ユークリッド空間における稠密部分集合
ユークリッド空間の部分集合\(X\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられているものとします。さらに、その部分集合\(A\subset X\)を任意に選びます。一般に、\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合\(A\)の閉包は\(A\)を部分集合として持つため、\begin{equation*}A\subset A^{a}
\end{equation*}が成り立つことは確定していますが、さらに、\begin{equation*}
A\subset X\subset A^{a}
\end{equation*}が成り立つ場合には、\(A\)は\(X\)の中で稠密(\(A\) is dense in \(X\))であるとか、\(A\)は\(X\)の稠密部分集合(\(A\ \)is a dense subset of \(X\))であるなどと言います。
\(\mathbb{R} ^{n}\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)自身の部分集合であるため、集合\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、これが\(\mathbb{R} ^{n}\)の稠密部分集合であるか検討できます。稠密部分集合の定義より、これは、\begin{equation*}A\subset \mathbb{R} ^{n}\subset A^{a}
\end{equation*}が成り立つことを意味します。ただし、\(A\subset \mathbb{R} ^{n}\)は明らかに成り立つため、上の条件は、\begin{equation*}\mathbb{R} ^{n}\subset A^{a}\end{equation*}と必要十分です。つまり、\(\mathbb{R} ^{n}\)上の任意の点が\(A\)の触点である場合、すなわち\(\mathbb{R} ^{n}\)上の任意の点が\(A\)の内点または外点である場合、\(A\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)の稠密部分集合です。
さらに、\(A^{a}\subset \mathbb{R} ^{n}\)も明らかに成り立つため、上の条件は、\begin{equation*}A^{a}=\mathbb{R} ^{n}
\end{equation*}と必要十分です。つまり、\(A\)の閉包が\(\mathbb{R} ^{n}\)と一致する場合、\(A\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)の稠密部分集合です。
\end{equation*}が成り立つことは、\(A\)が\(\mathbb{R} ^{n}\)の稠密部分集合であるための必要十分条件である。
以下は\(\mathbb{R} ^{n}\)の稠密部分集合の例です。
\end{equation*}であるため、上の命題より、\(\mathbb{Q} ^{n}\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)の稠密部分集合です(演習問題)。
\end{equation*}であるため、上の命題より、\(\left( \mathbb{R} \backslash \mathbb{Q} \right) ^{n}\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)の稠密部分集合です(演習問題)。
\end{equation*}であるため、上の命題より、\(\mathbb{R} ^{n}\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)の稠密部分集合です(演習問題)。
点列を用いた稠密集合の特徴づけ
一般に、ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合\(A\)と点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)が与えられたとき、\(A\)の点を項とするとともに極限\(a\)へ収束する点列が存在することは、\(a\)が\(A\)の触点であるための必要条件です。以上の事実を踏まえると、稠密部分集合であることの意味を点列を用いて以下のように表現できます。
\(A\)の点を項とするとともに点\(x\)へ収束する点列\(\left\{ a_{v}\right\} \)が存在する場合、極限に相当する点\(x\)からいくらでも近い場所に\(\left\{ a_{v}\right\} \)の点が無数に存在します。したがって、\(A\)が\(X\)の稠密部分集合であることとは、\(X\)の点\(x\)を任意に選んだときに、その点\(x\)からいくらでも近い場所に\(A\)の点が無数に存在することを意味します。
上の命題を踏まえると、\(\mathbb{R} ^{n}\)の稠密部分集合であることの意味を数列を用いて以下のように表現できます。
繰り返しになりますが、\(A\)の点を項とするとともに点\(x\)へ収束する点列\(\left\{ a_{v}\right\} \)が存在する場合、極限に相当する点\(x\)からいくらでも近い場所に\(\left\{a_{v}\right\} \)の点が無数に存在します。したがって、\(A\)が\(\mathbb{R} ^{n}\)の稠密部分集合であることとは、\(\mathbb{R} ^{n}\)の点\(x\)を任意に選んだときに、その点\(x\)からいくらでも近い場所に\(A\)の点が無数に存在することを意味します。
近傍系を用いた稠密集合の特徴づけ
ユークリッド空間の点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)と正の実数\(\varepsilon >0\)がそれぞれ与えられたとき、点\(a\)を中心とする半径\(\varepsilon \)の近傍は、\begin{eqnarray*}N_{\varepsilon }\left( a\right) &=&\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ d\left( x,a\right) <\varepsilon \right\} \quad \because \text{近傍の定義} \\
&=&\left\{ x\in \mathbb{R} ^{n}\ |\ \sqrt{\sum_{i=1}^{n}\left( x_{i}-a_{i}\right) ^{2}}<\varepsilon
\right\} \quad \because \text{ユークリッド距離の定義}
\end{eqnarray*}と定義される\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合です。点\(a\)の近傍をすべて集めてできる\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合族を点\(a\)の近傍系と呼び、これを、\begin{equation*}N\left( a\right) =\left\{ N_{\varepsilon }\left( a\right) \ |\ 0<\varepsilon
<+\infty \right\}
\end{equation*}で表記します。点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)に応じて中心が異なる様々な近傍系\(N\left( a\right) \)が得られます。そこで、\(\mathbb{R} ^{n}\)上のすべての点の近傍系からなる集合族を、\begin{equation*}\mathcal{N}=\left\{ N\left( a\right) \ |\ a\in \mathbb{R} \right\}
\end{equation*}で表記し、これを\(\mathbb{R} ^{n}\)の近傍系と呼びます。
ユークリッド空間の部分集合\(X\subset \mathbb{R} ^{n}\)が与えられているものとします。さらに、その部分集合\(A\subset X\)を任意に選びます。集合\(X\)と交わる近傍\(N\in \mathcal{N}\)を任意に選んだとき、この近傍\(N\)が\(A\)とも交わることは、\(A\)が\(X\)の稠密部分集合であるための必要十分条件です。
A\not=\phi \right)
\end{equation*}が成り立つことは、\(A\)が\(X\)の稠密部分集合であるための必要十分条件である。ただし、\(\mathcal{N}\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)の近傍系である。
上の命題を踏まえると、\(\mathbb{R} ^{n}\)の稠密部分集合であることの意味を近傍系を用いて以下のように表現できます。
\right)
\end{equation*}が成り立つことは、\(A\)が\(\mathbb{R} ^{n}\)の稠密部分集合であるための必要十分条件である。ただし、\(\mathcal{N}\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)の近傍系である。
\end{equation*}が成り立つことを意味します。
\end{equation*}が成り立つことを意味します。
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