WIIS

ルベーグ可測関数

可測関数列の各点極限(各点収束する可測関数列の極限)は可測関数

目次

Twitter
Mailで保存

可測関数列の各点極限は可測関数

数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)とは無限個の実数を順番に並べたもの\begin{equation*}x_{1},x_{2},\cdots
\end{equation*}ですが、\(n\)が大きくなるにつれて項\(x_{n}\)がある有限な実数\(a\)へ限りなく近づく場合、この数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)は実数\(a\)に収束するといい、そのことを、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }x_{n}=a
\end{equation*}で表記します。また、このような実数\(a\)を数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)の極限と呼びます。また、数列\(\left\{ x_{n}\right\} \)が実数\(a\)へ収束することをイプシロン・エヌ論法を用いて表現すると、\begin{equation*}\forall \varepsilon >0,\ \exists N\in \mathbb{N} ,\ \forall n\in \mathbb{N} :\left( n\geq N\Rightarrow \left\vert x_{n}-a\right\vert <\varepsilon
\right)
\end{equation*}となります。では、確率変数列\(\left\{ X_{n}\right\} \)についても、その収束可能性や極限を何らかの形で定義できるでしょうか。

測度空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)に加えて、ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を定義域として共有するルベーグ可測関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が与えられているものとします。つまり、この関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)一般項は\(X\)上に定義されたルベーグ可測関数\begin{equation*}f_{n}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}です。関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)は無限個の関数の並び\begin{equation*}f_{1},f_{2},\cdots
\end{equation*}ですが、その収束可能性や極限を何らかの形で定義できるでしょうか。1つの考え方は、\(n\)が大きくなるにつれて関数列\(\left\{f_{n}\right\} \)の項である関数\(f_{n}\)が何らかの関数\(f\)へ限りなく近づくのであれば、この関数列\(\left\{f_{n}\right\} \)の極限は\(f\)であるものとみなす、というものです。この場合、関数\(f_{n}\)が関数\(f\)へ近づくことをどのように定義するかが問題になります。

可測関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)の一般項である可測関数が、\begin{equation*}f_{n}:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}であるものとします。この関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)の項であるすべての確率変数\begin{equation*}f_{1},f_{2},\cdots
\end{equation*}は同一のルベーグ可測集合\(X\)を定義域として共有するため、点\(x\in X\)を選んで固定すると、それぞれの関数\(f_{1},f_{2},\cdots \)のもとでの実現値からなる数列\begin{equation*}f_{1}\left( x\right) ,f_{2}\left( x\right) ,\cdots
\end{equation*}が得られます。つまり、関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)と点\(x\in X\)が与えられれば、\begin{equation*}f_{n}\left( x\right)
\end{equation*}を一般項として持つ数列\begin{equation*}
\left\{ f_{n}\left( x\right) \right\}
\end{equation*}が定義可能であるということです。数列\(\left\{ f_{n}\left( x\right) \right\} \)が得られれば、それが有限な実数へ収束するか検討できます。数列\(\left\{f_{n}\left( x\right) \right\} \)が有限な実数へ収束する場合、すなわち、\begin{equation*}\lim_{n\rightarrow \infty }\left\{ f_{n}\left( x\right) \right\} \in \mathbb{R} \end{equation*}が成り立つ場合には、もとの関数列\(\left\{f_{n}\right\} \)は点\(x\in X\)において各点収束する(pointwise convergent at \(x\))と言います。これは、点\(x\)が実現した場合には、関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)の要素である関数\(f_{1},f_{2},\cdots \)が定める値からなる数列\(f_{1}\left( x\right),f_{2}\left( x\right) ,\cdots \)が有限な実数へ限りなく近づくことを意味します。

点\(x\in X\)を変えればそれに応じて異なる数列\(\left\{ f_{n}\left( x\right) \right\} \)が得られますが、それらの数列の中には有限な実数へ収束するものとそうでないものが存在する可能性があります。ただ、関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)がルベーグ集合\(X\)上の任意の点において各点収束する場合には、すなわち、\begin{equation*}\forall x\in X:\lim_{n\rightarrow \infty }f_{n}\left( x\right) \in \mathbb{R} \end{equation*}が成り立つ場合には、関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)は各点収束する(pointwise convergent)とか確実収束する(sure convergent)などと言います。これは、どのような点\(x\in X\)が実現した場合においても、関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)の要素である関数\(f_{1},f_{2},\cdots \)が定める値からなる数列\(f_{1}\left( x\right) ,f_{2}\left( x\right) ,\cdots \)が必ず有限な実数へ限りなく近づくことを意味します。

関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が各点収束する場合には以下の条件\begin{equation}\forall x\in X:\lim_{n\rightarrow \infty }f_{n}\left( x\right) \in \mathbb{R} \quad \cdots (1)
\end{equation}が成り立つため、それぞれの点\(x\in X\)に対して、\begin{equation}f\left( x\right) =\lim_{n\rightarrow \infty }f_{n}\left( x\right) \quad \cdots (2)
\end{equation}を値として定める新たな関数\begin{equation*}
f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \end{equation*}が定義可能です。\(\left(1\right) ,\left( 2\right) \)より、以下の条件\begin{equation*}\forall x\in X:\lim_{n\rightarrow \infty }f_{n}\left( x\right) =f\left(
x\right)
\end{equation*}が成り立ちます。つまり、どのような点\(x\in X\)が実現した場合においても、関数列\(\left\{f_{n}\right\} \)の要素である関数\(f_{1},f_{2},\cdots \)が定める値からなる数列\(f_{1}\left( x\right) ,f_{2}\left(x\right) ,\cdots \)が必ず、関数\(f\)が定める値\(f\left( x\right) \)へ限りなく近づくことを意味します。このような事情を踏まえた上で、以上のように定義される関数\(f\)を関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)の各点極限(pointwise limit)と呼びます。その上で、関数\(f\)が関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)の各点極限であることを、\begin{equation*}f_{n}\rightarrow f\quad \text{pointwise}
\end{equation*}または、\begin{equation*}
f_{n}\overset{p.w.}{\rightarrow }f
\end{equation*}などで表記します。以上が各点収束という収束概念にもとづく関数列の極限の定義です。

改めて整理すると、関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)の各点極限が\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)であることは、\begin{equation*}\forall x\in X:\lim_{n\rightarrow \infty }f_{n}\left( x\right) =f\left(
x\right)
\end{equation*}が成り立つことを意味します。イプシロン・エヌ論法を用いてこれを表現すると、\begin{equation*}
\forall x\in X,\ \forall \varepsilon >0,\ \exists N\in \mathbb{N} ,\ \forall n\in \mathbb{N} :\left( n\geq N\Rightarrow \left\vert f_{n}\left( x\right) -f\left( x\right)
\right\vert <\varepsilon \right)
\end{equation*}となります。

ルベーグ可測関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が関数\(f\)へ各点収束する場合には、この関数\(f\)もまたルベーグ可測関数になることが保証されます。

命題(ルベーグ可測関数列の各点極限はルベーグ可測関数)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を定義域として共有するルベーグ可測関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)へ各点収束するならば、\(f\)もまたルベーグ可測関数になる。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

例(全区間上に定義されたルベーグ可測関数列の各点極限)
全区間\(\mathbb{R} \)はルベーグ可測集合であるため、全区間を定義域として共有するルベーグ可測関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が関数\(f:\mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R} \)へ各点収束するならば、先の命題より、\(f\)もまたルベーグ可測関数になります。

ボレル可測関数についても同様の主張が成り立ちます。

命題(ボレル可測関数列の各点極限はボレル可測関数)
ボレル集合\(X\in \mathcal{B}\left( \mathbb{R} \right) \)を定義域として共有するボレル可測関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)へ各点収束するならば、\(f\)もまたボレル可測関数になる。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

 

ほとんどいたるところで各点収束する可測関数列の各点極限は可測関数

ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を定義域として共有するルベーグ可測関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)へ各点収束するためには、任意の点\(x\in X\)において、数列\(\left\{ f_{n}\left(x\right) \right\} \)が実数\(f\left( x\right) \)へ収束する必要があり、これは条件として厳しすぎます。一方、\(X\)上のほとんどすべての点\(x\)において数列\(\left\{ f_{n}\left( x\right) \right\} \)が実数\(f\left(x\right) \)へ収束する場合には、すなわち、以下の集合\begin{equation*}A=\left\{ x\in X\ |\ \lim_{n\rightarrow \infty }f_{n}\left( x\right)
\not=f\left( x\right) \right\}
\end{equation*}の測度が、\begin{equation*}
\mu \left( A\right) =0
\end{equation*}であるとともに、\begin{equation*}
\forall x\in X\backslash A:\lim_{n\rightarrow \infty }f_{n}\left( x\right)
=f\left( x\right)
\end{equation*}が成り立つ場合には、関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)は\(X\)上のほとんどいたるところで\(f\)に各点収束する(converges to \(f\) pointwise almost everywhere on \(X\))と言い、そのことを、\begin{equation*}f_{n}\rightarrow f\quad \text{a.e.}
\end{equation*}または、\begin{equation*}
f_{n}\overset{a.e.}{\rightarrow }f
\end{equation*}などで表記します。

ルベーグ可測集合\(X\)上に定義されたルベーグ可測関数からなる列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が\(X\)上のほとんどいたるところにおいて関数\(f\)へ各点収束する場合には、この関数\(f\)もまたルベーグ可測関数になることが保証されます。

命題(ほとんどいたるところで各点収束する可測関数列の極限は可測関数)
ルベーグ可測集合\(X\in \mathfrak{M}_{\mu }\)を定義域として共有するルベーグ可測関数列\(\left\{ f_{n}\right\} \)が\(X\)上のほとんどいたるところで関数\(f:\mathbb{R} \supset X\rightarrow \mathbb{R} \)へ各点収束するならば、\(f\)もまたルベーグ可測関数になる。
証明

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

上の命題の証明ではルベーグ測度空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathfrak{M}_{\mu },\mu \right) \)は完備であるという事実を利用しています。一方、ボレル測度空間\(\left( \mathbb{R} ,\mathcal{B}\left( \mathbb{R} \right) ,\mu \right) \)は完備ではないため、ボレル可測関数列に対して同様の主張が成り立つことを保証できません。

Twitter
Mailで保存

質問とコメント

プレミアム会員専用コンテンツです
ログイン】【会員登録

関連知識

各点収束する関数列

関数列が各点収束することの意味を定義するとともに、その場合の関数列の極限、すなわち極限関数を具体的に特定する方法を解説します。

ルベーグ可測関数の定義

ルベーグ集合上に定義された関数によるボレル集合の逆像がルベーグ可測であることが保証される場合、そのような関数はルベーグ可測であると言います。

拡大実数値ルベーグ可測関数の定義

ルベーグ集合上に定義された拡大実数値関数によるボレル集合の逆像がルベーグ可測であることが保証される場合、そのような関数はルベーグ可測であると言います。

ボレル可測関数の定義

ボレル集合上に定義された関数によるボレル集合の逆像がボレル可測であることが保証される場合、そのような関数はボレル可測であると言います。

拡大実数値ボレル可測関数の定義

ボレル集合上に定義された拡大実数値関数によるボレル集合の逆像がボレル可測であることが保証される場合、そのような関数はボレル可測であると言います。

可測関数とほとんど至るところで等しい関数

ルベーグ測度空間は完備です。つまり、零集合であるようなルベーグ可測集合を任意に選んだとき、その任意の部分集合がルベーグ可測になります。したがって、ルベーグ可測関数とほとんどいたるところで等しい関数もまたルベーグ可測になります。

可測関数と連続関数の合成関数は可測関数

ルベーグ可測関数とボレル可測関数の合成関数はルベーグ可測です。また、ボレル可測関数どうしの合成関数はボレル可測です。さらに、可測関数と連続関数の合成関数は可測関数です。

可測関数の定数倍は可測関数

ルベーグ可測関数の定数倍として定義される関数はルベーグ可測関数です。また、ボレル可測関数の定数倍として定義される関数はボレル可測関数です。

有界関数の定数倍のルベーグ積分

有限測度を持つルベーグ可測集合上に定義された有界関数がルベーグ積分可能である場合、その定数倍として定義される関数もまたルベーグ積分可能です。