集合 X から集合 Y への写像 f:X→Y と、集合 Y から集合 Z への写像 g:Y→Z が与えられたとき、X のそれぞれの要素 x に対して Z の要素である g(f(x)) を像として定める写像を作ることができるため、これを f と g の合成写像と呼びます。

2019年6月11日:公開

合成写像

集合\(X\)から集合\(Y\)への写像\(f:X\rightarrow Y\)と、集合\(Y\)から集合\(Z\)への写像\(g:Y\rightarrow Z\)が与えられたとき、写像\(f\)は定義域\(X\)に属するそれぞれの要素\(x\)に対して像\(f\left( x\right) \)を定めますが、\(f\left( x\right) \)は写像\(g\)の定義域\(Y\)に属するため、\(g\)はさらに\(f\left( x\right) \)に対して\(Z\)の要素である像\(g\left( f\left( x\right) \right) \)を定めます。つまり、以上の性質を持つ 2 つ写像\(f,g\)からは、\(X\)のそれぞれの要素\(x\)に対して\(Z\)の要素である\(g\left( f\left( x\right) \right) \)を像として定める写像を作ることができるため、それを\(g\circ f:X\rightarrow Z\)で表し、これを\(f\)と\(g\)の合成写像(composite mapping)と呼びます。定義より、任意の\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}
\left( g\circ f\right) (x)=g\left( f\left( x\right) \right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。これが合成写像の定義です。

例(合成写像)
写像\(f:\mathbb{R}\rightarrow \mathbb{R}\)が\(f\left( x\right) =x^{2}\)で、写像\(g:\mathbb{R}\rightarrow \mathbb{R}\)が\(g\left( y\right) =\sin y\)でそれぞれ与えられているとき、合成写像\(g\circ f:\mathbb{R}\rightarrow \mathbb{R}\)がそれぞれの要素\(x\in \mathbb{R}\)に対して定める像は、\begin{eqnarray*}
\left( g\circ f\right) (x) &=&g\left( f\left( x\right) \right) \quad \because g\circ f\text{の定義} \\
&=&g\left( x^{2}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\sin x^{2}\quad \because g\text{の定義}
\end{eqnarray*}となります。
例(合成写像)
写像\(f:\mathbb{R}\rightarrow \mathbb{R}\)が\(f\left( x\right) =x^{2}\)で、写像\(g:\mathbb{R}\rightarrow \mathbb{R}\)が\(g\left( y\right) =\log y\)でそれぞれ与えられているとき、合成写像\(g\circ f:\mathbb{R}\rightarrow \mathbb{R}\)がそれぞれの値\(x\in \mathbb{R}\)に対して定める像は、\begin{eqnarray*}
\left( g\circ f\right) (x) &=&g\left( f\left( x\right) \right) \quad \because g\circ f\text{の定義} \\
&=&g\left( x^{2}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\log x^{2}\quad \because g\text{の定義}
\end{eqnarray*}となります。
例(恒等写像との合成)
写像\(f:X\rightarrow Y\)と恒等写像\(I_{X}:X\rightarrow X\)が与えられたとき、任意の\(x\in X\)について、\begin{align*}
(f\circ I_{X})(x)& =f(I_{X}(x))\quad \because \text{合成写像の定義} \\
& =f(x)\quad \because \text{恒等写像の定義}
\end{align*}となるため、\begin{equation*}
f\circ I_{X}=f
\end{equation*}が成り立ちます。同様に、写像\(f:X\rightarrow Y\)と恒等写像\(I_{Y}:Y\rightarrow Y\)が与えられたとき、任意の\(x\in X\)について、\begin{align*}
(I_{Y}\circ f)(x)& =I_{Y}(f(x))\quad \because \text{合成写像の定義} \\
& =f(x)\quad \because \text{恒等写像の定義}
\end{align*}となるため、\begin{equation*}
I_{Y}\circ f=f
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、任意の写像を恒等写像と合成しても、得られる写像はもとの写像に等しいということです。

 

合成の順番

一般に、2 つの写像\(f,g\)に対して\(g\circ f\)と\(f\circ g\)は異なる写像であり、一方が存在する場合でも他方は存在するとは限りません。

2 つの写像\(f:X\rightarrow Y,\ g:Y\rightarrow Z\)からは、それぞれの\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}
\left( g\circ f\right) \left( x\right) =g\left( f\left( x\right) \right) \in Z
\end{equation*}を像として定める写像\(g\circ f:X\rightarrow Z\)が定義可能です。他方で、任意の\(y\in Y\)について\(g\left( y\right) \in X\)が成り立つ場合には、それぞれの\(y\in Y\)に対して、\begin{equation*}
\left( f\circ g\right) \left( y\right) =f\left( g\left( y\right) \right) \in Y
\end{equation*}を像として定める写像\(f\circ g:Y\rightarrow Y\)が定義可能です。

 

3つ以上の写像の合成

3つ以上の写像を合成することもできます。集合\(X,Y,Z,W\)に関して、写像\begin{eqnarray*}
f &:&X\rightarrow Y \\
g &:&Y\rightarrow Z \\
h &:&Z\rightarrow W
\end{eqnarray*}が与えられたとき、写像\(f\)は定義域\(X\)に属するそれぞれの要素\(x\)に対して像\(f\left( x\right) \)を定めますが、\(f\left( x\right) \)は写像\(g\)の定義域\(Y\)に属するため、\(g\)はさらに\(f\left( x\right) \)に対して\(Z\)の要素である像\(g\left( f\left( x\right) \right) \)を定めます。さらに、この\(g\left( f\left( x\right) \right) \)は写像\(h\)の定義域\(Z\)に属するため、\(h\)はさらに\(g\left( f\left( x\right) \right) \)に対して\(W\)の要素である像\(h\left( g\left( f\left( x\right) \right) \right) \)を定めます。つまり、以上の性質を持つ 3 つ写像\(f,g,h\)からは、\(X\)のそれぞれの要素\(x\)に対して\(W\)の要素である\(h\left( g\left( f\left( x\right) \right) \right) \)を像として定める写像を作ることができるため、それを\(h\circ \left( g\circ f\right) :X\rightarrow W\)で表します。定義より、任意の\(x\in X\)に対して、\begin{equation*}
\left( h\circ \left( g\circ f\right) \right) (x)=h\left( g\left( f\left( x\right) \right) \right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。

上の議論では最初に\(f\)と\(g\)を合成して\(g\circ f\)を作り、続いて\(g\circ f\)と残りの\(h\)を合成して\(h\circ \left( g\circ f\right) \)を作りましたが、最初に\(g\)と\(h\)を合成して\(h\circ g\)を作り、続いて\(h\circ g\)と残りの\(f\)を合成して\(\left( h\circ g\right) \circ f\)を作るという順番での合成も可能です。つまり、3 つの写像\(f,g,h\)が与えられたとき、隣り合う 2 つの写像のうちのどちらを先に合成するかに応じて合成写像は\(h\circ \left( g\circ f\right) \)と\(\left( h\circ g\right) \circ f\)の 2 通りが存在し得るということです。しかし、これらは写像として等しくなります。

命題(合成に関する結合律)
写像\(f:X\rightarrow Y,\ g:Y\rightarrow Z,\ h:Z\rightarrow W\)について、\begin{equation*}
h\circ (g\circ f)=(h\circ g)\circ f
\end{equation*}という関係が成り立つ。
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つまり、\(f\)と\(g\)を合成してできる写像に\(h\)を合成して得られる写像は、\(g\)と\(h\)を合成してできる写像に\(f\)を合成して得られる写像と等しいということです。言い換えると、写像の合成\(\circ \)を演算と解釈したとき、この演算は結合律を満たすということです。

上の命題より、3 つの写像\(f,g,h\)の合成写像をつくる際には\(f\)と\(g\)を先に合成してもよいし、\(g\)と\(h\)を先に合成してもよいことになります。合成の順番は結果に影響を与えないということを踏まえた上で、\(h\circ (g\circ f)\)と\((h\circ g)\circ f\)を代表して\(h\circ g\circ f\)と表すことができます。

例(合成写像)
写像\(f:\mathbb{R}\rightarrow \mathbb{R}\)が\(f\left( x\right) =2x\)で、写像\(g:\mathbb{R}\rightarrow \mathbb{R}\)が\(g\left( y\right) =\cos y\)で、写像\(h:\mathbb{R}\rightarrow \mathbb{R}\)が\(h\left( z\right) =z^{3}\)でそれぞれ与えられているとき、合成写像\(h\circ g\circ f:\mathbb{R}\rightarrow \mathbb{R}\)がそれぞれの要素\(x\in \mathbb{R}\)に対して定める像は、\begin{eqnarray*}
\left( h\circ g\circ f\right) (x) &=&h\left( g\left( f\left( x\right) \right) \right) \quad \because h\circ g\circ f\text{の定義} \\
&=&h\left( g\left( 2x\right) \right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&h\left( \cos 2x\right) \quad \because g\text{の定義} \\
&=&\left[ \cos 2x\right] ^{3}\quad \because h\text{の定義}
\end{eqnarray*}となります。

4 つの写像\(f,g,h,i\)を合成する際には隣り合う 2 つの写像のうちのどれを先に合成するかに応じて最終的に得られる合成写像として様々なパターンが存在しますが、先の命題を繰り返し適用することにより、それらはいずれも写像として等しくなるため、それらを代表して\(i\circ h\circ g\circ f\)で表します。5 つ以上の写像を合成する場合も同様です。

次回は合成写像による単射・全射・全単射の判定について学びます。
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