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級数

正項級数の定義と収束・発散条件

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正項級数

数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)のすべての項が非負の実数である場合には、すなわち、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :x_{n}\geq 0
\end{equation*}が成り立つ場合には、この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の項の無限級数\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }x_{n}=x_{1}+x_{2}+x_{3}+\cdots
\end{equation*}を正項級数(positive term series)と呼びます。

例(正項級数)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)のすべての項が正の実数であるものとします。すなわち、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :x_{n}>0
\end{equation*}が成り立つということです。このとき、\begin{equation*}
\forall n\in \mathbb{N} :x_{n}\geq 0
\end{equation*}も明らかに成り立つため、無限級数\begin{equation*}
\sum_{n=1}^{+\infty }x_{n}=x_{1}+x_{2}+x_{3}+\cdots
\end{equation*}は正項級数です。

例(正項級数)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=n
\end{equation*}で与えられているものとします。任意の\(n\in \mathbb{N} \)に対して\(n\geq 0\)すなわち\(x_{n}\geq 0\)が成り立つため、無限級数\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }x_{n}=1+2+3+\cdots
\end{equation*}は正項級数です。

例(正項級数)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\frac{1}{n}
\end{equation*}で与えられているものとします。任意の\(n\in \mathbb{N} \)に対して\(n\geq 0\)すなわち\(x_{n}\geq 0\)が成り立つため、無限級数\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }x_{n}=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots
\end{equation*}は正項級数です。

例(正項級数)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\frac{1}{2^{n}}
\end{equation*}で与えられているものとします。任意の\(n\in \mathbb{N} \)に対して\(n\geq 0\)すなわち\(x_{n}\geq 0\)が成り立つため、無限級数\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }x_{n}=\frac{1}{2}+\frac{1}{2^{2}}+\frac{1}{2^{3}}+\cdots
\end{equation*}は正項級数です。

逆に、無限級数\(\sum x_{n}\)が正項級数ではないこととは、数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の項の中に負であるものが存在すること、すなわち、\begin{equation*}\exists n\in \mathbb{N} :x_{n}<0
\end{equation*}が成り立つことを意味します。

例(正項級数ではない級数)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\left( -1\right) ^{n}
\end{equation*}で与えられているものとします。例えば、\begin{equation*}
x_{1}=-1<0
\end{equation*}が成り立つため、無限級数\begin{equation*}
\sum_{n=1}^{+\infty }x_{n}=-1+1-1+1+\cdots
\end{equation*}は正項級数ではありません。

 

正項級数が収束するための必要十分条件

無限級数\(\sum x_{n}\)が正項級数であるものとします。数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の部分和の列\(\left\{ s_{n}\right\} \)の一般項は、\begin{eqnarray*}s_{n} &=&x_{1}+x_{2}+\cdots +x_{n} \\
&=&\sum_{v=1}^{n}x_{v}
\end{eqnarray*}と定義されますが、正項級数の定義より任意の\(n\in \mathbb{N} \)について\(x_{n}\geq 0\)であるため、\(\left\{ s_{n}\right\} \)は単調増加になることが保証されます。つまり、\begin{equation*}\forall n\in \mathbb{N} :s_{n}\leq s_{n+1}
\end{equation*}すなわち、\begin{equation*}
s_{1}\leq s_{2}\leq s_{3}\leq \cdots
\end{equation*}が成り立つということです。一般に、単調増加数列は上に有界であれば有限な実数へ収束します。ただし、\(\left\{ s_{n}\right\} \)が上に有界であることとは、そのすべての項からなる集合\begin{equation*}\left\{ s_{n}\in \mathbb{R} \ |\ n\in \mathbb{N} \right\}
\end{equation*}が上に有界であること、すなわち、\begin{equation*}
\exists U\in \mathbb{R} ,\ \forall n\in \mathbb{N} :x_{n}\leq U
\end{equation*}が成り立つことを意味します。したがって、\(\left\{ s_{n}\right\} \)が上に有界であれば\(\left\{ s_{n}\right\} \)は有限な実数へ収束することが保証されます。つまり、無限級数\(\sum x_{n}\)が収束するということです。

命題(正項級数が収束するための十分条件)
無限級数\(\sum x_{n}\)が正項級数であるものとする。加えて、数列\(\left\{x_{n}\right\} \)の部分和の列\(\left\{s_{n}\right\} \)が上に有界であるならば、\(\sum x_{n}\)は収束する。
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級数が正項級数であるかどうかとは関係なく、一般に、級数が収束する場合には部分和の列は有界になるため、以下を得ます。

命題(正項級数が収束するための必要条件)
無限級数\(\sum x_{n}\)が正項級数であるものとする。\(\sum x_{n}\)が収束するならば、数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の部分和の列\(\left\{ s_{n}\right\} \)は上に有界である。
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以上の2つの命題より以下を得ます。

命題(正項級数が収束するための必要十分条件)
無限級数\(\sum x_{n}\)が正項級数であるものとする。数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の部分和の列\(\left\{ s_{n}\right\} \)が上に有界であることと、無限級数\(\sum x_{n}\)が収束することは必要十分である。

以上の命題より、正項級数\(\sum x_{n}\)が収束することを判定するためには、部分和の列\(\left\{s_{n}\right\} \)が上に有界であることを確認すれば良いことが明らかになりました。

例(収束する正項級数)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=\frac{1}{2^{n}}
\end{equation*}で与えられているものとします。先に確認したように、無限級数\begin{equation*}
\sum_{n=1}^{+\infty }x_{n}=\frac{1}{2}+\frac{1}{2^{2}}+\frac{1}{2^{3}}+\cdots
\end{equation*}は正項級数です。この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は初項が\(\frac{1}{2}\)で公比が\(\frac{1}{2}\)であるような等比数列であるため、部分和の列\(\left\{ s_{n}\right\} \)の一般項は、\begin{equation*}s_{n}=\frac{\frac{1}{2}\left[ 1-\left( \frac{1}{2}\right) ^{n}\right] }{1-\frac{1}{2}}=1-\left( \frac{1}{2}\right) ^{n}
\end{equation*}となります。すると、任意の\(n\in \mathbb{N} \)に対して、\begin{eqnarray*}s_{n} &=&1-\left( \frac{1}{2}\right) ^{n} \\
&\leq &1-0\quad \because \left( \frac{1}{2}\right) ^{n}\geq 0 \\
&=&1
\end{eqnarray*}が成り立つため、\(\left\{s_{n}\right\} \)は上に有界です。したがって先の命題より無限級数\(\sum x_{n}\)は収束します。

 

正項級数が発散するための必要十分条件

先の命題は正項級数が収束するための必要十分条件を特定しているため、そこから正項級数が発散するための必要十分条件を特定できます。

命題(正項級数が発散するための必要十分条件)
無限級数\(\sum x_{n}\)が正項級数であるものとする。数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の部分和の列\(\left\{ s_{n}\right\} \)が上に有界ではないことと、\(\sum x_{n}\)が発散することは必要十分である。
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以上の命題より、正項級数\(\sum x_{n}\)が収束することを判定するためには、部分和の列\(\left\{s_{n}\right\} \)が上に有界ではないことを確認すれば良いことが明らかになりました。

例(発散する正項級数)
数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の一般項が、\begin{equation*}x_{n}=1
\end{equation*}で与えられているものとします。任意の\(n\in \mathbb{N} \)について\(x_{n}\geq 0\)が成り立つため無限級数\begin{equation*}\sum_{n=1}^{+\infty }x_{n}=1+1+1+\cdots
\end{equation*}は正項級数です。この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の部分和の列\(\left\{ s_{n}\right\} \)の一般項は、\begin{eqnarray*}s_{n} &=&\sum_{v=1}^{n}x_{v} \\
&=&\sum_{v=1}^{n}1 \\
&=&n
\end{eqnarray*}です。\(U\in \mathbb{R} \)を任意に選んだとき、アルキメデスの性質より\(n>U\)すなわち\(s_{n}>U\)を満たす\(n\in \mathbb{N} \)が存在するため、\(\left\{s_{n}\right\} \)は上に有界ではありません。したがって先の命題より\(\sum x_{n}\)は発散します。

 

演習問題

問題(正項級数の収束判定)
以下の無限級数\begin{equation*}
\sum_{n=1}^{+\infty }\frac{1}{3^{n}}
\end{equation*}は収束するでしょうか。議論してください。

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問題(正項級数の収束判定)
以下の無限級数\begin{equation*}
\sum_{n=1}^{+\infty }\frac{1}{n^{2}}
\end{equation*}は収束するでしょうか。議論してください。

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