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ルベーグ可測関数

可測関数とほとんど至るところで等しい関数

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ルベーグ可測関数の特徴づけ

ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)とその部分集合\(A\subset X\)に加えて、\(X\)上に定義された関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が与えられているものとします。\(A\)がルベーグ可測集合である場合には\(X\backslash A\)もまたルベーグ可測集合になりますが、この場合、\(f\)が\(X\)上でルベーグ可測関数であることと、\(f\)が\(X\backslash A\)上でルベーグ可測関数であることは必要十分になります。

命題(ルベーグ可測関数の特徴づけ)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)とその部分集合であるようなルベーグ可測集合\(A\subset X\)が与えられているものとする。したがって\(X\backslash A\in \mathfrak{M}_{\mu }\)である。関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)が与えられたとき、\(f\)が\(X\)上でルベーグ可測関数であることと、\(f\)が\(X\backslash A\)上でルベーグ可測関数であることは必要十分である。
証明

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拡大実数値関数についても同様の主張が成り立ちます。

命題(ルベーグ可測関数の特徴づけ)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)とその部分集合であるようなルベーグ可測集合\(A\subset X\)が与えられているものとする。したがって\(X\backslash A\in \mathfrak{M}_{\mu }\)である。拡大実数値関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }\)が与えられたとき、\(f\)が\(X\)上で拡大実数値ルベーグ可測関数であることと、\(f\)が\(X\backslash A\)上で拡大実数値ルベーグ可測関数であることは必要十分である。
証明

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ルベーグ測度空間は完備

実数空間\(\mathbb{R} \)とルベーグ可測集合族\(\mathfrak{M}_{\mu }\)およびルベーグ測度\(\mu \)からなるルベーグ測度空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)が与えられているものとします。零集合であるようなルベーグ可測集合\(A\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選びます。つまり、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( A\right) =0
\end{equation*}が成り立つということです。ルベーグ可測集合のルベーグ測度とルベーグ外測度は一致するため、以上の条件は、\begin{equation*}
\mu \left( A\right) =0
\end{equation*}と必要十分です。その上で、この零集合の部分集合\(B\subset A\)を任意に選ぶと、零集合の部分集合は零集合であることから、\begin{equation*}\mu ^{\ast }\left( B\right) =0
\end{equation*}が成り立ちます。加えて、零集合はルベーグ可測であることから、\begin{equation*}
B\in \mathfrak{M}_{\mu }
\end{equation*}を得ます。

以上より、\(\mu \left( A\right) =0\)を満たす\(A\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選んだとき、その任意の部分集合\(B\subset A\)もまた\(B\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を満たすことが明らかになりました。つまり、零集合であるようなルベーグ可測集合を任意に選んだとき、その任意の部分集合もまたルベーグ可測であるということです。以上の性質を指して、ルベーグ測度空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)は完備(complete)であると言います。

命題(ルベーグ測度空間は完備)
ルベーグ測度空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)は完備である。

 

ルベーグ可測関数とほとんどいたるところで等しい関数はルベーグ可測関数

ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を任意に選んだ上で、この集合上に2つの関数\begin{eqnarray*}f &:&\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \\
g &:&\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{eqnarray*}を定義します。関数\(f\)はルベーグ可測関数であるものとします。加えて、\(f\)と\(g\)は\(X\)上のほとんどいたるところで等しいものとします。つまり、以下の集合\begin{equation*}A=\left\{ x\in X\ |\ f\left( x\right) \not=g\left( x\right) \right\}
\end{equation*}の測度が、\begin{equation*}
\mu \left( A\right) =0
\end{equation*}であるとともに、\begin{equation*}
\forall x\in X\backslash A:f\left( x\right) =g\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つということです。零集合はルベーグ可測であるため\(A\in \mathfrak{M}_{\mu }\)であり、ルベーグ集合族\(\mathfrak{M}_{\mu }\)は差集合について閉じているため\(X\backslash A\in \mathfrak{M}_{\mu }\)であることに注意してください。以上の条件が満たされる場合には、もう一方の関数\(g\)もまたルベーグ可測関数になることが保証されます。証明ではルベーグ測度空間が完備であるという事実を利用します。

命題(ルベーグ可測関数とほとんどいたるところで等しい関数)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された2つの関数\begin{eqnarray*}f &:&\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \\
g &:&\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{eqnarray*}が与えられているものとする。\(f\)がルベーグ可測関数であるとともに、\(f\)と\(g\)が\(X\)上のほとんどいたるところで等しい場合には、\(g\)もまたルベーグ可測関数になる。
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2つの関数\(f,g\)が拡大実数値関数である場合にも同様の主張が成り立ちます。

命題(拡大実数値ルベーグ可測関数とほとんどいたるところで等しい)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された2つの拡大実数値関数\begin{eqnarray*}f &:&\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} } \\
g &:&\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{eqnarray*}が与えられているものとする。\(f\)が拡大実数値ルベーグ可測関数であるとともに、\(f\)と\(g\)が\(X\)上のほとんどいたるところで等しい場合には、\(g\)もまた拡大実数値ルベーグ可測関数になる。
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拡大実数値ルベーグ可測関数とほとんどいたるところにおいて等しいルベーグ可測関数の生成

ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)上に定義された拡大実数値ルベーグ可測関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとします。ただし、\(f\)は\(X\)上のほとんどいたるところにおいて有限な実数を値としてとるものとします。つまり、以下の集合\begin{equation*}A=\left\{ x\in X\ |\ f\left( x\right) \in \left\{ +\infty ,-\infty \right\}
\right\}
\end{equation*}の測度が、\begin{equation*}
\mu \left( A\right) =0
\end{equation*}であるとともに、\begin{equation*}
\forall x\in X\backslash A:f\left( x\right) \in \mathbb{R} \end{equation*}が成り立つということです。

以上の状況において、以下の条件\begin{equation*}
g\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
f\left( x\right) & \left( if\ x\in X\backslash A\right) \\
\in \mathbb{R} & \left( if\ x\in A\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を満たす実数値関数\begin{equation*}
g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}を定義します。つまり、\(f\left( x\right) \)の値が無限大になる\(x\)からなる集合が零集合である状況において、そのような\(x\)に対して\(f\)が定める値を有限な実数へ入れ替えることにより得られる実数値関数が\(g\)であるということです。

以上の条件が満たされる場合、\(f\)と\(g\)は\(X\)上のほとんどいたるところにおいて等しいため、先の命題より、\(g\)はルベーグ可測関数になることが保証されます。

 

ほとんどいたるところで定義された関数の定義域の拡張

ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)とその部分集合であるような零集合\(A\subset X\)を任意に選びます。つまり、\begin{equation*}\mu \left( A\right) =0
\end{equation*}が成り立つということです。零集合は可測であるため\(A\in \mathfrak{M}_{\mu }\)であり、さらにこれと\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)より\(X\backslash A\in \mathfrak{M}_{\mu }\)です。その上で、この差集合上に定義された拡大実数値関数\begin{equation*}f:\mathbb{R} \supset X\backslash A\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}が与えられているものとします。以上の条件が満たされる場合、関数\(f\)は\(X\)上のほとんどいたるところで定義されている(defined almost everywhere on \(X\))と言います。実数値関数は拡大実数値関数であるため、以上の定義において、\(f\)が実数値関数である可能性は排除されていません。

以上の状況において、以下の条件\begin{equation*}
g\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
f\left( x\right) & \left( if\ x\in X\backslash A\right) \\
\in \overline{\mathbb{R} } & \left( if\ x\in A\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}を満たす拡大実数値関数\begin{equation*}
g:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \overline{\mathbb{R} }
\end{equation*}を定義します。つまり、\(f\left( x\right) \)が定義されていない\(x\)からなる集合が零集合である状況において、そのような\(x\)に対して何らかの拡大実数値を定めることにより得られる拡大実数値関数が\(g\)であるということです。実数値関数は拡大実数値関数であるため、\(g\)が実数値関数である可能性は排除されていません。

\(A\in \mathfrak{M}_{\mu }\)かつ\(X\backslash A\in \mathfrak{M}_{\mu }\)であるとともに、\(g\)の定義域を\(X\)から\(X\backslash A\)へ制限すれば\(f\)が得られるため、\(g\)が\(X\)上でルベーグ可測であることと、\(f\)が\(X\backslash A\)上でルベーグ可測であることは必要十分です。

さらに、関数\(g\)を定義する際に、\(A\)上の点\(x\)に対する\(g\left( x\right) \)としてどのような値を選んだ場合でも、得られる関数はいずれも\(X\)上のほとんどいたるところにおいて等しいため、\(A\)上の点\(x\)に対する値\(g\left( x\right) \)の選び方は、得られる関数\(g\)がルベーグ可測であるかどうかの結果には影響を与えません。つまり、与えられた関数がルベーグ可測であるかを問題としている状況において\(f\)の定義域を\(X\backslash A\)から\(X\)へ拡張する際には、\(A\)上の点に対して\(f\)が定める値を任意に選んでも一般性は失われないということです。

例(ルベーグ集合上のほとんどいたるところにおいて定義された関数)
関数\(f:\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \rightarrow \mathbb{R} \)はそれぞれの\(x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)に対して、\begin{equation*}f\left( x\right) =\frac{1}{x}
\end{equation*}を定めるものとします。全区間\(\mathbb{R} \)と有限集合\(\left\{ 0\right\} \)はともにルベーグ可測であるため\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)もまたルベーグ可測であり、したがって\(f\)が\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)上でルベーグ可測関数であるか検討できます。さて、有限集合\(\left\{ 0\right\} \)は零集合であるため、\(f\)は\(\mathbb{R} \)上のほとんどいたるところで定義されています。したがって、\(f\)の定義域を\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)から\(\mathbb{R} \)へ拡張する際には\(f\left(0\right) \)の値を任意に選んでも一般性は失われません。つまり、関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)を定義する際には、\(c\in \mathbb{R} \)を任意に選んだ上で、\begin{equation*}f\left( x\right) =\left\{
\begin{array}{cl}
\frac{1}{x} & \left( if\ x\in \mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \right) \\
c & \left( if\ x=0\right)
\end{array}\right.
\end{equation*}としても一般性は失われません。ちなみに、定義域を全区間\(\mathbb{R} \)へ拡張したこの関数\(f\)は\(\mathbb{R} \)上でルベーグ可測であるため(演習問題)、先の議論より、\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)上に定義された\(f\)もまた\(\mathbb{R} \backslash \left\{ 0\right\} \)でルベーグ可測です。

 

ボレル測度空間は完備ではない

これまでの議論から得られたいくつかの結論はルベーグ測度空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)が完備であるという事実に依拠しています。一方、ボレル測度空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathcal{B}\left( \mathbb{R} \right) ,\mu \right) \)は完備ではないため、ボレル測度空間やボレル可測関数に関して同様の議論をそのまま繰り返すことはできません。詳細は必要な道具が揃った段階において解説します。

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