ユークリッド空間における直線
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)において直線を表現するためには、2つの異なる点を指定すれば十分です。なぜなら、2つの異なる点が与えられれば、それらを通る直線は1つに定まるからです。そこで、問題としている直線上にある2つの異なる点\(P,X\)をとります。原点を\(O\)とするとき、\begin{equation}\overrightarrow{OX}=\overrightarrow{OP}+\overrightarrow{PX} \quad \cdots (1)
\end{equation}という関係が成立することに注意してください(下図)。
直線上の点\(P\)を任意に選んだ上で固定します。点\(P\)の位置ベクトルを\(p\in \mathbb{R} ^{n}\)とします。つまり、ベクトル\(\overrightarrow{OP}\)の終点の座標が\(p\)であり、\begin{equation}\overrightarrow{OP}=p \quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立つということです。さらに、直線上にある点\(P\)とは異なる点\(X\)を任意に選びます。点\(X\)の位置ベクトルを\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)とします。つまり、ベクトル\(\overrightarrow{OX}\)の終点の座標が\(x\)であり、\begin{equation}\overrightarrow{OX}=x \quad \cdots (3)
\end{equation}が成り立つということです。ベクトル\(\overrightarrow{PX}\)は直線上にある2つの異なる点を結ぶベクトルであるため、直線と平行な非ゼロベクトル\(v\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)を任意に選んで固定したとき、何らかのスカラー\(t\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation}\overrightarrow{PX}=tv \quad \cdots (4)
\end{equation}と表すことができます。\(\left( 1\right) \)および\(\left( 2\right),\left( 3\right) ,\left( 4\right) \)を踏まえると、直線上にある点\(P\)の座標\(p\in \mathbb{R} ^{n}\)と、直線に平行な非ゼロベクトル\(v\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)をそれぞれ固定したとき、直線上にあるそれぞれの点\(X\)の座標\(x\in \mathbb{R} ^{n}\)は、何らかのスカラー\(t\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}x=p+tv
\end{equation*}という形で表すことができます。これを直線のベクトル方程式(vector equation of a line)と呼びます。\(v\)を直線の方向ベクトル(direction vector of a line)と呼び、\(t\)を媒介変数(parameter)やパラメータ(parameter)などと呼びます。
以上を踏まえると、直線上にある点の座標\(p\in \mathbb{R} ^{n}\)と方向ベクトル\(v\in \mathbb{R} ^{n}\backslash \left\{ 0\right\} \)が与えられたとき、直線上のすべての点の座標からなる集合は、\begin{equation*}L\left( p,v\right) =\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ \exists t\in \mathbb{R} :x=p+tv\right\}
\end{equation*}と定まるため、これを直線(line)と呼びます。
\end{equation*}と表されますが、点\(p\)と方向ベクトル\(v\)に関わらず、\begin{equation*}L\left( p,v\right) =\mathbb{R} \end{equation*}となります(演習問題)。つまり、\(\mathbb{R} \)における任意の直線は\(\mathbb{R} \)です。
v_{1},v_{2}\right) \right\} \\
&=&\left\{ \left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ \exists t\in \mathbb{R} :\left( x_{1},x_{2}\right) =\left( p_{1}+tv_{1},p_{2}+tv_{2}\right) \right\}
\end{eqnarray*}と表されます。具体例を挙げると、\begin{eqnarray*}
L\left( \left( 1,2\right) ,\left( 3,4\right) \right) &=&\left\{ \left(
x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ \exists t\in \mathbb{R} :\left( x_{1},x_{2}\right) =\left( 1,2\right) +t\left( 3,4\right) \right\}
\\
&=&\left\{ \left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ \exists t\in \mathbb{R} :\left( x_{1},x_{2}\right) =\left( 1+3t,2+4t\right) \right\}
\end{eqnarray*}となります。
v_{1},v_{2},v_{3}\right) \right\} \\
&=&\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ \exists t\in \mathbb{R} :\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) =\left(
p_{1}+tv_{1},p_{2}+tv_{2},p_{3}+tv_{3}\right) \right\}
\end{eqnarray*}と表されます。具体例を挙げると、\begin{eqnarray*}
L\left( \left( 1,2,3\right) ,\left( 4,5,6\right) \right) &=&\left\{ \left(
x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ \exists t\in \mathbb{R} :\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) =\left( 1,2,3\right) +t\left( 4,5,6\right)
\right\} \\
&=&\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in \mathbb{R} ^{3}\ |\ \exists t\in \mathbb{R} :\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) =\left( 1+4t,2+5t,3+6t\right) \right\}
\end{eqnarray*}となります。
2次元ユークリッド空間における直線と超平面の関係
繰り返しになりますが、2次元ユークリッド空間における直線は、点\(p=\left( p_{1},p_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\)と方向ベクトル\(v=\left(v_{1},v_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\} \)を用いて、\begin{equation*}L\left( p,v\right) =\left\{ \left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ \exists t\in \mathbb{R} :\left( x_{1},x_{2}\right) =\left( p_{1},p_{2}\right) +t\left(
v_{1},v_{2}\right) \right\}
\end{equation*}と表現される\(\mathbb{R} ^{2}\)の部分集合です。一方、\(\mathbb{R} ^{2}\)における超平面は、非ゼロベクトル\(a=\left( a_{1},a_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\backslash \left\{ \left( 0,0\right) \right\} \)とスカラー\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}H\left( a,c\right) =\left\{ \left( x_{1},x_{2}\right) \in \mathbb{R} ^{2}\ |\ \left( a_{1},a_{2}\right) \cdot \left( x_{1},x_{2}\right)
=c\right\}
\end{equation*}と表現される\(\mathbb{R} ^{2}\)の部分集合です。
\(\mathbb{R} ^{2}\)における直線は\(\mathbb{R} ^{2}\)における超平面でもあります。
実は、上の命題の逆も成立します。つまり、\(\mathbb{R} ^{2}\)における超平面は\(\mathbb{R} ^{2}\)における直線でもあります。
以上の2つの命題より、2次元ユークリッド空間において超平面と直線は概念として一致することが明らかになりました。
一般に、ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の直線\(L\left( p,v\right) \)を特定するためには、その直線上の点\(p\)と方向ベクトル\(v\)を指定する必要があります。上の命題によると、2次元ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{2}\)を議論の対象とする場合には直線\(L\left( p,v\right) \)は超平面\(H\left( a,c\right) \)と一致するため、法線ベクトル\(a\)とスカラー\(c\)を指定することを通じて直線を特定することもできます。
演習問題
\end{equation*}と表されますが、点\(p\)と方向ベクトル\(v\)に関わらず、\begin{equation*}L\left( p,v\right) =\mathbb{R} \end{equation*}となることを示してください。
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