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多変数関数の積分

多変数の単調関数の多重リーマン積分可能性

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多変数の単調増加関数の多重リーマン積分可能性

これまではユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上に存在する有界かつ閉な区間上にに定義された有界な関数が多重リーマン積分可能であることの意味を定義するとともに、関数が多重リーマン積分可能であること、ないし多重リーマン積分可能ではないことを判定する方法について解説してきました。では、多重リーマン積分可能であることが保証されるような関数は存在するのでしょうか。

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上に存在する有界かつ閉な区間\begin{equation*}I=\left[ a_{1},b_{1}\right] \times \cdots \times \left[ a_{n},b_{n}\right] \end{equation*}が与えられているものとします。ただし、任意の\(i\ \left( =1,\cdots ,n\right) \)に対して\(a_{i}<b_{i}\)です。区間上に定義された多変数関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} ^{n}\supset I\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が\(I\)上において単調増加関数であるものとします。つまり、\begin{equation*}\forall \boldsymbol{x},\boldsymbol{x}^{\prime }\in I:\left[ \boldsymbol{x}\leq \boldsymbol{x}^{\prime }\Rightarrow f\left( \boldsymbol{x}\right) \leq
f\left( \boldsymbol{x}^{\prime }\right) \right] \end{equation*}が成り立つということです。ただし、\(\mathbb{R} ^{n}\)上の順序\(\leq \)として標準的順序を採用しています。具体的には、2つのベクトル\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{x}\in \mathbb{R} ^{n}\)について、\begin{equation*}\boldsymbol{x}\leq \boldsymbol{x}^{\prime }\Leftrightarrow \forall i\in
\left\{ 1,\cdots ,n\right\} :x_{i}\leq x_{i}^{\prime }
\end{equation*}が成り立つものとして\(\mathbb{R} ^{n}\)上の標準的順序\(\leq \)は定義されます。さて、\(f\)は単調増加であるため、区間\(I\)の端点を、\begin{eqnarray*}\boldsymbol{a} &=&\left( a_{1},\cdots ,a_{n}\right) \\
\boldsymbol{b} &=&\left( b_{1},\cdots ,b_{n}\right)
\end{eqnarray*}と表記する場合には、\begin{equation*}
\forall \boldsymbol{x}\in I:f\left( \boldsymbol{a}\right) \leq f\left(
\boldsymbol{x}\right) \leq f\left( \boldsymbol{b}\right)
\end{equation*}が成り立つため\(f\)は\(I\)上で有界であり、したがって、\(f\)が\(I\)上で\(n\)重リーマン積分可能であるか検討できます。以上の条件を満たす関数\(f\)は\(I\)上で\(n\)重リーマン積分可能であることが保証されます。有界閉区間上に定義された単調増加関数はリーマン積分可能であるということです。

命題(単調増加関数の多重リーマン積分可能性)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の有界な閉区間\begin{equation*}I=\left[ a_{1},b_{1}\right] \times \cdots \times \left[ a_{n},b_{n}\right] \end{equation*}が与えられているものとする。ただし、任意の\(i\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} \)に対して\(a_{i}<b_{i}\)である。\(I\)上に定義された関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が単調増加関数であるならば、\(f\)は\(I\)上で\(n\)重リーマン積分可能である。
証明

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例(単調増加関数の多重積分可能性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset I\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(\boldsymbol{x}\in I\)に対して定める値が、ある定数\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( \boldsymbol{x}\right) =c
\end{equation*}と表されるものとします。ただし、\begin{equation*}
I=\left[ a_{1},b_{1}\right] \times \cdots \times \left[ a_{n},b_{n}\right] \end{equation*}です。つまり、\(f\)は定数関数です。定数関数は単調増加であるため、先の命題より、\(f\)は\(I\)上で\(n\)重リーマン積分可能です。
例(単調増加関数の多重積分可能性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset I\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\boldsymbol{x}\in I\)に対して、\begin{equation*}f\left( \boldsymbol{x}\right) =x_{1}+\cdots +x_{n}
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\begin{equation*}
I=\left[ a_{1},b_{1}\right] \times \cdots \times \left[ a_{n},b_{n}\right] \end{equation*}です。\(f\)は単調増加であるため、先の命題より、\(f\)は\(I\)上で\(n\)重リーマン積分可能です。

 

多変数の単調減少関数の多重リーマン積分可能性

単調減少関数についても同様の主張が成り立ちます。具体的には以下の通りです。

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上に存在する有界かつ閉な区間\begin{equation*}I=\left[ a_{1},b_{1}\right] \times \cdots \times \left[ a_{n},b_{n}\right] \end{equation*}が与えられているものとします。ただし、任意の\(i\ \left( =1,\cdots ,n\right) \)に対して\(a_{i}<b_{i}\)です。区間上に定義された多変数関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} ^{n}\supset I\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が\(I\)上において単調減少関数であるものとします。つまり、\begin{equation*}\forall \boldsymbol{x},\boldsymbol{x}^{\prime }\in I:\left[ \boldsymbol{x}\leq \boldsymbol{x}^{\prime }\Rightarrow f\left( \boldsymbol{x}\right) \geq
f\left( \boldsymbol{x}^{\prime }\right) \right] \end{equation*}が成り立つということです。\(f\)は単調増加であるため、区間\(I\)の端点を、\begin{eqnarray*}\boldsymbol{a} &=&\left( a_{1},\cdots ,a_{n}\right) \\
\boldsymbol{b} &=&\left( b_{1},\cdots ,b_{n}\right)
\end{eqnarray*}と表記する場合には、\begin{equation*}
\forall \boldsymbol{x}\in I:f\left( \boldsymbol{a}\right) \geq f\left(
\boldsymbol{x}\right) \geq f\left( \boldsymbol{b}\right)
\end{equation*}が成り立つため\(f\)は\(I\)上で有界であり、したがって、\(f\)が\(I\)上で\(n\)重リーマン積分可能であるか検討できます。以上の条件を満たす関数\(f\)は\(I\)上で\(n\)重リーマン積分可能であることが保証されます。有界閉区間上に定義された単調増加関数はリーマン積分可能であるということです。

命題(単調減少関数の多重リーマン積分可能性)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の有界な閉区間\begin{equation*}I=\left[ a_{1},b_{1}\right] \times \cdots \times \left[ a_{n},b_{n}\right] \end{equation*}が与えられているものとする。ただし、任意の\(i\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} \)に対して\(a_{i}<b_{i}\)である。\(I\)上に定義された関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が単調減少関数であるならば、\(f\)は\(I\)上で\(n\)重リーマン積分可能である。
例(単調減少関数の多重積分可能性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset I\rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(\boldsymbol{x}\in I\)に対して定める値が、ある定数\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f\left( \boldsymbol{x}\right) =c
\end{equation*}と表されるものとします。ただし、\begin{equation*}
I=\left[ a_{1},b_{1}\right] \times \cdots \times \left[ a_{n},b_{n}\right] \end{equation*}です。つまり、\(f\)は定数関数です。定数関数は単調減少であるため、先の命題より、\(f\)は\(I\)上で\(n\)重リーマン積分可能です。
例(単調減少関数の多重積分可能性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset I\rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\boldsymbol{x}\in I\)に対して、\begin{equation*}f\left( \boldsymbol{x}\right) =-x_{1}-\cdots -x_{n}
\end{equation*}を定めるものとします。ただし、\begin{equation*}
I=\left[ a_{1},b_{1}\right] \times \cdots \times \left[ a_{n},b_{n}\right] \end{equation*}です。\(f\)は単調減少であるため、先の命題より、\(f\)は\(I\)上で\(n\)重リーマン積分可能です。

 

多変数の単調関数の多重リーマン積分可能性

単調増加関数と単調減少関数を総称して単調関数と呼びます。先の2つの命題より、有界閉区間上に定義された単調関数は多重リーマン積分可能であることが保証されます。

命題(単調関数の多重リーマン積分可能性)
ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上の有界な閉区間\begin{equation*}I=\left[ a_{1},b_{1}\right] \times \cdots \times \left[ a_{n},b_{n}\right] \end{equation*}が与えられているものとする。ただし、任意の\(i\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} \)に対して\(a_{i}<b_{i}\)である。\(I\)上に定義された関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset I\rightarrow \mathbb{R} \)が単調関数であるならば、\(f\)は\(I\)上で\(n\)重リーマン積分可能である。

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