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凸集合

アフィン包の定義と具体例

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集合のアフィン包

ユークリッド空間の部分集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)がアフィン集合であることは、\begin{equation*}\forall \boldsymbol{x}_{1}\in A,\ \forall \boldsymbol{x}_{2}\in A,\ \forall
\lambda \in \mathbb{R} :\lambda \boldsymbol{x}_{1}+\left( 1-\lambda \right) \boldsymbol{x}_{2}\in A
\end{equation*}が成り立つことを意味します。

集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、\(A\)自身はアフィン集合であるとは限りませんが、\(A\)を部分集合として持つアフィン集合は必ず存在します。具体例を挙げると、ユークリッド空間\begin{equation*}\mathbb{R} ^{n}\end{equation*}自身はアフィン集合であるとともに、\begin{equation*}
A\subset \mathbb{R} ^{n}
\end{equation*}が成り立つため、\(A\)を部分集合として持つアフィン集合が必ず存在することが明らかになりました。

集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)を部分集合として持つアフィン集合は1つだけであるとは限りません。そこで、\(A\)を部分集合として持つアフィン集合の中でも最小のものを\(A\)のアフィン包(affine hull)と呼び、\begin{equation*}\mathrm{Aff}\left( A\right)
\end{equation*}で表記します。定義より、\(\mathrm{Aff}\left( A\right) \)はアフィン集合であるとともに、\(A\subset B\)を満たすアフィン集合\(B\subset \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだときに、\begin{equation*}\mathrm{Aff}\left( A\right) \subset B
\end{equation*}が成り立ちます。集合\(A\)のアフィン包について考える場合、\(A\)自身はアフィン集合である必要はありません。

集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、\(A\)を部分集合として持つアフィン集合をすべて集めることにより得られる集合族を、\begin{equation*}\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }
\end{equation*}で表記します。つまり、\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ \forall \lambda \in \Lambda :A\subset A_{\lambda } \\
&&\left( b\right) \ \forall \lambda \in \Lambda :A_{\lambda }\text{はアフィン集合}
\end{eqnarray*}がともに成り立つということです。この集合族の共通部分は\(A\)のアフィン包と一致することが保証されます。つまり、以下の関係\begin{equation*}\mathrm{Aff}\left( A\right) =\bigcap\limits_{\lambda \in \Lambda
}A_{\lambda }
\end{equation*}が成り立つということです。

命題(アフィン包の生成)
ユークリッド空間の部分集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、\(A\)を部分集合として持つすべてのアフィン集合からなる集合族を\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }\)で表記する。このとき、以下の関係\begin{equation*}\mathrm{Aff}\left( A\right) =\bigcap\limits_{\lambda \in \Lambda
}A_{\lambda }
\end{equation*}が成り立つ。

証明

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ユークリッド空間の部分集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、\(\mathbb{R} ^{n}\)は\(A\)を部分集合として持つアフィン集合であるため\(\left\{ A_{\lambda }\right\}_{\lambda \in \Lambda }\)は非空であり、したがってその共通部分を常にとることができます。さらに、先の命題より、その共通部分は\(A\)のアフィン包と一致します。以上より、\(A\)のアフィン包が必ず存在することが明らかになりました。

命題(アフィン包の存在)
ユークリッド空間の部分集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、\(A\)のアフィン包は必ず存在する。

 

アフィン結合を利用した凸包の特定

ユークリッド空間の部分集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、\(A\)を部分集合として持つすべてのアフィン集合からなる集合族\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }\)をとった上で、その共通部分をとれば\(A\)のアフィン包が得られることが明らかになりました。ただ、この集合族\(\left\{ A_{\lambda }\right\} _{\lambda \in \Lambda }\)を特定するのは容易ではなく、また、特定できた場合でも、その共通部分をとる作業が困難であるような状況は起こり得ます。このような問題への対処として、アフィン包をベクトルのアフィン結合を用いて表現します。

ユークリッド上の有限個の点\(\boldsymbol{x}_{1},\cdots ,\boldsymbol{x}_{k}\in \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、スカラー\(\lambda _{1},\cdots ,\lambda _{k}\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}\lambda _{1}\boldsymbol{x}_{1}+\cdots +\lambda _{k}\boldsymbol{x}_{k}
\end{equation*}という形で表される\(\mathbb{R} ^{n}\)の点を\(\boldsymbol{x}_{1},\cdots ,\boldsymbol{x}_{k}\)の線型結合と呼びます。特に、スカラー\(\lambda _{1},\cdots ,\lambda _{k}\in \mathbb{R} \)が以下の条件\begin{equation*}\lambda _{1}+\cdots +\lambda _{k}=1
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\sum_{i=1}^{k}\lambda _{i}=1
\end{equation*}を満たす場合には、つまり、すべてのスカラーの和が\(1\)である場合には、線型結合のことをアフィン結合と呼びます。

ユークリッド空間の部分集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、\(A\)の任意個の点の任意のアフィン結合をすべて集めれば、それは\(A\)のアフィン包と一致することが保証されます。ただし、\(A\)の点のアフィン結合は\(A\)の有限個の点に対して定義される概念であることを踏まえると、これは、自然数\(k\in \mathbb{N} \)を任意に選んだ上で、さらに\(k\)個の点\(\boldsymbol{x}_{1},\cdots ,\boldsymbol{x}_{k}\in A\)を任意に選び、さらに、そのアフィン結合\begin{equation*}\sum_{i=1}^{k}\lambda _{i}\boldsymbol{x}_{i}=\lambda _{1}\boldsymbol{x}_{1}+\cdots +\lambda _{k}\boldsymbol{x}_{k}
\end{equation*}をすべて集めれば\(A\)の凸包になるという主張になります。つまり、以下の関係\begin{equation*}\mathrm{Aff}\left( A\right) =\left\{ \sum_{i=1}^{k}\lambda _{i}\boldsymbol{x}_{i}\ |\ k\in \mathbb{N} \wedge \sum_{i=1}^{k}\lambda _{i}=1\wedge \forall i\in \left\{ 1,\cdots
,k\right\} :\left( \lambda _{i}\in \mathbb{R} \wedge \boldsymbol{x}_{i}\in A\right) \right\}
\end{equation*}が成り立つということです。

命題(アフィン結合を利用したアフィン包の特定)
ユークリッド空間の部分集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、以下の関係\begin{equation*}\mathrm{Aff}\left( A\right) =\left\{ \sum_{i=1}^{k}\lambda _{i}\boldsymbol{x}_{i}\ |\ k\in \mathbb{N} \wedge \sum_{i=1}^{k}\lambda _{i}=1\wedge \forall i\in \left\{ 1,\cdots
,k\right\} :\left( \lambda _{i}\in \mathbb{R} \wedge \boldsymbol{x}_{i}\in A\right) \right\}
\end{equation*}が成り立つ。

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有限集合のアフィン包

先の命題を踏まえると、有限集合のアフィン包を以下のように表現できます。

命題(有限集合のアフィン)
ユークリッド空間の部分集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が有限\(k\in \mathbb{N} \)個の要素を持つ有限集合であるものとする。その要素が、\begin{equation*}A=\left\{ \boldsymbol{x}_{1},\cdots ,\boldsymbol{x}_{k}\right\}
\end{equation*}である場合、以下の関係\begin{equation*}
\mathrm{Aff}\left( A\right) =\left\{ \sum_{i=1}^{k}\lambda _{i}\boldsymbol{x}_{i}\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ \sum_{i=1}^{k}\lambda _{i}=1\wedge \forall i\in \left\{ 1,\cdots
,k\right\} :\lambda _{i}\in \mathbb{R} \right\}
\end{equation*}が成り立つ。

以上の命題より、有限集合\(A\)のアフィン包は、\(A\)に属するすべての点のアフィン結合をすべて集めることにより得られる集合と一致することが明らかになりました。言い換えると、有限集合\(A\)のアフィン包の要素は、\(A\)のすべての点の何らかのアフィン結合として表すことができるということです。

 

演習問題

問題(アフィン包)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{2}\)の部分集合\begin{equation*}A=\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ -1\leq x\leq 1\wedge -1\leq y\leq 1\right\}
\end{equation*}が与えられているものとします。アフィン包\(\mathrm{Aff}\left( A\right) \)を特定してください。
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問題(アフィン包と包含関係)
ユークリッド空間の部分集合\(A,B\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、以下の関係\begin{equation*}A\subset B\Rightarrow \mathrm{Aff}\left( A\right) \subset \mathrm{Aff}\left( B\right)
\end{equation*}成り立つことを示してください。

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問題(アフィン包のアフィン包)
ユークリッド空間の部分集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、以下の関係\begin{equation*}\mathrm{Aff}\left( \mathrm{Aff}\left( A\right) \right) =\mathrm{Aff}\left( A\right)
\end{equation*}が成り立つことを示してください。

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