教材一覧
教材一覧
教材検索
EUCLIDEAN TOPOLOGY

ハイネ・ボレルの被覆定理

目次

< 前のページ
次のページ >
Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有

コンパクト集合の部分閉集合はコンパクト

ユークリッド空間\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合\(A\)がコンパクト集合であることを示すためには、\(A\)の任意の開被覆が有限部分被覆を持つことを示す必要があり、その手続きは面倒かつ困難であるように思われます。ハイネ・ボレルの被覆定理(Heine-Borel’s covering theorem)はコンパクト集合を特定する上で非常に有益な示唆を与えてくれます。

この定理について解説する前に、前提知識としていくつか命題を示します。まず、\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合\(A\)がコンパクト集合である場合、\(A\)の部分集合であるような任意の閉集合もまたコンパクト集合になります。

命題(コンパクト集合の部分閉集合はコンパクト)
\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合\(A\)が\(\mathbb{R} ^{n}\)上のコンパクト集合であるならば、\(A\)の部分集合であるような\(\mathbb{R} ^{n}\)上の任意の閉集合もまた\(\mathbb{R} ^{n}\)上のコンパクト集合である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

\(n\)次元直方体はコンパクト集合

\(\mathbb{R} ^{n}\)上の\(n\)次元直方体はコンパクト集合です。

命題(n次元直方体はコンパクト集合)
それぞれの\(i\ \left( =1,\cdots ,n\right) \)に対して\(a_{i}<b_{i}\)を満たす実数\(a_{i},b_{i}\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、\(n\)次元直方体\begin{equation*}\prod\limits_{i=1}^{n}\left[ a_{i},b_{i}\right] =\left[ a_{1},b_{1}\right] \times \cdots \times \left[ a_{n},b_{n}\right] \end{equation*}を定義する。これは\(\mathbb{R} ^{n}\)上のコンパクト集合である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

有界な閉集合はコンパクト集合

\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合\(A\)が有界な閉集合であるものとします。\(A\)の有界性より、\begin{equation*}A\subset \prod\limits_{i=1}^{n}\left[ a_{i},b_{i}\right] \end{equation*}を満たす\(n\)次元直方体\(\prod_{i=1}^{n}\left[ a_{i},b_{i}\right] \)が存在しますが、直前の命題より\(\prod_{i=1}^{n}\left[ a_{i},b_{i}\right] \)はコンパクト集合です。仮定より\(A\)は閉集合であるため、\(A\)はコンパクト集合\(\prod_{i=1}^{n}\left[ a_{i},b_{i}\right] \)の部分閉集合です。したがって、先に示したもう一方の命題より\(A\)はコンパクト集合であることが明らかになりました。

命題(有界な閉集合はコンパクト集合)
\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合\(A\)が有界な閉集合であるならば、\(A\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)上のコンパクト集合である。
例(有界な閉集合はコンパクト集合)
点\(a\in \mathbb{R} ^{n}\)を任意に選んだ上で、それだけを要素として持つ1点集合\(\left\{ a\right\} \)を構成すると、これは\(\mathbb{R} ^{n}\)上の有界な閉集合です。したがって、上の命題より、1点集合\(\left\{ a\right\} \)は\(\mathbb{R} ^{n}\)上のコンパクト集合です。
例(有界な閉集合はコンパクト集合)
\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合である\(n\)次元直方体\(A,B\)をそれぞれ任意に選びます。\(n\)次元直方体は\(\mathbb{R} ^{n}\)上の閉集合です。2つの閉集合の共通部分や和集合はいずれも閉集合であるため、\(A\cap B\)や\(A\cup B\)もまた\(\mathbb{R} ^{n}\)上の閉集合です。しかもこれらは明らかに有界であるため、上の命題より、\(A\cap B\)や\(A\cup B\)もまた\(\mathbb{R} ^{n}\)上のコンパクト集合です。

 

ハイネ・ボレルの被覆定理

\(\mathbb{R} ^{n}\)上の有界な閉区間は\(\mathbb{R} ^{n}\)上のコンパクト集合であることが示されましたが、実はその逆もまた成立します。つまり、\(\mathbb{R} ^{n}\)上のコンパクト集合は有界な閉集合であることが保証されます。

命題(コンパクト集合は有界な閉集合)
\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合\(A\)が\(\mathbb{R} ^{n}\)上のコンパクト集合であるならば、\(A\)は\(\mathbb{R} ^{n}\)上の有界な閉集合である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

以上の2つの命題より、\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合がコンパクト集合であることと、その集合が有界な閉集合であることが必要十分であることが明らかになりました。つまり、有界な閉集合としてコンパクト集合を定義できるということです。これをハイネ・ボレルの被覆定理(Heine-Borel’s covering theorem)と呼びます。

命題(ハイネ・ボレルの被覆定理)
\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合\(A\)について、\(A\)が\(\mathbb{R} ^{n}\)上のコンパクト集合であることと、\(A\)が\(\mathbb{R} ^{n}\)上の有界な閉集合であることは必要十分である。

ハイネ・ボレルの被覆定理より、\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合がコンパクト集合であることを示すためには、それが\(\mathbb{R} ^{n}\)上の有界な閉集合であることを示せばよいことになります。逆に、\(\mathbb{R} ^{n}\)の部分集合が有界ではない場合や閉集合ではない場合などには、その集合はコンパクト集合ではありません。

次回は点列コンパクト集合について解説します。

< 前のページ
次のページ >
Share on twitter
Twitterで共有
Share on email
メールで共有
DISCUSSION

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

RELATED KNOWLEDGE

関連知識

コンパクト集合
実数空間におけるコンパクト集合

実数空間の部分集合Aを覆う開集合族(開被覆)を任意に選んだとき、それに対して有限部分被覆が必ず存在する場合には、Aはコンパクト集合であると言います。

コンパクト集合
実数空間における点列コンパクト集合

実数空間の部分集合が与えられたとき、その集合の要素を項とする任意の点列がその集合の点に収束する部分列を持つとき、その集合を点列コンパクト集合と呼びます。ある集合が点列コンパクトであることと、その集合がコンパクトであることは必要十分です。

カントールの縮小区間定理
カントールの縮小区間定理の一般化

カントールの縮小区間定理は入れ子構造の閉区間列に関する命題ですが、同様の主張が入れ子構造のコンパクト集合列に関して成り立ちます。つまり、入れ子構造のコンパクト集合列の共通部分は非空になることが保証されます。

コンパクト集合
コンパクト集合

ユークリッド空間の部分集合Aを覆う開集合族(開被覆)を任意に選んだとき、それに対して有限部分被覆が必ず存在する場合には、Aはコンパクト集合であると言います。

コンパクト集合
コンパクト集合の演算

任意個のコンパクト集合の共通部分はコンパクト集合であり、有限個のコンパクト集合の和集合はコンパクト集合です。