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凸集合

凸集合どうしの共通部分

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2つの凸集合の共通部分は凸集合

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合\(A_{1},A_{2}\)が与えられたとき、それらの共通部分は、\begin{equation*}A_{1}\cap A_{2}=\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ x\in A_{1}\wedge x\in A_{2}\right\}
\end{equation*}と定義される\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合です。

例(集合の共通部分)
以下の集合\begin{eqnarray*}
\left\{ 1,2,3\right\} &\subset &\mathbb{R} \\
\left[ 0,1\right] &\subset &\mathbb{R} \end{eqnarray*}について、\begin{eqnarray*}
\left\{ 1,2,3\right\} \cap \left[ 0,1\right] &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ x\in \left\{ 1,2,3\right\} \wedge 0\leq x\leq 1\right\} \quad \because
\text{共通部分の定義} \\
&=&\left\{ 1\right\}
\end{eqnarray*}となります。これは\(\mathbb{R} \)の部分集合です。
例(集合の共通部分)
以下の集合\begin{eqnarray*}
\left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] &\subset &\mathbb{R} ^{2} \\
\left[ -\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right] \times \left[ -\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right] &\subset &\mathbb{R} ^{2}
\end{eqnarray*}について、\begin{eqnarray*}
&&\left( \left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] \right) \cap \left( \left[ -\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right] \times \left[ -\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right] \right) \\
&=&\left\{ \left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ 0\leq x_{1}\leq 1\wedge 0\leq x_{2}\leq 1\wedge -\frac{1}{2}\leq
x_{1}\leq \frac{1}{2}\wedge -\frac{1}{2}\leq x_{2}\leq \frac{1}{2}\right\}
\\
&=&\left\{ \left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ 0\leq x_{1}\leq \frac{1}{2}\wedge 0\leq x_{2}\leq \frac{1}{2}\right\} \\
&=&\left[ 0,\frac{1}{2}\right] \times \left[ 0,\frac{1}{2}\right] \end{eqnarray*}となります。これは\(\mathbb{R} ^{2}\)の部分集合です。
例(空集合との共通部分)
空集合\(\phi \)もまた\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合であるため、空集合と任意の集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)の共通部分をとることができますが、\begin{equation*}A\cap \phi =\phi \cap A=\phi
\end{equation*}が成り立ちます(演習問題)。

\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合\(A_{1},A_{2}\)がともに凸集合である場合、それらの共通部分\(A_{1}\cap A_{2}\)もまた凸集合になることが保証されます。

命題(凸集合の共通部分)
ユークリッド空間の部分集合\(A_{1},A_{2}\subset \mathbb{R} ^{n}\)がともに凸集合であるならば、共通部分\(A_{1}\cap A_{2}\)もまた凸集合である。
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例(凸集合の共通部分)
\(a<b\)かつ\(c<d\)を満たす実数\(a,b,c,d\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、2つの有界開区間\begin{eqnarray*}\left( a,b\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a<x<b\right\} \\
\left( c,d\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ c<x<d\right\}
\end{eqnarray*}をとります。これらはともに\(\mathbb{R} \)上の凸集合であるため、これらの共通部分もまた凸集合です。実際、\begin{equation*}a<c<b<d
\end{equation*}が成り立つ場合、\begin{equation*}
\left( a,b\right) \cap \left( c,d\right) =\left( c,b\right)
\end{equation*}となりますが、これは有界開区間であるため凸集合です。また、\begin{equation*}
a<b<c<d
\end{equation*}が成り立つ場合、\begin{equation*}
\left( a,b\right) \cap \left( c,d\right) =\phi
\end{equation*}となりますが、これは空集合であるため凸集合です。

 

有限凸集合族の共通部分は凸集合

先の命題は3個以上の凸集合に関しても拡張可能です。ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の有限部分集合族\(\left\{ A_{i}\right\} _{i=1}^{k}\)を任意に選びます。この集合族の共通部分は、\begin{equation*}\bigcap\limits_{i=1}^{k}A_{i}=\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ \forall i\in \left\{ 1,\cdots ,k\right\} :x\in A_{i}\right\}
\end{equation*}と定義されます。

ユークリッド空間の有限部分集合族\(\left\{A_{i}\right\} _{i=1}^{k}\)の要素がいずれも凸集合である場合、この集合族の共通部分もまた凸集合になることが保証されます。

命題(有限凸集合族の共通部分)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合族\(\left\{ A_{i}\right\}_{i=1}^{k}\)が与えられたとき、その任意の要素\(A_{i}\ \left( i=1,\cdots ,k\right) \)が凸集合であるならば、その共通部分\begin{equation*}\bigcap\limits_{i=1}^{k}A_{i}
\end{equation*}もまた凸集合である。

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凸集合どうしの和集合は凸集合であるとは限らない

凸集合どうしの共通部分は凸集合であることが明らかになりました。一方、凸集合どうしの和集合は凸集合であるとは限りません。以下の例より明らかです。

例(凸集合どうしの和集合)
\(a<b<c<d\)を満たす実数\(a,b,c,d\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、2つの有界開区間\begin{eqnarray*}\left( a,b\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a<x<b\right\} \\
\left( c,d\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ c<x<d\right\}
\end{eqnarray*}をとります。これらはともに\(\mathbb{R} \)上の凸集合です。その一方で、これらの和集合\begin{equation*}\left( a,b\right) \cup \left( c,d\right) =\left\{ x\in \mathbb{R} \ |\ a<x<b\vee c<x<d\right\}
\end{equation*}は凸集合ではありません。実際、この和集合の2つの点\(\frac{a+b}{2},\frac{c+d}{2}\in \left( a,b\right) \cup \left( c,d\right) \)とスカラー\(\frac{1}{2}\in \left[ 0,1\right] \)に注目したとき、\begin{equation*}\frac{1}{2}\cdot \frac{a+b}{2}+\frac{1}{2}\cdot \frac{c+d}{2}=\frac{a+b}{4}+\frac{c+d}{4}
\end{equation*}となりますが、\begin{equation*}
b<\frac{a+b}{4}+\frac{c+d}{4}<c
\end{equation*}より、\begin{equation*}
\frac{1}{2}\cdot \frac{a+b}{2}+\frac{1}{2}\cdot \frac{c+d}{2}\not\in \left(
a,b\right) \cup \left( c,d\right)
\end{equation*}であるため、\(\left( a,b\right) \cup\left( c,d\right) \)は凸集合ではありません。

 

演習問題

問題(空集合との共通部分)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合\(A\)を任意に選んだとき、\begin{equation*}A\cap \phi =\phi \cap A=\phi
\end{equation*}が成り立つことを示してください。

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問題(凸集合であるような共通部分)
本文中で明らかにしたように、ユークリッド空間の部分集合\(A_{1},A_{2}\subset \mathbb{R} ^{n}\)がともに凸集合であるならば、共通部分\(A_{1}\cap A_{2}\)もまた凸集合です。では、その逆もまた成り立つでしょうか。つまり、共通部分\(A_{1}\cap A_{2}\)が凸集合である場合、個々の集合\(A_{1},A_{2}\)もまた凸集合であることが保証されるでしょうか。議論してください。
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