WIIS

1変数のベクトル値関数

ベクトル値関数の連続性

目次

関連知識

Mailで保存
Xで共有

点におけるベクトル値関数の連続性

ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)と点\(a\in \mathbb{R} \)が与えられたとき、\(x\rightarrow a\)のときに\(f\)が\(\mathbb{R} ^{m}\)の点へ収束するか検討する際に、\(f\)は点\(a\)の周辺の任意の点において定義されていればよく、必ずしも点\(a\)において定義されている必要はありません。したがって、\(f\)が点\(a\)において定義されていない場合においても、\(x\rightarrow a\)のときに\(f\)が\(\mathbb{R} ^{m}\)の点へ収束する状況は起こり得ます。また、ベクトル値関数\(f\)が点\(a\)において定義されているとともに\(x\rightarrow a\)のときに\(f\)が\(\mathbb{R} ^{m}\)の点へ収束する場合、この極限は点\(a\)における\(f\)の値である\(f\left( a\right) \)と一致するとは限りません。

一方、ベクトル値関数\(f\)が点\(a\)およびその周辺の任意の点において定義されており、なおかつ\(x\rightarrow a\)のときに\(f\)が\(\mathbb{R} ^{m}\)の点へ収束し、さらにそこでの極限が\(f\left(a\right) \)と一致する場合、\(f\)は\(a\)において連続である(continuous at \(a\))と言います。つまり、ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が点\(a\in \mathbb{R} \)において連続であることとは、以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ a\in X \\
&&\left( b\right) \ \lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) \in \mathbb{R} ^{m} \\
&&\left( c\right) \ \lim_{x\rightarrow a}f\left( x\right) =f\left( a\right)
\end{eqnarray*}がすべて成り立つことを意味します。ベクトル値関数の極限の定義より、条件\(\left(b\right) \)が成り立つためには\(f\)が点\(a\)の周辺の任意の点において定義されている必要があります。これと条件\(\left( a\right) \)を踏まえると、点\(a\)において連続なベクトル値関数\(f\)は点\(a\)を含めその周辺の任意の定義において定義されていることになります。

上の3つの条件の中でも\(\left( a\right) \)が成り立つ一方で\(\left( b\right) \)と\(\left( c\right) \)の少なくとも一方が成り立たない場合、\(f\)は点\(a\)において不連続である(discontinuous at \(a\))と言います。また、そもそも\(\left( a\right) \)が成り立たない場合、つまりベクトル値関数\(f\)が点\(a\)において定義されていない場合、\(f\)は点\(a\)において連続でも不連続でもありません。ベクトル値関数が点において連続もしくは不連続であるためには、その点がベクトル値関数の定義域に含まれている必要があるということです。

後に具体例を通じて確認するように、一般に、ベクトル値関数\(f\)は定義域\(X\)上の任意の点において連続であるとは限りません。そこで、\(f\)が連続な点からなる集合が\(Y\subset X\)であるとき、\(f\)は\(Y\)上で連続である(continuous on \(Y\))と言います。特に、\(Y=X\)である場合、すなわちベクトル値関数\(f\)が定義域上\(X\)の任意の点において連続である場合、\(f\)は連続である(continuous)と言います。

 

ベクトル値関数の連続性と成分関数の連続性の関係

定義より、ベクトル値関数の連続性と成分関数の連続性の間には以下の関係が成り立ちます。

命題(ベクトル値関数の連続性と成分関数の連続性の関係)
ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)と定義域上の点\(a\in X\)が与えられたとき、\(f\)のすべての成分関数\(f_{i}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \ \left( i=1,\cdots ,m\right) \)が点\(a\)において連続であることは、ベクトル値関数\(f\)が点\(a\)において連続であるための必要十分条件である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

以上の命題により、ベクトル値関数の連続性に関する議論を1変数関数である成分関数の連続性に関する議論に置き換えられることが明らかになりました。

例(ベクトル値関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( x^{2}-x,x+1\right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の定義域\(\mathbb{R} \)は開集合であるため、\(\mathbb{R} \)の点を任意に選んだとき、\(f\)はその点の周辺の任意の点において定義されています。成分関数\(f_{1}\left( x\right) =x^{2}-x\)は多項式関数であるため\(\mathbb{R} \)上で連続であり、成分関数\(f_{2}\left( x\right) =x+1\)もまた多項式関数であるため\(\mathbb{R} \)上で連続です。したがって、先の命題より、もとの関数\(f\)もまた\(\mathbb{R} \)上で連続です。
例(ベクトル値関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( \frac{1}{x},\sin \left( x\right) \right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の定義域\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)は開集合であるため、\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)の点を任意に選んだとき、\(f\)はその点の周辺の任意の点において定義されています。成分関数\(f_{1}\left( x\right) =\frac{1}{x}\)は有理関数であるため\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)上で連続であり、成分関数\(f_{2}\left(x\right) =\sin \left( x\right) \)は正弦関数であるため\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)上で連続です。したがって、先の命題より、もとの関数\(f\)もまた\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)上で連続です。ちなみに、\(f\)は点\(0\)において定義されていないため、\(f\)は点\(0\)において連続でも不連続でもありません。
例(ベクトル値関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,\pi \right] \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,\pi \right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( \cos \left( x\right) ,\sin \left( x\right) \right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)の定義域の内部\(\left( 0,\pi \right) \)の点を任意に選んだとき、\(f\)はその点の周辺の任意の点において定義されています。成分関数\(f_{1}\left(x\right) =\cos \left( x\right) \)は余弦関数であるため\(\left( 0,\pi \right) \)上で連続であり、成分関数\(f_{2}\left( x\right) =\sin \left( x\right) \)は正弦関数であるため\(\left(0,\pi \right) \)上で連続です。したがって、先の命題より、もとの関数\(f\)もまた\(\left( 0,\pi \right) \)上で連続です。一方、定義域の端点\(0\)に注目したとき、\(f\)は\(x<0\)を満たす任意の\(x\in \mathbb{R} \)において定義されていないため、\(x\rightarrow 0\)のときに\(f\)が\(\mathbb{R} ^{2}\)の点へ収束するか検討できず、したがって\(f\)は点\(0\)において連続ではありません。同様の理由により、\(f\)は定義域のもう一方の端点\(1\)において連続ではありません。以上より、\(f\)は定義域\(\left[0,\pi \right] \)上では連続ではないものの、その内部\(\left( 0,\pi \right) \)において連続であることが明らかになりました(ただし、後に導入する「片側連続性」という概念を踏まえると、\(f\)は定義域\(\left[ 0,\pi \right] \)上で連続とみなされます。詳細は後述します)。

先の命題は、ベクトル値関数が連続ではないことを示す際にも有用です。つまり、少なくとも1つの成分関数が点\(a\)において連続ではない場合、もとのベクトル値関数もまた点\(a\)において連続ではありません。

例(ベクトル値関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)の第\(i\)座標関数\(f_{i}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f_{i}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
0 & \left( if\ x<0\right) \\
1 & \left( if\ x\geq 0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(f_{i}\)は点\(0\)およびその周辺の任意の点において定義されている一方で、\(x\rightarrow 0\)のときに\(f_{i}\)は有限な実数へ収束しません。実際、点\(0\)より小さい任意の点\(x\)において\(f_{i}\left(x\right) =0\)であることから、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow 0-}f_{i}\left( x\right) =\lim_{x\rightarrow 0-}0=0
\end{equation*}である一方で、点\(0\)より大きい任意の点\(x\)において\(f_{i}\left( x\right) =1\)であることから、\begin{equation*}\lim_{x\rightarrow 0+}f_{i}\left( x\right) =\lim_{x\rightarrow 0+}1=1
\end{equation*}であり、両者が一致しないからです。したがって\(f\)は点\(0\)において連続ではなく、ゆえに先の命題よりもとの関数\(f\)もまた点\(0\)において連続ではありません。

 

演習問題

問題(ベクトル値関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( \left\vert x\right\vert ,\cos \left( x\right)
\right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)が連続な点をすべて求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(ベクトル値関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} \backslash \left\{ -1,0\right\} \rightarrow \mathbb{R} ^{3}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ -1,0\right\} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left( \frac{x-1}{x+1},\frac{e^{x}-1}{x},2x^{2}-\pi
\right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)が連続な点をすべて求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(ベクトル値関数の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\left( 0,0\right) & \left( if\ x<0\right) \\
\left( 1,1\right) & \left( if\ x\geq 0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)が連続な点をすべて求めてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関連知識

Mailで保存
Xで共有

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです

会員登録

有料のプレミアム会員であれば、質問やコメントの投稿と閲覧、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題とその解答)へのアクセスなどが可能になります。

ワイズのユーザーは年齢・性別・学歴・社会的立場などとは関係なく「学ぶ人」として対等であり、お互いを人格として尊重することが求められます。ユーザーが快適かつ安心して「学ぶ」ことに集中できる環境を整備するため、広告やスパム投稿、他のユーザーを貶めたり威圧する発言、学んでいる内容とは関係のない不毛な議論などはブロックすることになっています。詳細はガイドラインをご覧ください。

誤字脱字、リンク切れ、内容の誤りを発見した場合にはコメントに投稿するのではなく、以下のフォームからご連絡をお願い致します。

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録