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1変数のベクトル値関数

ベクトル値関数のスカラー倍の連続性

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連続なベクトル値関数のスカラー倍の連続性

ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)とスカラー\(c\in \mathbb{R} \)が与えられたとき、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{eqnarray*}\left( cf\right) \left( x\right) &=&cf\left( x\right) \\
&=&c\left( f_{1}\left( x\right) ,\cdots ,f_{m}\left( x\right) \right) \\
&=&\left( cf_{1},\cdots ,cf_{m}\left( x\right) \right)
\end{eqnarray*}を定める新たなベクトル値関数\(cf:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が定義可能です。ただし、\(f_{i}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \ \left( i=1,\cdots ,m\right) \)は\(f\)の成分関数です。

関数\(f\)が定義域上の点\(a\in X\)および周辺の任意の点において定義されているとともに点\(a\)において連続であるならば、関数\(cf\)もまた点\(a\)において連続であることが保証されます。

命題(点において連続なベクトル値関数のスカラー倍の連続性)
ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)とスカラー\(c\in \mathbb{R} \)がそれぞれ任意に与えられたとき、そこからベクトル値関数\(cf:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)を定義する。\(f\)が定義域上の点\(a\in X\)および周辺の任意の点において定義されているとともに点\(a\)において連続であるならば、\(cf\)もまた点\(a\)において連続である。
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つまり、定義域上の点\(a\)において連続なベクトル値関数\(f\)のスカラー倍の形をしているベクトル値関数\(cf\)が与えられたとき、\(cf\)もまた点\(a\)において連続であることを上の命題は保証しています。したがって、何らかのベクトル値関数\(f\)のスカラー倍の形をしている関数\(cf\)の連続性を検討する際には、ベクトル値関数の連続性の定義にさかのぼって考える前に、まずは\(c\)と\(f\)を分けた上で、\(f\)が連続であることを確認すればよいということになります。

例(連続なベクトル値関数のスカラー倍の連続性)
ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)とスカラー\(c\in \mathbb{R} \)からベクトル値関数\(cf:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)を定義します。\(f\)が連続関数であるものとします。つまり、\(f\)は任意の点\(a\in X\)において連続であるということです。すると先の命題より\(cf\)もまた点\(a\)において連続であるため、\(cf\)もまた連続関数です。
例(連続なベクトル値関数のスカラー倍の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)は連続であるものとします。関数\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}g\left( x\right) =-f\left( x\right)
\end{equation*}を定めるものとします。つまり、\(g\)は\(f\)のスカラー倍(\(-1\)倍)として定義されているため、先の命題より\(g\)もまた連続です。
例(連続なベクトル値関数のスカラー倍の連続性)
関数\(f:\mathbb{R} _{++}\rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} _{++}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =2\left( x^{4},\ln \left( x\right) \right)
\end{equation*}を定めるものとします。1変数関数である\(x^{4}\)および\(\ln \left( x\right) \)は点\(a\)において連続であるため、ベクトル値関数\(\left( x^{4},\ln \left( x\right) \right) \)は連続です。したがって先の命題より、そのスカラー倍(\(2\)倍)として定義される\(f\)もまた連続です。

 

片側連続なベクトル値関数のスカラー倍の片側連続性

片側連続性についても同様の命題が成り立ちます。

命題(点において片側連続なベクトル値関数のスカラー倍の連続性)
ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)とスカラー\(c\in \mathbb{R} \)がそれぞれ任意に与えられたとき、そこからベクトル値関数\(cf:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)を定義する。\(f\)が定義域上の点\(a\in X\)以上の周辺の任意の点において定義されており、なおかつ点\(a\)において右側連続であるならば、\(cf\)もまた点\(a\)において右側連続である。また、\(f\)が定義域上の点\(a\in X\)以下の周辺の任意の点において定義されており、なおかつ点\(a\)において左側連続であるならば、\(cf\)もまた点\(a\)において左側連続である。
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例(片側連続なベクトル値関数のスカラー倍の片側連続性)
ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)とスカラー\(c\in \mathbb{R} \)からベクトル値関数\(cf:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)を定義します。\(f\)が右側連続関数であるものとします。つまり、\(f\)は任意の点\(a\in X\)において右側連続であるということです。すると先の命題より\(cf\)もまた点\(a\)において右側連続であるため、\(cf\)もまた右側連続関数です。同様に、\(f\)が左側連続関数であるならば\(cf\)もまた左側連続関数です。
例(片側連続なベクトル値関数のスカラー倍の片側連続性)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ 0,\pi \right] \rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(x\in \left[ 0,\pi \right] \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =-\frac{1}{2}\left( \cos \left( x\right) ,\sin \left(
x\right) \right)
\end{equation*}を定めるものとします。余弦関数\(\cos \left( x\right) \)および正弦関数\(\sin \left(x\right) \)はともに\(f\)の定義域\(\left[ 0,1\right] \)上で連続です。つまり、端点\(0\)において右側連続であり、もう一方の端点\(1\)において左側連続であり、定義域の内部\(\left( 0,1\right) \)の任意の点において連続です。したがって、ベクトル値関数\(\left( \cos \left( x\right) ,\sin \left( x\right) \right) \)は\(\left[0,1\right] \)上で連続であるため、そのスカラー倍(\(-\frac{1}{2}\))である関数\(f\)もまた\(\left[ 0,1\right] \)上で連続です。

 

演習問題

問題(連続なベクトル値関数のスカラー商の連続性)
ベクトル値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)と非ゼロのスカラー\(c\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられたとき、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}\left( \frac{f}{c}\right) \left( x\right) =\frac{f\left( x\right) }{c}
\end{equation*}を定める新たなベクトル値関数\(\frac{f}{c}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が定義可能です。関数\(f\)が\(X\)上で連続である場合には関数\(\frac{f}{c}\)もまた\(X\)上で連続であることを示してください。
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