WIIS

ディニ微分

ルベーグ積分に関する微分積分学の第1基本定理

目次

Twitter
Mailで保存

リーマン積分に関する微分積分学の第1基本定理

\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界な閉区間\(\left[ a,b\right] \)上に定義された関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が\(\left[ a,b\right] \)上でリーマン積分可能であるものとします。つまり、定積分\begin{equation*}\int_{a}^{b}f\left( x\right) dx
\end{equation*}が有限な実数として定まるということです。

区間\(\left[ a,b\right] \)上でリーマン積分可能な関数\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)の部分集合である任意の有界閉区間上においてもリーマン積分可能であるため、点\(x\in \left[ a,b\right] \)を任意に選んだとき、関数\(f\)は区間\(\left[ a,x\right] \)上でリーマン積分可能であり、したがって定積分\begin{equation*}\int_{a}^{x}f\left( t\right) dt
\end{equation*}が有限な実数として定まることが保証されます。このような事情を踏まえると、\(\left[ a,b\right] \)上でリーマン積分可能な関数\(f\)が与えられた場合、それぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}F\left( x\right) =\int_{a}^{x}f\left( t\right) dt
\end{equation*}を値として定める関数\begin{equation*}
F:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。以上の条件のもとでは、この関数\(F\)は\(\left[ a,b\right] \)上で連続になることが保証されます。

仮定より関数\(f\)は\(\left[ a,b\right]\)上でリーマン積分可能ですが、リーマン積分可能な関数は必ずしも連続であるとは限らないことに注意してください。そこで、関数\(f\)が点\(x\in \left[ a,b\right] \)において連続である場合には、先の関数\(F\)は点\(x\)において連続であるだけでなく微分可能であることも保証されるとともに、微分係数が以下の条件\begin{equation*}\frac{dF\left( x\right) }{dx}=f\left( x\right)
\end{equation*}を満たすことが保証されます。つまり、関数\(f\)が区間\(\left[ a,b\right] \)上でリーマン積分可能であるとともに点\(x\in \left[a,b\right] \)において連続である場合には、その点\(x\)において関数\(F\)はもとの関数\(f\)の原始関数になります。関数\(F\)の定義より、上の関係を、\begin{equation*}\frac{d}{dx}\int_{a}^{x}f\left( t\right) dt=f\left( x\right)
\end{equation*}と表現することもできます。つまり、関数\(f\)を区間\(\left[ a,x\right] \)上でリーマン積分して得られた結果を微分すると、もとの関数\(f\)が点\(x\)に対して定める値\(f\left( x\right) \)が得られるということです。いずれにせよ、これを微分積分学の第1基本定理(first fundamental theorem of calculus)と呼びます。

例(微分積分学の第1基本定理)
関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が連続であるものとします。連続関数はリーマン積分可能であるため\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)上においてリーマン積分可能であり、したがって、それぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}F\left( x\right) =\int_{a}^{x}f\left( t\right) dt
\end{equation*}を定める関数\(F:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能です。しかも仮定より\(f\)は\(\left[ a,b\right]\)上において連続であるため、微分積分学の第1基本定理より、\begin{equation*}\forall x\in \left[ a,b\right] :\frac{dF\left( x\right) }{dx}=f\left(
x\right)
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、区間\(\left[ a,b\right] \)上で連続な関数\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)上に定義された原始関数\(F\)を持つということです。関数\(F\)の定義より、これを、\begin{equation*}\forall x\in \left[ a,b\right] :\frac{d}{dx}\int_{a}^{x}f\left( t\right)
dt=f\left( x\right)
\end{equation*}と表現することもできます。

 

ルベーグ積分可能な関数のルベーグ積分は絶対連続

ルベーグ積分に関しても微分積分学の第1基本定理は成立するのでしょうか。順番に考えます。

実数空間\(\mathbb{R} \)とルベーグ可測集合族\(\mathfrak{M}_{\mu }\)およびルベーグ測度\(\mu \)からなるルベーグ測度空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)が与えられているものとします。

\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が\(\left[ a,b\right] \)上においてルベーグ積分可能であるものとします。つまり、\(f\)の\(\left[ a,b\right] \)上におけるルベーグ積分\begin{equation*}\int_{\left[ a,b\right] }f=\int_{\left[ a,b\right] }f^{+}-\int_{\left[ a,b\right] }f^{-}
\end{equation*}が有限な実数として定まるということです。

ルベーグ可測集合上でルベーグ積分可能な関数は、その可測集合の部分集合であるような可測集合上においてもルベーグ積分可能です。有界閉区間\(\left[ a,b\right] \)はルベーグ可測集合ですが、点\(x\in \left[ a,b\right] \)を任意に選んだとき、区間\(\left[ a,x\right] \)もまたルベーグ可測集合です。したがって、\(f\)が\(\left[ a,b\right] \)上においてルベーグ積分可能である場合、\(f\)は\(\left[a,x\right] \)上においてもルベーグ積分可能です。このような事情を踏まえると、ルベーグ積分可能な関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、それぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}F\left( x\right) =\int_{\left[ a,x\right] }f\in \mathbb{R} \end{equation*}を値として定める関数\begin{equation*}
F:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。

点\(x=a\)に関しては、\begin{eqnarray*}\left[ a,x\right] &=&\left[ a,a\right] \quad \because x=a \\
&=&\left\{ a\right\}
\end{eqnarray*}となりますが、1点集合\(\left\{ a\right\} \)はルベーグ可測集合であるため関数\(F\)は点\(a\)においても定義されるとともに、そこでの値は、\begin{eqnarray*}F\left( a\right) &=&\int_{\left[ a,a\right] }f\quad \because F\text{の定義} \\
&=&\int_{\left\{ a\right\} }f \\
&=&0\quad \because \left\{ a\right\} \text{は零集合}
\end{eqnarray*}となります。

以上のように定義された関数\(F\)は区間\(\left[ a,b\right]\)上において絶対連続になることが保証されます。つまり、以下の条件\begin{equation*}\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall \left( a\right) ,\left(
b\right) ,\left( c\right) \text{を満たす}\left\{ \left[ a_{i},b_{i}\right] \right\} _{i=1}^{n}:\left[ \sum_{i=1}^{n}\left\vert b_{i}-a_{i}\right\vert <\delta \Rightarrow \sum_{i=1}^{n}\left\vert
F\left( b_{i}\right) -F\left( a_{i}\right) \right\vert <\varepsilon \right] \end{equation*}が成り立つということです。ただし、\begin{eqnarray*}
&&\left( a\right) \ n\in \mathbb{N} \\
&&\left( b\right) \ \forall i\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :a\leq
a_{i}<b_{i}\leq b \\
&&\left( c\right) \ \forall i,j\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :\left(
i\not=j\Rightarrow \left[ a_{i},b_{i}\right] \cap \left[ a_{j},b_{j}\right] =\phi \right)
\end{eqnarray*}です。つまり、どれほど小さい\(\varepsilon >0\)を任意に選んだ場合でも、それに対して何らかの\(\delta >0\)を選ぶことにより、以下の4つの条件\begin{eqnarray*}&&\left( a\right) \ n\in \mathbb{N} \\
&&\left( b\right) \ \forall i\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :a\leq
a_{i}<b_{i}\leq b \\
&&\left( c\right) \ \forall i,j\in \left\{ 1,\cdots ,n\right\} :\left(
i\not=j\Rightarrow \left[ a_{i},b_{i}\right] \cap \left[ a_{j},b_{j}\right] =\phi \right) \\
&&\left( d\right) \ \sum_{i=1}^{n}\left\vert b_{i}-a_{i}\right\vert <\delta
\end{eqnarray*}を満たす任意の閉区間族\(\left\{ \left[ a_{i},b_{i}\right] \right\} _{i=1}^{n}\)について、\begin{equation*}\sum_{i=1}^{n}\left\vert F\left( b_{i}\right) -F\left( a_{i}\right)
\right\vert <\varepsilon
\end{equation*}が成り立ちます。

命題(ルベーグ積分可能な関数のルベーグ積分は絶対連続)
\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が\(\left[ a,b\right] \)上においてルベーグ積分可能であるものとする。この場合、それぞれの\(x\in \left[a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}F\left( x\right) =\int_{\left[ a,x\right] }f\in \mathbb{R} \end{equation*}を値として定める関数\(F:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能である。この関数\(F\)は\(\left[ a,b\right] \)上において絶対連続関数である。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

ルベーグ積分の値によるルベーグ積分関数の特徴づけ

\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が区間\(\left[ a,b\right] \)上においてルベーグ積分可能であるものとします。この場合、それぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}F\left( x\right) =\int_{\left[ a,x\right] }f\in \mathbb{R} \end{equation*}を値として定める関数\begin{equation*}
F:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。

この関数\(F\)がゼロだけを値としてとるものとします。つまり、\begin{equation*}\forall x\in \left[ a,x\right] :F\left( x\right) =0
\end{equation*}が成り立つということです。\(F\)の定義より、これは、\begin{equation*}\forall x\in \left[ a,x\right] :\int_{\left[ a,x\right] }f=0
\end{equation*}と必要十分です。以上の条件のもとでは、関数\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)上のほとんどいたるところで\(0\)を値としてとることが保証されます。つまり、\begin{equation*}\forall x\in \left[ a,b\right] \backslash A:f\left( x\right) =0
\end{equation*}を満たす零集合\(A\subset \left[ a,b\right] \)が存在するということです。

命題(ルベーグ積分の値によるルベーグ積分関数の特徴づけ)
\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が\(\left[ a,b\right] \)上においてルベーグ積分可能であるものとする。この場合、それぞれの\(x\in \left[a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}F\left( x\right) =\int_{\left[ a,x\right] }f\in \mathbb{R} \end{equation*}を値として定める関数\(F:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能である。以下の条件\begin{equation*}\forall x\in \left[ a,b\right] :F\left( x\right) =0
\end{equation*}が成り立つ場合には、\begin{equation*}
\forall x\in \left[ a,b\right] \backslash A:f\left( x\right) =0
\end{equation*}を満たす零集合\(A\subset \left[ a,b\right] \)が存在する。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された2つの関数\begin{eqnarray*}f &:&\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \\
g &:&\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{eqnarray*}がともに区間\(\left[ a,b\right] \)上においてルベーグ積分可能であるものとします。この場合、それぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{eqnarray*}F\left( x\right) &=&\int_{\left[ a,x\right] }f\in \mathbb{R} \\
G\left( x\right) &=&\int_{\left[ a,x\right] }g\in \mathbb{R} \end{eqnarray*}を値として定める関数\begin{eqnarray*}
F &:&\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \\
G &:&\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{eqnarray*}がそれぞれ定義可能です。

これらの関数\(F,G\)が一致するものとします。つまり、\begin{equation*}\forall x\in \left[ a,b\right] :F\left( x\right) =G\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つということです。\(F,G\)の定義より、これは、\begin{equation*}\forall x\in \left[ a,b\right] :\int_{\left[ a,x\right] }f=\int_{\left[ a,x\right] }g
\end{equation*}と必要十分です。以上の条件のもとでは、関数\(f,g\)は\(\left[ a,b\right] \)上のほとんどいたるところで一致することが保証されます。つまり、\begin{equation*}\forall x\in \left[ a,b\right] \backslash A:f\left( x\right) =g\left(
x\right)
\end{equation*}を満たす零集合\(A\subset \left[ a,b\right] \)が存在するということです。証明では先の命題を利用します。

命題(ルベーグ積分の値によるルベーグ積分関数の特徴づけ)
\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された2つの関数\(f,g:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)がともに\(\left[ a,b\right] \)上においてルベーグ積分可能であるものとする。この場合、それぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{eqnarray*}F\left( x\right) &=&\int_{\left[ a,x\right] }f\in \mathbb{R} \\
G\left( x\right) &=&\int_{\left[ a,x\right] }g\in \mathbb{R} \end{eqnarray*}を値として定める2つの関数\(F,G:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能である。以下の条件\begin{equation*}\forall x\in \left[ a,b\right] :F\left( x\right) =G\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、\begin{equation*}
\forall x\in \left[ a,b\right] \backslash A:f\left( x\right) =g\left(
x\right)
\end{equation*}を満たす零集合\(A\subset \left[ a,b\right] \)が存在する。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

ルベーグ積分に関する微分積分学の第1基本定理

\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が区間\(\left[ a,b\right] \)上においてルベーグ積分可能であるものとします。この場合、それぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}F\left( x\right) =\int_{\left[ a,x\right] }f\in \mathbb{R} \end{equation*}を値として定める関数\begin{equation*}
F:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。

先に示したようにこの関数\(F\)は絶対連続です。絶対連続関数はほとんどいたるところで微分可能であるため、\(F\)は\(\left( a,b\right) \)上のほとんどいたるところで微分可能です。したがって、導関数\begin{equation*}\frac{dF}{dx}:\left( a,b\right) \backslash A\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}の存在を保証する零集合\(A\subset \left( a,b\right) \)が存在します。この導関数\(\frac{dF}{dx}\)の定義域を\(\left[ a,b\right] \)に拡張することにより得られる関数\begin{equation*}\frac{dF}{dx}:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を任意に選んだとき、2つの関数\(f,\frac{dF}{dx}\)は\(\left[ a,b\right] \)上のほとんどいたるところで等しくなることが保証されます。つまり、以下の条件\begin{equation*}\forall x\in \left[ a,b\right] \backslash A:\frac{dF\left( x\right) }{dx}=f\left( x\right)
\end{equation*}を成立させる零集合\(A\subset \left[ a,b\right] \)が存在します。

まずは、関数\(f\)が有界である場合に主張が成り立つことを示します。

命題(ルベーグ積分に関する微分積分学の第1基本定理)
\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が\(\left[ a,b\right] \)上において有界かつルベーグ積分可能であるものとする。この場合、それぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}F\left( x\right) =\int_{\left[ a,x\right] }f\in \mathbb{R} \end{equation*}を値として定める関数\(F:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能である。関数\(F\)は\(\left( a,b\right) \)上のほとんどいたるところで微分可能である。そこで、\(F\)の導関数\(\frac{dF}{dx}\)を\(\left[ a,b\right] \)に拡張することにより得られる関数\(\frac{dF}{dx}:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(\frac{dF}{dx}\)と\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)上のほとんどいたるところで等しくなる。つまり、\begin{equation*}\forall x\in \left[ a,b\right] \backslash A:\frac{dF\left( x\right) }{dx}=f\left( x\right)
\end{equation*}を満たす零集合\(A\subset \left[ a,b\right] \)が存在する。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

以上の命題を踏まえた上で、関数\(f\)が有界であるとは限らないものの非負値をとる場合にも同様の主張が成り立つことを示します。

命題(ルベーグ積分に関する微分積分学の第1基本定理)
\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が\(\left[ a,b\right] \)上において非負値をとるとともにルベーグ積分可能であるものとする。この場合、それぞれの\(x\in \left[ a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}F\left( x\right) =\int_{\left[ a,x\right] }f\in \mathbb{R} \end{equation*}を値として定める関数\(F:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能である。関数\(F\)は\(\left( a,b\right) \)上のほとんどいたるところで微分可能である。そこで、\(F\)の導関数\(\frac{dF}{dx}\)を\(\left[ a,b\right] \)に拡張することにより得られる関数\(\frac{dF}{dx}:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(\frac{dF}{dx}\)と\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)上のほとんどいたるところで等しくなる。つまり、\begin{equation*}\forall x\in \left[ a,b\right] \backslash A:\frac{dF\left( x\right) }{dx}=f\left( x\right)
\end{equation*}を満たす零集合\(A\subset \left[ a,b\right] \)が存在する。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

以上の命題を踏まえた上で、一般の関数\(f\)に関しても同様の主張が成り立つことを示します。

命題(ルベーグ積分に関する微分積分学の第1基本定理)
\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が\(\left[ a,b\right] \)上においてルベーグ積分可能であるものとする。この場合、それぞれの\(x\in \left[a,b\right] \)に対して、\begin{equation*}F\left( x\right) =\int_{\left[ a,x\right] }f\in \mathbb{R} \end{equation*}を値として定める関数\(F:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が定義可能である。関数\(F\)は\(\left( a,b\right) \)上のほとんどいたるところで微分可能である。そこで、\(F\)の導関数\(\frac{dF}{dx}\)を\(\left[ a,b\right] \)に拡張することにより得られる関数\(\frac{dF}{dx}:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、\(\frac{dF}{dx}\)と\(f\)は\(\left[ a,b\right] \)上のほとんどいたるところで等しくなる。つまり、\begin{equation*}\forall x\in \left[ a,b\right] \backslash A:\frac{dF\left( x\right) }{dx}=f\left( x\right)
\end{equation*}を満たす零集合\(A\subset \left[ a,b\right] \)が存在する。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関数\(f\)が\(\left[ a,b\right] \)上においてルベーグ積分可能である場合には、\(\left[ a,b\right] \)上のほとんどいたるところにおいて、\begin{equation*}\frac{dF\left( x\right) }{dx}=f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つことが明らかになりました。関数\(F\)の定義より、上の関係を、\begin{equation*}\frac{d}{dx}\int_{\left[ a,x\right] }f=f\left( x\right)
\end{equation*}と表現することもできます。つまり、関数\(f\)を区間\(\left[ a,x\right] \)上でルベーグ積分して得られた結果を微分すると、もとの関数\(f\)が点\(x\)に対して定める値\(f\left( x\right) \)が得られるということです。以上より、ルベーグ積分についても微分積分学の第1基本定理が成立することが明らかになりました。

 

演習問題

問題(ルベーグ積分可能な関数の原始関数の一様連続性)
\(a<b\)を満たす実数\(a,b\in \mathbb{R} \)を端点とする有界閉区間上に定義された関数\(f:\mathbb{R} \supset \left[ a,b\right] \rightarrow \mathbb{R} \)が\(\left[ a,b\right] \)上においてルベーグ積分可能である場合には、\begin{equation*}\forall \varepsilon >0,\ \exists \delta >0,\ \forall A\in \mathfrak{M}_{\mu
}:\left( A\subset \left[ a,b\right] \wedge \mu \left( A\right) <\delta
\Rightarrow \int_{A}\left\vert f\right\vert <\varepsilon \right)
\end{equation*}が成り立つことを示してください。

解答を見る

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

Twitter
Mailで保存

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関連知識

積分形式の包絡面定理

最大化問題に関する価値関数が積分形式で表現可能であるための条件を明らかにします。この命題はオークション理論における同値定理の理論的土台になります。

ベクトル値関数に関する微分積分学の第2基本定理(求積分定理)

1変数のベクトル値関数(曲線)に関しても微分積分学の第2基本定理は成立します。つまり、有界閉区間上に定義されたベクトルいt関数がリーマン積分可能であり、原始関数であるような連続なベクトル値関数を持つ場合、原始関数が区間の端点に対して定めるベクトルの差は、もとの関数の定積分と一致します。

ベクトル値関数に関する微分積分学の第1基本定理

1変数のベクトル値関数(曲線)に関しても微分積分学の第2基本定理は成立します。つまり、有界な閉区間上に定義されたベクトル値関数が連続である場合には、その関数の定積分を特定するベクトル値関数を微分すればもとのベクトル値関数が得られます。

ベクトル値関数の原始関数と不定積分

1変数のベクトル値関数(曲線)の原始関数および不定積分と呼ばれる概念を定義するとともに、区間上に定義された連続なベクトル値関数に関しては両者は一致することを示します。

微分積分学の第2基本定理(求積分定理)

有界な閉区間上に定義された関数がリーマン積分可能であり、その関数の原始関数であるような連続関数が存在する場合、原始関数が区間の端点に対して定める値の差は、もとの関数の定積分と一致します。

微分積分学の第1基本定理

有界な閉区間上に定義された関数が連続である場合には、その関数の定積分を特定する関数を微分すればもとの関数が得られることが保証されます。

微分を用いた絶対連続性の判定方法

有界閉区間上に定義された関数が定義域上で連続であり、定義域の内部である有界開区間上で微分可能であり、なおかつ導関数が有界である場合、その関数は絶対連続になることが保証されます。

絶対連続関数の微分可能性

有界閉区間上に定義された絶対連続関数は定義域上のほとんどいたるところで微分可能です。リプシッツ関数は絶対連続関数であるため、有界閉区間上に定義されたリプシッツ関数もまたほとんどいたるところで微分可能です。

ルベーグ積分に関する微分積分学の第2基本定理

絶対連続関数を対象とした場合、ルベーグ積分に関しても微分積分学の第2基本定理は成立します。つまり、有界閉区間上に定義された絶対連続関数の導関数をルベーグ積分すると関数の変化量が得られます。

絶対連続関数

有界閉区間上に定義された関数が絶対連続であることの意味を定義するとともに、関数が絶対連続であること、ないし絶対連続ではないことを判定する方法を解説します。

絶対連続関数と一様連続関数の関係

有界閉区間上に定義された絶対連続関数は一様連続であることが保証される一方で、一様連続関数は絶対連続関数であるとは限りません。一様連続関数は連続であるため、絶対連続関数は連続です。

リプシッツ関数と絶対連続関数の関係

有界閉区間上に定義されたリプシッツ関数は絶対連続関数であることが保証される一方で、絶対連続関数はリプシッツ関数であるとは限りません。絶対連続関数は一様連続であり、一様連続関数は連続であるため、リプシッツ関数は一様連続かつ連続です。

有界変動関数と絶対連続関数の関係

有界閉区間上に定義された絶対連続関数は有界変動関数ですが、有界変動関数は絶対連続関数であるとは限りません。また、絶対連続関数は2つの単調増加な連続関数の差として表されます。