集合 A から集合 B への写像 f:A→B と、集合 B から集合 C への写像 g:B→C が与えられたとき、A のそれぞれの要素 a に対して C の要素である g(f(a)) を像として定める写像を作ることができるため、これを f と g の合成写像と呼びます。
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合成写像

集合\(A\)から集合\(B\)への写像\(f:A\rightarrow B\)と、集合\(B\)から集合\(C\)への写像\(g:B\rightarrow C\)が与えられた状況を想定します。写像\(f\)は定義域\(A\)に属するそれぞれの要素\(a\)に対して像\(f\left( a\right) \)を定めますが、\(f\left( a\right) \)は写像\(g\)の定義域\(B\)の要素であるため、\(g\)はさらに\(f\left( a\right) \)に対して\(C\)の要素である像\(g\left( f\left( a\right) \right) \)を定めます。つまり、以上の性質を持つ2つ写像\(f,g\)からは、\(A\)のそれぞれの要素\(a\)に対して\(C\)の要素である\(g\left( f\left( a\right) \right) \)を像として定める写像を作ることができるため、これを\(f\)と\(g\)の合成写像(composite mapping)と呼び、\(g\circ f:A\rightarrow C\)で表します。定義より、任意の\(a\in A\)に対して、\begin{equation*}
\left( g\circ f\right) (a)=g\left( f\left( a\right) \right)
\end{equation*}という関係が成り立ちます。以上が合成写像の定義です。

例(合成写像)
すべての日本国民からなる集合を\(A\)で、すべての年齢からなる集合を\(B\)で、すべての年齢区分からなる集合を\(C\)でそれぞれ表します。より正確には、\(B\)は非負の整数からなる集合であり、\begin{equation*}
C=\left\{ \text{年少人口(}0\text{〜}14\text{歳)},\text{生産年齢人口(}15\text{〜}64\text{歳)},\text{老年人口(}65\text{歳〜)}\right\}
\end{equation*}です。写像\(f:A\rightarrow B\)はそれぞれの日本国民\(a\in A\)に対して、\begin{equation*}
f\left( a\right) =a\text{の年齢}
\end{equation*}を像として定めるとともに、写像\(g:B\rightarrow C\)はそれぞれの年齢\(b\in B\)に対して、\begin{equation*}
f\left( b\right) =b\text{が属する年齢区分}
\end{equation*}を像として定めるものとします。このとき、合成写像\(g\circ f:A\rightarrow C\)はそれぞれの日本国民\(a\in A\)に対して、\begin{eqnarray*}
\left( g\circ f\right) \left( a\right) &=&g\left( f\left( a\right) \right)
\quad \because g\circ f\text{の定義} \\
&=&g\left( a\text{の年齢}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&a\text{の年齢が属する年齢区分}\quad \because g\text{の定義} \\
&=&a\text{が属する年齢区分}
\end{eqnarray*}を定めます。
例(合成写像)
写像\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R}\)に対して、\begin{equation*}
f\left( x\right) =x^{2}
\end{equation*}を像として定めるものとします。このとき、合成写像\(f\circ f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R}\)に対して、\begin{eqnarray*}
\left( f\circ f\right) \left( x\right) &=&f\left( f\left( x\right) \right)
\quad \because f\circ f\text{の定義} \\
&=&f\left( x^{2}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\left( x^{2}\right) ^{2}\quad \because f\text{の定義} \\
&=&x^{4}
\end{eqnarray*}を像として定めます。
例(合成写像)
写像\(f:A\rightarrow B\)と恒等写像\(I_{A}:A\rightarrow A\)が与えられたとき、任意の\(a\in A\)について、\begin{align*}
(f\circ I_{A})(a)& =f(I_{A}(a))\quad \because \text{合成写像の定義} \\
& =f(a)\quad \because \text{恒等写像の定義}
\end{align*}となるため、\begin{equation*}
f\circ I_{A}=f
\end{equation*}が成り立ちます。同様に、写像\(f:A\rightarrow B\)と恒等写像\(I_{B}:B\rightarrow B\)が与えられたとき、任意の\(a\in A\)について、\begin{align*}
(I_{B}\circ f)(a)& =I_{B}(f(a))\quad \because \text{合成写像の定義} \\
& =f(a)\quad \because \text{恒等写像の定義}
\end{align*}となるため、\begin{equation*}
I_{B}\circ f=f
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、任意の写像を恒等写像と合成しても、得られる写像はもとの写像に等しいということです。
例(合成写像)
写像\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R}\)に対して、\begin{equation*}
f\left( x\right) =x^{2}
\end{equation*}を像として定め、写像\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R}\)に対して、\begin{equation*}
g\left( x\right) =\sin x
\end{equation*}を像として定めるものとします。合成写像\(g\circ f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)がそれぞれの要素\(x\in \mathbb{R}\)に対して定める像は、\begin{eqnarray*}
\left( g\circ f\right) (x) &=&g\left( f\left( x\right) \right) \quad
\because g\circ f\text{の定義} \\
&=&g\left( x^{2}\right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&\sin \left( x^{2}\right) \quad \because g\text{の定義}
\end{eqnarray*}となります。一方、合成写像\(f\circ g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)がそれぞれの要素\(x\in \mathbb{R}\)に対して定める像は、\begin{eqnarray*}
\left( f\circ g\right) (x) &=&f\left( g\left( x\right) \right) \quad
\because f\circ g\text{の定義} \\
&=&f\left( \sin x\right) \quad \because g\text{の定義} \\
&=&\left( \sin x\right) ^{2}\quad \because g\text{の定義}
\end{eqnarray*}となります。

最後の例が示唆するように、写像\(f,g\)に対して\(g\circ f\)と\(f\circ g\)は異なる写像です。加えて、\(g\circ f\)と\(f\circ g\)の一方が存在する場合、他方は存在するとは限りません。実際、写像\(f:A\rightarrow B\)と写像\(g:B\rightarrow C\)が与えられたとき、合成写像\(g\circ f:A\rightarrow C\)は常に定義可能である一方で、合成写像\(f\circ g\)は定義可能であるとは限りません。なぜなら、写像\(g\)はそれぞれの\(b\in B\)に対して\(g\left( b\right) \in C\)を定める一方で、この\(g\left( b\right) \)は\(f\)の定義域\(A\)の要素であるとは限らないからです。\(f\circ g\)が定義可能であるためには、\(g\)による任意の\(b\in B\)の像\(f\left( b\right) \)が\(f\)の定義域\(A\)の要素である必要があります。

 

写像の合成に関する結合律

集合\(A,B,C,D\)に対して、写像\(f,g,h\)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}
f &:&A\rightarrow B \\
g &:&B\rightarrow C \\
h &:&C\rightarrow D
\end{eqnarray*}で与えられているものとします。\(f\)の終集合と\(g\)の定義域はともに\(B\)であるため、\(f\)と\(g\)を最初に合成することにより、\begin{equation*}
g\circ f:A\rightarrow C
\end{equation*}を得ます。得られた\(g\circ f\)の終集合と残された\(h\)の定義域はともに\(C\)であるため、\(g\circ f\)と\(h\)を合成することにより、\begin{equation}
h\circ \left( g\circ f\right) :A\rightarrow D \tag{1}
\end{equation}を得ます。一方、\(g\)の終集合と\(h\)の定義域はともに\(C\)であるため、\(g\)と\(h\)を最初に合成することができ、その場合、\begin{equation*}
h\circ g:B\rightarrow D
\end{equation*}を得ます。残された\(f\)の終集合と先の\(h\circ g\)の定義域はともに\(B\)であるため、\(f\)と\(h\circ g\)を合成することにより、\begin{equation}
\left( h\circ g\right) \circ f:A\rightarrow D \tag{2}
\end{equation}を得ます。つまり、写像\(f,g,h\)の中の隣り合うどの2つを最初に合成するかに応じて、最終的に\(\left( 1\right) \)もしくは\(\left( 2\right) \)という合成写像が得られます。これらはともに\(A\)から\(D\)への写像ですが、実は、両者は一致します(演習問題にします)。

命題(写像の合成に関する結合律)
集合\(A,B,C,D\)について、\(A\)から\(B\)への写像\(f\)、\(B\)から\(C\)への写像\(g\)、\(C\)から\(D\)への写像\(g\)がそれぞれ任意に与えられたとき、\begin{equation*}
h\circ (g\circ f)=(h\circ g)\circ f
\end{equation*}が成り立つ。
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写像の合成を表す記号\(\circ \)を写像を被演算子とする演算子とみなしたとき、上の命題は、\(\circ \)が結合律(associative law)を満たすことを示唆しています。つまり、上の命題中の条件を満たす写像\(f,g,h\)の中のどの2つを最初に合成しても最終的に得られる合成写像は等しいため、それらを区別せずに、\begin{equation*}
h\circ g\circ f
\end{equation*}で表します。

例(写像の合成に関する結合律)
写像\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R}\)に対して、\begin{equation*}
f\left( x\right) =2x
\end{equation*}を像として定め、写像\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R}\)に対して、\begin{equation*}
g\left( x\right) =\cos x
\end{equation*}を像として定め、写像\(h:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R}\)に対して、\begin{equation*}
h\left( x\right) =x^{3}
\end{equation*}を像として定めるとき、合成写像\(h\circ g\circ f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}\)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R}\)に対して、\begin{eqnarray*}
\left( h\circ g\circ f\right) (x) &=&h\left( g\left( f\left( x\right)
\right) \right) \quad \because h\circ g\circ f\text{の定義}
\\
&=&h\left( g\left( 2x\right) \right) \quad \because f\text{の定義} \\
&=&h\left( \cos 2x\right) \quad \because g\text{の定義} \\
&=&\left[ \cos 2x\right] ^{3}\quad \because h\text{の定義}
\end{eqnarray*}を像として定めます。
例(写像の合成に関する結合律)
集合\(A,B,C,D,E\)について、写像\(f,g,h,i\)の定義域と終集合がそれぞれ、\begin{eqnarray*}
f &:&A\rightarrow B \\
g &:&B\rightarrow C \\
h &:&C\rightarrow D \\
i &:&D\rightarrow E
\end{eqnarray*}で与えられているものとします。このとき、\(\circ \)に関する結合律を繰り返し適用することにより、\begin{eqnarray*}
\left( \left( i\circ h\right) \circ g\right) \circ f &=&\left( i\circ \left(
h\circ g\right) \right) \circ f \\
&=&i\circ \left( \left( h\circ g\right) \circ f\right) \\
&=&i\circ \left( h\circ \left( g\circ f\right) \right)
\end{eqnarray*}という関係が得られます。そこで、これら4つの合成写像を区別せずに、\begin{equation*}
i\circ h\circ g\circ f
\end{equation*}で表すことができます。5つ以上の写像についても同様に考えます。

次回からは単射や全射、全単射などと呼ばれる写像について学びます。

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