完全記憶ゲーム
動学ゲームのプレイヤーは意志決定を行う際に、自分より前に意志決定を行ったプレイヤーの意志決定の内容を観察できるとは限りません。そこで、動学ゲームに参加するすべてのプレイヤーが、自身が意思決定をおこなうすべての局面において、それ以前に行われたすべてのプレイヤーによる意志決定の内容を観察できるのであれば、そのようなゲームを完全情報ゲームと呼びます。逆に、完全情報ゲームではない動学ゲームを不完全情報ゲームと呼びます。つまり、動学ゲームにおいて、少なくとも1人のプレイヤーが、意思決定を行う少なくとも1つの時点において、それ以前に行われた少なくとも1人のプレイヤーが行った意思決定の内容を観察できないのであれば、それは不完全情報ゲームと呼ばれます。
ただ、動学ゲームのプレイヤーは意思決定を行う際に、ゲーム内において自身が観察した情報を記憶しているとは限りません。つまり、それ以前に自身が行った意思決定の内容を覚えているとは限りませんし、また、他のプレイヤーによる意思決定の内容を観察しても、それを覚えているとは限りません。何かを観察できることと、それを覚えていることは概念として一致するとは限りません。自分や他のプレイヤーが行った意思決定を覚えている場合とそうでない場合とではプレイヤーによる意思決定の内容が変わってくるため、動学ゲームを分析する際には、プレイヤーが観察した情報をどの程度覚えているかを事前に明らかにしておく必要があります。
動学ゲームに参加するすべてのプレイヤーが、自身が意思決定を行うすべての局面において、自身がすでに観察した自分ないし他のプレイヤーによる意思決定の内容をすべて覚えているのであれば、そのようなゲームを完全記憶ゲーム(game of
perfect recall)と呼びます。
以降において完全情報ゲームという場合、それは完全記憶であることも含意するものと定めます。つまり、動学ゲームに参加するすべてのプレイヤーが、自身が意思決定をおこなうすべての局面において、それ以前に行われたすべてのプレイヤーによる意志決定の内容を観察できるとともに、観察した内容をすべて記憶している場合に、それを完全情報ゲームと呼ぶということです。完全情報ゲームは完全記憶でもあるということです。
完全情報ゲームは完全記憶ゲームですが、不完全情報ゲームであるような完全記憶ゲームもまた存在します。
不完全記憶ゲーム
完全記憶ゲームではない動学ゲームを不完全記憶ゲーム(game of imperfect recall)と呼びます。具体的には、動学ゲームにおいて少なくとも1人のプレイヤーが、自身が意思決定を行う少なくとも1つの局面において、自身がすでに観察した自分ないし他のプレイヤーによる意思決定を完全には覚えていないのであれば、それは不完全記憶ゲームです。
動学ゲームは展開型ゲームと呼ばれるモデルを用いて定式化されます。したがって、不完全記憶ゲームは展開型ゲームが満たすべき条件として記述されますが、詳細は場を改めて解説します。
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