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短期マクロ分析の基礎

GDPデフレーター(名目GDP・実質GDP)の定義

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名目GDPの定義

国内総生産(GDP)の定義より、\begin{eqnarray*}
GDP &=&\text{国内企業による付加価値の合計} \\
&=&\sum_{i}\text{国内企業}i\text{による付加価値} \\
&=&\sum_{i}\left( \text{国内企業}i\text{による生産額}-\text{国内企業}i\text{による中間投入額}\right) \\
&=&\sum_{i}\text{国内企業}i\text{による生産額}-\sum_{i}\text{国内企業}i\text{による中間投入額} \\
&=&\sum_{i}\text{国内企業}i\text{による生産物}j\text{の生産額}-\sum_{i}\text{国内企業}i\text{による中間投入額} \\
&=&\text{国内企業による生産額の合計}-\text{国内企業による中間投入額の合計}
\end{eqnarray*}すなわち、\begin{equation}
GDP=\text{国内企業による生産額の合計}-\text{国内企業による中間投入額の合計} \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立ちます。時点\(t_{0}\)における生産物\(j\)の基本価格(生産者が実際に受け取る価格)を\(P_{j}^{0}\)で表記し生産量を\(Q_{j}^{0}\)で表記するならば、\begin{equation}\text{国内企業による生産額の合計}=\sum_{j}P_{j}^{0}Q_{j}^{0} \quad \cdots (2)
\end{equation}が成り立ちます。また、時点\(t_{0}\)における中間投入物\(k\)の購入者価格を\(P_{k}^{0}\)で表記し調達量を\(Q_{k}^{0}\)で表記するならば、\begin{equation}\text{国内企業による中間投入額の合計}=\sum_{k}P_{k}^{0}Q_{k}^{0} \quad \cdots (3)
\end{equation}が成り立ちます。\(\left(1\right) ,\left( 2\right) ,\left( 3\right) \)より、時点\(t_{0}\)におけるGDPは、\begin{equation*}GDP=\sum_{j}P_{j}^{0}Q_{j}^{0}-\sum_{k}P_{k}^{0}Q_{k}^{0}
\end{equation*}を得ますが、これを時点\(t_{0}\)における名目GDP(nominal GDP)と呼びます。つまり、時点\(t_{0}\)における名目GDPとは、その時点\(t_{0}\)における市場価格を用いて評価されたGDPです。

例(名目GDP)
海外から輸入した材料を加工して部品を製造する国内の部品メーカー\(B\)および、\(B\)から購入した部品を用いて家具を生産する国内の家具メーカー\(A\)からなる経済を想定します。この経済における\(t_{0}\)年における経済活動が下の表によって表現されているものとします。

$$\begin{array}{ccc}
\hline
項目 & 単位 & t_{0}年 \\ \hline
Aによる家具の出荷量 & 台 & 100 \\ \hline
家具の基本価格 & 円 & 1000 \\ \hline
Aによる部品の調達量 & 個 & 120 \\ \hline
部品の購入者価格 & 円 & 200 \\ \hline
Bによる部品の出荷量 & 個 & 150 \\ \hline
部品の基本価格 & 円 & 200 \\ \hline
Bによる材料の調達量 & 個 & 100 \\ \hline
材料の購入者価格 & 円 & 50 \\ \hline
\end{array}$$

企業\(A\)による付加価値は、\begin{equation*}1000\cdot 100-200\cdot 120=76000
\end{equation*}であり、企業\(B\)による付加価値は、\begin{equation*}200\cdot 150-50\cdot 100=25000
\end{equation*}であるため、\begin{eqnarray*}
t_{0}\text{年の名目GDP} &=&76000+25000 \\
&=&101000
\end{eqnarray*}となります。

 

実質GDPの定義

2つの異なる時点\(t_{0},t_{1}\)の名目GDPが与えられている状況を想定します。つまり、\begin{eqnarray*}\text{時点}t_{0}\text{の名目}GDP
&=&\sum_{j}P_{j}^{0}Q_{j}^{0}-\sum_{k}P_{k}^{0}Q_{k}^{0} \\
\text{時点}t_{1}\text{の名目}GDP
&=&\sum_{j}P_{j}^{1}Q_{j}^{1}-\sum_{k}P_{k}^{1}Q_{k}^{1}
\end{eqnarray*}です。仮に、2時点\(t_{0},t_{1}\)においてすべての財・サービスの価格が一定であるならば、すなわち、任意の生産物\(j\)および中間投入物\(k\)について、\begin{eqnarray*}P_{j}^{0} &=&P_{j}^{1} \\
P_{k}^{0} &=&P_{k}^{1}
\end{eqnarray*}が成り立つならば、\begin{equation*}
\text{時点}t_{1}\text{の名目}GDP=\sum_{j}P_{j}^{0}Q_{j}^{1}-\sum_{k}P_{k}^{0}Q_{k}^{1}
\end{equation*}となるため、名目GDPの変化は価格の変化に由来するのではなく、財・サービスの生産量(および中間投入量)の変化を表していることになり、名目GDPを比較すれば生産規模の変化を把握できます。しかし、現実には時間の経過とともに価格と数量がともに変化します。したがって、異時点間の名目GDPどうしを比較しても、その変化は価格の変化に由来するのか、それとも数量変化に由来するのかを峻別できません。異時点間のGDPどうしを比較する際には、同一の価格体系のもとで各時点のGDPを表現する必要があります。

基準となる価格水準として時点\(t_{0}\)における生産物\(j\)の基本価格\(P_{j}^{0}\)および中間投入物\(k\)の購入者価格\(P_{k}^{0}\)を採用する状況を想定します。その上で、時点\(t_{1}\)における生産物\(j\)の生産量\(Q_{j}^{1}\)および中間投入物\(k\)の調達量\(Q_{k}^{1}\)を評価する形で定義されるGDPは、\begin{equation*}\sum_{j}P_{j}^{0}Q_{j}^{1}-\sum_{k}P_{k}^{0}Q_{k}^{1}
\end{equation*}となりますが、これを時点\(t_{0}\)を基準時とする時点\(t_{1}\)の実質GDP(real GDP)と呼びます。つまり、時点\(t_{0}\)を基準年とする場合、\begin{equation*}\text{時点}t_{1}\text{の実質}GDP=\sum_{j}P_{j}^{0}Q_{j}^{1}-\sum_{k}P_{k}^{0}Q_{k}^{1}
\end{equation*}と定義されます。つまり、純粋な生産活動を評価するために価格変化の要因を取り除いたものが実質GDPです。

時点\(t_{0}\)を基準時とする場合、\begin{eqnarray*}\text{基準時}t_{0}\text{の実質}GDP
&=&\sum_{j}P_{j}^{0}Q_{j}^{0}-\sum_{k}P_{k}^{0}Q_{k}^{0}\quad \because \text{実質GDPの定義} \\
&=&\text{基準時}t_{0}\text{の名目}GDP\quad \because \text{名目GDPの定義}
\end{eqnarray*}が成り立ちます。つまり、基準時の実質GDPと名目GDPは常に一致します。

例(実質GDP)
海外から輸入した材料を加工して部品を製造する国内の部品メーカー\(B\)および、\(B\)から購入した部品を用いて家具を生産する国内の家具メーカー\(A\)からなる経済を想定します。この経済における\(t_{0}\)年および\(t_{1}\)年における経済活動が下の表によって表現されているものとします。

$$\begin{array}{cccc}
\hline
項目 & 単位 & t_{0}年 & t_{1}年 \\ \hline
Aによる家具の出荷量 & 台 & 100 & 110 \\ \hline
家具の基本価格 & 円 & 1000 & 1050 \\ \hline
Aによる部品の調達量 & 個 & 120 & 130 \\ \hline
部品の購入者価格 & 円 & 200 & 220 \\ \hline
Bによる部品の出荷量 & 個 & 150 & 160 \\ \hline
部品の基本価格 & 円 & 200 & 220 \\ \hline
Bによる材料の調達量 & 個 & 100 & 120 \\ \hline
材料の購入者価格 & 円 & 50 & 55 \\ \hline
\end{array}$$

基準時として\(t_{0}\)年の価格を採用します。この場合、\(t_{1}\)年における企業\(A\)による付加価値は、\begin{equation*}1000\cdot 110-200\cdot 130=84000
\end{equation*}であり、\(t_{1}\)年における企業\(B\)による付加価値は、\begin{equation*}200\cdot 160-50\cdot 120=26000
\end{equation*}であるため、\begin{eqnarray*}
t_{1}\text{年の実質GDP} &=&84000+26000 \\
&=&110000
\end{eqnarray*}となります。一方、\(t_{0}\)年における企業\(A\)による付加価値は、\begin{equation*}1000\cdot 100-200\cdot 120=76000
\end{equation*}であり、\(t_{0}\)年における企業\(B\)による付加価値は、\begin{equation*}200\cdot 150-50\cdot 100=25000
\end{equation*}であるため、\begin{eqnarray*}
t_{0}\text{年の実質GDP} &=&76000+25000 \\
&=&101000
\end{eqnarray*}となりますが、これは\(t_{0}\)年における名目GDPと一致します。

 

GDPデフレーターの定義

時点\(t_{1}\)の名目GDPは、\begin{equation*}\text{時点}t_{1}\text{の名目}GDP=\sum_{j}P_{j}^{1}Q_{j}^{1}-\sum_{k}P_{k}^{1}Q_{k}^{1}
\end{equation*}と定義される一方で、時点\(t_{0}\)を基準年とした場合の時点\(t_{1}\)の実質GDPは、\begin{equation*}\text{時点}t_{1}\text{の実質}GDP=\sum_{j}P_{j}^{0}Q_{j}^{1}-\sum_{k}P_{k}^{0}Q_{k}^{1}
\end{equation*}と定義されます。そこで、両者の比\begin{equation*}
\frac{\text{時点}t_{1}\text{の名目}GDP}{\text{時点}t_{1}\text{の実質}GDP}=\frac{\sum_{j}P_{j}^{1}Q_{j}^{1}-\sum_{k}P_{k}^{1}Q_{k}^{1}}{\sum_{j}P_{j}^{0}Q_{j}^{1}-\sum_{k}P_{k}^{0}Q_{k}^{1}}
\end{equation*}を時点\(t_{1}\)のGDPデフレーター(GDP deflator)と呼びます。もしくは、それに\(100\)を掛けることにより得られる値\begin{equation*}\text{時点}t_{1}\text{のGDPデフレーター}=\frac{\text{時点}t_{1}\text{の名目}GDP}{\text{時点}t_{1}\text{の実質}GDP}\times 100
\end{equation*}としてGDPデフレーターは定義されます。これは、時点\(t_{1}\)において国内生産に関与した財・サービスの総合的な価格水準が基準時\(t_{0}\)からどれだけ変化したかを表す指標です。

基準時\(t_{0}\)のGDPデフレーターは、\begin{eqnarray*}\text{基準時}t_{0}\text{のGDPデフレーター} &=&\frac{\text{時点}t_{0}\text{の名目}GDP}{\text{時点}t_{0}\text{の実質}GDP}\times 100\quad \because \text{GDPデフレーターの定義} \\
&=&\frac{\text{時点}t_{0}\text{の名目}GDP}{\text{時点}t_{0}\text{の名目}GDP}\times
100\quad \because \text{基準時の名目GDPと実質GDPは一致} \\
&=&1\times 100 \\
&=&100
\end{eqnarray*}となります。つまり、基準時のGDPデフレーターの値は常に\(100\)です。

例(GDPデフレーター)
海外から輸入した材料を加工して部品を製造する国内の部品メーカー\(B\)および、\(B\)から購入した部品を用いて家具を生産する国内の家具メーカー\(A\)からなる経済を想定します。この経済における\(t_{0}\)年および\(t_{1}\)年における経済活動が下の表によって表現されているものとします。

$$\begin{array}{cccc}
\hline
項目 & 単位 & t_{0}年 & t_{1}年 \\ \hline
Aによる家具の出荷量 & 台 & 100 & 110 \\ \hline
家具の基本価格 & 円 & 1000 & 1050 \\ \hline
Aによる部品の調達量 & 個 & 120 & 130 \\ \hline
部品の購入者価格 & 円 & 200 & 220 \\ \hline
Bによる部品の出荷量 & 個 & 150 & 160 \\ \hline
部品の基本価格 & 円 & 200 & 220 \\ \hline
Bによる材料の調達量 & 個 & 100 & 120 \\ \hline
材料の購入者価格 & 円 & 50 & 55 \\ \hline
\end{array}$$

基準時として\(t_{0}\)年の価格を採用した場合、\begin{eqnarray*}t_{1}\text{年の実質GDP} &=&\left( 1000\cdot
110-200\cdot 130\right) +\left( 200\cdot 160-50\cdot 120\right) \\
&=&110000
\end{eqnarray*}である一方で、\begin{eqnarray*}
t_{1}\text{年の名目GDP} &=&\left( 1050\cdot
110-220\cdot 130\right) +\left( 220\cdot 160-55\cdot 120\right) \\
&=&115500
\end{eqnarray*}であるため、\begin{eqnarray*}
t_{1}\text{年のGDPデフレーター} &=&\frac{t_{1}\text{年の名目GDP}}{t_{1}\text{年の実質GDP}}\times 100 \\
&=&\frac{115500}{110000}\times 100 \\
&=&1.05\times 102 \\
&=&105
\end{eqnarray*}を得ます。以上の事実は、基準年比で価格水準が約5パーセント上昇したことを意味します。

 

パーシェ型指数

基準時\(t_{0}\)における商品\(i\)の価格を\(P_{i}^{0}\)で表記し、比較時\(t_{1}\)における商品\(i\)の価格を\(P_{i}^{1}\)で表記します。また、比較時\(t_{1}\)における商品\(i\)の数量を\(Q_{i}^{1}\)で表記します。比較時の価格で比較時の数量を購入する場合の支出合計は、\begin{equation*}\sum_{i}P_{i}^{1}Q_{i}^{1}
\end{equation*}である一方で、基準時の価格で比較時の数量を購入した場合の支出合計は、\begin{equation*}
\sum_{i}P_{i}^{0}Q_{i}^{1}
\end{equation*}です。両者の比に\(100\)を掛けることにより得られる値\begin{equation*}\frac{\sum_{i}P_{i}^{1}Q_{i}^{1}}{\sum_{i}P_{i}^{0}Q_{i}^{1}}\times 100
\end{equation*}として定義される物価指数をパーシェ指数(Paasche index)と呼びます。これは、比較時の価格で比較時の数量を購入するためには、同じ数量を基準時の価格で購入する場合の支出の何倍の支出が必要であるかを表す物価指数です。したがって、パーシェ指数が\(100\)を超える場合、比較時の数量を基準時の価格で購入する場合に比べ、同じ数量を比較時の価格で購入するためにはより多くの支出が必要であり、ゆえに比較時は基準時と比べて物価が上昇していることを意味します。

時点\(t_{0}\)を基準時とする場合、時点\(t_{1}\)のGDPデフレーターは、\begin{eqnarray*}\text{時点}t_{1}\text{のGDPデフレーター} &=&\frac{\text{時点}t_{1}\text{の名目}GDP}{\text{時点}t_{1}\text{の実質}GDP}\times 100 \\
&=&\frac{\sum_{j}P_{j}^{1}Q_{j}^{1}-\sum_{k}P_{k}^{1}Q_{k}^{1}}{\sum_{j}P_{j}^{0}Q_{j}^{1}-\sum_{k}P_{k}^{0}Q_{k}^{1}}\times 100
\end{eqnarray*}と定義されますが、分子と分母ではいずれも比較時である時点\(t_{1}\)の数量を用いているため、GDPデフレーターはパーシェ型の物価指数です。

 

演習問題

問題(GDPデフレーター)
リンゴとオレンジの2種類の財を生産する経済を想定します。基準年\(t_{0}\)と比較年\(t_{1}\)のデータは以下の通りです。

$$\begin{array}{ccccc}
\hline
財 & 価格(t_{0}年) & 価格(t_{1}年) & 生産量(t_{0}年) & 生産量(t_{1}年) \\ \hline
リンゴ & 100円 & 120円 & 10個 & 12個 \\ \hline
オレンジ & 50円 & 60円 & 20個 & 18個 \\ \hline
\end{array}$$

以下の問いに答えてください。

  1. \(t_{0}\)年の名目GDPを求めてください。
  2. \(t_{1}\)年の名目GDPを求めてください。
  3. \(t_{0}\)年を基準年とする場合の\(t_{1}\)年の実質GDPを求めてください。
  4. \(t_{0}\)年を基準年とする場合の\(t_{1}\)年のGDPデフレーターを求めてください。
  5. 問4の結果を解釈してください。
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