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確率変数

確率変数の絶対値は確率変数

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確率変数の絶対値は確率変数

標本空間と事象空間からなる可測空間\(\left(\Omega ,\mathcal{F}\right) \)と、実数空間とボレル集合からなる可測空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathcal{B}\right) \)が与えられた状況において、写像\begin{equation*}X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。すると、それぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して、以下の実数\begin{equation*}\left\vert X\right\vert \left( \omega \right) =\left\vert X\left( \omega
\right) \right\vert
\end{equation*}を定める新たな写像\begin{equation*}
\left\vert X\right\vert :\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義できます。

写像\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)が確率変数である場合には、写像\(\left\vert X\right\vert:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)もまた確率変数になることが保証されます。

命題(確率変数の絶対値は確率変数)
可測空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F}\right) ,\left( \mathbb{R} ,\mathcal{B}\right) \)に加えて写像\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとする。写像\(\left\vert X\right\vert :\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(X\)が確率変数であるならば、\(\left\vert X\right\vert \)もまた確率変数になる。
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例(確率変数の定数倍の絶対値は確率変数)
可測空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F}\right) ,\left( \mathbb{R} ,\mathcal{B}\right) \)に加えて確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。実数\(k\in \mathbb{R} \)を任意に選ぶと、確率変数の定数倍は確率変数であるため\(kX:\Omega\rightarrow \mathbb{R} \)は確率変数です。先の命題より確率変数の絶対値は確率変数であるため、\begin{equation*}\left\vert kX\right\vert :\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}は確率変数です。以上より、確率変数の定数倍の絶対値は確率変数であることが明らかになりました。

例(確率変数の和の絶対値は確率変数)
可測空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F}\right) ,\left( \mathbb{R} ,\mathcal{B}\right) \)に加えて2つの確率変数\(X,Y:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。確率変数の和は確率変数であるため\(X+Y:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)は確率変数です。先の命題より確率変数の絶対値は確率変数であるため、\begin{equation*}\left\vert X+Y\right\vert :\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}は確率変数です。以上より、確率変数どうしの和の絶対値は確率変数であることが明らかになりました。

例(確率変数の差の絶対値は確率変数)
可測空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F}\right) ,\left( \mathbb{R} ,\mathcal{B}\right) \)に加えて2つの確率変数\(X,Y:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。確率変数の差は確率変数であるため\(X-Y:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)は確率変数です。先の命題より確率変数の絶対値は確率変数であるため、\begin{equation*}\left\vert X-Y\right\vert :\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}は確率変数です。以上より、確率変数どうしの差の絶対値は確率変数であることが明らかになりました。

例(確率変数の積の絶対値は確率変数)
可測空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F}\right) ,\left( \mathbb{R} ,\mathcal{B}\right) \)に加えて2つの確率変数\(X,Y:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。確率変数の積は確率変数であるため\(XY:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)は確率変数です。先の命題より確率変数の絶対値は確率変数であるため、\begin{equation*}\left\vert XY\right\vert :\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}は確率変数です。以上より、確率変数どうしの積の絶対値は確率変数であることが明らかになりました。

例(確率変数の積の絶対値は確率変数)
可測空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F}\right) ,\left( \mathbb{R} ,\mathcal{B}\right) \)に加えて2つの確率変数\(X,Y:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。以下の条件\begin{equation*}\forall \omega \in \Omega :Y\left( \omega \right) \not=0
\end{equation*}が成り立つ場合には写像\(\frac{X}{Y}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能ですが、確率変数の商は確率変数であるため\(\frac{X}{Y}\)は確率変数です。先の命題より確率変数の絶対値は確率変数であるため、\begin{equation*}\left\vert \frac{X}{Y}\right\vert :\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}は確率変数です。以上より、確率変数どうしの商の絶対値は確率変数であることが明らかになりました。

 

拡大実数値確率変数の絶対値は拡大実数値確率変数

標本空間と事象空間からなる可測空間\(\left(\Omega ,\mathcal{F}\right) \)と、拡大実数系とボレル集合からなる可測空間\(\left( \overline{\mathbb{R} },\overline{\mathcal{B}}\right) \)が与えられた状況において、写像\begin{equation*}X:\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}を定義します。すると、それぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して、以下の拡大実数値\begin{equation*}\left\vert X\right\vert \left( \omega \right) =\left\vert X\left( \omega
\right) \right\vert
\end{equation*}を定める新たな写像\begin{equation*}
\left\vert X\right\vert :\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}を定義できます。ただし、拡大実数系の定義より、無限大の絶対値は、\begin{equation*}
\left\vert +\infty \right\vert =\left\vert -\infty \right\vert =+\infty
\end{equation*}であることに注意してください。

写像\(X:\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が拡大実数値確率変数である場合には、写像\(\left\vert X\right\vert :\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)もまた拡大実数値確率変数になることが保証されます。

命題(拡大実数値確率変数の絶対値は拡大実数値確率変数)
可測空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F}\right) ,\left( \overline{\mathbb{R} },\overline{\mathcal{B}}\right) \)に加えて写像\(X:\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が与えられているものとする。写像\(\left\vert X\right\vert :\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)を定義する。\(X\)が拡大実数値確率変数であるならば、\(\left\vert X\right\vert \)もまた拡大実数値確率変数になる。
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例(拡大実数値確率変数の定数倍の絶対値は拡大実数値確率変数)
可測空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F}\right) ,\left( \overline{\mathbb{R} },\overline{\mathcal{B}}\right) \)に加えて拡大実数値確率変数\(X:\Omega\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が与えられているものとします。実数\(k\in \mathbb{R} \)を任意に選ぶと、拡大実数値確率変数の定数倍は拡大実数値確率変数であるため\(kX:\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)は拡大実数値確率変数です。先の命題より拡大実数値確率変数の絶対値は拡大実数値確率変数であるため、\begin{equation*}\left\vert kX\right\vert :\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}は拡大実数値確率変数です。以上より、拡大実数値確率変数の定数倍の絶対値は拡大実数値確率変数であることが明らかになりました。

例(拡大実数値確率変数の和の絶対値は拡大実数値確率変数)
可測空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F}\right) ,\left( \overline{\mathbb{R} },\overline{\mathcal{B}}\right) \)に加えて2つの拡大実数値確率変数\(X,Y:\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が与えられているものとします。拡大実数値確率変数の和は拡大実数値確率変数であるため\(X+Y:\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)は確率変数です。先の命題より拡大実数値確率変数の絶対値は拡大実数値確率変数であるため、\begin{equation*}\left\vert X+Y\right\vert :\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}は拡大実数値確率変数です。以上より、拡大実数値確率変数どうしの和の絶対値は拡大実数値確率変数であることが明らかになりました。

例(拡大実数値確率変数の差の絶対値は拡大実数値確率変数)
可測空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F}\right) ,\left( \overline{\mathbb{R} },\overline{\mathcal{B}}\right) \)に加えて2つの拡大実数値確率変数\(X,Y:\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が与えられているものとします。以下の条件\begin{equation*}\forall \omega \in \Omega :X\left( \omega \right) -Y\left( \omega \right)
\in \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が成り立つ場合には写像\(X-Y:\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が定義可能ですが、拡大実数値確率変数どうしの差は拡大実数値確率変数であるため\(X-Y\)は拡大実数値確率変数です。先の命題より拡大実数値確率変数の絶対値は拡大実数値確率変数であるため、\begin{equation*}\left\vert X-Y\right\vert :\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}は拡大実数値確率変数です。以上より、拡大実数値確率変数どうしの差の絶対値は拡大実数値確率変数であることが明らかになりました。

例(拡大実数値確率変数の積の絶対値は拡大実数値確率変数)
可測空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F}\right) ,\left( \overline{\mathbb{R} },\overline{\mathcal{B}}\right) \)に加えて2つの拡大実数値確率変数\(X,Y:\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が与えられているものとします。以下の条件\begin{equation*}\forall \omega \in \Omega :X\left( \omega \right) Y\left( \omega \right) \in
\overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が成り立つ場合には写像\(XY:\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が定義可能ですが、拡大実数値確率変数どうしの積は拡大実数値確率変数であるため\(XY\)は拡大実数値確率変数です。先の命題より拡大実数値確率変数の絶対値は拡大実数値確率変数であるため、\begin{equation*}\left\vert XY\right\vert :\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}は拡大実数値確率変数です。以上より、拡大実数値確率変数どうしの積の絶対値は拡大実数値確率変数であることが明らかになりました。

例(拡大実数値確率変数の商の絶対値は拡大実数値確率変数)
可測空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F}\right) ,\left( \overline{\mathbb{R} },\overline{\mathcal{B}}\right) \)に加えて2つの拡大実数値確率変数\(X,Y:\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が与えられているものとします。以下の条件\begin{equation*}\forall \omega \in \Omega :\frac{X\left( \omega \right) }{Y\left( \omega
\right) }\in \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が成り立つ場合には写像\(\frac{X}{Y}:\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が定義可能ですが、拡大実数値確率変数どうしの商は拡大実数値確率変数であるため\(\frac{X}{Y}\)は拡大実数値確率変数です。先の命題より拡大実数値確率変数の絶対値は拡大実数値確率変数であるため、\begin{equation*}\left\vert \frac{X}{Y}\right\vert :\Omega \rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}は拡大実数値確率変数です。以上より、拡大実数値確率変数どうしの商の絶対値は拡大実数値確率変数であることが明らかになりました。

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