ではない場合、\(f\)は点\(a\)において右側微分可能ではありません。同様に、\(f\)が点\(a\)において左側連続ではない場合、\(f\)は点\(a\)において左側微分可能ではありません。つまり、\(f\)が点\(a\)において右側微分可能ないし左側微分可能ではないことを示すために、\(f\)が点\(a\)において右側連続ないし左側連続ではないことを示す手法が有効であるということです。
微分可能なベクトル値関数は連続
以上の諸命題より、微分可能なベクトル値関数は連続であることが明らかになりました。
プレミアム会員専用コンテンツです
【ログイン】【会員登録】