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漸近理論

分布収束(法則収束)する確率変数列

目次

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分布収束する確率変数列

確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)に加えて、標本空間\(\Omega \)を定義域として共有する確率変数列\(\left\{X_{n}\right\} \)が与えられているものとします。つまり、この確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の一般項は\(\Omega \)上に定義された確率変数\begin{equation*}X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}です。また、それらとは異なる確率変数\begin{equation*}
X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。

加えて、確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の要素であるそれぞれの確率変数\(X_{n}\ \left( n=1,2,\cdots \right) \)の確率分布が分布関数\begin{equation*}F_{X_{n}}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}によって記述されているものとします。つまり、分布関数の列\(\left\{ F_{X_{n}}\right\} \)が存在する状況を想定するということです。加えて、確率変数\(X\)の確率分布が分布関数\begin{equation*}F_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}によって記述されているものとします。

実数\(x\in \mathbb{R} \)を任意に選んで固定すると、確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の要素である確率変数\(X_{1},X_{2},X_{3},\cdots \)の値が\(x\)以下であるような確率からなる数列\begin{equation*}F_{X_{1}}\left( x\right) ,F_{X_{2}}\left( x\right) ,F_{X_{3}}\left( x\right)
,\cdots
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
\left\{ F_{X_{n}}\left( x\right) \right\}
\end{equation*}が得られます。加えて、確率変数\(X\)の値が\(x\)以下であるような確率\begin{equation*}F_{X}\left( x\right)
\end{equation*}も得られます。その上で、数列\(\left\{ F_{X_{n}}\left( x\right)\right\} \)が実数\(F_{X}\left( x\right) \)へ収束するのであれば、すなわち、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) =F_{X}\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つのであれば、これは、\(n\)が限りなく大きくなる場合、確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の要素である確率変数\(X_{1},X_{2},X_{3},\cdots \)の値が\(x\)以下である確率が、確率変数\(X\)の値が\(x\)以下である確率に限りなく近づくことを意味します。

以上を踏まえた上で、確率変数\(X\)の分布関数\(F_{X}\)が連続であるような点\(x\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) =F_{X}\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つのであれば、確率変数列\(\left\{X_{n}\right\} \)は確率変数\(X\)へ分布収束する(converge indistribution)や法則収束(converge in law)するなどと言います。これは、確率変数\(X\)の分布関数\(F_{X}\)が連続であるような任意の点\(x\)について、確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の要素である確率変数\(X_{1},X_{2},X_{3},\cdots \)の値が\(x\)以下である確率が、確率変数\(X\)の値が\(x\)以下である確率に限りなく近づくことを意味します。確率変数列\(\left\{X_{n}\right\} \)が確率変数\(X\)へ分布収束することを、\begin{equation*}X_{n}\rightarrow X\quad \text{c.d.}
\end{equation*}または、\begin{equation*}
X_{n}\overset{d}{\rightarrow }X
\end{equation*}などで表記します。その上で、このような確率変数\(X\)を確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の分布極限(limit in distribution)や法則極限(limit in law)などと呼びます。以上が分布極限という収束概念にもとづく確率変数列の極限の定義です。

例(分布収束する確率変数列)
確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)はパラメータ\(1\)の指数分布にしたがうものとします。つまり、\begin{equation*}X\sim E_{XP}\left( 1\right)
\end{equation*}であるということです。具体的には、\(X\)の値域は、\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =[0,+\infty )
\end{equation*}であるとともに、分布関数\(F_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
0 & \left( if\ x<0\right) \\
1-\exp \left( -x\right) & \left( if\ x\geq 0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。一方、確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の一般項である確率変数\(X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)の値域は、\begin{equation*}X_{n}\left( \Omega \right) =(0,n] \end{equation*}であるとともに、分布関数\(F_{X_{n}}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F_{X_{n}}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
0 & \left( if\ x\leq 0\right) \\
1-\left( 1-\frac{x}{n}\right) ^{n} & \left( if\ 0<x\leq n\right) \\
1 & \left( if\ x>n\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(\left\{ X_{n}\right\} \)が\(X\)へ分布収束することを示します。\(x\leq 0\)を満たす\(x\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(n\rightarrow \infty \)の場合の極限をとると、\begin{eqnarray*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) &=&\lim_{n\rightarrow
\infty }0\quad \because F_{X_{n}}\text{の定義} \\
&=&0 \\
&=&F_{X}\left( x\right) \quad \because F_{X}\text{の定義}
\end{eqnarray*}が成り立ちます。\(x>0\)を満たす\(x\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(n\rightarrow \infty \)の場合の極限をとると、\begin{equation*}X_{n}\left( \Omega \right) \rightarrow \left( 0,\infty \right)
\end{equation*}になるとともに、\begin{eqnarray*}
\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) &=&\lim_{n\rightarrow
\infty }\left[ 1-\left( 1-\frac{x}{n}\right) ^{n}\right] \quad \because
F_{X_{n}}\text{の定義} \\
&=&\lim_{n\rightarrow \infty }1-\lim_{n\rightarrow \infty }\left( 1-\frac{x}{n}\right) ^{n} \\
&=&1-\exp \left( \lim_{n\rightarrow \infty }\frac{\ln \left( 1-\frac{x}{n}\right) }{\frac{1}{n}}\right) \quad \because 1^{\infty }\text{型の不定形を}\frac{0}{0}\text{型に変換} \\
&=&1-\exp \left( \lim_{n\rightarrow \infty }\frac{\frac{d}{dn}\ln \left( 1-\frac{x}{n}\right) }{\frac{d}{dn}\frac{1}{n}}\right) \quad \because \text{ロピタルの定理} \\
&=&1-\exp \left( \lim_{n\rightarrow \infty }\frac{-\frac{x}{nx-n^{2}}}{-\frac{1}{n^{2}}}\right) \\
&=&1-\exp \left( \lim_{n\rightarrow \infty }\frac{n^{2}x}{nx-n^{2}}\right)
\\
&=&1-\exp \left( \lim_{n\rightarrow \infty }\frac{x}{\frac{x}{n}-1}\right)
\\
&=&1-\exp \left( -x\right) \\
&=&F_{X}\left( x\right) \quad \because F_{X}\text{の定義}
\end{eqnarray*}を得ます。したがって、\(\left\{ X_{n}\right\} \)は\(X\)へ分布収束します。

 

確率変数列の収束概念としての分布収束の特徴

確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)が確率変数\(X\)へ限りなく近づくことを表現するために、これまで各点収束概収束確率収束平均収束などの収束概念について考察してきましたが、これらの収束概念はいずれも、確率変数どうしの近さを評価する基準として、確率変数のもとでの実現値を採用しています。一方、分布収束に関しては、確率変数どうしの近さを評価する基準として、確率変数の確率分布を規定する分布関数の形状を採用しています。ここが分布収束の大きな特徴です。

例(分布収束の収束概念としての特徴)
連続型の確率変数\(X:\Omega\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられており、その確率密度関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は以下の条件\begin{equation*}\forall x\in \mathbb{R} :f_{X}\left( x\right) =f_{X}\left( -x\right)
\end{equation*}を満たす連続関数であるものとします。つまり、\(f_{X}\)のグラフは点\(0\)を中心に対称的な形状をしています。その上で、それぞれの\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}\left(-X \right) \left( \omega \right) =-X\left( \omega \right)
\end{equation*}を定める新たな確率変数\(-X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)を定義した上で、その確率密度関数を\(f_{-X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)で表記します。以上の条件のもとでは、\begin{equation*}f_{X}=f_{-X}
\end{equation*}が成り立つため(演習問題)、分布関数に関しても、\begin{equation}
F_{X}=F_{-X} \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。さて、確率変数列\(\left\{X_{n}\right\} \)の一般項である確率変数\(X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation}X_{n}\left( \omega \right) =\left\{
\begin{array}{cc}
X\left( \omega \right) & \left( if\ n\text{が奇数}\right)
\\
-X\left( \omega \right) & \left( if\ n\text{が偶数}\right)
\end{array}\right. \quad \cdots (2)
\end{equation}を定めるものとします。\(\left( 1\right) \)より、任意の\(n\in \mathbb{N} \)について、\begin{equation*}F_{X_{n}}=F_{X}
\end{equation*}であることに注意してください。したがって、任意の\(x\in \mathbb{R} \)について、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) =\lim_{n\rightarrow
\infty }F_{X}\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つため、\(\left\{X_{n}\right\} \)は\(X\)へ分布収束します。その一方で、標本点\(\omega \in \Omega \)を任意に選んだとき、\(\left\{ X_{n}\right\} \)のもとでの実現値からなる数列\(\left\{ X_{n}\left( \omega \right)\right\} \)は、\(\left( 2\right) \)より、\begin{equation*}X\left( \omega \right) ,-X\left( \omega \right) ,X\left( \omega \right)
,-X\left( \omega \right) ,\cdots
\end{equation*}となりますが、これは振動数列であるため、\(X\)のもとでの実現値である\(X\left( \omega \right) \)へ限りなく近づくとは言えません。

 

確率変数列を構成する確率変数は異なる確率空間に関するものでも構わない

確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)が確率変数\(X\)へ限りなく近づくことを表現するために、これまで各点収束や概収束、確率収束、平均収束などの収束概念について考察してきましたが、これらの収束概念を定義する際に、確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の要素であるすべての確率変数\(X_{1},X_{2},\cdots \)が同一の標本空間\(\Omega \)上に定義されている状況を想定しました。これらの収束概念は確率変数\(X_{1},X_{2},\cdots \)のもとでの実現値\(X_{1}\left( \omega \right) ,X_{2}\left(\omega \right) ,\cdots \)の挙動に関する概念であるため、そもそも、それぞれの確率変数\(X_{1},X_{2},\cdots \)が異なる標本空間\(\Omega _{1},\Omega_{2},\cdots \)上に定義されている場合、実現値の列\(X_{1}\left( \omega \right) ,X_{2}\left( \omega \right) ,\cdots \)をとれなくなってしまう可能性があります。したがって、これらの収束概念では、すべての確率変数\(X_{1},X_{2},\cdots \)が同一の標本空間\(\Omega \)上に定義されていることが必須の前提条件になります。

先に分布収束という新たな収束概念を定義しましたが、その定義においても、同様の状況を想定しました。ただ、分布収束に話を限定すると、そこで問題になっているのは分布関数の形状であるため、個々の確率変数\(X_{1},X_{2},\cdots \)が異なる標本空間上に定義されたものである場合にも、先と同様に分布収束を定義できます。具体的には以下の通りです。

可算個の確率空間\begin{gather*}
\left( \Omega _{1},\mathcal{F}_{1},P_{1}\right) \\
\left( \Omega _{2},\mathcal{F}_{2},P_{2}\right) \\
\vdots
\end{gather*}が与えられているとともに、それぞれの確率空間に対して確率変数\begin{gather*}
X_{1}:\Omega _{1}\rightarrow \mathbb{R} \\
X_{2}:\Omega _{2}\rightarrow \mathbb{R} \\
\vdots
\end{gather*}がそれぞれ定義されているものとします。また、別の確率空間\begin{equation*}
\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right)
\end{equation*}に対して確率変数\begin{equation*}
X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義されているものとします。

加えて、確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の要素であるそれぞれの確率変数\(X_{n}\ \left( n=1,2,\cdots \right) \)の確率分布が分布関数\begin{equation*}F_{X_{n}}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}によって記述されているものとします。つまり、分布関数の列\(\left\{ F_{X_{n}}\right\} \)が存在する状況を想定するということです。加えて、確率変数\(X\)の確率分布が分布関数\begin{equation*}F_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}によって記述されているものとします。

以上を踏まえた上で、確率変数\(X\)の分布関数\(F_{X}\)が連続であるような点\(x\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) =F_{X}\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つのであれば、\(\left\{ X_{n}\right\} \)は\(X\)へ分布収束すると言います。

ただし、各点収束や概収束、確率収束、平均収束など他の収束概念と分布収束の関係を議論する状況を見据えた上で、以降では断りのない限りにおいて、分布収束について議論する際にも、すべての確率変数\(X_{1},X_{2},\cdots \)が同一の標本空間\(\Omega \)上に定義されている状況を想定します。

 

分布収束の定義において分布関数が連続な点のみを対象とする理由

確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)に関する分布関数の列\(\left\{ F_{X_{n}}\right\} \)と確率変数\(X\)の分布関数\(F_{X}\)が与えられたとき、\(\left\{ X_{n}\right\} \)が\(X\)へ分布収束することとは、\(F_{X}\)が連続であるような任意の点\(x\in \mathbb{R} \)において、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) =F_{X}\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つこととして定義されます。なぜ、\(F_{X}\)が連続な点のみを考察対象とするのでしょうか。

問題としている確率変数\(X\)が連続型である場合、分布関数\(F_{X}\)は\(\mathbb{R} \)上で連続であるため、この場合には\(\mathbb{R} \)上のすべての点\(x\)において、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) =F_{X}\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つことを検証することになります。一方、確率変数\(X\)が離散型である場合、分布関数\(F_{X}\)は\(\mathbb{R} \)上で右側連続である一方で左側連続であるとは限らず、したがって\(\mathbb{R} \)上で連続であるとは限りません。ただし、分布関数\(F_{X}\)は単調増加であるため、\(F_{X}\)が連続ではない点\(x\)における値\(F_{X}\left( x\right) \)に関する情報が欠如していても、\(F_{X}\)が連続な点\(x\)における値\(F_{X}\left( x\right) \)に関する情報がすべて揃ってさえいれば、\(F_{X}\)の形状を完全に描写できます。したがって、\(F_{X}\)が連続であるような任意の点\(x\in \mathbb{R} \)についてのみ、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) =F_{X}\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つことを言えれば、\(n\)が限りなく大きくなる場合、\(F_{X_{n}}\)の形状は\(F_{X}\)の形状へ限りなく近づくと結論付けることができます。

では逆に、\(\left\{ X_{n}\right\} \)が\(X\)へ分布収束することの定義として、\(F_{X}\)が連続ではない点も含めた\(\mathbb{R} \)上の任意の点\(x\)において、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) =F_{X}\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つ、という基準を採用した場合に何らかの問題は生じるのでしょうか。以下の例を参照してください。

例(連続ではない点を対象に加えた場合の問題)
確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)の値域は、\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =\left\{ 0\right\}
\end{equation*}であるものとします。つまり、\(X\)は定数関数であるため、分布関数\(F_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
0 & \left( if\ x<0\right) \\
1 & \left( if\ x\geq 0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。その一方で、確率変数列\(\left\{X_{n}\right\} \)の一般項である確率変数\(X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)の値域は、\begin{equation*}X_{n}\left( \Omega \right) =\left\{ \frac{1}{n}\right\}
\end{equation*}であるものとします。つまり、\(X_{n}\)もまた定数関数であるため、分布関数\(F_{X_{n}}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F_{X_{n}}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
0 & \left( if\ x<\frac{1}{n}\right) \\
1 & \left( if\ x\geq \frac{1}{n}\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。\(n\)が限りなく大きくなる場合、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }\frac{1}{n}=0
\end{equation*}が成り立つため、\(F_{X_{n}}\)は\(F_{X}\)へ限りなく近づきます。実際、\(\left\{X_{n}\right\} \)は\(X\)へ確率収束します。\(F_{X}\)は\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)上で連続ですが、\(x<0\)を満たす任意の\(x\in \mathbb{R} \)については、\begin{eqnarray*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) &=&0\quad \because x<0\text{および}F_{X_{n}}\text{の定義} \\
&=&F_{X}\left( x\right) \quad \because x<0\text{および}F_{X}\text{の定義}
\end{eqnarray*}が成り立ち、\(x>0\)を満たす任意の\(x\in \mathbb{R} \)については、\begin{eqnarray*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) &=&1\quad \because x>0\text{および}F_{X_{n}}\text{の定義} \\
&=&F_{X}\left( x\right) \quad \because x>0\text{および}F_{X}\text{の定義}
\end{eqnarray*}が成り立ちます。したがって、\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)上の任意の点\(x\)について、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) =F\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つため、\(\left\{X_{n}\right\} \)は\(X\)へ確率収束することが明らかになりました。一方、\(F_{X}\)が連続ではない点\(0\)については、\begin{eqnarray*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( 0\right) &=&0\quad \because
F_{X_{n}}\text{の定義} \\
&\not=&1 \\
&=&F_{X}\left( 0\right) \quad \because F_{X}\text{の定義}
\end{eqnarray*}となるため、\(\left\{ X_{n}\right\} \)は\(X\)へ確率収束することの定義として、仮に\(\mathbb{R} \)上の任意の点において、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) =F\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つことを要求した場合、この新たな定義のもとで\(\left\{X_{n}\right\} \)は\(X\)へ確率収束しないということになってしまいます。

 

確率変数列は分布収束するとは限らない

確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)に関する分布関数の列\(\left\{ F_{X_{n}}\right\} \)と確率変数\(X\)の分布関数\(F_{X}\)が与えられたとき、\(\left\{ X_{n}\right\} \)が\(X\)へ分布収束することとは、\(F_{X}\)が連続であるような任意の点\(x\in \mathbb{R} \)において、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) =F_{X}\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つこととして定義されます。したがって、\(\left\{ X_{n}\right\} \)が\(X\)へ分布収束しないこととは、\(F_{X}\)が連続であるような少なくとも1つの点\(x\in \mathbb{R} \)において、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right) \not=F_{X}\left(
x\right)
\end{equation*}が成り立つことを意味します。また、そもそも、\(F_{X}\)が連続であるような少なくとも1つの点\(x\in \mathbb{R} \)において、極限\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }F_{X_{n}}\left( x\right)
\end{equation*}が有限な実数として定まらない場合にも、\(\left\{ X_{n}\right\} \)は\(X\)へ分布収束しません。

確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)に関する分布関数の列\(\left\{ F_{X_{n}}\right\} \)の極限をとることにより得られる関数\(F_{X}\)が分布関数としての要件を満たさない場合、\(\left\{ X_{n}\right\} \)はいかなる確率変数\(X\)へも分布収束しません。

例(分布収束しない確率変数列)
確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の一般項である確率変数\(X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)の値域は、\begin{equation*}X_{n}\left( \Omega \right) =\left[ -n,n\right] \end{equation*}であるとともに、分布関数\(F_{X_{n}}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F_{X_{n}}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
0 & \left( if\ x<-n\right) \\
\dfrac{n+x}{2n} & \left( if\ -n\leq x\leq n\right) \\
1 & \left( if\ x>n\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(\left\{ X_{n}\right\} \)はいかなる確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)へも分布収束しません(演習問題)。

 

演習問題

問題(分布収束)
確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)の値域は、\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =\left( 0,\infty \right)
\end{equation*}であるとともに、分布関数\(F_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F_{X}\left( x\right) =\exp \left( -\frac{1}{x}\right)
\end{equation*}を定めます。一方、確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の一般項である確率変数\(X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)の値域は、\begin{equation*}X_{n}\left( \Omega \right) =\left( 0,\infty \right)
\end{equation*}であるとともに、分布関数\(F_{X_{n}}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F_{X_{n}}\left( x\right) =\left( 1-\frac{1}{1+nx}\right) ^{n}
\end{equation*}を定めるものとします。\(\left\{ X_{n}\right\} \)が\(X\)へ分布収束することを示してください。
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問題(分布収束)
確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)の値域は、\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =\left[ 0,1\right] \end{equation*}であるとともに、分布関数\(F_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
0 & \left( if\ x<0\right) \\
x & \left( if\ 0\leq x\leq 1\right) \\
1 & \left( if\ x>1\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。一方、確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の一般項である確率変数\(X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)の値域は、\begin{equation*}X_{n}\left( \Omega \right) =\left[ 0,1\right] \end{equation*}であるとともに、分布関数\(F_{X_{n}}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F_{X_{n}}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
0 & \left( if\ x<0\right) \\
x-\dfrac{\sin \left( 2n\pi x\right) }{2n\pi } & \left( if\ 0\leq x\leq
1\right) \\
1 & \left( if\ x>1\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(\left\{ X_{n}\right\} \)が\(X\)へ分布収束することを示してください。
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問題(分布収束しない確率変数列)
確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)の一般項である確率変数\(X_{n}:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)の値域は、\begin{equation*}X_{n}\left( \Omega \right) =\left[ -n,n\right] \end{equation*}であるとともに、分布関数\(F_{X_{n}}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}F_{X_{n}}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
0 & \left( if\ x<-n\right) \\
\dfrac{n+x}{2n} & \left( if\ -n\leq x\leq n\right) \\
1 & \left( if\ x>n\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。\(\left\{ X_{n}\right\} \)はいかなる確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)へも分布収束しないことを示してください。
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問題(対称的な確率分布)
連続型の確率変数\(X:\Omega\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられており、その確率密度関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)は以下の条件\begin{equation*}\forall x\in \mathbb{R} :f_{X}\left( x\right) =f_{X}\left( -x\right)
\end{equation*}を満たす連続関数であるものとします。つまり、\(f_{X}\)のグラフは点\(0\)を中心に対称的な形状をしています。その上で、それぞれの\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}\left( -X \right) \left( \omega \right) =-X\left( \omega \right)
\end{equation*}を定める新たな確率変数\(-X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)を定義した上で、その確率密度関数を\(f_{-X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)で表記します。このとき、\begin{equation*}f_{X}=f_{-X}
\end{equation*}が成り立つことを示してください。

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