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多変数関数の積分

多変数関数の定積分の加法性

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小直方体上で多重積分可能な関数は直方体上で多重積分可能

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上に存在する有界かつ閉な超直方体領域\begin{equation*}R=\left[ a_{1},b_{1}\right] \times \cdots \times \left[ a_{n},b_{n}\right] \end{equation*}をとります。ただし、任意の\(i\ \left( =1,\cdots ,n\right) \)に対して\(a_{i}<b_{i}\)です。以降ではこれを直方体と呼びます。直方体上に定義された多変数関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} ^{n}\supset R\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が\(R\)上において有界であるものとします。この関数\(f\)が\(R\)上において\(n\)重リーマン積分可能であるか検討している状況を想定します。

直方体\(R\)を二分割することにより得られる2つの小直方体\(R_{1},R_{2}\)に注目します。つまり、\(R_{1}\)と\(R_{2}\)はともに\(R\)の部分集合であるような直方体であるとともに、以下の2つの条件\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ R_{1}\cup R_{2} &=&R \\
\left( b\right) \ R_{1}^{i}\cap R_{2}^{i} &=&\phi
\end{eqnarray*}が成り立つということです。条件\(\left( a\right) \)は、小直方体\(R_{1},R_{2}\)の和集合をとればもとの直方体\(R\)が得られることを意味します。小直方体\(R_{1},R_{2}\)どうしは双方の境界においてのみ交わり得るため、\(R_{1},R_{2}\)の内部\(R_{1}^{i},R_{2}^{i}\)どうしは互いに素です。条件\(\left( b\right) \)はそのような事情を反映したものになっています。

さて、関数\(f\)が以上の条件を満たす2つの小直方体\(R_{1},R_{2}\)上においてそれぞれ多重積分可能であることが判明している場合、\(f\)はもとの直方体\(R\)上においても多重積分可能であることが保証されるとともに、それらの定積分の間には以下の関係\begin{eqnarray*}&&\int \cdots \int_{R}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) dx_{1}\cdots dx_{n}
\\
&=&\int \cdots \int_{R_{1}}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) dx_{1}\cdots
dx_{n}+\int \cdots \int_{R_{2}}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right)
dx_{1}\cdots dx_{n}
\end{eqnarray*}が成り立ちます。つまり、それぞれの小直方体における定積分の和をとればもとの直方体における定積分が得られるということです。

命題(小直方体上で多重積分可能な関数は直方体上で多重積分可能)
有界かつ閉な直方体\(R\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、それに対して以下の条件\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ R_{1}\cup R_{2} &=&R \\
\left( b\right) \ R_{1}^{i}\cap R_{2}^{i} &=&\phi
\end{eqnarray*}をともに満たす有界かつ閉な直方体\(R_{1},R_{2}\subset R\)を任意に選ぶ。関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset R\rightarrow \mathbb{R} \)が\(R_{1}\)上および\(R_{2}\)上において\(n\)重リーマン積分可能であるならば、\(f\)は\(R\)上において\(n\)重リーマン積分可能であるとともに、以下の関係\begin{eqnarray*}&&\int \cdots \int_{R}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) dx_{1}\cdots dx_{n}
\\
&=&\int \cdots \int_{R_{1}}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) dx_{1}\cdots
dx_{n}+\int \cdots \int_{R_{2}}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right)
dx_{1}\cdots dx_{n}
\end{eqnarray*}が成り立つ。

証明

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立方体上で多重積分可能な関数は小立方体上で多重積分可能

小立方体上で多重積分可能な関数はもとの立方体上で多重積分可能であることが明らかになりましたが、その逆の関係もまた成立します。具体的には以下の通りです。

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)上に存在する有界かつ閉な直方体\begin{equation*}R=\left[ a_{1},b_{1}\right] \times \cdots \times \left[ a_{n},b_{n}\right] \end{equation*}をとります。ただし、任意の\(i\ \left( =1,\cdots ,n\right) \)に対して\(a_{i}<b_{i}\)です。直方体上に定義された多変数関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} ^{n}\supset R\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が\(R\)上において有界であるものとします。

直方体\(R\)を二分割することにより得られる2つの小直方体\(R_{1},R_{2}\)に注目します。つまり、\(R_{1}\)と\(R_{2}\)はともに\(R\)の部分集合であるような直方体であるとともに、以下の2つの条件\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ R_{1}\cup R_{2} &=&R \\
\left( b\right) \ R_{1}^{i}\cap R_{2}^{i} &=&\phi
\end{eqnarray*}が成り立つということです。

さて、関数\(f\)が直方体\(R\)上で多重積分可能であることが判明している場合、\(f\)は2つの小直方体\(R_{1},R_{2}\)上においてそれぞれ多重積分可能であることが保証されるとともに、それらの定積分の間には以下の関係\begin{eqnarray*}&&\int \cdots \int_{R}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) dx_{1}\cdots dx_{n}
\\
&=&\int \cdots \int_{R_{1}}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) dx_{1}\cdots
dx_{n}+\int \cdots \int_{R_{2}}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right)
dx_{1}\cdots dx_{n}
\end{eqnarray*}が成り立ちます。つまり、それぞれの小直方体における定積分の和をとればもとの直方体における定積分が得られるということです。

命題(立方体上で多重積分可能な関数は小立方体上で多重積分可能)
有界かつ閉な直方体\(R\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、それに対して以下の条件\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ R_{1}\cup R_{2} &=&R \\
\left( b\right) \ R_{1}^{i}\cap R_{2}^{i} &=&\phi
\end{eqnarray*}をともに満たす有界かつ閉な直方体\(R_{1},R_{2}\subset R\)を任意に選ぶ。関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset R\rightarrow \mathbb{R} \)が\(R\)上において\(n\)重リーマン積分可能であるならば、\(f\)は\(R_{1}\)上および\(R_{2}\)上において\(n\)重リーマン積分可能であるとともに、以下の関係\begin{eqnarray*}&&\int \cdots \int_{R}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) dx_{1}\cdots dx_{n}
\\
&=&\int \cdots \int_{R_{1}}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) dx_{1}\cdots
dx_{n}+\int \cdots \int_{R_{2}}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right)
dx_{1}\cdots dx_{n}
\end{eqnarray*}が成り立つ。

証明

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多変数関数の定積分の加法性

先の2つの命題より、多変数関数が有界かつ閉な立方体上において多重リーマン積分可能であることと、それぞれの小直方体において多重リーマン積分可能であることが必要十分であることが明らかになりました。したがって以下の命題を得ます。これを定積分の加法性(additivity)と呼びます。

命題(多変数関数の定積分の加法性)
有界かつ閉な直方体\(R\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、それに対して以下の条件\begin{eqnarray*}\left( a\right) \ R_{1}\cup R_{2} &=&R \\
\left( b\right) \ R_{1}^{i}\cap R_{2}^{i} &=&\phi
\end{eqnarray*}をともに満たす有界かつ閉な直方体\(R_{1},R_{2}\subset R\)を任意に選ぶ。関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset R\rightarrow \mathbb{R} \)が\(R\)上において\(n\)重リーマン積分可能であることと、\(f\)が\(R_{1}\)上および\(R_{2}\)上において\(n\)重リーマン積分可能であることは必要十分であるとともに、以下の関係\begin{eqnarray*}&&\int \cdots \int_{R}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) dx_{1}\cdots dx_{n}
\\
&=&\int \cdots \int_{R_{1}}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) dx_{1}\cdots
dx_{n}+\int \cdots \int_{R_{2}}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right)
dx_{1}\cdots dx_{n}
\end{eqnarray*}が成り立つ。

上の命題は直方体を2つに分割する状況を想定したものですが、直方体を有限かつ任意個に分割する場合にも同様の主張が成り立ちます。証明では小直方体の個数に関する数学的帰納法を利用します。

命題(多変数関数の定積分の加法性)
有界かつ閉な直方体\(R\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、それに対して以下の条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \bigcup\limits_{i=1}^{m}R_{i}=R \\
&&\left( b\right) \ \forall i,j\in \left\{ 1,\cdots ,m\right\} :\left(
i\not=j\Rightarrow R_{i}^{i}\cap R_{j}^{i}=\phi \right)
\end{eqnarray*}をともに満たす有界かつ閉な直方体を要素とする\(R\)の有限部分集合族\(\left\{ R_{i}\right\} _{i=1}^{m}\)を任意に選ぶ。関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset R\rightarrow \mathbb{R} \)が\(R\)上において\(n\)重リーマン積分可能であることと、\(f\)が任意の小直方体\(R_{i}\ \left( i=1,\cdots ,m\right) \)上において\(n\)重リーマン積分可能であることは必要十分であるとともに、以下の関係\begin{equation*}\int \cdots \int_{R}f\left( x_{1},\cdots ,x_{n}\right) dx_{1}\cdots
dx_{n}=\sum_{i=1}^{m}\int \cdots \int_{R_{i}}f\left( x_{1},\cdots
,x_{n}\right) dx_{1}\cdots dx_{n}
\end{equation*}が成り立つ。

 

演習問題

問題(定積分の加法性)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\supset R\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。ただし、\begin{equation*}R=\left[ 0,2\right] \times \left[ 0,2\right] \end{equation*}です。加えて、以下の条件\begin{eqnarray*}
\int \int_{\left[ 0,1\right] \times \left[ 0,1\right] }f\left( x,y\right)
dxdy &=&1 \\
\int \int_{\left[ 0,1\right] \times \left[ 1,2\right] }f\left( x,y\right)
dxdy &=&2 \\
\int \int_{\left[ 1,2\right] \times \left[ 0,1\right] }f\left( x,y\right)
dxdy &=&3 \\
\int \int_{\left[ 1,2\right] \times \left[ 1,2\right] }f\left( x,y\right)
dxdy &=&4
\end{eqnarray*}が成り立つものとします。以上を踏まえた上で、\begin{equation*}
\int \int_{R}\frac{f\left( x,y\right) }{100}dxdy
\end{equation*}を求めてください。

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