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凸関数・凹関数

エピグラフ・ハイポグラフを用いた1変数の狭義凸関数・狭義凹関数の判定

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エピグラフを用いた1変数の狭義凸関数の判定

区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が狭義凸関数であることは、\begin{equation*}\forall x_{1}\in I,\ \forall x_{2}\in I\backslash \left\{ x_{1}\right\} ,\
\forall \lambda \in \left( 0,1\right) :\lambda f\left( x_{1}\right) +\left(
1-\lambda \right) f\left( x_{2}\right) >f\left( \lambda x_{1}+\left(
1-\lambda \right) x_{2}\right)
\end{equation*}が成り立つこととして定義されますが、定義にもとづいて関数が狭義凸であることを示す作業は煩雑になりがちです。ただ、関数\(f\)が微分可能である場合、導関数\(f^{\prime }\)が狭義単調増加関数であることと\(f\)が狭義凸関数であることは必要十分です。さらに、関数\(f\)が2階微分可能である場合、2階導関数\(f^{\prime \prime }\)が正の値のみをとるならば、すなわち、\begin{equation*}\forall x\in I:f^{\prime \prime }\left( x\right) >0
\end{equation*}が成り立つ場合には\(f\)は狭義凸関数です(逆は成り立つとは限らない)。では、関数\(f\)が微分可能でない場合、\(f\)が狭義凸関数であることを簡単に判定する方法はあるのでしょうか。

区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)のグラフは、\begin{equation*}G\left( f\right) =\left\{ \left( x,y\right) \in I\times \mathbb{R} \ |\ y=f\left( x\right) \right\}
\end{equation*}と定義される\(\mathbb{R} ^{2}\)の部分集合であるため、空間\(\mathbb{R} ^{2}\)は曲線である\(G\left( f\right) \)を境に、その上部の領域と下部の領域に分割されます。特に、\(G\left( f\right) \)を含めてそれよりも上部の領域であるような\(\mathbb{R} ^{2}\)の部分集合を、\begin{equation*}\mathrm{epi}\left( f\right) =\left\{ \left( x,y\right) \in I\times \mathbb{R} \ |\ y\geq f\left( x\right) \right\}
\end{equation*}で表記し、これを関数\(f\)のエピグラフ(epigraph)と呼びます。定義より、\begin{equation*}G\left( f\right) \subset \mathrm{epi}\left( f\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

例(関数のエピグラフ)
関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)のグラフ\(G\left( f\right) \)が下図において曲線として描かれています。\(f\)のエピグラフ\(\mathrm{epi}\left( f\right) \)は\(f\)のグラフである曲線と、それより上方の領域を併せたグレーの領域に相当します。

図:エピグラフ
図:エピグラフ

上の例中の関数\(f\)は下に凸なグラフを持つため、これは狭義凸関数です。さらに、\(f\)が下に狭義凸なグラフを持つことは、グラフの上部の領域に相当する\(f\)のエピグラフが狭義凸集合であることと必要十分であることが図から読み取れます。実際、これは正しい主張です。

命題(エピグラフを用いた狭義凸関数の判定)
区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)のエピグラフ\(\mathrm{epi}\left(f\right) \)が狭義凸集合であることは、\(f\)が狭義凸関数であるための必要十分である。
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例(エピグラフと狭義凸関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{2}+\left\vert x\right\vert
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は点\(0\)において明らかに微分可能ではありません。\(f\)のエピグラフは、\begin{equation*}\mathrm{epi}\left( f\right) =\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ y\geq x^{2}+\left\vert x\right\vert \right\}
\end{equation*}であり、これは下図のグレーの領域に相当します。これは明らかに狭義凸集合であるため、\(f\)は狭義凸関数です。

図:エピグラフ
図:エピグラフ

先の命題は区間上に定義された関数が狭義凸であるための必要十分条件を与えているため、関数が狭義凸でないことを示す際にも利用できます。具体的には、区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)のエピグラフ\(\mathrm{epi}\left(f\right) \)が狭義凸集合でない場合に\(f\)は狭義凸関数ではありません。

例(非狭義凸関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)のエピグラフは、\begin{eqnarray*}\mathrm{epi}\left( f\right) &=&\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ y\geq f\left( x\right) \right\} \quad \because \text{エピグラフの定義} \\
&=&\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ y\geq x\right\} \quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}となります。2つの異なる点\(\left( 0,0\right) ,\left( 1,1\right) \in \mathrm{epi}\left( f\right) \)とスカラー\(\frac{1}{2}\in\left( 0,1\right) \)に注目したとき、\begin{equation*}\frac{1}{2}\left( 0,0\right) +\frac{1}{2}\left( 1,1\right) =\left( \frac{1}{2},\frac{1}{2}\right)
\end{equation*}となりますが、この点は\(\mathrm{epi}\left( f\right) \)の内点ではなく境界点です。したがって\(\mathrm{epi}\left(f\right) \)は狭義凸集合ではなく、\(f\)は狭義凸関数ではありません。

 

ハイポグラフを用いた1変数の狭義凹関数の判定

区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が狭義凹関数であることは、\begin{equation*}\forall x_{1}\in I,\ \forall x_{2}\in I\backslash \left\{ x_{1}\right\} ,\
\forall \lambda \in \left( 0,1\right) :\lambda f\left( x_{1}\right) +\left(
1-\lambda \right) f\left( x_{2}\right) <f\left( \lambda x_{1}+\left(
1-\lambda \right) x_{2}\right)
\end{equation*}が成り立つこととして定義されますが、定義にもとづいて関数が狭義凹であることを示す作業は煩雑になりがちです。ただ、関数\(f\)が微分可能である場合、導関数\(f^{\prime }\)が狭義単調減少関数であることと\(f\)が狭義凹関数であることは必要十分です。さらに、関数\(f\)が2階微分可能である場合、2階導関数\(f^{\prime \prime }\)が負の値のみをとるならば、すなわち、\begin{equation*}\forall x\in I:f^{\prime \prime }\left( x\right) <0
\end{equation*}が成り立つ場合に\(f\)は狭義凸関数です(逆は成り立つとは限らない)。では、関数\(f\)が微分可能でない場合、\(f\)が狭義凹関数であることを簡単に判定する方法はあるのでしょうか。

区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)のグラフは、\begin{equation*}G\left( f\right) =\left\{ \left( x,y\right) \in I\times \mathbb{R} \ |\ y=f\left( x\right) \right\}
\end{equation*}と定義される\(\mathbb{R} ^{2}\)の部分集合であるため、空間\(\mathbb{R} ^{2}\)は曲線である\(G\left( f\right) \)を境に、その上部の領域と下部の領域に分割されます。特に、\(G\left( f\right) \)を含めてそれよりも下部の領域であるような\(\mathbb{R} ^{2}\)の部分集合を、\begin{equation*}\mathrm{hyp}\left( f\right) =\left\{ \left( x,y\right) \in I\times \mathbb{R} \ |\ y\leq f\left( x\right) \right\}
\end{equation*}で表記し、これを関数\(f\)のハイポグラフ(hypograph)と呼びます。定義より、\begin{equation*}G\left( f\right) \subset \mathrm{hyp}\left( f\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

例(関数のハイポグラフ)
関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)のグラフ\(G\left( f\right) \)が下図において曲線として描かれています。\(f\)のハイポグラフ\(\mathrm{hyp}\left(f\right) \)は\(f\)のグラフである曲線と、それより下方の領域を併せたグレーの領域に相当します。

図:ハイポグラフ
図:ハイポグラフ

上の例中の関数\(f\)は上に狭義凸なグラフを持つため、これは狭義凹関数です。さらに、\(f\)が上に狭義凸なグラフを持つことは、グラフの下部の領域に相当する\(f\)のハイポグラフが狭義凸集合であることと必要十分であることが図から読み取れます。実際、これは正しい主張です。

命題(ハイポグラフを用いた狭義凹関数の判定)
区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)のハイポグラフ\(\mathrm{hyp}\left( f\right) \)が狭義凸集合であることは、\(f\)が狭義凹関数であるための必要十分である。
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例(ハイポグラフと狭義凹関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =-x^{2}-\left\vert x\right\vert
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)は点\(0\)において明らかに微分可能ではありません。\(f\)のハイポグラフは、\begin{equation*}\mathrm{hyp}\left( f\right) =\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ y\leq -x^{2}-\left\vert x\right\vert \right\}
\end{equation*}であり、これは下図のグレーの領域に相当します。これは明らかに狭義凸集合であるため、\(f\)は狭義凹関数です。

図:ハイポグラフ
図:ハイポグラフ

先の命題は区間上に定義された関数が狭義凹であるための必要十分条件を与えているため、関数が狭義凹でないことを示す際にも利用できます。具体的には、区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset I\rightarrow \mathbb{R} \)のハイポグラフ\(\mathrm{hyp}\left( f\right) \)が狭義凸集合でない場合に\(f\)は狭義凹関数ではありません。

例(非狭義凹関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =-x
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)のハイポグラフは、\begin{eqnarray*}\mathrm{hyp}\left( f\right) &=&\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ y\leq f\left( x\right) \right\} \quad \because \text{ハイポグラフの定義} \\
&=&\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ y\leq -x\right\} \quad \because f\text{の定義}
\end{eqnarray*}となります。2つの異なる点\(\left( 0,0\right) ,\left( 1,-1\right) \in \mathrm{hyp}\left( f\right) \)とスカラー\(\frac{1}{2}\in\left( 0,1\right) \)に注目したとき、\begin{equation*}\frac{1}{2}\left( 0,0\right) +\frac{1}{2}\left( 1,-1\right) =\left( \frac{1}{2},-\frac{1}{2}\right)
\end{equation*}となりますが、この点は\(\mathrm{hyp}\left( f\right) \)の内点ではなく境界点です。したがって\(\mathrm{hyp}\left(f\right) \)は狭義凸集合ではなく、\(f\)は狭義凹関数ではありません。

 

演習問題

問題(エピグラフと狭義凸関数)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =x^{2}
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)が狭義凸関数であることをエピグラフを用いて示してください。
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