WIIS

写像

写像のグラフ

目次

前のページ:

写像の定義

Mailで保存
Xで共有

写像のグラフ

写像\(f:A\rightarrow B\)が与えられたとき、以下の命題\begin{equation*}b=f\left( a\right)
\end{equation*}が真になるような順序対\(\left( a,b\right) \in A\times B\)をすべて集めてできる集合を、\begin{equation*}G\left( f\right) =\left\{ \left( a,b\right) \in A\times B\ |\ b=f\left(
a\right) \right\}
\end{equation*}と表記し、これを\(f\)のグラフ(graph)と呼びます。明らかに、\begin{equation*}G\left( f\right) \subset A\times B
\end{equation*}です。

写像\(f:A\rightarrow B\)のグラフは\begin{equation*}G\left( f\right) =\left\{ \left( a,b\right) \in A\times B\ |\ b=f\left(
a\right) \right\}
\end{equation*}と定義されるため、順序対\(\left( a,b\right) \in A\times B\)を任意に選んだとき、以下の関係\begin{equation*}\left( a,b\right) \in G\left( f\right) \Leftrightarrow b=f\left( a\right)
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、順序対\(\left( a,b\right) \)が写像\(f\)のグラフの要素であることと、写像\(f\)が\(a\)に対して定める像が\(b\)と一致することは必要十分です。

例(写像のグラフ)
以下の2つの集合\begin{eqnarray*}
A &=&\left\{ 1,2,3\right\} \\
B &=&\left\{ a,b,c\right\}
\end{eqnarray*}に対して、写像\(f:A\rightarrow B\)を以下の図で定義します。

図:写像のグラフ
図:写像のグラフ

順序対\(\left( a,b\right) \in A\times B\)がグラフ\(G\left( f\right) \)の要素であることと\(b=f\left( a\right) \)が成り立つことは必要十分であり、さらに\(b=f\left( a\right) \)であることは\(a\)から\(b\)へ伸びる矢印が存在することを意味するため、\begin{equation*}G\left( f\right) =\left\{ \left( 1,b\right) ,\left( 2,a\right) ,\left(
3,b\right) \right\}
\end{equation*}となります。

例(写像のグラフ)
関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =2x+1
\end{equation*}を定めるものとします。\(f\)のグラフは、\begin{equation*}G\left( f\right) =\left\{ \left( x,y\right) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \ |\ y=2x+1\right\}
\end{equation*}であり、これは下図の直線として描かれます。

図:写像のグラフ
図:写像のグラフ

図より、始集合のそれぞれの値\(x\in \mathbb{R} \)に対して\(\left( x,y\right) \in G\left( f\right) \)を満たす\(y\in \mathbb{R} \)が1つずつ存在することを確認できます。

 

直積の部分集合としての写像

写像\(f:A\rightarrow B\)のグラフは、\begin{equation*}G\left( f\right) =\left\{ \left( a,b\right) \in A\times B\ |\ b=f\left(
a\right) \right\}
\end{equation*}と定義される\(A\times B\)の部分集合ですが、これはどのような性質を満たす集合でしょうか。

写像\(f\)は始集合のそれぞれの要素\(a\in A\)に対してその像\(f\left( a\right) \in B\)を1つずつ定めますが、以上の事実は、それぞれの\(a\in A\)に対して\(\left( a,b\right)\in G\left( f\right) \)を満たす\(b\in B\)が1つずつ存在することを意味します。

命題(写像のグラフの性質)
写像\(f:A\rightarrow B\)が与えられたとき、そのグラフ\(G\left( f\right) \subset A\times B\)は以下の条件\begin{equation*}\forall a\in A,\ \exists !b\in B:\left( a,b\right) \in G\left( f\right)
\end{equation*}を満たす。ただし、\(\exists !\)は「一意的に存在する」ことを表す記号である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

逆に、直積\(A\times B\)の部分集合\(G\)が以下の性質\begin{equation*}\forall a\in A,\ \exists !b\in B:\left( a,b\right) \in G
\end{equation*}を満たすものとします。つまり、集合\(A\)の要素\(a\)を任意に選んだとき、それに対して\(\left( a,b\right) \in G\)を満たすような\(b\in B\)が1つずつ存在するということです。この場合、この\(G\)をグラフとして持つような写像\(f:A\rightarrow B\)が存在することを保証できます。

命題(写像のグラフであるための条件)
集合\(A,B\)に対して、その直積の部分集合\(G\subset A\times B\)が、\begin{equation*}\forall a\in A,\ \exists !b\in B:\left( a,b\right) \in G
\end{equation*}を満たす場合には、\begin{equation*}
G=G\left( f\right)
\end{equation*}を満たす写像\(f:A\rightarrow B\)が存在する。ただし、\(\exists !\)は「一意的に存在する」ことを表す記号である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

以上の2つの命題より、以下の概念の間には1対1の関係が成立することが明らかになりました。したがって、これらの概念は実質的に等しく、互いに交換可能です。

  1. 写像\(f:A\rightarrow B\)
  2. 写像\(f:A\rightarrow B\)のグラフ\(G\left( f\right) \)
  3. 以下の条件\begin{equation*}\forall a\in A,\ \exists !b\in B:\left( a,b\right) \in G
    \end{equation*}を満たす集合\(G\subset A\times B\)
例(写像のグラフ)
直積\(\mathbb{R} \times \mathbb{R} \)の部分集合\(G\)が下図の曲線として与えられているものとします。

図:写像のグラフ
図:写像のグラフ

図より、それぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して\(\left( x,y\right) \in G\)を満たす\(y\in \mathbb{R} \)は1つずつ存在するため、先の命題より、これは何らかの写像\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)のグラフです。

例(写像のグラフではない集合)
直積\(\mathbb{R} \times \mathbb{R} \)の部分集合\(G\)が下図の曲線として与えられているものとします。

図:写像のグラフではない
図:写像のグラフではない

図より、\(x\in \mathbb{R} \)に対して\(\left( x,y\right) \in G\)を満たす\(y\in \mathbb{R} \)は一意的に定まるとは限らないため、先の命題より、この\(G\)をグラフとするような写像\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は存在しません。

 

演習問題

問題(写像のグラフ)
集合\(A,B\)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ 1,3,5,7\right\} \\
B &=&\left\{ 1,3,5,7,9,11\right\}
\end{eqnarray*}と定義されています。さらに写像\(f:A\rightarrow B\)はそれぞれの\(a\in A\)に対して、\begin{equation*}f\left( a\right) =a+2
\end{equation*}を定めるものとして定義されています。この写像\(f\)のグラフ\(G\left(f\right) \)の要素を明らかにしてください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(写像のグラフ)
集合\(A\)が、\begin{equation*}A=\left\{ 1,2,3,4\right\}
\end{equation*}と定義されています。以下の中で\(A\)から\(A\)への写像であるものを特定してください。また、\(A\)から\(A\)への写像でないものについては、その理由を述べてください。

  1. \(f=\left\{ \left( 2,3\right) ,\left( 1,4\right) ,\left( 2,1\right),\left( 3,2\right) ,\left( 4,4\right) \right\} \)
  2. \(g=\left\{ \left( 3,1\right) ,\left( 4,2\right) ,\left( 1,1\right)\right\} \)
  3. \(h=\left\{ \left( 2,1\right) ,\left( 3,4\right) ,\left( 1,4\right),\left( 2,1\right) ,\left( 4,4\right) \right\} \)
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(写像の定義)
集合\(A,B\)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ a,b,c,d\right\} \\
B &=&\left\{ 1,2,3\right\}
\end{eqnarray*}と定義されています。以下の中で\(A\)から\(A\)への写像であるものを特定してください。また、\(A\)から\(A\)への写像でないものについては、その理由を述べてください。

  1. \(f=\left\{ \left( a,1\right) ,\left( b,2\right) ,\left( c,1\right),\left( d,3\right) \right\} \)
  2. \(g=\left\{ \left( a,1\right) ,\left( b,1\right) ,\left( b,2\right),\left( c,d\right) \right\} \)
  3. \(h=\left\{ \left( a,2\right) ,\left( b,2\right) ,\left( c,2\right),\left( d,2\right) \right\} \)
  4. \(i=\left\{ \left( a,1\right) ,\left( b,2\right) ,\left( c,3\right),\left( d,1\right) \right\} \)
  5. \(h=\left\{ \left( b,3\right) ,\left( c,2\right) ,\left( d,1\right),\left( c,3\right) \right\} \)
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(写像の列挙)
集合\(A,B\)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ a,b\right\} \\
B &=&\left\{ 0,1\right\}
\end{eqnarray*}と定義されています。\(A\)から\(B\)への写像をすべて列挙してください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

問題(写像の列挙)
集合\(A,B\)がそれぞれ、\begin{eqnarray*}A &=&\left\{ a,b\right\} \\
B &=&\left\{ 0,1,2\right\}
\end{eqnarray*}と定義されています。\(A\)から\(B\)への写像をすべて列挙してください。
解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関連知識

前のページ:

写像の定義

Mailで保存
Xで共有

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです

会員登録

有料のプレミアム会員であれば、質問やコメントの投稿と閲覧、プレミアムコンテンツ(命題の証明や演習問題とその解答)へのアクセスなどが可能になります。

ワイズのユーザーは年齢・性別・学歴・社会的立場などとは関係なく「学ぶ人」として対等であり、お互いを人格として尊重することが求められます。ユーザーが快適かつ安心して「学ぶ」ことに集中できる環境を整備するため、広告やスパム投稿、他のユーザーを貶めたり威圧する発言、学んでいる内容とは関係のない不毛な議論などはブロックすることになっています。詳細はガイドラインをご覧ください。

誤字脱字、リンク切れ、内容の誤りを発見した場合にはコメントに投稿するのではなく、以下のフォームからご連絡をお願い致します。

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録