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離散型の確率分布

離散型確率変数の期待値

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離散型確率変数の期待値

確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)に加えて離散型の確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。つまり、\(X\)の値域\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =\left\{ X\left( \omega \right) \in \mathbb{R} \ |\ \omega \in \Omega \right\}
\end{equation*}が有限集合または可算集合であるということです。加えて、確率変数\(X\)の確率分布が確率質量関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)によって記述されているものとします。つまり、確率変数\(X\)が値\(x\in \mathbb{R} \)をとる確率は、\begin{equation*}P\left( X=x\right) =f_{X}\left( x\right)
\end{equation*}であり、確率変数\(X\)の値が集合\(A\subset \mathbb{R} \)に属する確率は、\begin{equation*}P\left( X\in A\right) =\sum_{x\in A}f_{X}\left( x\right)
\end{equation*}であるということです。

問題としている試行のもとで確率変数\(X\)が取り得る値の範囲\(X\left(\Omega \right) \)は分かっていますが、試行はランダムネスによって支配されているため、\(X\left(\Omega \right) \)の中のどの値が実際に実現するかを事前に特定できません。したがって、何らかの手段を通じて\(X\left( \Omega \right) \)の中のどの値が実際に実現するかを予測する必要があります。\(X\)の実現値を予想する際に期待値(expectation)と呼ばれる指標を参考にすることは最も基本的な考え方です。期待値は17世紀に考え出された概念であり、ギャンブルの収益を予想するために使われました。簡単な例を挙げた上で、後に期待値を定義します。

例(期待値)
あるギャンブルをプレーすると確率\(\frac{1}{2}\)で\(2\)万円を得られる一方、確率\(\frac{1}{2}\)で\(1\)万円を失うものとします。つまり、確率変数\(X:\Omega\rightarrow \mathbb{R} \)の値域は、\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =\left\{ 2,-1\right\}
\end{equation*}であるとともに、確率質量関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cc}
\frac{1}{2} & \left( if\ x\in X\left( \Omega \right) \right) \\
0 & \left( if\ x\not\in X\left( \Omega \right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるということです。このギャンブルから得られる収益をどのように予想すればよいでしょうか。仮に、このギャンプルを\(100\)回繰り返しプレーした場合、平均してどれくらいの収益を得られるでしょうか。各回のギャンブルの結果が先の確率質量関数\(f_{X}\)にしたがって決定されるのであれば、合計\(100\)回のうち\(50\)回において\(2\)万円を得られる一方で\(50\)回において\(1\)万円を失うことが予想されます。したがって、ギャンブルを\(100\)回繰り返した場合の収益の平均は、\begin{equation*}\frac{2\cdot 50+\left( -1\right) \cdot 50}{100}=\frac{1}{2}
\end{equation*}となります。つまり、同一のギャンブルを繰り返しプレーしたとき、収益の平均は\(\frac{1}{2}\)万円すなわち\(5000\)円であるということです。これを期待値と呼びます。左辺を変形すると、\begin{eqnarray*}\frac{2\cdot 50+\left( -1\right) \cdot 50}{100} &=&2\cdot \frac{50}{100}+\left( -1\right) \cdot \frac{50}{100} \\
&=&2\cdot \frac{1}{2}+\left( -1\right) \cdot \frac{1}{2} \\
&=&2\cdot f_{X}\left( 2\right) +\left( -1\right) \cdot f_{X}\left( -1\right)
\\
&=&\sum_{x\in X\left( \Omega \right) }\left[ x\cdot f_{X}\left( x\right) \right] \end{eqnarray*}を得ます。つまり、確率変数\(X\)の期待値を導出するためには、\(X\)がとり得るそれぞれの値\(x\)と、その値が実現する確率\(f_{X}\left( x\right) \)の積をとった上で、得られた積の総和をとればよいということです。

離散型の確率変数\(X:\Omega\rightarrow \mathbb{R} \)の確率分布が確率質量関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)によって記述されているものとします。問題としている試行はランダムネスによって支配されているため、\(X\left( \Omega \right) \)に属するどの値が実際に実現するかを事前に知ることはできません。そこで、\(X\left( \Omega \right) \)に属するそれぞれの値\(x\)と、その値が実現する確率\(f_{X}\left( x\right) \)との積をとった上で、さらに、得られた積の総和\begin{equation*}\sum_{x\in X\left( \Omega \right) }\left[ x\cdot f_{X}\left( x\right) \right] \end{equation*}をとり、これを\(X\)の実現値の見込み値を表す指標として採用します。これを確率変数\(X\)の期待値(expectation)や平均値(mean)などと呼び、\begin{equation*}E\left( X\right) ,\quad \mu
\end{equation*}などで表現します。つまり、\begin{equation*}
E\left( X\right) =\sum_{x\in X\left( \Omega \right) }\left[ x\cdot
f_{X}\left( x\right) \right] \end{equation*}を満たすものとして期待値\(E\left( X\right) \)は定義されます。期待値\(E\left( X\right) \)は確率変数\(X\)の実現値の見込みを表す指標であり、実際に実現する値とは異なります。

例(離散型確率変数の期待値)
「サイコロを1回投げて出た目を観察する」という試行の標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =\left\{ 1,2,3,4,5,6\right\}
\end{equation*}です。出た目の\(100\)倍の金額を賞金としてもらえるというルールのもと、出た目に対応する賞金額を与える確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X\left( \omega \right) =100\omega
\end{equation*}を定めます。\(X\)の値域は、\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =\left\{ 100,200,300,400,500,600\right\}
\end{equation*}という有限集合であるため、これは離散型の確率変数です。サイコロに偏りがないのであれば、確率質量関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
\frac{1}{6} & \left( if\ x\in X\left( \Omega \right) \right) \\
0 & \left( if\ x\not\in X\left( \Omega \right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。問題としている試行はランダムネスによって支配されているため、\(X\left( \Omega \right) \)に属するどの賞金額\(X\)が実際に実現するかを事前に知ることはできません。そこで、賞金額\(X\)の期待値を用いて試行を評価することとします。具体的には、\begin{eqnarray*}E\left( X\right) &=&\sum_{x\in X\left( \Omega \right) }\left[ x\cdot
f_{X}\left( x\right) \right] \\
&=&100\cdot f_{X}\left( 100\right) +200\cdot f_{X}\left( 200\right)
+300\cdot f_{X}\left( 300\right) +400\cdot f_{X}\left( 400\right) +500\cdot
f_{X}\left( 500\right) +600\cdot f_{X}\left( 600\right) \\
&=&100\cdot \frac{1}{6}+200\cdot \frac{1}{6}+300\cdot \frac{1}{6}+400\cdot
\frac{1}{6}+500\cdot \frac{1}{6}+600\cdot \frac{1}{6} \\
&=&350
\end{eqnarray*}となります。つまり、問題としている試行を行うと賞金がおよそ\(350\)がもらえる見込みであるということです。ただし、これは見込みの金額であり、確実に\(350\)をもらえるわけではありません。期待値は見込みの値であり、実際に実現する値とは異なります。
例(離散型確率変数の期待値)
「コインを3回投げて表が出た回数を観察する」という試行において、1回目に出た面を\(x_{1}\)で、2回目に出た面を\(x_{2}\)で、3回目に出た面を\(x_{3}\)でそれぞれ表記するのであれば、問題としている試行の標本空間は、\begin{equation*}\Omega =\left\{ \left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \ |\ \forall i\in \left\{
1,2,3\right\} :x_{i}\in \left\{ \text{表},\text{裏}\right\}
\right\}
\end{equation*}となります。それぞれの標本点\(\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \in\Omega \)に対して、\begin{equation*}X\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) =\left( x_{1},x_{2},x_{3}\right) \text{において表が出た回数}
\end{equation*}を値として定める確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)を定義すると、その値域は、\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =\left\{ 0,1,2,3\right\}
\end{equation*}であるため、これは離散型の確率変数です。標本空間には\(2^{3}\)個の標本点が属しますが、これらがいずれも同じ程度の確かさで起こり得るのであれば、確率質量関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
\binom{3}{x}\left( \frac{1}{2}\right) ^{3} & \left( if\ x\in X\left( \Omega
\right) \right) \\
0 & \left( if\ x\not\in X\left( \Omega \right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。問題としている試行はランダムネスによって支配されているため、\(X\left( \Omega \right) \)に属するどの回数が実際に実現するかを事前に知ることはできません。そこで、\(X\)の期待値を用いて試行を評価することとします。具体的には、\begin{eqnarray*}E\left( X\right) &=&\sum_{x\in X\left( \Omega \right) }\left[ x\cdot
f_{X}\left( x\right) \right] \\
&=&0\cdot f_{X}\left( 0\right) +1\cdot f_{X}\left( 1\right) +2\cdot
f_{X}\left( 2\right) +3\cdot f_{X}\left( 3\right) \\
&=&0\cdot \frac{1}{8}+1\cdot \frac{3}{8}+2\cdot \frac{3}{8}+3\cdot \frac{1}{8} \\
&=&\frac{3}{2}
\end{eqnarray*}となります。つまり、問題としている試行を行うと表がおよそ\(\frac{3}{2}\)回出る見込みであるということです。ただし、これは見込みの回数であり、確実に表が\(\frac{3}{2}\)回出るわけではありません。そもそも、表が出る回数は非負の整数のみを値としてとるため、表が\(\frac{3}{2}\)回出るという事象は起こり得ません。期待値は見込みの値であり、実際に実現する値とは異なります。
例(離散型確率変数の期待値)
「表が出るまでコインを投げ続ける」という試行の標本空間は、\begin{equation*}
\Omega =\{\text{表},\text{裏表},\text{裏裏表},\text{裏裏裏表},\cdots \}
\end{equation*}となります。それぞれの標本点\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X\left( \omega \right) =\omega \text{において初めて表が出た回数}
\end{equation*}を値として定める確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)を定義すると、その値域は、\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =\left\{ 1,2,3,\cdots \right\}
\end{equation*}であるため、これは離散型の確率変数です。各回のコイン投げにおいて表と裏が等確率で出るのであれば、確率質量関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
\left( \frac{1}{2}\right) ^{x-1}\left( \frac{1}{2}\right) & \left( if\ x\in
X\left( \Omega \right) \right) \\
0 & \left( if\ x\not\in X\left( \Omega \right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めます。問題としている試行はランダムネスによって支配されているため、\(X\left( \Omega \right) \)に属するどの回数が実際に実現するかを事前に知ることはできません。そこで、初めて表が出る回数\(X\)の期待値を用いて試行を評価することとします。具体的には、\begin{equation*}E\left( X\right) =2
\end{equation*}となります(演習問題)。つまり、問題としている試行を行うと表がおよそ\(2\)回目で出る見込みであるということです。ただし、これは見込みの回数であり、確実に表が\(2\)回目に出るわけではありません。期待値は見込みの値であり、実際に実現する値とは異なります。
例(定数確率変数の期待値)
確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)に加えて定数関数であるような確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。つまり、ある\(c\in \mathbb{R} \)が存在して、任意の\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}X\left( \omega \right) =c
\end{equation*}が成り立つということです。\(X\)の確率質量関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
1 & \left( if\ x=c\right) \\
0 & \left( if\ x\not=c\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるため、\(X\)の期待値は、\begin{eqnarray*}E\left( X\right) &=&\sum_{x\in X\left( \Omega \right) }\left[ x\cdot
f_{X}\left( x\right) \right] \\
&=&c\cdot 1 \\
&=&c
\end{eqnarray*}となります。

例(ほとんど確実に一定の確率変数の期待値)
確率空間\(\left( \Omega ,\mathcal{F},P\right) \)に加えてほとんど確実に一定の確率変数\(X:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられているものとします。つまり、\(X\)の確率質量変数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)がそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して定める値は、ある\(c\in \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}f_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
1 & \left( if\ x=c\right) \\
0 & \left( if\ x\not=c\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}と表すことができるということです。\(X\)の値域は、\begin{equation}X\left( \Omega \right) =\left\{ c\right\} \quad \cdots (1)
\end{equation}であるため、\(X\)の期待値は、\begin{eqnarray*}E\left( X\right) &=&\sum_{x\in X\left( \Omega \right) }\left[ x\cdot
f_{X}\left( x\right) \right] \\
&=&c\cdot 1\quad \because \left( 1\right) \\
&=&c
\end{eqnarray*}となります。つまり、ほとんど確実に一定の確率変数と定数関数であるような確率変数は同一の期待値を持っています。

 

期待値が有限な実数として定まらない場合

離散型の確率変数\(X\)の値域は有限集合か可算集合のどちらか一方です。\(X\)の値域が有限集合である場合、期待値\(E\left( X\right) \)は有限個の実数の和であるため、1つの有限な実数として定まることが保証されます。一方、\(X\)の値域が可算集合である場合、期待値\(E\left( X\right) \)は無限個の実数の和、すなわち無限級数であるため、それが1つの有限な実数として定まるとは限りませんし、そもそも期待値が存在しない事態も起こり得ます。以下で順番に解説します。

離散型の確率変数\(X:\Omega\rightarrow \mathbb{R} \)の確率分布が確率質量関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)によって描写されているとき、\(X\)の期待値は、\begin{equation*}E\left( X\right) =\sum_{x\in X\left( \Omega \right) }\left[ x\cdot
f_{X}\left( x\right) \right] \end{equation*}と定義されます。\(X\)の値域\(X\left( \Omega \right) \)が可算集合である場合、\(X\)の期待値は無限級数になりますが、これを正の項どうしの和と負の項どうしの和に分けて記述すると、\begin{equation*}E\left( X\right) =\sum_{x\in X\left( \Omega \right) \cap \mathbb{R} _{++}}\left[ x\cdot f_{X}\left( x\right) \right] +\sum_{x\in X\left( \Omega
\right) \cap \mathbb{R} _{− −}}\left[ x\cdot f_{X}\left( x\right) \right] \end{equation*}となります。このとき、以下の3通りの可能性が起こり得ます。

まず、正の項どうしの和と負の項どうしの和がそれぞれ有限な実数へ収束する場合、もとの無限級数もまた有限な実数へ収束します。しかも、その極限は無限級数の項の順番に依存せず一定です。したがって、この場合には\(X\)の期待値が1つの有限な実数として定まります。

続いて、正の項のどうしの和と負の項どうしの和のどちらか一方が有限な実数へ収束し、もう一方が無限大へ収束する場合、もとの無限級数もまた無限大へ収束します。したがって、この場合には\(X\)の期待値は無限大であるものと定めます。

最後に、正の項どうしの和が正の無限大へ発散し、なおかつ負の項どうしの和が負の無限大へ発散する場合、もとの無限級数は有限な実数へ収束しないか、もしくは、無限級数の項の順番を入れ替えることにより異なる極限へ収束させることができます。したがって、この場合には\(X\)の期待値は存在しないものと定めます。

例(期待値が無限大である場合)
確率変数\(X\)の値域が、\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =\mathbb{N} =\left\{ 1,2,3,\cdots \right\}
\end{equation*}であるものとします。これは可算集合であるため\(X\)は可算型の確率変数です。\(X\)の確率分布が確率質量関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)によって記述されており、これはそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
\frac{1}{x\left( x+1\right) } & \left( if\ x\in X\left( \Omega \right)
\right) \\
0 & \left( if\ x\not\in X\left( \Omega \right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。このとき、\begin{eqnarray*}
\sum_{x\in X\left( \Omega \right) \cap \mathbb{R} _{++}}\left[ x\cdot f_{X}\left( x\right) \right] &=&\sum_{x=1}^{\infty }\left[ x\cdot \frac{1}{x\left( x+1\right) }\right] \\
&=&\sum_{x=1}^{\infty }\frac{1}{\left( x+1\right) } \\
&=&+\infty
\end{eqnarray*}となる一方で、\begin{eqnarray*}
\sum_{x\in X\left( \Omega \right) \cap \mathbb{R} _{− −}}\left[ x\cdot f_{X}\left( x\right) \right] &=&\sum_{x\in X\left(
\Omega \right) \cap \mathbb{R} _{− −}}\left( x\cdot 0\right) \\
&=&0
\end{eqnarray*}となるため、\begin{eqnarray*}
E\left( X\right) &=&\sum_{x\in X\left( \Omega \right) \cap \mathbb{R} _{++}}\left[ x\cdot f_{X}\left( x\right) \right] +\sum_{x\in X\left( \Omega
\right) \cap \mathbb{R} _{− −}}\left[ x\cdot f_{X}\left( x\right) \right] \\
&=&\left( +\infty \right) +0 \\
&=&+\infty
\end{eqnarray*}となります。

例(期待値が存在しない場合)
確率変数\(X\)の値域が、\begin{equation*}X\left( \Omega \right) =\mathbb{Z} \backslash \left\{ 0\right\} =\left\{ \cdots ,-2,-1,1,2,\cdots \right\}
\end{equation*}であるものとします。これは可算集合であるため\(X\)は可算型の確率変数です。\(X\)の確率分布が確率質量関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)によって記述されており、これはそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \)に対して、\begin{equation*}f_{X}\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
\frac{1}{2\left\vert x\right\vert \left( \left\vert x\right\vert +1\right) }
& \left( if\ x\in X\left( \Omega \right) \right) \\
0 & \left( if\ x\not\in X\left( \Omega \right) \right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を定めるものとします。このとき、\begin{eqnarray*}
\sum_{x\in X\left( \Omega \right) \cap \mathbb{R} _{++}}\left[ x\cdot f_{X}\left( x\right) \right] &=&\sum_{x=1}^{\infty }\left[ x\cdot \frac{1}{2x\left( x+1\right) }\right] \\
&=&\sum_{x=1}^{\infty }\frac{1}{2\left( x+1\right) } \\
&=&+\infty
\end{eqnarray*}となる一方で、\begin{eqnarray*}
\sum_{x\in X\left( \Omega \right) \cap \mathbb{R} _{− −}}\left[ x\cdot f_{X}\left( x\right) \right] &=&\sum_{x=-1}^{-\infty }\left[ x\cdot \frac{1}{2\left( -x\right) \left( -x+1\right) }\right] \\
&=&-\sum_{x=1}^{\infty }\left[ x\cdot \frac{1}{2x\left( x+1\right) }\right] \\
&=&-\infty
\end{eqnarray*}となるため、\(X\)の期待値\(E\left( X\right) \)は存在しません。

 

不注意な統計学者の法則(LOTUS)

離散型の確率変数\(X:\Omega\rightarrow \mathbb{R} \)の確率分布が確率質量関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)によって記述されているものとします。関数\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、それぞれの\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{eqnarray*}Y\left( \omega \right) &=&\left( g\circ X\right) \left( \omega \right) \\
&=&g\left( X\left( \omega \right) \right) \quad \because \text{合成関数の定義}
\end{eqnarray*}を定める新たな確率変数\(Y:\Omega \rightarrow \mathbb{R} \)を定義します。確率変数\(Y\)の期待値が存在する場合には、\begin{equation*}E\left( Y\right) =\sum_{x\in X\left( \Omega \right) }\left[ g\left( x\right)
\cdot f_{X}\left( x\right) \right] \end{equation*}という関係が成り立つことが保証されます。これを不注意な統計学者の法則(law of the unconscious statistician)やLOTUSなどと呼びます。

命題(不注意な統計学者の法則)
離散型の確率変数\(X:\Omega\rightarrow \mathbb{R} \)の確率分布が確率質量関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)によって記述されているものとする。関数\(g:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、それぞれの\(\omega \in \Omega \)に対して、\begin{equation*}Y\left( \omega \right) =g\left( X\left( \omega \right) \right)
\end{equation*}を定める確率変数\(Y:\Omega\rightarrow \mathbb{R} \)を定義する。\(Y\)の期待値が存在する場合には、\begin{equation*}E\left( Y\right) =\sum_{x\in X\left( \Omega \right) }\left[ g\left( x\right)
\cdot f_{X}\left( x\right) \right] \end{equation*}という関係が成り立つ。

証明

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確率変数\(Y=g\left( X\right) \)の期待値を求める際、期待値の本来の定義にもとづいて考えるのであれば、\begin{equation*}y=f\left( x\right)
\end{equation*}とおいた上で、確率変数\(Y\)の確率分布を描写する確率質量関数\(f_{Y}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)を特定した上で、\begin{equation*}E\left( Y\right) =\sum_{y\in Y\left( \Omega \right) }\left[ y\cdot
f_{Y}\left( y\right) \right] \end{equation*}と計算する必要があります。つまり、本来、確率変数\(Y\)の期待値は\(Y\)の確率分布にもとづいて計算する必要があり、確率変数\(X\)の確率分布をそのまま流用できることは必ずしも自明ではありません。であるにもかかわらず、統計学の多くの教科書では、確率変数\(Y\)の期待値を導出する際に、確率変数\(X\)の確率分布を描写する確率質量関数\(f_{X}:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)を用いて、\begin{equation*}E\left( Y\right) =\sum_{x\in X\left( \Omega \right) }\left[ g\left( x\right)
\cdot f_{X}\left( x\right) \right] \end{equation*}としています。なぜなら、多くの不注意な人は、このような関係が成り立つことが自明であると思いこんでいるからです。ただ、実際には、上の命題が示すように、このような関係が成り立つことはきちんと証明されるべきです。このような背景を踏まえた上で、上の命題は「不注意な統計者の法則(LOTUS)」と呼ばれます。

具体例を通じて不注意な統計者の法則の有用性を確認します。

例(不注意な統計学者の法則)
離散型の確率