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多変数のベクトル値関数

多変数のベクトル値関数のグラフ

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多変数のベクトル値関数のグラフ

多変数のベクトル値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が与えられたとき、\(y=f\left( x\right) \)が真になるような組\(\left( x,y\right) \in X\times \mathbb{R} ^{m}\)からなる集合を、\begin{equation*}G\left( f\right) =\left\{ \left( x,y\right) \in X\times \mathbb{R} ^{m}\ |\ y=f\left( x\right) \right\}
\end{equation*}で表記し、これを\(f\)のグラフ(graph)と呼びます。\(G\left( f\right) \)は\(X\times \mathbb{R} ^{m}\)の部分集合です。

関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が与えられたとき、組\(\left( x,y\right) \in X\times \mathbb{R} ^{m}\)を任意に選ぶと、グラフ\(G\left( f\right) \)の定義より、\begin{equation*}\left( x,y\right) \in G\left( f\right) \Leftrightarrow y=f\left( x\right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。つまり、組\(\left( x,y\right) \)が関数\(f\)のグラフの要素であることと、\(f\)による\(x\)の像が\(y\)であることは必要十分です。

例(多変数のベクトル値関数のグラフ)
関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)はそれぞれの\(\left( x,y\right) \in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y\right) =\left( -y,3x\right)
\end{equation*}を定めるものとします。この関数のグラフは、\begin{equation*}
G\left( f\right) =\left\{ \left( x,y,z\right) \in \mathbb{R} ^{4}\ |\ z=\left( -y,3x\right) \right\}
\end{equation*}ですが、これは4次元空間の部分集合であるため図示できません。それぞれの\(\left( x,y\right) \)に対して\(f\)が定めるベクトル\(f\left( x,y\right) \)を描くと以下の図が得られます。

図:ベクトル場
図:ベクトル場
例(多変数のベクトル値関数のグラフ)
関数\(f:\mathbb{R} ^{3}\rightarrow \mathbb{R} ^{3}\)はそれぞれの\(\left( x,y,z\right)\in \mathbb{R} ^{3}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y,z\right) =\left( y,x,z^{2}\right)
\end{equation*}を定めるものとします。この関数のグラフは、\begin{equation*}
G\left( f\right) =\left\{ \left( x,y,z,t\right) \in \mathbb{R} ^{6}\ |\ t=\left( y,x,z^{2}\right) \right\}
\end{equation*}ですが、これは6次元空間の部分集合であるため図示できません。それぞれの\(\left( x,y,z\right) \)に対して\(f\)が定めるベクトル\(f\left( x,y,z\right) \)を描くと以下の図が得られます。

図:ベクトル場
図:ベクトル場

 

直積の部分集合としてのベクトル値関数

繰り返しになりますが、多変数のベクトル値関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)のグラフは、\begin{equation*}G\left( f\right) =\left\{ \left( x,y\right) \in X\times \mathbb{R} ^{m}\ |\ y=f\left( x\right) \right\}
\end{equation*}と定義される\(X\times \mathbb{R} ^{m}\)の部分集合ですが、これはどのような性質を満たす集合でしょうか。関数\(f\)は始集合のそれぞれの要素\(x\in X\)に対してその像\(f\left(x\right) \in \mathbb{R} ^{m}\)を1つずつ定めますが、\(G\left( f\right) \)の定義より、これはそれぞれの\(x\in X\)に対して\(\left( x,y\right) \in G\left(f\right) \)を満たす\(y\in \mathbb{R} ^{m}\)が1つずつ存在することを意味します。

命題(多変数のベクトル値関数のグラフの性質)
関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が与えられたとき、そのグラフ\(G\left( f\right) \subset X\times \mathbb{R} ^{m}\)は、\begin{equation*}\forall x\in X,\ \exists !y\in \mathbb{R} ^{m}:\left( x,y\right) \in G\left( f\right)
\end{equation*}を満たす。ただし、\(\exists !\)は「一意的に存在する」ことを表す記号である。
証明

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逆に、直積\(X\times \mathbb{R} ^{m}\)の部分集合\(G\)が、\begin{equation*}\forall x\in X,\ \exists !y\in \mathbb{R} ^{m}:\left( x,y\right) \in G
\end{equation*}という性質を満たすものとします。つまり、集合\(X\)の要素\(x\)を任意に選んだとき、\(\left( x,y\right) \in G\)を満たすような\(y\in \mathbb{R} ^{m}\)が1つずつ存在するということです。したがってこの場合、それぞれの\(x\in X\)に対して\(\left( x,y\right) \in G\)を満たすような\(y\)を\(f\left( x\right) \)として定める関数\(f:X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が定義可能であり、なおかつ\(f\)のグラフは\(G \)と一致します。

命題(多変数のベクトル値関数のグラフであるための条件)
集合\(X\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、集合\(G\subset X\times \mathbb{R} ^{m}\)が、\begin{equation*}\forall x\in X,\ \exists !y\in \mathbb{R} ^{m}:\left( x,y\right) \in G
\end{equation*}を満たす場合には、\(G=G\left( f\right) \)を満たす関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が存在する。
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上の2つの命題より、以下を得ます。

命題(直積の部分集合としての多変数のベクトル値関数)
集合\(X\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、集合\(G\subset X\times \mathbb{R} ^{m}\)が、\begin{equation*}\forall x\in X,\ \exists !y\in \mathbb{R} ^{m}:\left( x,y\right) \in G
\end{equation*}を満たすことは、\(G=G\left(f\right) \)を満たす関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)が存在するための必要十分条件である。ただし、\(\exists !\)は「一意的に存在する」ことを表す記号である。

上の命題より、関数\(f:\mathbb{R} ^{n}\supset X\rightarrow \mathbb{R} ^{m}\)を、\begin{equation*}\forall x\in X,\ \exists !y\in \mathbb{R} ^{m}:\left( x,y\right) \in G
\end{equation*}という条件を満たす直積\(X\times \mathbb{R} ^{m}\)の部分集合\(G\)と同一視することができます。

 

演習問題

問題(多変数のベクトル値関数のグラフ)
関数\(f:\mathbb{R} ^{3}\rightarrow \mathbb{R} ^{3}\)はそれぞれの\(\left( x,y,z\right)\in \mathbb{R} ^{3}\)に対して、\begin{equation*}f\left( x,y,z\right) =\left( y,x,z^{2}\right)
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)のグラフを\(G\left( f\right) \)で表記するとき、以下がそれぞれ成り立つか検証してください。\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ \left( 1,1,1,1,1,1\right) \in G\left( f\right) \\
&&\left( b\right) \ \left( 1,2,3,1,2,3\right) \in G\left( f\right) \\
&&\left( c\right) \ \left( 1,1,-1,1,1,1\right) \in G\left( f\right)
\end{eqnarray*}
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問題(多変数のベクトル値関数のグラフ)
集合\(G\subset \mathbb{R} ^{4}\)が、\begin{equation*}\left\{ \left( 1,2,3,4\right) ,\left( 2,3,4,1\right) ,\left( 3,4,2,1\right)
,\left( 2,3,1,2\right) ,\left( 3,1,2,4\right) \right\} \subset G
\end{equation*}を満たすものとします。この\(G\)をグラフとして持つような関数\(f:\mathbb{R} ^{2}\rightarrow \mathbb{R} ^{2}\)が存在しないことを示してください。
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